紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第七話「満月の夜の新月は破滅の足音」#3



「ぐあああぁッ!」
俺の左肩から勢いよく血が流れる。
余りの痛みに、ハンドガンを落としてしまう。

「一馬君ッ!」
咄嗟に餡子が叫ぶ。
「!! 餡子さん、危ない!!」
餡子が気を取られた瞬間、杙菜が叫ぶ。
「!?」
渓の白刃の刀身が振り下ろされるその時。



「ぐぅッ!」
蜘蔵は餡子の盾となり、正面から渓の袈裟斬りを受ける。

「蜘蔵さん!?」

「ホント、お人よしすぎて自分でも嫌になる・・・!」



「!! 二人とも、避けろ!!」
「「!!」」
一瞬、遅かった。

セルシオが二人の背後に回り込み・・・



突風とメキメキという嫌な音と共に、蜘蔵と餡子が思い切り地面に叩きつけられる。

「がはっ・・・」

「蜘蔵さん!小山さん!」
俺はハンドガンを拾おうとした。が。



「そうはいかないよ」
「ぐぁ・・・!」
どこから取り出したか、セルシオの拳銃が俺の左手の甲を貫く。
そして二発目が俺のハンドガンを粉砕した。






「・・・さて、あとは君だけか」

そう言いながら、セルシオは杙菜の方を向く。
杙菜は顔を真っ青にして震えている。

セルシオはそれを見るとふー、と溜め息をつき、






「いいや、めんどくさい。渓、まとめて葬ってしまおう」
と言い、右手をかざした。
渓もセルシオの言葉にこくり、と頷くと両手をかざす。






「最後に教えてあげよう。僕達のクリアは『気流の発生・操作』。



 ・・・中途半端に壊したりはしない。二方向からの空圧の大砲で今から君達を完全に壊す」

辺りの竹がざわめき、風の流れがセルシオと渓の方へ集中していく。






・・・何が頂点に立つだ。



結局俺は、自分のプライドはおろか、誰一人として守ることもできなかった。



俺に・・・






俺にもっと力があれば・・・!






「恨むなら、自分の非力さを恨むんだね」

そして、無情にも俺達を打ち砕く風の双砲は撃ち放たれた。










___刹那。



一発の銃声。

そして、見えない何かが風の大砲と相殺する、鼓膜も破れるかと思うほどの轟音。



「「「「「「!?」」」」」」






「やれやれ、思ったよりもここに来るまでに時間を食ってしまった。一馬君に発信器を付けておいて正解だったな」
そう言いながら悠々と竹林の中から現れたのは、夏だというのに黒いコートを着込んだ男。

「ザイツェフさん・・・!」






「さて、久々に裏トゥルーラーとして戦うとしようか」