紫電スパイダー 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作

第六話「赤眼の師弟は風を操る」#5
「ふぅ、やっと着いたか」
駅のホームに降りるなり、俺はそう言った。
「そういや何で蜘蔵さんはその・・・ヘルシオ?って奴の情報を知ってたんすか?」
「Σオーブンか!・・・まあ、たまに『読心』を使っているといろんな情報が手に入ることがあるんだよ」
蜘蔵は俺のおちゃめな言い間違いにひとツッコミ入れるとさらりと言った。
「でもそのヘルシオ?って一体どんな人なんだろうね?」
「・・・少なくとも、オーブンではない筈」
杙菜のおちゃめな言い間違いに、餡子が冷静に突っ込む。
・・・時を少し遡り、二時間ほど前。
「・・・という訳で、今日は二手に分かれて行動してもらうで」
星一が言う。
「餡子ちゃん、杙菜ちゃん、一馬くん、蜘蔵さん組はそのヘルシ・・・セルシオって奴を当たってみてくれや。
焔ちゃん、破魔矢さん、斗夢さん組はいつも通りクリアマフィア関連を洗ってくれや。
ほんで日が暮れたら裏店回ってくれぃ」
「ちゃん付で呼ぶな!」
焔が睨みながら星一に言った。やっぱこえーよあの人。
「鬼塚さんはどうするんですか?」
蜘蔵が言う。
「あー、ワイはほれ、アレや、警視正やから」
成程、仕事か。
「という訳で、以上、解散ッ!」
・・・時は戻って駅構内。
「都内から電車に揺られて一時間半、ホントにこんな辺鄙な場所にいるのかねえ」
俺はそう言って、ポカリを一口飲む。
「まあ逆に辺鄙な場所だからこそ情報が少ないのかもね」
蜘蔵が言った。
まあ確かに目的も無いのにわざわざこんな住宅街しかないような場所にやってくるような物好きも少ないだろう。
俺達は今その住宅街しかないような場所にある図書館に向かっている。
真昼だというのにこの静けさ、確かに読書に集中するにはもってこいだろうな。
ヘルシ・・・セルシオとやらは物静かな人物だと見た。
「何か考え事してるの?」
「うぉわ!?」
不意に、ひょいと杙菜が俺の視界に入ったので、俺は思わず変な声を上げてしまった。
「うぉわ!?って私は化け物か何かか?」
「いや、そのびっくりして・・・サーセン」
杙菜はあはは、と笑うと、
「君、面白いね。よかったぁ、何かみんな怖そうで話しかけにくかったんだ」
「・・・確かに・・・」
焔に関しては言わずもがな、破魔矢さんは何考えてるかわからないうえにテレパシーで話しかけてくるし、
星一も何考えてるかわからないし、第一警察側の人間だし油断したら逮捕・・・されかねない。
斗夢は一見いい人そうだけど・・・それが逆に何か怖い!
餡子は・・・絶対怒らせたらあの面子の中の誰よりも怖いぞ絶対。
で、一番害無さそうなのは蜘蔵さんだが、この人こう見えて心読めるからな。ある意味怖い。
とか考え事してたら、杙菜がフフ、と笑って、
「今日は頑張ろうね!」
と言った。
こんな娘までもがこの裏社会に身を置いていようとは。世も末だね。
「・・・おう」
俺は少しはにかみながらそう言った。この娘とは仲良くできそうだ。
・・・いや、別に下心とかじゃないよ?
「・・・さて、着いたか」
駅から三十分ほど歩いて、ようやくこの辺りの建物のサイズにしては大きい図書館の前にたどり着いた。
「そいじゃ、裏社会随一の情報屋とやらの顔を拝ませてもらうとしますか」
そう言って図書館の扉を開ける。
そして図書館の司書が座る席・・・
そこを見てみると、黒い髪に赤い目、中学生ぐらいの少年がそこに座っていた。
「・・・えーと、君がセルシオ=ライクライン?」
なんと、こんな少年が裏社会随一の情報屋だとは。恐れ入ったぜ!
「違う」
「え?」
「師匠ならそこ」
そう言って少年が指さした先を見てみると、
本棚から崩れたものと思われる本の山からはみ出した人間の手。
様々な本が形成した山の中から声が。
「誰か助けておくれー」

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