紫電スパイダー 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作

第八話「不死の龍は断頭台」#1
___某廃ビル、否、つい先程廃ビルと化した大量殺人現場。
死屍累々の赤の中、一人の美しい白金の髪の少女が佇んていた。
少女ははあ、と物憂げに溜め息を一つ。そして道化を模したその仮面を外した。
「やっと見つけたぜ」
不意に、男の声。少女は声の主の方を向く。
「・・・何だ、お前達か」
少女は失望が混じったような口調で言い、視線を逸らす。
声の正体は、心情で表情が変わる仮面、銀色の髪、手には長い日本刀を携えた男・・・季面隼。
その隣には、烏を模した仮面を着けた少年・・・黒鴉紅。
「久しぶりだな。『グレーテル』楠 鈴瀬(くすのき すずせ)。いや・・・
実験体67号『道化師』」
紅は、仮面を外して言った。右目の深紅の眼光が鈴瀬を睨みつける。
「・・・・・」
鈴瀬は薄い緋色の眼で、紅を睨み返す。
第八話「不死の龍は断頭台」
___某病院4階、413号室。
「蜘蔵さん、買ってきましたよっと」
「おお、ありがとう」
俺は缶コーヒーを蜘蔵の手元にひょい、と放る。
そして俺はコーラを・・・
・・・あぶねえ、危うく振るところだった。
ぷしゅ、と炭酸が抜ける音と共に気泡が浮いてきて、ペットボトルの中で群れを成す。
「・・・あれから四日だな」
蜘蔵はコーヒーを啜りながら言う。
「そろそろ来るころでしょうね」
俺はグイッとコーラを飲む。刺激が良いねえ。
「『大太法師』の『右腕』の『刺客』、か・・・。強敵であることは間違いないな」
「だけど、大きなチャンスでもある」
「・・・そうだな」
蜘蔵はコーヒーを置く。
「俺達が仕留められるか、『大太法師』へのショートカットか。
一丁、トゥルーズと行きますか」
「・・・絶対に負けられない賭けだ」
「毎回そんなもんですよ」
次の瞬間。
隣の部屋、412号室から窓ガラスの割れる音が。
「・・・噂をすれば、だな」
「そうっすね」
蜘蔵はパジャマのままベッドを飛び出し、俺はハンドガンと『村正』を手に立ちあがった。
「さて、返り討ちにしてやろうか」
なんとなく、俺は言った。
___同4階、412号室。
「杙菜さん!餡子さん!大丈夫か!?」
俺と蜘蔵はドアを乱暴に開けるなり、言った。
そして視界に入ってきたのは、パジャマ姿の餡子と、いつもの通りのはっぴ姿の杙菜。
そして彼女達の視線の先の・・・硝子の欠片の中に立つ黒衣の男。
竜の模様が描かれた仮面を着けた男の銀色の髪は夕焼けに照らされている。
「・・・アンタが『刺客』だな」
俺は『村正』を抜き、ハンドガンを構える。
「・・・コードネーム『炎馬』『虫』『化け狐』『三月兎』・・・
この場で消えてもらう。お前らに選択権は無い」
銀色の髪の男は言った。

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