複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.311 )
日時: 2016/07/30 14:49
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 香side

 この前、錦さんが古志野さんと小林さんを連れて、保健室にお昼を食べに来た時「愛結がよく笑うようになった」と教えてくれた。

 最近は同じテニス部の一年生とも、名前で呼び合ったりしているそうで…

 (良かった) そう素直に思えた。

 どうしてか分からないけど…。 たぶん今までで一番私に……昔の私に似ていると思えるからかもしれないな。

 そう言えば・・・

 「あれから三橋君とはどう? 彼、あなたに話したいことがあるって、テニス部の練習が終わるまで待つみたいなこと言ってたけど」

 私がそう言うと、杉木さんはすごく驚いて「え!? 三橋君、先生に告白のこと話してたんですか?」と声を上げた。

 その瞬間、杉木さんの近くにいた猫たちがビクッと跳ねた。 そして「しまった!」と手で口を塞ぎ、アスファルトに視線を落とす。

 「いや。 告白するとか、具体的に言ってなかったけど。 そうか、やっぱり告白されたんだね〜。 私に話してた時から、なんか顔赤くしてたから、そんな気してたわ」

 まだ下を向いている杉木さんに「で、どう返事したの?」と聞いた。

 杉木さんはちょっと顔を上げて、何かモゴモゴと言った。 「ん?」と私が聞き返すと「も、もう帰ります!」と駆けて行ってしまった。
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.312 )
日時: 2016/12/21 16:48
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 菜月side

 「ただいま」

 「・・・・・・」

 (あ、そっか。 お母さん、今日から出張だった)

 今日の朝もそう言われたのに、家に帰ってから気づくなんて…。

 そう落ち込んだ気分で、リビングのテーブルの椅子に座り、深いため息とともに顔を伏せた。

 が、テーブルの上に便箋を見つけ、すぐに顔を起こし中身を開いてみた。

 手紙はきれいな字で「菜月へ」から始まっていた。

 
 『お母さんは前から言っていたように、明日まで千葉にお仕事に行って来ます。  またお母さんが行くまでに帰って来なかったわね…。
 今年がどういう年か、あなたが一番よく分かっていると思うから何も言わないけど。  学校で遅くまで何してるの?  今年は委員長でも副委員長でもないんでしょ? 何もしていないなら、早く家に帰って勉強なさい。』

 二回読んだ。 

 最近母から手紙なんてもらったことなかったから、どこか嬉しい気持ちで読んだのに…。

 ”今年がどういう年か”  答えは受験

 うん、分かってるよ、お母さん。 私の目に涙がにじんだ。

 昨日も勉強したよ? 一昨日も、その前の日も、お母さんより遅く寝た。

 でも、今日はもう…。 だから、帰ってきたら昨日まで勉強したことは褒めてね?

 私はスクールカバンを抱え、ベッドに仰向けになった。

 (いつからだろう。 母の私に対する期待が重く感じるようになったのは…)

 早々に答えを出せないまま、いっそこのまま寝てしまいたい気持ちになった。 が、何も食べないにしても、歯磨きくらいしようと思い直し、パジャマに着替え一階に下りた。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.313 )
日時: 2016/08/01 10:03
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 花side

 「ただいまー」

 私が玄関で靴を脱ぎながら言うと「おっ帰り—」よ母の声が聞こえた。

 そう、母、恵理子の…って!
 
 「おかおか、おかーさんだ!」

 そうリビングの戸を開け叫ぶ私に、弟の直哉は耳を塞いでこちらを振り返り、「何? 花、お母さんに帰って来てほしくなかったの?」と母は「およよよよ」と泣きまねをする。

 そんな母に慌てて駆け寄り「違う」と私はソファにカバンを放った。

 「ただ帰るなんて聞いてなかったから、びっくりしただけ」

 そう。 誰だってあらかじめ報告があれば、こんなに驚かない。

 それを聞いた母は「そういえば、忘れてた」とのんきに一人笑って、ヒュウヒュウ音を立てて噴きこぼれそうな鍋に気付き「あらま!」と台所へ小走りに駆けて行った。

 でも、良かった。 夕食作れるほど、早く帰って来れたんだ。 

 やっぱり、私の母に対するイメージって”台所で料理”なんだよね。
たぶん直哉もそう思うから、私が台所に立つたび寂しそうな顔をするのかも。

 (私も今日の数学怪しいから後でやろう。 いやー、助かる—。 久々にこの時間はのんびり過ごさせてもらおう)

 私がそう心の中でつぶやいていると「何ニヤニヤ笑ってんだよ、気持ち悪りー」 急に直哉が声を低くしてボソッと言った。

 瞬間私は振り返り、直哉の頭に面をお見舞いした。 手刀だったが、痛さに直哉はソファの上で頭を抱え丸くなった。

 「こら〜、久々の再会なのに早速ケンカしないの」

 台所に向き直ると、作業を終えて、テーブルにご飯を並べていた母に注意された。

 「はーい」と言う私の声が直哉と重なった。 が、椅子に座ったのは私が先だった。

 母は表情を柔らかくして「さ、ご飯にしましょう」とエプロンをたたんだ。

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.314 )
日時: 2016/08/01 17:49
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 美羽side

 「おはよう」

 私がトイレから出ると、洗濯物を両手に抱えた母とすれ違った。 「おはよ」と早口に言って、お風呂場に急ぐ。

 母はその場から声を上げて「パンが無いから、ご飯食べて行って」

 私も「はーい」と大きな声で返した。
 
 私は冷蔵庫を開け、ご飯に合うおかずをパパッと選んで食べた。

 「ごちそうさま—」と言いながら食器を流しに置き、スクールカバンを肩に玄関に向かうとき「朝練には行くのね」と、母のしんみりとした声が聞こえた。

 「テストが近いからって学校で勉強するのはいいけど。 顧問の先生は「自分が居なくても練習してほしい」って思ってるんじゃない? まぁ勉強するなとは言わないけど…うっかり閉校時間を過ぎて、学校に閉じ込められるようなことにはならないでね」

 「それって、私のことただ心配して言ってる? それとも私のドジの心配?」

 「うーん」と母はちょっとの間黙りこくって「どっちもかな?」と笑った。

 「あーー、そーーー。 じゃあ」

 私は若干怒りながら、家を出た。 足音も自然と足に力がこもってドンドンと鳴る。

 でも、朝早くからこんな気分はもったいないと思い直し、気が付いたら走っていた。

 学校近くの信号に差し掛かった。 青だったけど、息を整えようと壁に寄りかかり「ハアハア」と荒い呼吸を繰り返した。

 (もうここからは歩こう)と朝練のために体力を温存することにした。

 ほぼ走ったし、六時二十分には間に合うでしょ。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.315 )
日時: 2016/08/03 18:45
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 美羽side

 私はゆっくりと学校の正面入り口へと歩いた。 と、何か変に思い、後ろ歩きで戻ってみる。 じっと一点を見つめて「はっ」と気づいた。

 「これ、自転車専用出入口…。 いつもこんなにバーンって開いてたっけ?」

 テニス部の朝練は大会が近い時しかないから、朝早くの学校の状態は詳しく知らない。 でも、そんな私が違和感を感じるんだ。 たぶんいつもなら、ちゃんと閉めてあるんだ…と、思う。

 「えっと、この柵って手動で開閉できるんだよね。 ふーうっと」

 私は柵をスライドさせ、ガシャンと鍵のつまみを回した。

 が、正面入り口に向かうとき、ふと変な気分になった。 そして「これから学校の中に入るのに、閉めてどうする!」と心の中で自分にツッコんだ。

 まぁ、閉めたわけだし。 ちゃんと正面から入ろう。

 (見回りの先生って、校庭は見ないのかな? それとも、昨日最後にあの出入口を通った生徒が閉めるっていうシステムだったりすr)

 「うわあ!」

 頭の中でブツブツ思っていながら校庭を歩いていたら、下を気にするのを忘れて転んでしまった。

 「顔、いったー! ギャー、砂めっちゃついたー」

 私は顔や体操服についた砂を払った。 あ、そうそう、朝練の日はいつも体操服なんだ〜…、というか。

 「なんか砂、湿ってる?」 私は校庭を見回した。 どうやら校庭の土全体が湿っているらしく、土色が濃い気がする。

 砂をある程度払い終わり、近くに落ちていたカバンを拾いあげて、それについていた砂も払った。

 と、何か視界の端に青いものが映った。 「ん?」と私はカバンから視線を上げた。 その直後「うわ!」と驚き、またしりもちでもついて転びそうになってしまった。

 そこには上下、青い服を着た人が横たわっていた。 髪の長さがセミロングっぽいから、たぶん女の人。

 「あのー」 私は背中に向かって声をかけてみた。 反応、無し。 次に肩をゆすって「大丈夫ですか?」と言ってみた。 よく見ると呼吸はしているみたいで、体がかすかに上下しているのが分かった。

 でもまだ安心はできない。 私はカバンを肩に掛け、反対側に移動した。 うつ伏せになって倒れているのを、呼吸がしやすいようにと体を横向きにした。 

 顔に砂がついていたので、そーっと払う。 そうしているとふと気づいた。 この女性の顔に見覚えがあるような気がしたんだ。

 私はじーっと女性の顔を見つめた。 そしてまたしりもちをつきそうになった。

 「もしかして、菜月!」

 いや、待って。 いつもの菜月は髪を結んでいるはず。 でも、結んでいるのをほどけば、セミロング?

 思考を巡らせた結果。 「ちょっと、失礼しまーす」と静かに言って、彼女のバラバラの髪を一つにまとめてみた。

 うん。 これではっきりした。 やっぱり、菜月だ。 でも、呼びかけに反応が無かったのって、どうして?

 「気絶・・・してんの?」

 私はどうしていいか分からず、同じテニス部員が何人か来るまで動けずにいた。


 どうも、奈々化です。

 ここまでが一区切りとなります。 次からは2に入ります。

 
  

 

 


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