二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 短編小説 *BSR Fate*
- 日時: 2014/04/21 17:22
- 名前: ☆Milk☆ (ID: EM3IpZmD)
こんにちは!
題名とか親レスとかが色々変っちゃってごめんなさい(汗)
前は主にバサラとバサラクロスオーバー専用でしたが最近fateが増えてきたためfateも題名に加えちゃいました←
そんな感じに意味が行方を失った短編小説始まります
ごゆっくりどうぞ
※リクエスト受け付けてます。長くなりそうなリクエストや、あまりに抽象的なリクエストはバッサリ無視いたしますので悪しからず。
※荒らし、チェンメ、悪コメはご遠慮ください
※バサラは主に伊達軍、fateは槍兵と弓兵を偏愛してます
※私のオリジナル小説、『僕と家族と愛情と』とリンクしてる時も多々。
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- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.482 )
- 日時: 2017/01/03 12:32
- 名前: ナル姫 (ID: lS2RN0gb)
荒れ果てホテルから出た二人は、数時間ぶりとなる日の光に目を細めた。ロトムは相変わらずシグレの周りを飛んでおり、完全に仲間になるような様子を見せていたが、今は手持ちが一杯のようで、モンスターボールに入れてはいない。
「ポケモンセンターにでも行くか?」
「そうしたいな。何か一匹預けて、このこモンスターボールに入れたいから」
「わかった」
ディアルムドはモンスターボールからトロピウスを出し、その背にまたがった。シグレもついてまがたり、ロトムがその肩に乗るような形でいる。
「トロピウス、ヒャッコシティまで。ロトムがいるからゆっくり飛んでくれ」
フウジョは避けたか、とシグレは思った。フウジョは、ディアルムドの故郷である。とはいえ、そこから逃げ出してきた身なのだ、帰りたくなどないのが本音だろう。
トロピウスが上空へ飛び立つ。
——カロス地方。オダマキ博士に数回、行ってくるように頼まれ、そのたびに何だかんだと渋っていたが、遂に来ることになろうとは……はぁ、と溜め息を吐き出した、次の瞬間、景色が静止した。
「……トロピウス?」
突然上空で停止するトロピウス。目の前には、こちらを威嚇する赤と黒、そしてうすい灰色のポケモンがいる。
「ファイアロー? どうしてこんなところに」
シグレが後ろから言う。たしかに、ファイアローは野生ではなかなか生息しない。そうなると、これは恐らく人のポケモンだ。しかし参った。どうもこのファイアロー、戦うつもり満々である。……いや、通すつもりがないというのが正しいか。マリルリで簡単に倒せるが、下を見ればフウジョタウンである。倒れたファイアローが地上に落ちれば、下手したら子供が死ぬだろう。
「…………」
「……ディアルー、フウジョに降りたくないのはわかるけど、観念して降りようよ。そんで歩こう?」
そうするのが普通に考えれば正解だ。溜め息を一つ、トロピウスに降りるよう指示を出した。トロピウスの降下に合わせ、ファイアローも降りてくる。
「……何なんだ、このファイアローは」
「わかんないけど、なんかすっごいニコニコしてる」
言われてみればたしかに、初めて会うにしては不自然なほど笑顔でいる。
何なんだ一体、と思っていると、ふと遠い記憶が蘇った。……そうだ。幼い頃にいた。ファイアローではないが、後にそうなるポケモンが。
「……やこ?」
小さくそう呼ぶと、ファイアローは嬉しそうに彼にスリスリと頭を擦り付けた。あぁよかった、合ってたと少し微笑む。
「……知り合い?」
「……あぁ、ちょっとな」
……やこ。このファイアローのニックネームである。ディアルムドが幼いとき、母親と共に行った森で、ヤヤコマだったやこに出会い、そのままついてきてしまい、母親のポケモンになったのだった。しかし懐いていたのはディルムッドで、母親は失踪前にやこを家に置いていったらしく、やこの入ったモンスターボールだけが部屋に残されていた。それ以降はディアルムドのポケモンのようなものであったが、ディアルムドも家を出ていくときにやこを置いてきたのだった。
「へぇ……なんで連れて行かなかったんだよ、この子」
「……途中で死ぬかもしれないくらいには覚悟していたからな」
父が酒に酔って暴れ、そのまま寝てしまった日、ディアルムドが鞄に何かを詰める音で、モンスターボールから出てクッションで寝ていたやこは目を覚ました。ディアルムドは、チョンチョンと突いてくるヤヤコマの頭を撫でて、ごめんと一言謝って家を後にした。
「何にしろ、ここにやこがいるということは……」
「やっと帰ってきやがったな、馬鹿息子」
早くここを去らなければ、そう思った矢先にこれかと思うと、笑いすらこみ上げてくる。シグレがオロオロと、ディアルムドと声をかけてきた男性を見比べていた。
ディアルムドと、その父親ドゥン——実に十年ぶりの再会であった。
*
逃げようとしたがこんな状況で相手がそう簡単に自分たちを逃がすわけもなく、嫌々ながらではあったが、一度家の中に入ることになってしまった。シグレの話もゆっくり聞きたいとか言っていたが、早い話尋問させろ、ということだろう。
テーブルを挟み、ディアルムドとシグレの前にドゥンが座る。ファイアローは相変わらずディアルムドの側にいた。
「やこは、お前がいなくなってから、毎日欠かさず空を飛んでお前を探していた」
「…………」
「お前、今まで何してた。どこにいた。どうやって生きてたんだ」
ディアルムドは一度息を吸って、話そうとしたのだろうが、出てきたのは溜息だった。もう一度息を吸う。
「……フウジョからでて、カロスから逃げて……船に乗って、イッシュに逃げて……そこからまたシンオウに逃げて……発電所でぶっ倒れたところを、シグレの……こいつの兄に助けられて、その家の人に育ててもらった。ホウエン地方で。……五年前に、オダマキ博士の助手になって……そこからいろんなところを回ってる」
「……お前、これからどうするつもりだ」
「……どうってなんだ。まさかカロスに戻ってこいって? 冗談も大概にしてくれ」
ふん、と口角を上げ、相手を睨みつける。
「……そうか」
案外あっさり引き下がったと思ったが、そんなことはなかった。だがなぁ、と彼は再び口を開く。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.483 )
- 日時: 2017/01/03 12:33
- 名前: ナル姫 (ID: lS2RN0gb)
「いきなり家出て行かれて、いま助手してるとか言われてもなぁ、納得も賛成もできないんだよなぁ」
「……だからどうした。俺は俺の好きに生きてきたし、これからもそうする」
「……手前本気で言ってんのか」
「これが本気じゃなかったらあの家出は何だと思ってんだ」
「糞餓鬼が生意気言えば通じると思ってんのか」
「いつまでも父親ヅラしてんなよクズが」
ぴり、と空気が張り詰める。かちゃりとモンスターボールを手にかける音が聞こえ、ヤバイと黙っていたシグレが声を上げた。
「す、ストーーーップ!!」
一瞬驚いた二人だったが、すぐ元の不機嫌そうな顔に戻った。
「なんだ、シグレ」
「なんだじゃないだろ! ここ家の中だから! 下手したら全壊するぞこの家! それにディアルは荒れ果てホテルでの戦闘でポケモンの技ポイント減ってるだろ! 戦闘は外で! それとポケモンセンター行ってから!」
「……チッ」
相当不機嫌なのだろう、ディアルムドの舌打ちなど出会って十年、ほんの数回聞いた程度だ。
「……じゃぁいい、全六体、全力で掛かってこい。勝てば認めてやる。ポケモンに持たせる以外、道具はなしだ」
「……言ったな。わかった、絶対勝ってやる」
*
ドゥンの息子が帰ってきた、と結構な騒ぎになっり、街の人々が集まってきた。
「ドゥンの子供?」
「ディアルくんでしょ?」
「十年前に突然いなくなって……ねぇ?」
「あれじゃぁねぇ……」
ヒソヒソと話し声が聞こえるが、そんな言葉は気にならない。あの時から、よほど騒ぎになったであろうことは容易に想像できる。
モンスターボールを大きくし、二人は同時にボールを投げた。
「ゲッコウガ!」
「行ってこい、キノガッサ!」
出てきたポケモンが雄叫びを上げる。
キノガッサのくさ、かくとうに対し相手は水、悪タイプだ。タイプ相性は相当良い。ならば、ばくれつパンチとたねばくだんで押し切れる。
「キノガッサ、かげぶんしん!」
「ゲッコウガ、ハイドロポンプ」
影分身のお陰でハイドロポンプを喰らわずにすみ、ディアルムドは次の指示を出す。
「たねばくだん!」
「躱せ!」
ゲッコウガは悠々と躱し、たねばくだんは地面にぶつかり爆発、ゲッコウガのターンとなった。
「ゲッコウガ、つじぎり」
一鳴き、素早い攻撃はキノガッサの急所に当たった。
「くっ……キノガッサ、かけぶんしん!」
回避率の優先を考えたのか、再びかげぶんしんを命じる。ゲッコウガはもう一度つじぎりをしたが、外れた。
「もう一度! かげぶんしん!」
再三のかげぶんしん。これでかなり回避率は上がっただろう、次は攻撃で押して行ける。……と、思ったのが間違いだった。
「続いていくぞ、ばくれつパンチ!」
「……ゲッコウガ、つばめがえし!」
「なっ……!」
橙色の目が見開かれる。絶対不可避のひこう技は見事に命中、キノガッサは倒れた。
「そんな……!」
悲痛な顔をうかべてモンスターボールにキノガッサを戻す。正直なところ、ゲッコウガと相性がいいのはキノガッサが一番だった。しかし、相手がつばめがえしを覚えているこの状況である。
「……」
どうする。今のところ相手が見せてきた技は、ハイドロポンプ、つばめがえし、つじぎり……あと一つまだわからない。ここは無難に、とモンスターボールを拡大させた。
「行け、ニンフィア!」
つじぎりは厄介な技だと判断した上の選択だろう。フェアリータイプはあくに強い。ゲッコウガがオスだと言うことは覚えている。それに対し、ニンフィアは珍しいメスだ。直接攻撃が来ればメロメロ状態に陥ることもある。
「ゲッコウガ、つばめがえし」
つばめがえしは命中するも、ダメージはそこまで受けていない。
「ニンフィア、ドレインキッス!」
ニンフィアが走り出す。ゲッコウガは避けようとするも、ニンフィアの口づけが当たった。先程受けた分のダメージが多少だが回復する。
「続けていくぞ! マジカルシャイン!」
またも攻撃は命中し、徐々にゲッコウガは押され気味となった。
「ゲッコウガ、ハイドロポンプ!」
「ニンフィア、躱せ!」
「ゲッコウガ、かげぶんしん!」
最後の技はかげぶんしん。回避率の上がる技だが、ディアルムドの口角が上がる。仕返しだ。
「とどめだ、ニンフィア、チャームボイス!」
これも絶対不可避である。まともに食らうしかないゲッコウガは呻きながら倒れた。ドゥンがモンスターボールに戻す。次に出てきたのは、ギルガルドだった。
……まずい、はがねタイプだと、表情が険しくなる。何せ、ニンフィアは覚えている技の2つがフェアリータイプ、一つはタッグ用に覚えているてだすけ、相手に効くのはシャドーボール一つだ。だが、こうなったからにはそれで押すしかない。
「ニンフィア、シャドーボール!」
「ギルガルド、てっぺき」
シャドーボールは命中したが、防御を上げられそこまでダメージが入らない。
「もう一度、シャドーボール!」
「ボディパージ」
冷たく発される命令に淡々と従うギルガルド。
「もう一度、ボディパージ」
「シャドーボール!」
放たれたシャドーボールを軽々と避け、発されたてっぺきの命令に従う。防御力がまた上がる。ディアルムドは、徐々に焦りを覚えてきた。これ以上上げられるのはまずい。何とかしなければいけないが、攻撃を上げる技はない。このままで押すしかなかった。
「シャドーボール!」
「てっぺき」
「ッ!!」
またか、と顔が苦痛に歪む。だめだ、効果は抜群なのにダメージが入らない。
「ギルガルド、パワートリック。アイアンヘッド」
「! ニンフィア、シャドーボール!」
一か八かの命令。ボディパージで素早さが上がり、てっぺきで防御力が上がり、パワートリックで攻撃力と防御力が入れ替わる。スピードのあるアイアンヘッドに対し、間に合うかわからないシャドーボール。なんとかぶつかる前に放てたらしく、大きく爆発が起こった。砂埃が巻き起こり、その中からニンフィアがぴょこんと現れる。爆風のせいだろう、少し傷はあったがアイアンヘッドが直撃した様子はなく安心した。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.484 )
- 日時: 2017/01/03 12:34
- 名前: ナル姫 (ID: lS2RN0gb)
ギルガルドはどうであろうか……砂埃が収まらず姿は見えない。だがやがて、ずずず、と妙な音がした。ドゥンが命令をする。
「アイアンヘッド」
「っ! しまっ……!」
突然でニンフィアへの指示が遅れる。砂埃の中から突如突撃してきたギルガルドのアイアンヘッドを避けられなかったニンフィアは、その場に倒れて目を回してしまった。
「くっ……」
モンスターボールに戻す。負けてはしまったが、ギルガルドもかなり体力が削れている。次の攻撃で終わるだろう。
「……いってこい、クチート」
後頭部についた口を開いて威嚇し、クチートは相手を見据える。
「クチート、かみくだく!」
「ギルガルド、アイアンヘッド」
二匹の攻撃がぶつかる。だが、体力の差がある。これで相手は倒れるだろうと、思ったのだが。
「……! どうして……!」
ギルガルドはまだ倒れなかった。理由を考えている暇などない。次の支持を出す。
「もう一度、かみくだく!」
「避けてボディパージ」
またスピードが上がる。
「てっぺき」
「くっ……クチート、かわらわり!」
「躱しててっぺき、そしてねむる」
相手の体力が回復する。そして気がついた。ニンフィアのシャドーボールでぎりぎり体力が持ち、次はクチートの攻撃で倒れるはずなのに倒れなかったのは……。
「……気合のハチマキ」
「今更気付いたか?」
己の運が悪いのか相手の運がいいのか、それを考えていられない。しかし気合のハチマキの効く確率はわずか10%、次は効果がないと見て問題ない。ならば、今のうちに倒さなければならない。
「クチート、かみくだく!」
少ししかダメージは入らないが、相手の防御力は下がる。もう少しだ。
「もう一度、かみくだく!」
二度目のかみくだくが指示され攻撃したあと、ギルガルドは目を覚ました。
「ギルガルド、アイアンヘッド」
「今だクチート、かえんほうしゃ!」
「何っ」
流石に予想外だったのだろう。だが、ディアルムドはギルガメッシュから教わっている。そのポケモンのタイプの技だけを覚えさせるなと、何度も言われている。現に彼のピカチュウが覚えている電気技といえば、じゅうまんボルトただ一つである。
とはいえこれで倒れるギルガルドではなく、まだふよふよと浮いている。
「ボディパージ、アイアンヘッド!」
「躱せ!」
言うも、遅かった。相手のスピードはかなりのものになっており、交わすことが難しい。
「もう一度、アイアンヘッド」
「しっぺがえし!」
二匹の攻撃がぶつかり合う。二匹は目を回していた。互いのポケモンをモンスターボールへ戻す。これで残ったポケモンはディアルが三匹に対し、ドゥンが四匹だ。
「……いけ、キュウコン!」
「いけ、やこ」
「っ……え……」
言ったあとで頭を切り替える。
何動揺しているんだ。俺は危険だからという理由でやこを置いていった。母さんが自分にくれたやこを故郷に捨て、今日までちゃんと生きてきたんだ。ならば、倒さねばならない。今やこは、父のポケモンなのだ。
ディアルムドのキュウコンはアローラの姿、こおり、フェアリータイプの白いキュウコンだ。周りを囲む民衆は、見たことのない姿におおと声を上げた。
「やこ、かえんほうしゃ」
「躱せ!」
キュウコンは悠々と躱したが、相性が悪い。持久戦に持ち込むしかないだろう。
「キュウコン、あられ!」
「やこ、ブレイブバード」
「迎え撃つぞ、こおりのいぶき!」
勢い良く飛んできたやこにこおりのいぶきが直撃した。しかもあられのこうかで急所へあたる。非情になれ。そうでないと勝てない。
やこは氷状態にはならなかったが、あられがやこの体を攻撃していく。
「やこ、だいもんじ」
「まもる!」
相手の苦々しい顔が目の端に入る。まさか守るを覚えているとは思っていなかったのだろう。
「やこ、ブレイブバード」
「オーロラベール!」
当たるが、ダメージは半減だ。守り系の技を2つ、そして5ターン続くあられ、そしてもう急所にあたるの技を覚えているキュウコンは、持久戦に向いているポケモンだ。
「アクロバット!」
「こおりのいぶき!」
相手の口調の強さから焦りが感じられる。当然だろう。相性の良さでは相手が上だというのに、持久戦で押されているのだから。まともに受けたが、まだやこは飛んでいた。
「糞餓鬼が……オーバーヒート!」
「まもる!」
命じる、だが……。
「っ……!」
キュウコンは技に失敗した。まともに炎の大攻撃を受ける。ファイアローも、このターンで終わるあられを受けて、倒れた。
「……」
……あと二体。
「ヌメルゴン」
「チルタリス!」
「りゅうのいぶき!」
2つの攻撃がぶつかる。威力はヌメルゴンのほうが上のようだが、チルタリスも負けていない。ぶつかり合うところで爆発が起こる。爆風に巻き込まれないように、チルタリスが空へ羽ばたく。
「チルタリス、うたう!」
「ちっ……」
ヌメルゴンが眠りの状態へ入った。攻撃するなら今のうちだ。
「チルタリス、りゅうのいぶき!」
当然のように直撃する。体力は三分の一ほど削られた。
「……ヌメルゴン、ねごと」
「!」
なんの技を覚えているのかがわからないが、あまり強いのは……と思っていたその矢先だった。
「っ、かわせ!」
指示が遅れ、チルタリスに攻撃がかする。掠っただけだが、ダメージは大きい。何しろ、相手の技はれいとうビームだったのだ。そして、早くもヌメルゴンは目を覚ましてしまった。
「ヌメルゴン、あられだ」
「!」
まずい。これでは、今の体力のままではチルタリスが劣勢なのは確実だ。
どうする、どうすると思考を回転させていると、チルタリスが鳴いた。驚いて顔を上げると、チルタリスはこっちを見ていた。何が言いたいのだろうか。すると、チルタリスは歌うような仕草を見せた。もう一度うたう?いや、それはないだろう。相手はねごとを覚えているのだから。
……そうなると……。
「チルタリス……まさか」
チルタリスは頷いた。
「……わかった」
ディアルムドの目を見て、迷いがないことを確信すると、チルタリスは敵ポケモンに向き合った。あられがチルタリスを攻撃する。
「……チルタリス」
チルタリスが息を吸う。
「……ほろびのうた」
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.485 )
- 日時: 2017/01/03 12:35
- 名前: ナル姫 (ID: lS2RN0gb)
チルタリスは、迷いなく技を実行した。聞いている者を陰鬱にさせる歌が響く。まともにやれば勝ち目がない……そんなときに、チルタリス自ら使うのだ。
ヌメルゴンの攻撃を、次は躱す作業に出る。チルタリスは、相手も滅ぶからと言って自分がそう安安とやられるつもりもないのだろう。何しろ、まだあられも降っているのだ。ギリギリまでやられる訳にはいかない。その間もあられによる攻撃でダメージを蓄積させ、チルタリスは倒れた。
「……不甲斐ないトレーナーですまない……ありがとう、チルタリス」
……モンスターボールに戻し、最後のポケモンになる。このポケモンで最後……このポケモンで残り二匹を倒さねばならない。
……だが、いける。何年一緒にいると思っているのだ。
「……お前で最後だ、いってこい、フラエッテ!」
意気揚々とフラエッテが飛び出す。
「……行け、ガメノデス」
渋々ながら、と言った感じがするのは、くさタイプの技を覚えられるフラエッテが相手のせいだろう。ガメノデスはいわとみず。これならすぐに決められる。
「ガメノデス、かわらわり」
「さくさく決めるぞ、マジカルリーフ!」
かわらわりは、フラエッテに対し殆どダメージが入らずに終わる。マジカルリーフは不可避の技だが、防御力の高いガメノデスは倒れなかった。
「ガメノデス、れんぞくぎり」
「躱せフラエッテ! マジカルリーフ!」
二度目のマジカルリーフ、ガメノデスは倒れた。
「ナイスフラエッテ! この調子で次も行くぞ!」
息を合わせるようにフラエッテが鳴く。
「……次で最後か……良くもここまで追い詰めるようになった」
「……」
「だが敵うまい。いけ、ドラミドロ」
「!」
……どくタイプ。フェアリーの苦手とするタイプだ。ドラゴンも入っているため攻撃が通らないわけではないが、どくタイプの技で攻撃されるとまずい。……だが。
「……行くぞフラエッテ、マジカルシャイン!」
マジカルシャインが的中する。
「ドラミドロ、どくどく」
避けきれず、フラエッテは猛毒状態になる。だが、そこまで焦ることもない。
「アロマセラピー!」
「ちっ……もう一度だ、どくどく!」
「くっ……避けろ!」
今度は躱し、状態異常を回避した。
「フラエッテ、サイコキネシス!」
唯一効果が抜群になる技だ。だが、相手もレベルが高くそこまで効くこともない。
「ドラミドロ、どくどく」
「しまっ……!」
アロマセラピーは五回までしか使えない。だが相手の残り体力とどくどくの性能からして、放っておけば、取り返しの付かないダメージになる。
「アロマセラピー!」
これ以上ドクドクを食らうのは不味い。その前に倒さなければならない。だが、現実は非情である。
「どくどく」
「っ……アロマセラピー!」
あと二回。まだ相手は毒系の技を持っているはずだ。これ以上は……。
「どくどく」
「躱せ、サイコキネシス!」
アロマセラピー残り二回に対し、どくどくは残り五回だろう。相手もこちらのアロマセラピーの技ポイントの数を知っててどくどくを仕掛けてくるのだろう。
「どくどく」
「っ、アロマセラピー!」
焦りが募る。一瞬、過去の映像が脳裏を過ぎり、ぶんぶんと頭を振る。
「どくどく」
「避けろ!」
その後もどくどくとそれを避ける戦いは続いた。そして、ともに残り一度になる。
「どくどく」
「っ! アロマセラピー!」
これでもうどくになることはなくなった。ここからは攻撃だ。
「フラエッテ、マジカルシャイン!」
直撃、しかし当然ながら削れない。
「ポイズンテール」
「よけっ……」
だが避けきれず、直撃したばかりか急所にまで当たった。その上。
「嘘……そんな……」
瞳が絶望に染まっていく。アロマセラピーの技ポイントがない状態で、フラエッテはまたも毒に侵された。
*
——幼い頃、自分はポケモンバトルが大嫌いだった。
父から渡されたポケモンを扱いきれず、技の長短も、タイプの相性も、何も理解できていない子供に、父はあれこれと叩きつけるように教え込もうとした。
酒を飲んで、酔って、寝て、バトルをして……食料は、適当に金を渡され、どこかで何かを買ってくるという程度。かつてのエリートトレーナーの面影もないと、近所の人は言っていた。
だから逃げた。こんなところにいたらだめだと、本能的にわかった。逃げて逃げて、その途中の花畑で、一人ぼっちでいたフラエッテに……当時まだ、レベルの低いフラベベだった、今の相棒に出会った。
……ポケモンバトルは嫌いだった。だから、ポケモンも持ちたくなかったはずなのに、何故か自然と手が伸びた。寝ているフラべべにそっと触れると起こしてしまって、慌てて手を引っ込めた。
『……おまえ、ひとりなのか?』
フラベベは興味などなさそうだった。
『……いっしょにくる?』
……何故、あの時フラベベが、自然と彼のもとに来たのかは、今でもわからない。
けれど、あれからたくさん、あれほど嫌いだった戦いを繰り返した。そのうち、勝つことも負けることも楽しくなって…………それで…………。
*
「何やってんだよディアル!!」
「!」
はっと思考が現実へ引き戻される。振り返ると、シグレが彼に怒鳴り声を上げていた。
「しぐ……」
「フラエッテはまだ負けてない! 毒状態がなんだ、修羅場なんていくつも乗り越えてきただろうが! 今更トレーナーのほうが弱気になってどうすんだよ、この馬鹿!!」
「……っ」
前を見れば、フラエッテは毒に侵されながらも相手をしっかり見据えている。
——あぁ、そうだ。
こいつは、どんな状況でも勝つつもりでずっといたんだ。
「行くぞフラエッテ! サイコキネシス!」
「避けろ」
「続けていくぞ、マジカルリーフ!」
「まだ相性覚えてねぇのか。ハイドロポンプ」
「ねじ返せ! サイコキネシス!」
ハイドロポンプにサイコキネシスをかけ、ドラミドロへ返す。その間にも、じわじわとダメージが溜まっていった。
「ポイズンテール!」
当たりそうだ。フラエッテの疲労からして避けきれる気がしない。だが……。
「避けろッ!!」
フラエッテは、ひょい、と何とか避けた。
「——!」
今だ。
「サイコキネシス!!」
直撃——ドラミドロは倒れた。
「ドゥン、が……」
「まさか……」
「ドゥンが、ドゥンが負けたぞ!!」
「ディアルムドが勝った!!」
わっと民衆が声を上げた。
——勝った。
その場にへたり込みそうになったが、ふとフラエッテが毒状態であることを思い出し、前を見てみると案の定、ふらりと下降を始めた。慌てて走り出し、地面に落ちる前にキャッチした。
フラエッテが薄らと目を開けてディアルムドに微笑む。
「……お疲れ様、フラエッテ」
「はいはい感動はあと、ほら、モモンのみ」
「あぁ……すまない、シグレ。…………ありがとう」
*
町のみんなが、旅立つのかい、本当に行っちゃうの?と聞いてきて、頷く。ようやく、この街から正式に『旅立つ』という形になるのだと、実感した。だが、今更父にかける言葉などない。ポケモンセンターでポケモンたちを回復し、いつもの秘伝要員に手持ちを切り替える。このメンバーだと、手持ちは五匹になるのだが、フラエッテがいるのだ、六匹いなくても怖くなどない。
「勝ったら認める約束だろう。俺は出ていくぞ」
「……そうか。…………おいディアルムド」
出ていこうとした時呼び止められ、何かを投げられる反射的に受け取ると、モンスターボールだった。
「……」
開いてみるが、何も入っていない。
「……モンスターボールなら腐るほどあるんだが」
「それにしか入らないポケモンがいる。自分で見ろ」
「……」
訳がわからないと思いながら、時雨の待つ家の外へ出る。おまたせ、と言おうとしたが、驚きで出てこなかった。
「お帰り、ディアル」
「あ……あぁ」
笑う時雨の隣には、モンスターボールから出ているファイアロー……つまりやこがいる。拡大されたままの、空のモンスターボール。まさかと思い、やこの方向に向けると、やこは吸い込まれるようにモンスターボールへ入っていった。
「……!」
「勝利祝だな」
思わず頬が綻ぶ。上空に向かって思いっきり投げると、そのままやこは上空で旋回し、彼の方に向かって飛んできた。ブレーキはかけられなかったのかかけるつもりもないのか、そのまま彼に激突する。
「ちょ……大丈夫かディアル」
「けふっ……ふふっ、あぁ、問題ない!」
チョンチョンとくちばしで髪を突くやこを撫でる。
「……あの時はごめんな、やこ……あぁ、一緒にいこう!」
カロス地方……ディアルムドの故郷。
家族は教会の人々だと思うディアルムドにとっては、父はすでに他人も同等であるし、ここは彼の生まれた土地に過ぎない。
…………まぁ。
ごく稀に、酒瓶を片す手伝いくらいはしてやろう。そう思いながら、二人は船の出る街へと急いだ。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.486 )
- 日時: 2017/01/13 11:51
- 名前: ナル姫 (ID: xJkvVriN)
——再会は、八年ぶりほどとなるか。
幼い頃、両親に連れられてこの街に来て、時雨と非常に仲良くなって、またこの街を去ったあいつは、伝えられた現状にただ唖然として、目をぱちくりしていた。
拒絶するか、我が聞けば、慌てて首を振り、驚いただけですと、本人かと疑うような、聞き慣れない低い声でそう答えた。そうかと答えて目を伏せる我は、果たしてこの愚妹のことを案じているのか、それとも自分ですら耳の聞こえないこいつに戸惑っているのか、よく知れたものではない。六年前、事故で耳の機能を失ったこいつ自身が、誰より人との距離を測りかねているはずなのに、だ。
ふと、少年は腕時計を見たあと、夕焼け色の濃くなっていく空を見つめた。腕時計は高そうなものだった。父親はろくでなしだったが母親はこいつを溺愛していたし、きっと今もそうなのだろう。案の定、母が心配するので、そろそろ帰らないと、と立ち上がりながら苦笑いをこぼしていた。
「今度、菓子折りでも持ってきます。幼い頃世話になりましたから」
「気を使わんでいいぞ、まだ高校生のくせに可愛げのない人間に育ったな」
ははは、と嫌な顔一つしないそいつは、無理しているわけでもなく、可愛げがないということに自覚症状があるのだろう。
時雨に顔を向けたそいつは、一旦口を開きかけ、あぁ、聞こえないのだったなという顔をして、スマートフォンを取り出した。あまり使わないのかもしれない、左手で支えて右手で何か文字を打っていると、急にスマートフォンが鳴り出した。電話だろう、最近流行ったアニメ映画の主題歌のサビが流れ出した。すみません電話がと頭を下げるそいつに頷くと、画面をスワイプした。
「……はい。…………あぁ、うん、ごめん、連絡入れなくて。……違う、そうじゃ……あぁわかった、すぐに帰るから……うん。……え? ……あぁ、わかった。何がいい? …………はい、わかった。うん、じゃぁ」
電話を切り、再び文字を打ち込む。
画面を時雨に向けると、時雨は笑って頷いていた。
「……また来ます」
ぺこりと頭を下げて時雨に手を振る。時雨も笑顔で返していた。
いふ。
時雨の耳が聞こえない世界。
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