複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.401 )
- 日時: 2017/06/20 14:14
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
長瀬side
菅が鋭い目つきで、教室に戻って来た。 三神先生に呼び出されて、何の話をしたんだ?
席に着いたのと同時に、菅の席に向かい「目が怖いぞ」と前に立った。
「もともとこうなんだよ。 放っとけ」
俺は苦笑いを返し「何の話だったんだ?」と聞いた。
「・・・昨日、白根先生の家に行って、俺とアイツが二年の頃喧嘩したのを聞いて、その理由を聞かれた」
「ふーん。 なんて言った?」
「正直に言ったよ。 アイツが急に部活辞めるって言って頭にきたって」
「そっか」と俺は校庭に目を向けた。 コロコロと転がるサッカーボールが目に入る。
「翔は今頃、何してるんだろうな? 一人でいるの、つまんなくないのかな〜?」
「さーな」 菅は机に頬杖をついた。
そんな菅に向き直って「なあ?」と顔を近づけた。 菅はちょっと仰け反り「な、何だよ」と目を見開いた。
「翔ん家、行ってみないか?」
その言葉を聞いた菅は「ああ!?」と、さらに目を見開いた。
その声は、五限目のチャイムにかき消された。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.402 )
- 日時: 2017/06/20 14:12
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
香side
「何かできること無いかな〜」と、大きな声で言う安佐子。 私は「できることね〜」と言葉を繰り返し、カップにお湯を注ぐ。
「昨日、白根先生に清間君の家の場所でも聞けば良かったかな」
そう言って、ため息を吐く安佐子。 私も「確かに」と頷く、
「でも案外、車で走ってたら見つけられるかもしれないぞ。 清間って、滅多に聞く名字じゃないしな」
「それもそうかも! でもなー、やっぱり担任じゃない私が行っても意味ないかも」
頭を抱える安佐子に「あんた一人で行けば、そうかもね」と私はカップを置き、安佐子に向き直った。 「なんか、むかつく」と安佐子はこちらを軽く睨んだ。
「じゃあ、香ついて来てくれんの?」と、安佐子がどこか試すような口調で聞いてきた。
「ああ」と私は短く答えた。 途端に安佐子は、口を開けたままポカンとしている。
「い、今・・・ああって言った?」と私を指差す。 「言ったけど」と椅子に座り直し「指差すな」と手を払う。
「できることがあるかもしれない。 そう思っただけだ」
安佐子を見ると、嬉しそうに笑っていた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.403 )
- 日時: 2017/06/24 20:54
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
放課後になった。
香に指定された、校舎裏の職員駐車場で待っていると、もう香が立っていた。
「ごめん、待った?」と言う私に返事をせず、私の車へと歩く。
「あー、待って。 まだ開いてないから」と、遠くから車の鍵をボタンで開けた。
後部座席に乗り込む香に、私は運転席の戸を開けながら「後ろ好きね〜」と、どこか寂しな言い方になった。
「でも、なんで清間君のお父さんは、清間君にサッカー部を辞めさせたかったんだろう? 自分の子供が活躍する場があるのって、親にとってはすごく嬉しいことだと思うんだけどな〜」
車でしばらく走ると、家がたくさん並ぶのが目に入った。
「まず、ここを行こう」と香が口を開いた。 「了解」と左に曲がる。 突き辺りまで行って「無かったね」と言う私に「次」と、香は少し口調を強めた。
右側を同じように突き当りまで進んでみた。
「無かった」 「次」
隣の路地を走ってもみたけど・・・「無い!」
「簡単じゃないね。 やっぱり住所聞けば良かったね」と落胆する私に「逆の方向に行ってみよう」と香が提案した。
その言葉に私は「うん」と気を取り直し、本通りに出て、学校の向こう側の道を走ることにした。
家がポツポツと、等間隔に並んでいるのが見えた。
ゆっくりと一軒一軒の前を通り過ぎて行き、そして・・・
「香! あれ!」と、私は目の前に建つ一軒の家を指差した。
「あったな」とつぶやき、香はササッと車を降りて行った。 「ちょ!」と私は車のまでを開け「本当にこんな方法でいいの?」と焦る私に「静かにしろ」と少し振り返って言った。
仕方ないので私も「もー」と言いながら、香に続いて車を降りた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.404 )
- 日時: 2017/07/13 14:46
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
香が玄関のチャイムを鳴らす。 返事が無いので、続けて二、三、四回と鳴らしていく。
その時「・・こあ・・で・・・く・・い」と小さな声が聞こえた。
「何か聞こえる」と言う私に「そっか。 じゃあ、この中にいるんだ」と香は家を見上げた。
またチャイムを鳴らす香。 首を傾げ「なぜ、出て来ない?」とまた家を見上げる。
私の耳にはまた「は・・・るの・・てください」と、言葉が聞こえてくる。
「男の子の声がする」
「なんて言ってる?」
「途切れ途切れで、はっきりとは」
香は「ふーん」と一つの部屋を見つめた。 薄っすらと明かりがついている。
香がまたチャイムを鳴らした。 と、その時
「そこにハンコあるので押して帰ってください!!」と叫び声が聞こえた。
今度は香にも聞こえたらしい。 「清間君?」
「二階からじゃない?」と言う私の声を待たず、香は靴を脱ぎ捨て階段を上り始めた。
「え・・・何? 足音?」とまた声が聞こえる。 慌てて鍵をかけようとする音も。
廊下に出ると、突然香が駆け出した。 「ちょっと、待って!」と追いかけると、香が一つの部屋のドアノブを必死に掴んで開けようとしていた。
「何・・・何これ! 宅配の人じゃないんですか? 何勝手に上り込んでるんですか?! 怖い・・・怖い、怖いよ!」
「落ち着いて。 確かに私達は宅配の人じゃない。 でも、そんなに怖がらなくていい。 きっと、顔を見れば分かる。 一度は見たことあるはずだから」
香の声に、ドアが動きを止めた。 「わたし・・・たち?」と不思議そうな声も聞こえてきた。
香の手によって、ドアは廊下側に開かれた。 部屋の中に立つ男の子の顔が、少し廊下の明かりに照らされた。
「清間 翔君?」と香に聞かれ、男の子はコクンと頷いた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.405 )
- 日時: 2017/07/15 17:17
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
香side
照らされた清間君の顔。 七分袖の服から出ている腕に、はっきりとした青い痣(あざ)が見えた。
「入れてもらえる?」と言うと、何も言わず部屋の戸を開け、部屋の電気をより一層明るいものにした。
椅子があるのに、カーペットの上に座り込んだ清間君は「あまり見ないで下さい」と、手を膝の上に置き俯いた。
彼の痣もひどいのだが、部屋の壁、机の上など浅い傷、深い傷が目立つ。
「確かに、そんな体では宅配便の人の前に出られないのも分かる。 でも、もし今回入って来たのが私達じゃなかったら、どうするつもりだった?」
私はそう言って、清間君の両腕をとり、表裏を交互に見る。
「左腕。 手首捻ったのね」 私は赤く腫れている手首を見つめた。
「そういえば・・・はい」と清間君は「ハハ」と小さく笑った。
「台所、いい?」と、私は返事を待たず階段を降りた。
袋に氷を入れたのを持って戻ると「ありがとうございます」と、清間君はそれを受け取り、左手首に当てた。
「確かに不用心でしたよね。 でも、もしこの痣に気付かれたらって思うと、怖かったし、説明するにも勇気がいるというか」
「すみませんでした」と清間君は頭を下げた。
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