複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.396 )
- 日時: 2017/05/16 15:04
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
香side
「あ、ずびまぜ〜ん」とリビングに戻って来た白根先生は「おじゃを〜」と言って、また台所の方に消えて行った。
私達は、何て言ったのか分からなかったので、お互いに首を傾げていた。 するとそこに、お盆を持った白根先生が戻って来て「あら、お茶なんて〜。 お構いなく」と安佐子が立ち上がり、お盆をテーブルの上に乗せた。
「どうろ〜、たっでないで、こずらにずわっでぐらざい」と白根先生はテーブルの椅子を一つ引いて見せた。 私と寺島先生は「はい」とそれぞれ椅子に座った。 湯呑みを並べ終えた二人も椅子に座る。
白根先生が「ずずびー」と鼻をすすった。 安佐子が咄嗟に手元にあった箱ティッシュを掴み「良ければ、どうぞ」と差し出す。 「あ、ありがどーございまず」と、白根先生はティッシュを二、三枚引き抜き、私達に背を向け鼻をかんだ。
「ふーと」とすっきりとした様子で息を吐き「ずみません」と、再び椅子に座った。
「大丈夫ですか?」と私が聞くと「ばい、なんどか。 まいとじのことなのれ」と白根先生は笑った。
「でらしませんぜいが、ほがにひどをづれでくるなんで、なぬかりうーがあるんでずよれ?」
「そうなんですけど・・・。 私達は別に後日でも」と安佐子が、私の肘を小突き「ね?」と言うと「えいえ、だいじょうぶですがら」と白根先生は顔の前で手を振る。
「どうされたんでずか?」
「・・・実は、先生の担任する三年三組の、清間 翔君について聞きたいことがあって」
「あー・・・、やっぱりそうでしだが」と白根先生は納得と言うように頷き、苦笑した。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.397 )
- 日時: 2017/05/26 15:38
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
「まだ、がっごうにぐるようずはありまぜんか?」 (まだ、学校に来る様子はありませんか?)と、白根先生は私たちを見回す。
私達は首を横に振る。
「はい・・・全然」と言う寺島先生に「そうれすか・・・」と白根先生はテーブルに視線を落とした。
「あの〜」と私は口を開いた。
「白根先生は、清間君が不登校になった理由をご存じないのですか?」
「うーん・・・。 にねんえいのざんがっぎに、ずがくんどげんがじたどうわざはぎぎまいたえど・・・。 ろれいがいは、まっだぐおもいあだりまぜんえ」
(二年生の三学期に、菅君と喧嘩したと噂は聞きましたけど・・・。 それ以外は、まったく思い当たりませんね)
「菅君と喧嘩? それって、部活のことでしょうか?」
「ろうだとおもうんでずげど・・・。 ぼうがご、がでーぼうおんにいっでも、ないもおうどうがなぐで」
(そうだと思うんですけど・・・。 放課後、家庭訪問に行っても、何も応答が無くて)
「心配ですね・・・。 家にはいるんでしょうか? どこかに出かけっぱなしなんてことは?」
「いえにはいるどおもいまず。 いえのなが、がれのえやのようらどごにあがいがづいでるので」
(家の中、彼の部屋のようなとこに明かりがついているので)
「両親は?」と香が聞く。 白根先生は首を振って「であうごとはありまぜんえ」(出会うことはありませんね)とため息を吐いた。
時計が七時を指そうとしている。 「今日はこの辺で」と言う寺島先生に続いて、私と香も立ち上がった。
私と寺島先生が止めるのも聞かず、白根先生は玄関まで見送ってくれた。 「風邪が直ったら、私も清間君と話します」と(言っていたような気がする)白根先生の目が一瞬だけキリッとして見えた。
「清間のとこ、確か父親しかいないんですよ。 サッカー部顧問の先生が言ってました。 でも、その父親も、試合の応援にすっかり顔を出さなくなってしまったらしいです。 親子関係が上手くいってないんですかね?」と寺島先生は言った。
「そうなんですか」と私は香の分も、真剣に話を聞く。
「よし! 私、明日菅君に話を聞いてみます。 喧嘩の内容も気になりますし」
「そうですね。そっちも何とかしないと」と、寺島先生は小さく頷いた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.398 )
- 日時: 2017/05/27 17:42
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
「ごめんね、急に」と、私は目の前に座る菅君に言った。 朝一で話すことも考えたが、結局昼休憩になってしまった。
「いえ」と菅君は短く言って「話って、何ですか?」と椅子に少し深く座り直した。
「昨日、かお/・・・横田先生と清間君について話したんですってね?」
すると、菅君は目を見開き「な、なんで、三神先生がそのこと知ってるんですか?」と驚いた。
「横田先生から聞いたの。 私も、心配してたのよ。 三組にいつ授業に行っても空席があること。 私以外の先生も気にしてる。 もちろん、担任の白根先生が一番ね」
「そうだったんですか」と菅君はちょっと目を細めた。 でも、今度は視線を床に落とした。 「あの、もしかして怒ってます?」
「え、どうして?」
「・・・先に横田先生に相談に行ったこと」
「まさか〜! そんなこと、全然! (ちょっとは思ったけど) 気にしないで?」
「じゃあ、話って?」
「昨日、横田先生と寺島先生、私の三人で白根先生の家に行って来たの。 夏風邪でしんどそうだったけど、ちょっと話せて・・・。 ちょっと気になることがあったから、菅君に聞いてみようと」
私は菅君と目を合わせた。 「二年生の三学期の時、喧嘩したんだって? 清間君と」
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.399 )
- 日時: 2017/06/02 21:46
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
菅君はしばらく黙っていた。 そして「アイツが」と低い声で切り出した。
「突然、部活辞めるって言いだして・・・」
私は無言で頷いた。 そんなことだろう、と予想はしていた。
「その理由を聞いて、カチンと来ちゃったの?」
「・・・何も教えてくれなかった」
「何も?」
菅君はうんと頷き「何も」と繰り返した。
「何度聞いても「別に」とか曖昧な返事されて・・・。 あの日、「圭には関係ない!」って言われたから、頭に来て。 「じゃ、いいよ。 好きにしろよ」って、勢いで言っちゃったんです」
「そうだったの」
「でも、すぐに「あんなこと言わなきゃよかった」って思いました。 だからあの日の夜、メールで謝ったんです。 でも、今も返信はありません」
「そうなの。 それは、心配ね。 他の部員の反応はどう?」
「二年は気にしてるやつもいます。 でも、一年の中では完全に幽霊部員化してきてます」
「幽霊・・・部員化」 それは深刻な!
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.400 )
- 日時: 2017/07/13 14:48
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
「なんだって」
私は、菅君と話した直後、保健室に向かった。 香は今から遅めの昼ご飯を食べようとしていた。
「なんだって、じゃない。 深刻ってだけじゃ、何も伝わらん」
「あー、そっか。 ごめん、いろいろ飛ばし過ぎた。 喧嘩の理由は、清間君が突然、部活を辞めるって言ったから。 その理由を聞いても、何も教えてくれなかったから頭にきちゃったんですって」
「ほー」
「ねぇ、これからどうする?」
「どうするって・・・。 まぁ、たぶんだけど、部活を辞めるっていうのは、清間君自身の決断じゃないと思う」
「どういうこと?」
「自分で決断したなら、何かしら理由を話せると思うんだ。 そうじゃないとなると、どう説明していいか分からない。 きっと、父親に何か言われたんだ。 昨日の寺島先生の言っていたことも気になるし」
「親子関係が上手くいってないっていう?」
香は頷き「サッカー部の顧問の先生に話を聞いてみた」と箸を置いた。
「冬に体操服の長袖を着るのはわかる。 でも、夏はそれを着てると目立ちますし、見てるこっちがもっと熱くなる。 『せめて腕まくりしろ』って言ったんですけど、軽く返事するだけで、二年の頃、半袖になることはなかったですね」
「だそうだ」
「確かに夏に長袖って・・・。 エアコンの効きすぎてる部屋とかで着るのには納得だけど」
「きっと訳があるんだ。 腕に痣(あざ)があるとか・・・人に見られたくない傷がな」
「そ、それって」 私は思わず立ち上がった。 私の思っていることが本当だったら・・・。 自然と握った手に力がこもった。
「ひどい」
香も「確かに、それが本当だったら・・・」と顔を伏せた。
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