複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.246 )
日時: 2015/10/02 20:40
名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)

 ミニ香side

 (はー、やっと見慣れた風景が見えてきた)

 私はふーと一息ついた。

 そんな時、どこからか「ニャー」と猫の声が聞こえた。
 
 耳が動くのを感じ、早足で道を引き返した。 

 私が唯一、安佐子に以外に思われたこと…それは、猫が好きなことだ。

 ここからだ。 私は家と家の間の、狭い道を進んだ。

 (いた!)

 私はすり寄って来た一匹の前にしゃがみ込んだ。 

 「こんなところがあったんだ」と、完全に独り言のつもりで言った。

 が、人の気配を感じ、顔を上げた。

 見慣れた顔ではなかったが、そこには伯流高校の制服を着た女子生徒がいた。

 


 愛結side

 私は、家と逆方向の道を行き、二つの家の間にある狭い道に入った。
私が着くなり、あちこちから猫の鳴き声が聞こえてきた。

 ざっと、11匹。 猫好きにはたまらない穴場のようなもの。

 私は猫たちに近づき、しゃがみ込んだ。 カバンから袋を取り出し、中からエサの袋を出す。 

 一斉に猫たちが私の膝に上ろうとする。

 私は微笑みながら、猫たちの頭をなでる。 

 道の上に、エサを散らしていく。 猫たちはむしゃむしゃ、自分の近くに落ちたエサを食べ始めた。

 「水はなかなか用意できないけど…ごめんね」

 そんな独り言を口にした時、一匹の猫が一点を見つめたまま動かなくなった。

 私は自然と身構えた。

 (誰か来る?)

 と、猫が動き出した。 私も立ち上がり、静かに後を追う。

 「こんなところがあったんだ」

 そう声が聞こえた。 女の人の声だった。

 と、こちらに気付いたのか、女の人が顔を上げた。
 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.247 )
日時: 2015/10/04 20:29
名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)

 ミニ香side

 「いい場所だね」

 二つの家の明かりが、この道を照らしている。 そして、女子生徒の顔も。

 女子生徒は、コクッとうなずいた。

 「でも」と私は女子生徒に近づき、隣にしゃがみ込んだ。「お母さんとか、心配してr/」

 「るんじゃない?」と言いかけた時「遅いんです」と小さい声が聞こえた。

 「今日、遅いんです、お母さん」

 女子生徒はそう繰り返した。

 「いつも?」

 「時々。 今日は遅い日なんです」

 「そうなの」

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.248 )
日時: 2015/10/05 17:27
名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)

 香side

 「じゃあ、今日みたいな日に、ここに来て猫たちにエサをあげてるんだ」

 私が言うと、女子生徒はまたコクッとうなずいた。

 「偉いね」

 その言葉に対して、女子生徒は首を振った。

 て、さっきから女子生徒、女子生徒って。

 「その制服、伯流高校のでしょ?」

 「……はい」

 (あ、警戒された?)

 「私、その学校に新任の養護教諭として来たんだ」

 女子生徒の顔がバッと私に向けられた。

 「じゃあ、先生なんですか?」

 「そう」




 愛結side

 私は、始業式を休んでいた。 三日前から風邪を引いていたからだった。

 その翌日風邪が治ったので学校に行くと、若葉通信という便りが終礼で配られた。

 その時、確か新任の先生を紹介していた気がする。

 そう言えば、今日お昼ご飯を一緒に食べた先生は初めて見る顔だった。

 (でも、確かもう一人いたような)

 「そういえば」

 先生が口を開いた。

 「始業式を休んだ子が、一人いたような」

 私はギクッと身震いした。

 その反応を見て「え」と先生が声をあげる。

 「あなたが、そうなの?」

 私はうなずいた。

 「じゃあ、誤解されないうちに」

 先生は私に顔を向けた。 私も先生を見上げる。

 「横田 香です。 よろしくね」

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.249 )
日時: 2015/10/08 12:18
名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)

 愛結side

 「誤解とは?」

 「あなた、私の事知らないでしょ? 知らない人が、なんで伯流高校の制服を知ってるんだろうって思わなかった?」

 「思いました」

 「でしょ? まぁ、これで私のことはわかったということにして」

 横田先生は、そう言葉を区切り、私を見つめてきた。

 「あなたの名前、聞いてもいい?」

 (あ、そっか)

 「杉木…愛結です」

 「杉木さん…って、もしかして一年生でテニス部の杉木さん?」

 「はい。 そうですが」

 (テニス部なのも知ってるんだ)

 「錦さんから聞いてるの。 杉木っていう一年生が、すごくテニスが上手だって。 本当にびっくりしてた」

 (え!)

 テニスが上手い?! いや、いやいやいや、そんなこと無い。

 私は無意識に、胸の前で右手を左右に振る。

 「そんな否定しなくても」

 横田先生が苦笑いを浮かべた。

 「上手じゃないんです、ほんと」

 「……まぁ、人の見方によって違うか」

 横田先生は立ち上がった。 「だいぶ暗くなった」と空を見上げる。

 確かに、と思い私も立ち上がった。

 「じゃあね、また学校で会ったら宜しく」と横田先生は歩いて行ってしまった。

 私はその後ろ姿にお辞儀を返した。 カバンから携帯を取り出し時間を確認する。

 いい時間になった。 私は不思議な気持ちで、いつもの帰り道を歩き始めた。
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.250 )
日時: 2015/10/09 14:10
名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)

 一也side

 「ごちそうさま」

 僕は空になった食器を重ね、隣にある台所の流しに運んだ。

 そのまま、二階の自分の部屋に行く。 母が「おいしかった?」と晩御飯について感想を求めて来たけど、早々にうなずいて部屋に入った。

 途端に、携帯が鳴った。 電話を知らせる着信音がする。 手に取り、発信者を確認する。

 稲田 正基。 小・中と同じ学校出身。 高校だけバラバラになった。

 「もしもし」

 「おお、出た。 久しぶりだから、携帯代わってたり、登録されてないかもって冷や冷やしたよ」

 「そんなちょくちょく代えないよ。 番号は、正基以外にもまだ入ってるよ。 それより、何?」

 「ああ。 特に大したことないけど……」

 話の切り出し方で、僕は何となく悟った。

 「一也って、なんで伯流高校に行ったんだろうって」

 (やっぱり)

 「別に理由なんt/」

 「杉木さんの事だろ」

 「……突然何?」

 「皆言ってるよ。 なんでお前があの子のために必死になるんだ、って。 今更、あのことについては何もできないって」

 (僕は別に)

 「必死になんかなってない。 ただ、彼女が何かしようとしているなら……」

 「自分で止めようと思ってるんだろ? 先輩たちに復讐するのを」

 僕は通話を切った。 素早く、携帯の電源を切る。

 図星だった。 

 

 初、三橋 一也目線で書かせていただきました。


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