複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.126 )
- 日時: 2015/02/28 20:52
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
美羽side
「行って来まーす」
私は玄関から、台所にいる母に向かって明るく元気な声を上げた。 「はーい」とのんびりとした声が返ってきた。
昨日はよく眠れたらしく、 今朝起きたら、髪に寝癖がついていた。
(作戦がうまくいって良かった。 花には、ちゃんと話してあげよう)
なんで今まで、対策を考えてこなかったのか。 昨日、寝る前に考えていたんだ。 まぁ、アイツの突然の登場に怯え、驚き、冷静に判断ができなかったんだ。 母を守るのに、必死だった。
って、のんびり歩いてる時間なかった。 確か、家出たの、始業のチャイムが鳴るギリギリだったような?
そう、私は…良く寝られたのはいいものの!
「寝坊した——−!!!」
私は叫びながら猛ダッシュした。
キーンコーンカーンコーン
やっと学校が見えて来たとき、私の願いはむなしく、チャイムが鳴った。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.127 )
- 日時: 2015/03/01 14:23
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
美羽side
「今日、休みかと思った!」
私が学校に着くになり、花と仁井奈が口をそろえて言い、近づいてきた。 私は思わず、椅子に座ったまま体を仰け反らせる。
一時間目が始まるギリギリまで、花にあれからどうなったのかを、自分なりに丁寧に説明した。
「おー、何とか捲(ま)いたんだ。 美羽って、時々頭がきれるよね?」
仁井奈の言葉にうなずく花。 「どういう意味?」と私は軽く二人を睨む。
「友達が無事に危機を脱したんだよ? そして、これまでのような明るさを取り戻した。 喜んでよね? 全く」
「これまでのような明るさって…やっぱり、大人しくないって自分で分かってたんだ」
花が、私を指差し笑い出した。
二人に向けていた怒りの視線を、花に集中させる。
「まぁ、確かに、いつもの美羽に戻って良かった」
仁井奈が「ほ」っと一息ついた。
「でしょ、でしょ? さすが、仁井奈! どっかの誰かさんと違って、いいこと言うね〜」
私はやれやれと言った感じで、花を見る。
「ええ、ええ、どうせ私は気の利かない幼馴染ですよーだ」
花はそう言って、自分の席に戻って行った。
「あーあ、怒らせた」
確かに、言い過ぎたかもしれないけど……。
「いいの。 どうせ心の中では、仁井奈みたいに、私のことが無事で良かったって思ってくれてるだろうし」
「ほーん、それはどういう根拠で?」
そう顔を近づけてきた仁井奈に「幼馴染として、優しい子だって知ってるから」と笑ってみせた。
仁井奈がなぜかポカンとしていたが「おーい、席着け—」と先生が入って来たので、ささっと自分の席に戻って行った。
なんか、最近、本当に
友情っていいなって思うんです! by 奈々化
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.128 )
- 日時: 2015/03/07 10:58
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
花side
(本当にあの子は! これまでの付き合いで、私の性格くらい察しないか!)
私だって「元の美羽に戻って良かった」って、ちゃんと思ってるのに。
でも、またいつ、治人が現れるか分からないし、やっぱりまだ危機感を多少は持っていないとって思うから……
安佐子side
「あー、良かった」
職員室に戻った私は、席に着き、そう安堵の声を漏らした。
「そのニヤけ顔、気持ち悪い」
香がコーヒーカップを手に、席に戻ってきた。
「朝からそんなこと言わないでよ。 いい気分が台無し」
「そりゃ、ごめんね」
そう言って謝られても、口調から真剣さが伝わって来ない。
「で、何がそんなに嬉しいんだ?」
その言葉で、私の目は輝きを取り戻した。
(さすが、香様! よくぞ聞いてくださいました!)
私の顔は、また自然とニヤけていた。
「聞きたい?」
「それ以上もったいぶるなら、このコーヒーを頭からぶっかける」
「ゴメンナサイ、ハナスカラ、ユルシテクダサイ」
怯えすぎて、片言になってしまった。
「で、何?」
「うん……あのね。 さっき、朝礼が終わった時、錦さんが駆け寄ってきて「昨日は、ありがとうございました」って、言ってくれたの」
「ふーん」
「本当にありがとね」
「は?」
「だって、香のおかげで、錦さんと仲良くできてると思うから」
「……勝手に思ってれば」
そう言って、香はパソコンに向き直った。
「はーい」
(素直じゃないな)
そう思いながら、私も作業に取り掛かった。
香side
(私のおかげでなんて、それは違う)
安佐子には、私にはない、力があるんだ。 それに本人が気づいていないだけ。
本当に「ありがとう」って言わないといけないのは、私の方だ。
だけど、自分のプライドを守るために、素直になれなくて……。
今は心の中で「ごめん」としか言えないんだ。
届かなのにね。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.129 )
- 日時: 2015/03/08 10:25
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
安佐子side
「あの、三神先生?」
ふと誰かから声をかけられた。 振り返ると、寺島先生がいた。
「はい、何か御用ですか?」
「いや、その、錦 美羽って知ってますか?」
「知ってるも何も、私のクラスにいますけど」
「大変、みたいですね。 錦の家」
「?」 なんか、もじもじしてる。
「ええ、そうみたいです」
「彼女の父親って、見たことありますか?」
「いえ。 母親にも、まだ会ったことありません。 というか、彼女の両親、離婚しているので」
私がそう言うと「え!」と、寺島先生はものすごく驚いた顔をした。
「離婚、してたんですか。 なるほど。 ならこの文章にも納得がいきます。 あ、すみません、ありがとうございました」
「あ、いえ」
寺島先生は、一枚の紙を持って、職員室を出て行った。
(あの紙、何だろう……)
寺島side
コンコン
私は、校長室の扉を叩いた。 すぐに「どうぞ」と返事が返ってきた。
「失礼します」
「どうしたんだね、その顔?」
「こちらを見てください」
「何だね、これは?」
私は池林校長に「先ほど、電話で言った物がこれです」と、一枚の紙を手渡した。
「えー、何々…
”錦 美羽へ
お前も、もう高校三年生か〜。 大きくなったな〜。
ずっと、成長が見られなかったが、父さんはいつだって、お前を忘れたことはない”
長いので、以下を略して聞きますが、錦 治人って、錦 美羽の父親なんですか?」
「はい、らしいです。 さっき、担任の三神先生に確認しました。 ずっと前に、両親は離婚していて」
「なるほど。 どっちにしろ、錦 美羽と話してみないとわかりませんね」
「この紙、きっと、ここから近所の高校にもいくつか届いてますよ? 校長はまず、詫びを入れたほうが」
「ああ、そうしよう。 もうちょっとで、四時間目が終わりますね?
寺島先生は、錦を放送で呼び出してもらえますか? できれば、担任も」
「はい、了解しました! 失礼しました!」
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.130 )
- 日時: 2015/03/10 15:55
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
美羽side
「一体、何事ですか、校長先生?」
隣に座る三神先生が、校長に問いただす。 私も、心の中で聞いていた。 「まぁ、落ち着いてください」と、三神先生をなだめる校長。 担任を呼んでまで、何の話なのだろう。 私は膝の上に乗せた手を、ギュッと固くした。
三神先生が落ちるいた頃「実はだね」と、校長は切り出した。
「四時間目の最中に、寺島先生が、事務室からこのような紙を渡されたそうだ」
校長は「どこにやったか」と、机の上を探し出した。 「あった」と言って、深刻な顔で、私たちの向かいに腰かける。 と、一枚の紙を私に差し出した。
「え、私が先に見ていいんですか?」
私は、三神先生の、紙を受け取ろうと差し出していたであろう手を、申し訳なさそうに見る。
「きっと、三神先生が見てもわかりはせん」
それを聞いた三神先生は「こ、校長先生」と、ガクッと首を垂れ、うなだれてしまった。
(まぁ、じゃあ、私が見るしかないのか)
私は紙に目を向けた。 真っ白な紙に浮かぶ文字。 とりあえず、途切れ途切れに読んでみよう。
(錦 美羽へって、なんで私の名前知ってるの? お前も、もう高校三年生か〜って、年まで知ってる! しかも、お前って! もう! 差出人は誰なn……!!!)
「あ、あの!」
私は椅子から立ち上り、目を見開いて校長を見た。 「どうしたの!」と校長の代わりに、隣に座る三神先生が声を上げた。
「あの人が……治人がここまで来て、この紙を事務室に?!」
安佐子side
(ハルヒト?)
どこかで聞いたことがある名前だ。 確か、香と話していたときに、そんな名前をチラッと聞いたような。
”彼女の両親は、離婚しているらしい。 その別れた父親、錦 治人が最近、錦さん家に押しかけては、家の中で暴れるらしい”
ふと、香とのやり取りを思い出した。 そうだ。 治人って、錦さんのお父さんだった人だ。
「詳しくは知らないが、寺島先生に「気味が悪い」と事務の人が押し付けたそうだ。 君のお父さんを見たことはないが、相当な人だね。 ここの近所の高校にも、同じ紙が届いていて、一つ一つの学校と話をつけるのに苦労した。 君がどの高校に通っているのかわからないが、とりあえず、家から近い高校にこの紙をと思ったんだろうな」
と、校長は顎をさすった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82