複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.206 )
日時: 2015/07/12 14:38
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 (あ! 私たちって、古志野さんがいたのね。 それと……)

 「見慣れない顔ね」

 私は、錦さんの隣に座った女子生徒を見つめた。

 「すぎ…き……あゆ…って言います」

 声が小さく、そして言い方がぎこちなかったけど、私には”すぎき あゆ”と聞こえた。

 (あ! どこかで見たと思ったら!)

 そうだ! 思い出した。

 今日の若葉通信で”速報”って欄に、テニスの試合のことが書いてあったのよね。 その写真に、小さく写ってたのよ、確か。

 「新入生?」

 「です」

 私の質問に、なぜか錦さんが答える。

 「どうりで見ない顔なはずだわ。 私、一年生は受け持ってないから」

 「そうだったんですか」

 今度は古志野さんが答える。

 「どこのクラスなの?」

 私の質問に、杉木さんは右手で「1」、左手で「3」と示した。

 「一年…三組か。 学校生活には慣れた」

 彼女は黙って、頭を左右に振る。

 「担任の先生って、誰?」

 その質問に、彼女はすごく小さな声で答えた。

 「土江先生かー。 そうなんだ」

 土江先生は、一年三組の担任っと。 よし、覚えた。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.207 )
日時: 2015/07/13 17:06
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 花side

 (愛結ちゃんって、大人しいな)

 さっきから、三神先生と話してるの見てると、静かな優しい口調で、つぶやくように話している。

 後、なんか手とか使って話してるのを見ると……大人しいって言うより、無口って感じだ。

 「花、どうしたの? 食べないの?」

 「え…あ、いやいや、食べるよ」

 私は元気に答えたが、美羽が寄ってきて、グッと顔を近づけてきたので、思わず仰け反る。

 「まぁ、よく見たら顔色良さそうだね。 良かった」

 そう言って、すぐに美羽は、自分の場所に戻って、お弁当を食べ始めた。

 「ねえねえ、愛結」

 「はい」

 「土江先生って、どんな先生?」

 「…明るくて……私にも、時々だけど声をかけてくれる。 いい先生…です」

 「おおー、いいじゃん!」

 愛結ちゃんは、こくんとうなずく。

 「そっか—」と美羽は立ち上がった。 と、なんか遠くを見つめだした。

 「そういえば、私、ここに来るの初めてだ」

 美羽は低い壁に駆け寄り「ヤッホー」と叫んだ。

 「美羽さーん。 ここは山じゃないよー」

 私は適当にツッコミを入れ、卵焼きをかじる。

 「乗り悪いなー」

 「テンション低くてごめんねー」

 「でも、君だってこの景色を見たら、きっと叫びたい衝動に駆られるさ!」

 私は美羽に腕を掴まれた。

 「ちょ、待って! お弁当がひっくり返る! それに、私ここに来るの二度目だから!」

 美羽に引きずられ、隣に立たされた。

 「二度目って、いつ来たの?」

 「え…んーっと……! そう、能登先生がいた時」

 「あー、そうだったんだ」

 「うん。 ねえ、そろそろ離して」

 「え? ああー、ごめん」

 (でも、確かに来たことはあったけど)

 「こんななんだ。 ここからの景色」

 自分でも自然と、そんな言葉が出て来た。

 「でしょ、でしょ? 感動でしょ?」

 「なんか、みんなが登校してくる様子とか見てみたいなー」

 「あ、わかるー。 どんなだろうね」

 と、いつの間にか錦ワールドに飲み込まれた私は「おーい」と叫んだ。

 「えー。 そこ普通、ヤッホーじゃないの?」

 「だから、ここは山か!」

 私がそう美羽に突っ込んだ時「あ!」と声がした。

 私たちが振り返ると、三神先生が立ち上がっていた。

 「どうかしたんですか?」

 美羽が近づきながら聞く。

 「五時間目……」

 キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

 「始まる!」

 三神先生は「遅刻じゃー!!!」とお弁当の袋を片手に叫びながら、走って行ってしまった。

 私と美羽も「ウソ—」と駆け出して、三神先生に続く。

 愛結ちゃんはというと、さすがに焦り顔で後をついて来ていた。
 

 
 

 

 

 
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.208 )
日時: 2015/07/16 16:33
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side
 
 「すみません! 遅れまs……え……」

 私と花は急いで教室に駆け込んだ。 でも、先生の姿が無い。

 「先生、まだなんだね。 もしかして、セーフ?」

 私は仁井奈の席に行き、隣に立つ。

 「まぁ、遅刻ってほど遅れてないから、いいんじゃない、セーフってことで」

 「良かった—。 先生の方が遅刻してんだ」

 「いや、あれ」

 仁井奈はそう言って、前を指差した。

 「自習」

 私は黒板に書かれた文字を読んだ。

 「そういうこと」

 と、仁井奈が机の中から、プリントを差し出して「はい」と渡す。

 「げ! よりによって、数学……しかも、四枚」

 「あー、二枚は花の分だから」

 「な、何だ。 先に言ってよ。 ビビったー」

 (そっか。 取っといてくれたのか)

 「ありがとう」

 「うん。 頑張って」

 私は花に「はい。 これ、解くんだって」とプリントを渡し、自分の席に着いた。

 「なんか、この時間になりそう」

 と、女子の声が聞こえた。 その一言で、教室がざわざわし出した。

 (あー、そっか。 今日、避難訓練だった)

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.209 )
日時: 2015/07/18 11:17
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 愛結side

 「すみませんでした」

 私は皆が席に着く中、教壇に立つ土江先生に頭を下げた。

 「もう、いいのよ。 遅刻ってほどじゃないから。 でも、次からは気をつけてね」

 先生は、あくまで優しく注意してくれた。 私は俯きかげんに自分の席に急ぐ。

 「はい。 では、今日は教科書の41ページからです。 新しいところに入ります。 なので、皆で音読しましょう。 えっと、じゃあ、三橋(みつはし)君からお願いしていい?」

 「あ、はい」

 指名された男子が、慌てて教科書を開く。 

 「視点を変えてみれば、「文明の———」

 三橋 一也(いちや)。 私と同じ中学から来た、唯一の顔なじみである男の子。

 でも、あまり話したことはない。 けど、他の男子に比べて、ずっと話しやすくて、いい雰囲気をしている。と思う。

 「はい。 そこまで」

 だから、私、話しちゃったんだ。 お姉ちゃんのこと。

 

 中学時代、図書室の帰り。 私は聞いてしまった。

 廊下でたむろしていた、男子たちの会話。

 「ところでさ、知ってる?」

 「どした、改まって?」

 「隣のクラスに、杉木って女子、いるじゃん?」

 私は突然聞こえた名字に、ビクッとした。

 「あー、なんか暗い子?」

 「うん、その子」

 「その子がどうした?」

 「いや、その子じゃなくて、その子の姉さんのことなんだけど」

 「おん……姉さんが何?」

 「小学校の頃、火事起きたじゃん? 避難訓練だったはずだったのが」

 「あー、あったね。 先生たち、めっちゃ焦ってたよな」

 「それさ」

 会話が止まった。 私は廊下側の壁に詰め寄り、息を殺し、耳を澄ませる。

 「先輩たちのいたずらだって、知ってた?」

 私ははっとなった。 口に手を当て、目を見開く。

 (先輩たちの……いたずら?)

 私の頭の中を、その言葉が何回も駆け巡る。

 「そ、それホントか! だったら、やばくね?」

 「ああ、やばいよな」
 
 「誰情報だよ、それ」

 私はその場にしゃがみ込んだ。 血の気がさっと引いて、一気に体が冷たくなってきた。

 (やっぱり、そうだったんだ。 お姉ちゃんは…お姉……ちゃん…は)

 私は、図書室の床に突っ伏し、声を殺して泣いた。

 そんな時「筆箱!」と勢いよく、図書室の扉が開かれた。

 顔を上げると、当時同じクラスだった三橋君がいた。 三橋君は私に気付くと「ど、どど、どうしたの?」と駆けよって来た。

 「目、真っ赤。 もしかして、泣いてた?」

 「!」

 私は慌てて顔を伏せる。

 「そ、そっか。 ごめんね。 すぐ出るから」

 そう言って、三橋君はキョロキョロ辺りを見回し「あった」と奥に駆けて行った。 

 そして、そのまま出て行こうとしていたのに。 なぜか、私の前に座り込んで……。

 「やっぱり」と力強く言い「ほっとけない」と私に顔をぐっと近づけた。

 「!」

 「何かあったの? もしかして、さっき廊下にいた男子たちと、何かあった?」

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.210 )
日時: 2015/07/20 11:30
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 愛結side

 (話しちゃったんだよね……自分でも気づかぬうちに)

 小学校の頃の友達は、お姉ちゃんについて触れては来なかった。 先生も噂が広がり、私の居場所がなくならないように必死だった。

 でも、私にはそれがとても悲しかった。

 まるで、杉木 沙耶は、始めから存在していなかったみたいに思われているみたいで。

 そんな、ずっと胸に秘めていた思いも、話しちゃったんだろうな。

 なんか、親身になって聞いてくれる三橋君の姿が、純粋に嬉しかったから……。

 
 でも、そんな三橋君に、私は言いたいことがある。

 「なんで、ここの高校に来たの?」って。

 確か、三橋君の家から歩いて十分の距離には、高校があったはず。

 なのに、なんでだろう?

 「じゃあ、皆。 配ったプリント、見てくれる? ざっと見てもらうと、AとかBって書いてあるのがわかりますね?」

 私は先生の声で我に返った。 慌ててプリントを見る。
 
 「それは漢字の書き取りになっています。 近々、小テストしようと思っていますので、覚えて下さいね」

 それを聞いた皆は「えー」と口を揃えて言った。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。