紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第一話「夜蜘蛛には気をつけろ」#4



___何だあいつは?





見たところ、俺と同じくらいの年・・・多分。
見ない顔だからおそらく新入りだろう。

黒いワイシャツ、黒いズボン、黒いローファーを履き黒い手袋を着けている。
右手にはよくドラマとかで札束が入っているような黒いアタッシュケース。

そして顔には、六つの紫色の眼が付いた黒い仮面。
まるで蜘蛛の眼を連想させる。



「そいつじゃもう相手にならないだろ。
 こっちも待っているのは退屈だし、乱入させてもらう」



・・・は?
ちょ、オイ待てコラ。何言ってんだテメエ。
「うるせえ、ひっこめガキ!」
「とっとと帰れ!」
俺の心の声と同時に、スタジアムのあちこちからブーイングが涌く。





だが、彼がアタッシュケースの中身を床にばらまくと会場は再び静かになった。



「コードネーム『紫電』、ショップヘッドとの戦闘を希望。賭け金は限度額まで賭ける」
彼はなんでもないような、平坦な声で言った。




確かここの賭け金の限度額は七千万円。

彼のアタッシュケースから出てきた金額は、三億円は軽くいっていた。





___何者だコイツ!?



「・・・おもしれえじゃねえか。
 いいぜ、引き受けてやる」



スタジアムから歓声が上がる。
「ちょっと待て、まだ俺とあんたの勝負は終わってない」
「ああ!?うるせえな、雑魚はすっこんでろ!」

岩猿がそう言ったのを起爆剤に、今度は俺にブーイング。



・・・何かみじめだな、俺。



そうこうしてる間に、紫電は岩猿の前に立っていた。

「テメエ、おもしれえガキだな」
「無駄話はいい。早く始めよう、オッサン」
岩猿の余裕ともとれる発言を彼はさらりと流す。
「・・・訂正しよう、生意気なガキだな
 どこのボンボンだか知らねえが・・・」

と、岩猿は紫苑に殴りかかろうと前に体重を掛ける。



「死んでも文句言うなよッ!」

岩猿が殴りかかるその刹那。





「いいんだな?それ、あんたが死んでも文句言えないぜ?」

紫電が空中の『何か』を掴み、思い切り引く。



すると空中を紫色の閃光が奔る。





そして前に突き出した岩猿の腕が、飛んだ。
岩石の断面から噴き出す紅く咲く程の鮮血が宙を舞ったのが、スローモーションに見えた。



「・・・え?」
岩猿は驚愕に間抜けな声を上げた。