複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.326 )
- 日時: 2016/08/26 17:29
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
安佐子side
私は職員室の自分の机に着き、フーと息を吐いた。 突如聞こえてきた”ギギー”という音に顔を上げると、土江先生が椅子を足で操り、こちらに近づいて来るところだった。
土江先生は、椅子の背もたれがぶつかるか、ぶつからないかのギリギリで椅子を止めて「どうされました?」と控えめな笑みを浮かべて、私の顔を覗き込んだ。
私は、今朝の本居さんについて話した。
「そんなことが・・・。 三神先生も、横田先生も大変でしたね。 そんなんじゃ、昨日話した作戦どころじゃないですね」
土江先生はそう言って、左手で顔半分を隠し、机に肘をついた。
その作戦っていうのは・・・・・・あれ!?
「なんでしたっけ、作戦」
「えー、忘れちゃったんですか!?」
「え、あー・・・っと。 すみません。 今朝からあんなことがあったもので、どこかへ飛んでしまったみたいです」
そんな私に「ありゃー」という顔をした土江先生。 でも、それは一瞬だった。 すぐに表情をキリッとさせて「いいですか?」と私に向き直った。
「まずは本居さんが言いたいことを、ひたすら聞き出すんです。それが、家庭に問題があるものなら両親と面談をする。 そうではなく、クラスに問題があるものなら、今度の道徳の授業で議題にするんです」
あ! そうだった。 思い出した。
でも・・・「今の状態では難しいですね」
「そうですよね。 まだ横田先生、職員室に上がって来られていないんですよ。 付きっきりで面倒見てるみたいですね」
私は香の席を見る。
しばらくして、続々と席を立つ先生たちが目に映った。 それを見て私も二時限目に向かう準備をする。
「本居さんがよくなるように、私も願ってます」と椅子から立ち上った土江先生に「はい」と頷き、彼女に続いて職員室を後にした。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.327 )
- 日時: 2016/08/27 18:12
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
香side
錦さんは、優しくないって言うけど・・・
(他の人は、本居さんのこと、気にならないのかな?)
そんなことを思っている時「本居、そこにいんの?」と男子の声が聞こえた。
私が保健室の入り口に目をやると、「長瀬君」と錦さんが目を見開いた。
私は「同じクラス? 本居さんの様子、見に来たんだ」と長瀬君に「良かったら」と私の立っていた位置に来るようすすめた。
でも彼は「いえ」と、保健室の中に入ったものの、カーテンの外から本居さんを見つめた。
「まるで、あの時みたいだ」 ふとそんなつぶやきが聞こえた気がした。 それは錦さんも同じだったらしく「何か言った?」と聞き返す。
「何も」と長瀬君は短く答えて「失礼しました」と、保健室を出て行った。
本居さんについて何も聞かなかったから「結局、何しに来たんだ?」と私は首を傾げた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.328 )
- 日時: 2016/09/04 13:35
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
花side
あ、長瀬君、帰って来た。 一人で帰って来たってことは、別に美羽の後を追ったわけじゃないのかな?
「そういえばさ〜」
私が考えを巡らせていると、百合がのんびりとそう切り出した。
「高2の時、長瀬君と本居さんについて、噂流れなかった?」
「え、どんな?」と私が聞く前に、百合の近くに寄って来た女子が言った。
「長瀬君が本居さんを好きだ、って噂」と声を潜めて言った百合。
でも、それに対しての女子の反応が「えー、そうなの—!!」と叫ぶ感じになってしまった。
「ああああ〜、ちょっと・・・、し——」
百合は慌てて、女子たちに落ち着くよう促す。
そんな時、美羽が戻って来た。 私は席に着くのを待ってから、仁井奈と一緒に駆け寄った。
「あの、美羽? さっきは、なんか・・・ごめん!」
そういきなり謝る私に、美羽は目を丸くして「いやいや、こっちこそ急にあんな態度とって、ごめんね?」と言った。
「ねえ、美羽」 仁井奈が美羽の正面に回った。
「そろそろ教えてよ。 せめて、私たちにだけでも。 さっき、本居さんの様子、見に行ってたんでしょ」
「・・・うん、分かった。 話すよ」と言った美羽に、私は「なーちゃん、学校来てるの?」と聞いた。
そのことも含めて、美羽はなーちゃんについて説明してくれた。
途中、二時限目開始を告げるチャイムが鳴ったから、中途半端に話が終わっちゃったけど…。
「これ(二時限目)が終わったら、私たちも様子に見について行っていい?」と仁井奈が聞くと美羽は「うん」と笑ってうなずいた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.329 )
- 日時: 2016/09/07 18:03
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
香side
二時限目が始まって、十分後。 朝からもう4杯目のコーヒーをマグカップに注ぐ。 若干残る眠気を、ブラックコーヒーで吹き飛ばそうと考えた。
マグカップを片手に、本居さんのそばに立つ。 すると、本居さんの左手がピクッと動いた気がした。
「ん!」 私はマグカップを机に置き「本居さーん。 もしもーし」と呼びかけた。
次の瞬間、本居さんが目を開けた。 「気が付いた? 良かった」と横から声をかけると、本居さんは顔をこちらに向けて「え…と、ここ」と小さくつぶやいた。
その声が掠れたように聞こえたから「まず、水飲もうか」と私はコップに水を入れ、「はい」と差し出した。
本居さんは最初遠慮していたけど、よっぽど喉が渇いていたみたいで、ゴクゴクと一気に飲み干した。
そして一息吐いて(ついて)、私を見ながら「保健室・・・ですよね?」と言った。
「うん、そう。 あなたは今朝、雨上りの校庭に倒れて、たまたま朝練のために早く登校してきたテニス部員に発見されて、六時頃から今さっきまで、ここで寝てた、ってわけ」
私の説明に「え」という顔をした本居さん。 「雨上りの校庭に倒れたのは、覚えてる?」と言うと首を横に振った。
「確か、普通に家に帰って、母が置いていた手紙を読んで…。 自分の部屋のベッドに仰向けになってたはず…」
そう言いながら、保健室を見回す本居さん。 おしまいに自分の着ている服を見て「あれ」と首を傾げた。
「私、パジャマ着てた気がするんですけど…」
「ああ、うん。 雨が上がっていたとはいえ、土は湿っていたみたいで濡れちゃってたから、体操服に着せ替えさせてもらったんだ」
私はさらっと言ったけど、本居さんはまた「え」という顔をした。
「あー、ちなみにパジャマは外。 日が出て来たから干してる」
私が窓を指差すと、本居さんはベッドをきしませて、前のめりになって外を見た。
「いい天気」とホッとしたようなつぶやきに「そうだね〜」と、私ものんびりとした口調で返した。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.330 )
- 日時: 2016/09/12 20:17
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
安佐子side
二時限目の終了を告げるチャイムが鳴った直後、三年二組の廊下の壁に備え付けられた電話が鳴り響いた。
「はい、三神です。 あー、横田先生。 はい……、え、ホント!!」
香の言葉を聞いて、気づいた時には勢いに任せて三階の廊下を走っていた。
「三神先生、そんなに慌てて、どうかしたんですか?」と、通りすがりの生徒の中に錦さんを捉えた。
「いい知らせよ! ついていらっしゃい!」と階段を降りる私に、一緒にいた古志野さんと小林さんもついて来た。
「どこに行くんです?」 「もしかして菜月ですか?」 「いい知らせって!?」と三人が順番に質問をした。 それに私は何も答えず、早歩きで保健室を目指した。
「香!」と保健室の戸を開けた。 瞬間、ベッドから上体を起こし、香と外を眺めていた本居さんの姿が目に飛び込んできた。 ホッとしているうちに「なーちゃん!」 「菜月!」 「本居さん」とついて来た三人に先を越されたので、私も急いで本居さんに近寄る。
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