複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.131 )
日時: 2015/03/13 22:56
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 香side

 どういう訳か、私の目の前には、息を切らした安佐子がいる。 「香!」と叫び、保健室の戸を開け入って来たと思ったら、それきり、この調子。

 「用が無いなら、生徒への課題プリントを作ったらどう?」

 私はいくら待っても、言葉を発しない安佐子にしびれを切らし、パソコンに向き直った。 が、すぐに異様な視線を感じ、とりあえず振り返る。

 「!!!」

 私は思わず、椅子から飛び上がって、安佐子から離れた。

 (やばい!)

 安佐子の目は、本当に怒りに満ちていた。 こうなっては、素直になるしか。

 「ど、どどど、どうしたノ?」

 その目の迫力に、思わず声が裏返った。

 ”ニコ”

 安佐子が笑った。 その微笑みが恐怖を倍増させる。

 「香? 座って、黙って聞いてくれる?」

 「はい」

 



 花side

 「花って、部活の朝練だけ参加するの?」

 仁井奈が竹刀の入った袋を肩にかけ、私に駆け寄って来た。

 「うん。 だって、本当はもう部活やってないんだし。 体重測定が近いからっていうだけだし」

 「ねえ、一年生の指導、大変なんだよー。 助けてよー」

 「部長らしくも、仁井奈らしくもないこと言わないの。 私は今日から、忙しいんだから」

 「??? え! もしかして、花のお母さん、また?」

 「そう。 今度はアメリカなんだって」

 「じゃあね」と、私は、ショックで目を丸くした仁井奈をそのままに、教室を出て行った。

 (まったく、美羽のやつ。 一番乗りに教室を出て帰っちゃうなんて)

 

 変なところですみません。
 面白くなくてすみません。
 書き込みが遅くなって、すみません。
 

 

 

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.132 )
日時: 2015/03/15 15:03
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 「じゃあね」

 私は保健室の戸を開け、姿勢を正して椅子に座っている香を振り返る。 そんな私に、香は深々と頭を下げただけだった。

 (ふふふ。 普段強気な人を懲らしめるのって、たまにはいいものよね? さて、錦さんを送って行きますか……って!)

 私は腕時計に目をやった。

 (あちゃー、香に説教し過ぎたー)

 ただいま、5時30分。 

 (今から追って、間に合うのか? いや、間に合う、間に合わないは別にして、とりあえず、錦さんの家に向かってみよう!)

 私は職員室に駆け込み、カバンと車の鍵を持ち、職員駐車場に急ぎ、車を走らせた。




 花side

 「はあ」

 (いないなー)

 美羽の家へと、学校から歩き始めて20分。 美羽の姿を見ないまま、もう美羽の家の近くまで来てしまった。

 (特に急ぎの用事も聞いていないし、一体何があったの?)

 午後の授業から、美羽は急におかしくなった。 授業中に急に泣き出すし。 机に突っ伏したまま、寝たように動かなくなるし。 足なんてふらついて、壁に、人に、机の角にぶつかるし。

 (あー、思い出すな! 痛々しい)

 私はぶんぶん頭を振った。

 (本当に、どうしちゃったの?)

 私は、錦家のインターホンを押した。 応答がない。 もう、とっくについていてもいいはず。 今日は、水曜日だから、テニス部は休みだし……。

 (家に…いても……)

 私はとてつもなく嫌な予感がした。 でも、まだ望みはある!

 (家にいないとしたら、たぶん……)

 私は、元来た道を駆けだした。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.133 )
日時: 2015/03/19 10:17
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 (アイツに見つかった)

 私はひたすら俯いて歩いていた。 もう、かれこれ30分は、こんな調子でうろうろしている。

 まさか、高校にまで家庭の事情を知られるとは思わなかった。 予想していなかった分、ショックが大きく、午後の授業の内容が全く頭に残っていない。 きっと、花や仁井奈も不思議に思ってるだろうな。

 そんな私の耳に、川の音が聞こえてきた。 私は、はっとして、あたりをキョロキョロと見回した。 

 ここは、私が悩んだ時、いつも立ち寄っていた場所。 一人で来た時もあれば、花と来たこともある。 いろんなことを話し、泣いて、笑ったりと、たくさんの思い出があり「懐かしい」の一言に尽きる。

 (また、着いちゃった)

 私はそんなことを思いながら、斜面となっている草むらに、体育座りで腰かけた。 夕日の光によって、川はオレンジ色に染まっている。

 いつ見ても、この景色は変わらない。 が、だからこそ、捨てたはずの記憶が蘇ってしまう。

 (あーあ、また思い出しちゃった)

 私は膝を抱える腕に力を入れ、下の平らな地面に目を向けた。 はっきりと蘇る、幼い頃の、父、治人との思い出。

 当時、四歳の私は、誕生日に買ってもらった三輪車を、補助輪なしで乗る練習を、治人と一緒にしていた。

 「おーい、美羽。 お父さんのいるここまでおいで—」

 父がニコリと笑い、私に向かって手を振った後、その場にしゃがみ、両手を前に突き出す。

 「は〜い」と私は、ヨロヨロと三輪車のペダルを漕いで行く。 だんだんと治人に近づいて来たため、私は「おとうさーん、出来た」と握っていた三輪車のハンドルを離し、治人の両手に自分のそれを近づけた。 その途端、私はバランスを崩し、この斜面を三輪車と共に転がり落ちてしまった。

 「美羽! 大丈夫か、美羽!」

 そう叫び、私に駆け寄って来た治人は、本当に心配そうな顔をしていたと思う。 

 何とも曖昧な記憶だが、とても楽しかった。 でも、もうそんな父親も、すっかり人が変わってしまった。

 「なんで、今更、私たちの前に」
  
 私は、今の治人に対して、そんな疑問で頭がいっぱいだった。

 (この頭の中を、空っぽにしたい)
 
 私はふとそう思った。 立ち上がり、川のすぐ前まで歩み寄る。 この紺色の制服も、黒い水の中では目立たないかもしれないけど、まだ日が落ちるまで、ちょっと時間がある。

 (誰かが、見つけてくれるまでなら)

 「いい……よ…ネ?」

 私は誰にともなく問うと ”バシャン” と背中から水に倒れ込んだ。

 私はそのまま、目を閉じた。



 安佐子side

 (「いい……よ…ネ?」って、何が?)

 私は車の中で、ふと聞こえた声に思考を巡らせた。

 (誰かの声に似ていたような)

 今、私は、錦さん家に向かう途中だ。 部活に出ていないなら、もうとっくに家についているだろうと考えたのだ。 まあ、今日は忘れて、部活に出ているのか、確認はできなかったんだけど。 

 (って、もしかして、錦さん?!)

 と、私がさっき聞こえた声の主に気づいた時。

 「おっと」 赤信号に引っかかってしまった。 横断歩道の信号が青になる。 と、歩き出す人々の中に、一人だけ駆けだす見慣れた顔があった。

 「古志野さん」 私は車の窓を開け、叫んだ。 それに反応して振り返った古志野さんは「あ」と口を開ける。 車の信号が青になり、私はすぐ古志野さんの近くに車を付けた。

 

 
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.134 )
日時: 2015/03/23 21:28
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 花side

 「どうしたの? 古志野さんの家って、逆方向じゃない?」

 三神先生は、車の窓を開け、私に不思議そうに言った。 「あの……」と、話を切り出そうとしたものの、この何とも言えない嫌な予感を、どう説明していいものか分からなかった。

 ずっと口を閉ざしている私に「とりあえず、乗って」と、三神先生は助手席をポンポン叩いた。 「はい」と、私は素直に乗り込んだ。 タイミングよく、青信号になり、車は真っ直ぐ走り出した。

 (どうしよう。 乗せてもらったはいいけど、このままだと)

 「確か、古志野さんの家って、この道を右に行くのよね?」と、私の思ったように、三神先生は私を家まで送ろうとしている。

 「待ってください!」と、私は慌てて真っ直ぐを指差した。 そんな私を見て「な、何? 前がどうかしたの?」と、三神先生はオロオロし出した。

 「このまま、真っ直ぐ行ってください」

 私は言葉が震えないように、一言一言、はっきりと発音した。 三神先生はまだ、どういうことか分からないと言うふうに、首を傾げているが、やがて「分かった」とウィンカーを消して、真っ直ぐに車を走らせた。



 安佐子side

 (この古志野さんの様子……明らかに動揺しているわね)

 運転中なので、古志野さんの顔を見ることはできないけど、赤信号で止まるたびに「まだ、真っ直ぐ行ってください」 「ここを左に」 「真っ直ぐ」とまるで一刻を争うように指示を出す様子から、焦っているのが分かる。

 また、赤信号になった。 私には、ここがどこなのかわからなかったが「ここを右にお願いします」と、古志野さんが案内を続けてくれる。

 (どこまで続くか分からないけど、古志野さんを信じて進もう)

 私は右にウィンカーを出し、青信号になると右に曲がった。 その途端「ここでいいです。 止めてください」と、車を止めたと同時に、どこかに走って行った。 って、走って行ったで終わらせちゃダメだろ、自分!

 私は、古志野さんの姿が見えなくなった頃、こっそりと後を追った。

 



 美羽side

 (寒いなー)

 もう、何分、水に浮かんでいるのだろう。 さすがに、体が冷たくなっているように感じる。 手や足の感覚も、ほとんどなくなってきた。
 
 (死ぬって、こんな感じなのかな?)

 そんなことを思っていた時、どこかから叫び声が聞こえた。 「ミ…、…キ…よ!」と、意識がはっきりしないせいか、はっきりと聞き取れない。

 でも、ふと、花の気配を感じた。

 「は…な」

 私は一瞬だけ、目を開けた。 でも、薄暗い空が広がっていた。 

 「私……死んだのかな?」

 そう言った途端、体の力が抜けていくように感じた。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.135 )
日時: 2015/03/24 11:31
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 私は、まだ必死に古志野さんを追いかけていた。 もう、すっかり古志野さんの姿は見えない。

 空もこの数分でだいぶ薄暗くなり、夜が近づいているのだと感じる。 錦さんも見つかっていないのに、暗くなったから二人を探そうと思うと、そう簡単に見つけられないだろう。 そうなっては、警察の手も借りないといけないようになってしまう。

 私は息苦しさに耐え切れず、立ち止まり、膝に手をついて、荒い呼吸を繰り返した。 辺りを見渡すと、川が流れていて、ずっと目の前には橋が見える。

 (どこまで行ったのかしら)

 私は、流れる川に目を向けた。 初めて来る場所だった。 ここが地元とはいえ、まだまだ知らないことがたくさんある。

 「こんなところがあったのね」

 私がそんなことをつぶやいた時だった。 急に「誰か、手伝ってください!」と女の子の叫び声が聞こえてきた。
 
 その声に、私は聞き覚えがあった。 それに、近くにいる。 私は、声の聞こえた辺りに駆け寄った。 

 「古志野さん!」と、呼びかけると同時に、見つかって良かったと安堵した。

 「どうしたの? そんな下まで降りて、何か危険な物でm……!!!」

 私は、古志野さんの隣で横たわっている女の子を見て、目を見開いた。 驚きで口が震え「そ、そそそ、その子は」と言うのがやっとだった。

 「救急車、呼んで下さい!」

 そんな私に、古志野さんはそう力いっぱいに叫んだ。 その声を聞いて「何だ、何だ!」 「どうかしたのかい?」と野次馬たちが、一斉に下を覗き込みだした。

 私は、はっとして「大丈夫です。 今、救急車を呼びますので」と、遠回しにここから去るように促す。

 「そうかい?」 「なら……」と、野次馬たちが散り出したと同時に、携帯を取り出し「すみません! 今、橋の近くの川の前にいるんですけど……」と、大ざっぱに説明をした。

 

 


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