複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.356 )
- 日時: 2016/11/23 08:34
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
香side
時は流れて、掃除の時間になりました。
「三年一組でーす。 失礼しまーす」と掃除にやって来た生徒の中に、一目見て、ひどく落ち込んでいる様子の女子がいた。
頭の中で考えを巡らせ・・・思い出した! 確か、本居さんといつも一緒にいる子だ。
私は机の上を整理しながら、チラチラとその子に目を向け様子を伺った。 本居さんがいないことが、よっぽど応えているのだろう。 目から生気が感じられない。
思わず「大丈夫?」と声をかけそうになったとき「よし、終わり! 失礼しました」と一人の女子の声に続いて、皆出口に向かって歩き出した。
「あ、えっと・・・お疲れ様」と伸ばしていた手を引っ込めて、皆が出るのを見送った。
放課後まで、あと少し。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.357 )
- 日時: 2016/11/25 16:53
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
菜月side
「そこをなんとか・・・お願いします!」
私は聞き覚えのある声に目を覚ました。 どこからか聞こえてくるその声に耳を澄ませながら、キョロキョロ辺りを見回す。
「・・・病院?」
昨日来た病院なのか。 壁の色が同じだった。 ただここは、個室の病室らしかった。
何を確かめるでもなく、手を開いたり閉じたりしていた時、三神先生が病室に入って来た。
「三神先生」 (そっか。 さっきの声、先生だったんだ)
「本居さん。 本居さんの体調が良ければ、ちょっとついて来てほしいんだけど、いいかしら?」
「はぁ・・・?」
後を追って来た看護師さんが呆れ顔で入って来たけど「一時間ほど、時間が欲しいんです。 外出の許可を下さい、お願いします!」と頭を下げた三神先生に「先生と相談してきます」と病室を出て行った。
「本居さん」 三神先生が、また私に向き直る。
「はい」
「お母さん、今日も忙しいかな?」
「いえ。 今日は普通に事務所で仕事しているみたいです」
「そう。 お母さんの勤め先の電話番号とか分かったりする?」
「はい・・・。 えっと、それがどうかしたんですか?」
「えっと、ただ学校に来てくれるように言ってほしんだけど・・・」
「学校に?」と私が聞き返した時「あの」と三神先生は看護師さんに廊下に呼ばれ、病室を出て行った。
しばらくして「ありがとうございます」と言う三神先生の声が聞こえ、病室に戻って来た。
「じゃあ、行こう。 その恰好のままで良いそうだから」とベッドから出るよう促される。 あまり物事の整理がつかないまま、三神先生に支えてもらいながら、病院を出て駐車場に向かった。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.358 )
- 日時: 2016/11/26 15:59
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
—3−
香side
職員室での終礼を終えて、一人三階に足を運んだ。 教室の中にまだ生徒がいたが、見慣れた顔が三人。
「あ、横田先生」と古志野さんが先に気付いて、こちらに駆け寄って来て「こんにちは」と軽く頭を下げる。
その隣に錦さんが来て「先生!」と私を真っ直ぐに見て「菜月、今日も休みだったんですよ。 何か知りませんか?」
「完全に心配はいらないとは言えないけど、大丈夫。 ちょうど、本居さんのことをなんとかしようと、安佐子と動いてるところなの。 で、ここ。 一組を、話しの場として使わせてほしいんだけど・・・ダメ?」
「いえ」と椅子から小林さんが立ち上がって、古志野さんの肩に手を乗せて「私達、これから部活行こうと思っていたところだったんです」と笑った。 古志野さんは、急に決められたみたいな反応だったけど「そ、そうなんですよ〜!」と小林さんと顔を合わせた。
「美羽は?」 小林さんは席に戻って、カバンを整理しながら錦さんを見る。
「じゃあ、家で勉強するかな」と、席に戻ってカバンを肩にかけた。 古志野さん達、二人が歩き出した時、ちょっと遅れて出て来た錦さんが私に近づき「あの」とまた真っ直ぐに私を見る。
「菜月のこと・・・お願いします」と頭を下げる。 すぐに体を起こして歩き出そうとした錦さん。 でも、気が付いたら私は「待って!」と彼女を呼び止めていた。
少し驚いた表情で振り返った錦さんに近づき「もし時間があるなら、お願いしたいことがあるの」
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.359 )
- 日時: 2016/11/27 10:58
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
菜月side
「ちょっと待ってて」
学校に着くと、三神先生は職員室に入って行った。 廊下で待っていた私に「お待たせ。じゃあ、行きましょう」と学棟に向かって廊下を進む。
学校に向かう途中、母の携帯に電話をかけた。 出ないだろうと思っていたけど「はい」とすぐに返事があった。
「香ー」と、一組の教室のドアを開けた三神先生に続いて私も教室に入る。
「遅い」と白衣姿の横田先生が、椅子から立ち上がって一言文句を言うと「だから、あんたが速いんだって!」と三神先生は、口調を変えて言い返した。
ふと、教室の雰囲気が違うのに気付いて、私は教室全体を見回す。 机が四つほど塊で置かれていて、そのほかの机が全部後ろに下げてあった。
(なんか、面談みたい)
私がそう心の中で思っていると「何? この机の形とか、他の机が思い切り後ろにある感じ」と三神先生が驚きの声を上げる。
「これ、香がしたの?」
そう聞く三神先生に「私以外、誰がいるっていうの?」と椅子に座り直した。
「何となく、こういうのは雰囲気が大事だと思ったから」
「そういうもの? まぁ、片付けてくれるならいいけど・・・」
そう言いながら、三神先生は横田先生の隣の席に行き、椅子に座った。 「本居さんも」と横田先生に促され、三神先生の正面の席に着いた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.360 )
- 日時: 2016/11/27 11:33
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
香side
「今朝のことについて、聞いてもいい?」
私は沈黙を破り、本居さんに目を向ける。 病院は駆けつけた警官から、パジャマのまま路上に倒れていて、頭から出血していたという報告を受けただけだった。 まぁ、本人に意識が無かったのだから、聞きたいことも聞けなかったんだろう。
「いつから、外に出ていたの?」
「深夜です。 どうしても寝付けなかったので、気分転換に散歩にでもと思って」
「そう」
「私も!」と安佐子がバッと手を上げた。 「昨日は家に帰ってからどうだった?」
「長瀬君が宿題を届けに来てくれて。 その・・・宿題を今かやるように母に言われて、解いていました」
「な!」と怒りのこもった一言を発して、椅子から立ち上った安佐子を「落ち着け」となだめて、椅子に座るよう促した。
「原因はそれだね。 分かった。 話してくれて、ありがとう」
「いえ」
そう答えると、本居さんはちょっと顔を歪めて、頭に手をやった。
「ちゃんと許可取ったのか?」と安佐子を見ると「当たり前じゃない!」とムキになって言った。
「痛む?」と顔を覗き込んで聞く安佐子に「いえ・・・大丈夫です」と歪めた顔はそのままだったが、本居さんはちょっと顔を上げてみせた。
その時「失礼致します」と教室の戸を開けて、本居さんのお母様が入って来た。
「お待ちしてました」と立ち上がった私に続いて、安佐子も椅子をガタガタさせながら、慌てて立ち上がった。
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