複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.151 )
日時: 2015/04/22 16:46
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 やめてください!

 そんな言葉が、つい口をついて出そうになった。

 なんでだろう。 やられっぱなしの治人を見て我慢できなくなったのか。 本当に死んでしまうと思ったからなのか。

 でも、良く考えてみれば、この前も治人は同じ目に合っている。 

 なら、これまでとは比べ物にならないくらい痛いだろうが、きっと大丈夫だ。

 私は、あおむけになったまま動かない治人を見ながら、自分を安心させるべく「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせた。

 「ちょっとやりすぎたような……」

 さすがに心配になったのか。 横田先生は治人の口に耳を近づけ、呼吸を確認する。 「あ、息してる」と言って、すぐ治人から離れる。

 それを聞いて、無意識のうちにホッとしている自分がいた。

 ”お父さんを直してほしい”

 確かにそう思った。 でも、担任の先生じゃないのにと遠慮した。 でも、実際、この人は三神先生より真剣に考えてくれて……。

 「あ、何だ、気が付いた?」

 私はいつの間にか、横田先生を見つめていた。 その視線に気づいたらしく、横田先生は軽く微笑み、こちらに近づいて来る。

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.152 )
日時: 2015/04/24 11:05
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 香side

 「初めまして、お母様。 もしかして、さっき聞いておられたかもしれませんが、もう一度、目の前で言わせてもらいます。 娘さんの通う高校で、新任の養護教諭として働いている、横田 香です」

 私は佳代さんの体を起こし、口に貼られているガムテープをゆっくりはがした。

 とりあえず、丸めて白衣に着ける。 錦さんが手伝って、佳代さんの手を縛っているロープをほどいていく。 私は足のロープをほどいた。

 「どうも、錦 美羽の母、佳代です」

 私たちがロープをほどき終わるのを待って、佳代さんは、とりあえずといった感じで、静かに短く自己紹介をした。 私は黙ってうなずいてみせた。

 「娘さんから、大体のことは聞いています。 大変でしたね。 ですが、もう少し待ってください。 もうすぐ、応援が来ますので」

 それを聞いて二人ともキョトンとしている。

 「警察ですか?」

 佳代さんが言った。

 「はい。 それとあと二人」

 「二人?」

 今度は錦さんがつぶやいた。 そこに車の音が聞こえてきて、この家のすぐ前で停車した。

 バンとドアを強く閉める音が聞こえた。

 「お、着いた」
 
 私のそのつぶやきに、二人とも「どっちが?」と言いたげな目で見て来る。

 「香! いるの!」

 そこに安佐子の声が聞こえてきて、二人の目がとりあえず穏やかになった。

 「思いのほか、早く着いたね。 まぁ、スリッパ貸してもらっt/」

 そう言ってる間に、安佐子の足音が近づいてきて、止まった。

 「てんめぇ! 自由すぎる性格で先に先に進むんじゃねぇ! てめぇはあれか? どんどんどんどん突き進んで、ズンズン女とでも呼んでやろか? あん?」

 (あー、まだ怒ってる。 まぁ確かに、私があそこで錦家の近くにいるって言ってなかったら、今頃病院の中なわけだけど……。 それに普通……)

 「病院に行って、何を聞くことがあるの?」

 「んなの、いつからいないとか、怪しい人は見なかったかとかいろいろ」

 「一つ目はともかく、二つ目の質問の答えはもう教えたでしょ。 まず、落ちなよ。 錦さんとお母様の前で」

 私のその一言で、安佐子はいつもの状態になり「え?」と言った後、部屋全体を見回した。 その視線が私の後ろに向けられた時、安佐子の顔は真っ青になった。

 私も後ろを振り返り「驚かせてすみません」と詫びた後、「こちらが錦 美羽さんクラス担任、三神 安佐子先生です」と安佐子を紹介した。 二人ともすっかり怯えてしまい、軽くうなずくだけで何も反応できないでいる。

 「……です」

 安佐子も、それだけ言うのがやっとらしかった。

 今更ながら、悪いことをしたと思った。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.153 )
日時: 2015/04/25 09:20
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 どういう訳か……三神先生の態度がいつもと違った。

 (こんな三神先生、初めて)

 私はただ、母と一緒に固まっている事しかできなかった。

 何とか、横田先生に落ち着くように言われ、今はもう、いつもの三神先生に戻っている。

 でも……

 (助けに来てくれたんだ…よね?)

 今更だけど、私はそう実感した。 だけど……。

 (病院にいないって、どうしてわかったのかな?)

 「で、古志野さんは? 一緒じゃないの?」

 私ははっとした。 (花?)

 「あ、そういえば、なんか気絶してた」

 「あんたの運転が乱暴で、車にある物入れのところに、頭でもぶつけちゃったんじゃない? かわいそうに。 脳細胞がいくつ死んだことか」

 「な! も、もとはと言えば、香が何の報告もなしに錦さんの家に行ったりするから、こっちが急いで駆け付ける羽目にn/」

 「あの」

 私は、花の名前が出たので、思わず三神先生の言葉を遮った。 はっと三神先生が振り返る。

 「花がいるんですか?」

 「ええ、車の中に」

 「そうですか……花が」

 「? あ、良かったら、乗る?」

 そう言って三神先生は、車の鍵を差し出し「後ろの席に乗って」と、私の手に握らせた。

 「あ、いや」

 そんなやり取りをしていると「だー、ひでーめに会った」と言う、治人の声が聞こえた。

 気が付いたらしく、頭をさすりながらゆっくり立ち上がる。

 「下がってて」

 横田先生が、私たちを部屋の隅に移動させる。

 「何が起こるの?」 母が不安気に聞いてくる。

 「あ、お母様! 先ほどはお見苦しいところを……」

 私が話しかける前に、三神先生が話しかけた。

 「あ、いえ、びっくりしましたけど」

 母はまだ、三神先生に怯えていた。




 ミニ香side

 「お目覚めですね。 では二つ目にいきます」

 「……とっととしてくれ」

 私はそんな治人に、軽くうなずき返し、テーブルに置いていたカバンの中から、一枚の写真を取り出した。 

 「この子を知ってますね」

 「!」

 写真には、一人の女の子が写っていた。


 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.154 )
日時: 2015/04/26 16:42
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 香が一枚の写真?を治人に見せた。 途端、治人の顔は真っ青になって行く。

 一体、何が?と、錦さんたちも気になっているだろう。 固まっている治人を見て、首を傾げている。

 「この子に見覚えは?」

 「…さ、さぁな? 知らないけど、この子がどうした」

 「とぼけるんですね。 この前、ニュースにもなってましたよ? この子は何者かによって、殺されたんです」

 「!」

 香以外の誰もが驚いた。

 (殺されたって、誰に?)

 私はそう聞き返したいところを、そんな空気ではないので、心の中で香に投げかけた。

 それに、きっと、犯人は……

 「この子は、椚田 未海 (くぬぎだ みう)さんといって、美羽さんと同じ17歳です。 警察の調べでは、犯行時刻は一昨日の夜、八時頃だったそうです。 体操服だったことから、部活帰りに襲われたものと判断されました」

 香は一旦言葉を区切った。 

 「犯人はきっと、部活仲間がこの子の名前を”みう”と呼んだから、それに反応して、咄嗟に美羽さんの今の姿を思い浮かべた」

 「黙れ」 治人が小さく言った。

 「犯人はそうやって、自分の想像が作った美羽さんの容姿を、完全に椚田さんに結びつけた。 そして、彼女を尾行して、彼女が人気のないトンネルに入ったところをおs/」

 「黙れと言ってるだろう!」

 治人は我慢の限界といった感じで、声を張り上げた。 錦さんは、佳代さんと一緒に泣いている。 まぁ、無理もない。

 元家族が、人殺しとなって帰って来たんだから。




 


 美羽side

 (はるひt……お父さんが、人殺し?)

 さっきから治人は「黙れ…黙ってくれ」と顔を伏せ、弱々しい声で横田先生に向かって訴えている。

 罪を認めたのか? そう誰もが思った。 でも顔を上げた治人の顔は、笑っていた。 そして「お前のせいだ」と母を指差した。

 母の体が跳ねる。 私は治人を睨む。 「お母さんは何もしていない」と怒りを込めて。

 「お前が、男と撮った写真を見せるから。 俺の気持ちも考えないで、他の男と撮った写真を……。 狂って当然だ。 お前は浮気なんかしないって俺は……俺はずっと」

 治人はまた泣き顔になり、その場に崩れた。

 部屋は静まり、治人の嗚咽がだけが聞こえる。 

 (写真?)

 ふと私の中の記憶が騒ぎ出した。

 
 なぜか目の前には、怒っている治人がいて、母は目に涙を浮かべていた。 二人に間にあったのは、一枚の写真。


 (そうか……この人は、勘違いをしたまま今日まで……)

 私は一人、納得した。

 

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.155 )
日時: 2015/04/28 20:12
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 香side

 「一言、言わせてもらいます」

 「は?」

 「あなたは勘違いをしています」

 「勘違い? 何を?」

 私が近づくにつれ、治人の表情は強張って(こわばって)いく。

 「佳代さんは、浮気なんかしていません。 あの写真に写っていたのは、ただの会社の同僚。 仕事上の付き合いというやつです」

 「あの写真って…なんだ、それ?」

 「離婚の理由になったんじゃないんですか? あなたたち、夫婦の思い出の場所で撮られた、その写真が」

 「!」 治人は目を見開いた。

 「なんで貴様がそんなこと?」

 「さっき言いました。 錦さんと同じ学校にいると」

 「っ! 美羽!」

 その声に反応して、錦さんはビクッと跳ねる。

 「錦さんを責めないでください。 そもそも、そんな権利、あなたにはありません」

 「ふん!」

 「私たちはただ、錦さんを助けようと動いたまでです。 そして、ついでにあなたを直しに来ました」

 「さっきから気になってたんだけど、その俺を直すって、何だ?」

 治人は首を傾げながら、私を真っ直ぐに見上げた。


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