複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.116 )
日時: 2015/02/11 09:38
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 花side

 「何があったの? この一時間の間に!」

 私と美羽が、そろって教室に帰って来たのを見て、仁井奈が珍しく興奮しながら、私に問いかけた。

 「何って、話し合ったんだよ、いろいろと」

 「だから、何を?」

 私は、美羽の席を振り返った。 口の前に、人差し指を立てている。 まあ、そんなことしなくても……。

 「秘密!」

 私はそう言って、仁井奈にでこピンをした。

 「った!!」

 仁井奈はおでこを押さえて、机に突っ伏した。

 と、そこに「席、着け—」と先生が教室に入って来た。






 香side

 (二人とも、あんなにギクシャクしてたのに……)

 古志野さんと、錦さんは「寒い、寒い」と保健室に帰って来て、二人仲良く、長椅子に腰かけた。 そして、三時間目終了のチャイムが鳴った途端、「教室、戻ります!」って、仲良く出て行っちゃうし。

 (”親友”…か)

 私の頭の中で、古志野さんの言葉が響いた。 私はふと空を見上げ、小さい雲を見つめる。

 (あの日と同じ……)

###################################################

 私がまだ高校生だった、ある日の下校中。不意に安佐子が「私って、香にとってどんな存在なの?」と、聞いてきた。

 「なんで、そんなことを聞く?」

 「私は、香のこと、好きだけど……香は、私のこと、好きかなって思って……」

 「そうだな……変わり者だな。 強いて言えば」

 「な、なんで!」

 「だって」

 私は歩みを止めて、安佐子を振り返った。

 「人を殺したこと、信じてないの、あんただけだもん」

 その後、安佐子からは何の反応もなかった。 青信号になったので、渡ろうと一歩を踏み出した。 すると、夕焼けに浮かぶ白い月に、灰色の雲が一つかかっているのを見つけた。

 私が殺したのは……母を自殺に追い込んだ女。 その女は、私の両親の間に入って、少しずつ夫婦関係に亀裂を生んだ。 おまけにその女は、自分の容姿が母にそっくりだったことをいいことに、10年間も「私が実の母だ」と騙し、私を育てた。

 私は「この人は、本当のお母さんじゃない」と知った時、勢い余って、殺してしまった。

 でも、その光景を、執事の小木沼に見られてしまい、小木沼が警察に出頭した。 

###################################################
 (あいつは、なんで、あんな行動をとったんだ?)

 私は、誰もいなくなった保健室で、じっと、小さな雲を見つめていた。
 

 (作者です。

  下手で、ごめんなさい!!)
 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.117 )
日時: 2015/02/14 17:01
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 時は流れて、今は終礼も終わった放課後。 花は保健委員の活動に、仁井奈は部活に行ってしまった。

 私も本当なら今頃、部室で着替えている頃だ。 でも、昼休憩のうちに、顧問に休むと報告した。

 今日もアイツが家に来るかと思うと、お昼もろくに食べられなかった。 早く帰って、家の侵入経路を塞ぐまで、安心できない。

 私はさっとカバンを掴み、すぐそこの昇降口まで駆けて行った。 と、白い何かが、目の片隅に映った。 

 「横田先生」

 振り返った私の視線の先には、横田先生がいた。

 (そういえば……)

 私は花と一緒に、保健室から出るように促された時のことを思い出した。 保健室には、三神先生と横田先生の二人だけになって……

 (もしかして、三神先生に話したのかな? アイツのこと)

 まあ、担任だし……知っておいてくれた方が助かるかも知れない。 私は靴を履き、昇降口を出た。





 安佐子side

 「ノック、ランダムに」

 「はい!」

 私は校庭の隅にある、テニスコートにやってきた。

 「結構、キツそうねって、違うでしょ、私!」

 私がここに来た理由。 それは!

 「一カ月間。 安佐子が錦さんを、家まで送る」という香条例に基づき、部活中であろう錦さんに、待ち合わせ場所などを話しておこうと思ったのだ。 でも……錦さんの姿が見当たらない。

 「三神先生? 何か御用ですか?」

 「あら、須藤さん。 ちょうどいいところに」
 
 私は「来て、来て」と、彼女をフェンスの外に招いた。 

 「今日、錦さんって?」

 「顧問が”休みだ”と言ってました」

 「そう……」
 
 「たぶん、もう下校中かと……」

 須藤さんは、時計台に目をやった。 もう、学校の外か。

 「錦さんの家には、どういったらいいの?」

 とりあえず、追いかけよう。


 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.118 )
日時: 2015/02/15 21:11
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 (校舎を出たはいいものの……)

 私はキョロキョロと、何度も後ろを振り返る。 私は部活をして帰ったから、家に先に帰っていた母をアイツは襲ったんだ。

 (今日はいつ来るつもりなの?)

 もしかしたら、家に着く途中で鉢合わせになるかもしれない。 そんなことを考えて、早く逃げられるように、警戒しながら歩いているという訳。

 と、後ろからゆっくりと車が近づいてきた。 私は、はっと振り返る。 顔がよく見えず、性別の区別がつかない。 が、すぐに助手席側の窓が開き、運転手が顔を出した。

 「ん?」と私は目を見開く。 車に乗っていたのは、三神先生だった。 「おーい」と手を振っている。

 「え、先生もこっち方面?」

 「いや、そうじゃないの。 まあ、乗って、ここ」

 どういう訳か、三神先生は私に、助手席に乗るよう言ってきた。 私は首を傾げたものの、後ろにいた車にクラクションを鳴らされた。

 (もしかして……)

 「じゃ、じゃあ」と、私は車に乗った。




 安佐子side

 (よし、安佐子。 良くやった!)

 私は素直に自分を褒めた。 思いのほか早く見つけられた。 それにしても……。

 (随分、警戒してたわね)

 ずっと車を止められないまま、警察の尾行みたいに彼女を追いかけていたけど、時々後ろを振り返っていたから、そのうちこっちに気付いて言い寄ってくるかもと思っていた。

 「あ、その角」

 「左よね?」 私は迷うことなく、左に曲がった。 その直後「やっぱり」と錦さんの声が聞こえた気がした。

 「私の家までどうやって行くのか、知ってるんですね」

 「え?」

 「横田先生から、アイツのこと聞いたんですよね? それで、私を家まで送るようにって言われたんですか?」

 (アイツって、父親のことよね?)

 「ごめんなさいね。 でも担任として、生徒の家庭環境を知ることは重要だと思うから」

 「いえ、別に責めるつもりはないんです。 三神先生の仰った(おっしゃった)通り、知っておいてもらえると後々楽なので……。 でも……」

 錦さんはそう言って、顔をうつむかせた。 「でも?」と私は聞き返す。

 「とても危険なことに巻き込んでしまったんじゃないかって、三神先生や横田先生が危ない目にあったら…」

 そのあとは聞き取れなかったが、肩が小さく震えていることから泣いているように見えた。

 「大丈夫!」

 私は気が付いたら、そう口にしていた。 「え?」と錦さんが顔を上げる。

 「錦さん。 先生って、ただ授業を教えるだけじゃないの。 自分が困ったとき相談したら、一緒に考えてくれる。 悲しい時は慰めてくれる。 駄目なことは叱る。 いいところは、褒めて伸ばしてやる。 でもね、どんな時も自分から”サイン”を出さないとダメ」

 「サイン?」

 「そう。 「助けて」なんて心の中で叫んでも届かない。 「私は、今こんなに苦しいのに、なんで助けてくれないの?」なんて、言ってくれなきゃこっちも助けようがないの」

 錦さんは黙って聞いている。

 「誰にも言わないよ。 だから、いつでも相談しに来ていいんだからね?」

 私は車を止めた。 「着いたよ」と錦さんを見る。 錦さんの頬に涙が伝うのが見えた。 そんな錦さんに「はい」と私は、一枚の紙を差し出した。 「え?」と錦さんは、涙を拭いながら紙を受け取る。

 「いつでも、電話してきてね」 私は、自分の携帯電話の番号をメモして渡したのだった。 「はい!」と素直に受け取った彼女の顔に、希望の色を感じた。

 (香条例、第二。 達成)

 錦さんを車から降ろした後、私はまた学校に向かった。


 
 

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.119 )
日時: 2015/02/16 20:46
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 三神先生の車から降りたはいいのだが、すぐに玄関の戸を開けられなかった。 でも、近所の人に不思議がられると思い、しぶしぶ「ただいま」と小さくつぶやき、家に入った。 

 玄関の床に目をやる。 母はまだ仕事らしい。 アイツらしき靴も見当たらない。 いや、必ずしも毎回玄関から押し入って来るとは限らない。 今日は、窓を叩き割って入って来るのかもしれない。

 (アイツが入って来れないよう、どうやって対策をしようか?)

 とりあえず、自分の部屋に行こうと玄関の鍵を二重に掛け、階段を上がった。 (部屋に着くまでに来たらどうしよう) (部屋に入ってから来たらどうしよう)と、アイツの来るタイミングばかり気になり始めた。 が、無事に部屋に入れた。

 


 香side

 「ただいま!」

 安佐子が職員室に入って来るなり、私に席まで来てニコニコと笑いながら話しかけてきた。

 「おー、お疲れ」

 「いやー、いきなり香条例の第二条までクリアしたよー。 これで錦さんとの距離がだいぶ縮まった気がする!」

 「そうか……って、香条例って何?」

 「え?」

 「いや、だから」と私は同じことを口にしようとしたものの、安佐子のお茶をすする音にかき消されそうだったので、諦めて席から立ち上がった。

 「どこ行くの?」

 「私の本部は保健室だ。 保健室に決まってる」

 「いや、それは知ってるけど……そんなの持って?」

 安佐子の言うそんなのとは、私が右手に持っているネジ回しのことだろう。

 「体重計の修理だよ」

 私はそう言って、戸を閉めた。




 花side

 「はあ……」

 私は美羽の下駄箱を覗いて、靴が無いことを知りため息をついた。 そんな私に「おーい」と部活を終え、制服に着替えた仁井奈が駆け寄って来た。

 「まあ、そりゃ帰るよね」

 仁井奈は私の半歩前を歩いている。

 「やっぱり、委員会の仕事、断ればよかった」

 後々、美羽を一人で帰らせてしまったという罪悪感に苛(さいな)まれるであろうと覚悟してはいたが……。

 「美羽、どこにいたの? てか、あんたも!」

 急に仁井奈が興奮気味に詰め寄ってきた。 私は自然とコンクリートの壁に追いやられる。

 「保健室だよ」 私は体を仰け反らせながら答えた。 「ふーん」と仁井奈は納得し、また、すたすたと歩きだした。 私も「ほっ」と一息つき、後を追う。

 「美羽は横田?先生に、花にも言えない何かを相談しに行ったのかな?」

 「そうなんじゃない?」

 「聞きたいと思わないの? 幼馴染なのに」

 「うん。 私は美羽を信じるって決めたの。 あの子、「自分を信じて」っていう目で私のこと見て来たから。 それに……」

 「それに?」

 「いつか話してくれるって、約束してくれたもの」

 私は青信号になった横断歩道を、仁井奈より先に渡った。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.120 )
日時: 2015/02/17 20:35
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 「体重計の修理ねぇ〜」

 私は廊下を歩きながらつぶやいた。 普通、事務の人がやってくれそうなのに、香は自分でやろうとするのか。

 (昔と変わらないな……そういうとこ)

 「香が人を殺した!?」

 私と香が高校生だった頃、誰が広めたか分からないが、そんな噂が広まった。 高校生活、最後の夏だった。

 もちろん、私は信じなかった。 今でも香の幼馴染として、誰よりも香のことは良く知っていると思う。

 でも、香は”辛い”ということを、私に言ってくれなかった。 だから私は「私って、香にとってどんな存在なの?」と聞いてみたんだ。

 「そうだな……変わり者だな。 強いて言えば」 それが香の答えだった。 私は「な、なんで!」と突っ込んだ。 するとあの子は、シュンと寂しげな顔で「人を殺したこと、信じてないの、あんただけだもん」と、返ってきた。

 私は言葉を失ってしまった。 

 (私が、もしその事実を信じてしまったら、どういう目であなたを見ていいか、きっと分からなくなる)

 だから私は今も、その事実を嘘なんだと自分に言い聞かせているのだ。 私だけでも、この子の見方で在り続けたいと思うから。

 屋上に通じる階段に差し掛かった時、はっと自分の頬を涙が伝うのに気付いた。 「ダメダメ、泣いてちゃ」と、私は涙を拭う。

 それに目的地を過ぎてしまっていた。 私は階段に背を向け、さっき通った廊下を戻って行く。

 ふと、壁に貼り出せれたポスターに目が行った。 それに一歩近づき、良く見てみる。 シンプルに「廊下は走るな!」と殴り書きされていた。

 「本当に、これだけのために呼び出したんだ」

 そのポスターの右端には小さく、保健委員よりと書かれていた。

 


 作者です。
 今日は短くてごめんなさい!


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