紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第五話「狐の眼は全てを見渡す」#7



「・・・何故わざと負けた」

ザイツェフは動揺を隠しきれない様子で餡子に問う。

だが、当の本人、餡子も困惑した様子であった。



「小山さんがわざと負けたわけじゃない」
不意に、紫苑が言う。

「・・・どういうことかね?」



「さっき俺は『心を読める』と言ったが、アレは間違いだ。

 ・・・正確には、他人の『思考』を読むことができる」

紫苑は自身の頭をトントン、と指さして言う。

「アンタらも知っている通り、俺の能力は『紫色の電撃の放出・操作』だ。
 確かに、普通じゃこの能力で人の思考を読むことなんてできやしない。

 だが、もし俺が『目に見えない電磁波までも放出・操作』できるとしたらどうなる?」



俺達はその答えがわからずにしばし沈黙していたが、不意にザイツェフが口を開く。







「・・・まさか君は・・・電磁波を放出・操作して相手の思考を読み取っていたというのか・・・!?」
「え・・・?」

「ご明答。人間は常に自身から電磁波を放出している。
 その電磁波に俺の電磁波を当てて思考を読み取っていた、という訳だ」



「・・・だったら、最後の10巡目、こいつは何を考えていたんだ?」








「おそらく何も考えてなかっただろうな。なぜなら俺に操られていたのだから」

「「「「!?」」」」



「人間の体は脳からの電気信号による命令によって動いている。

 そして、もし俺が『電気信号の放出・操作』も可能だとしたら・・・?」



「つまり・・・電気信号を餡子に放出して直接彼女を操っていたということか・・・!?」
「That's right」

「ばかな・・・そんなことが可能なのか・・・!?」



「確かに相当集中力を使うし、体力も精神力もかなり消耗する。
 それこそ本家の『読心』や『人心操作』よりも遥かにな。
 通常は電気操作系でもこれができるやつはいないだろう。
 俺でも戦闘中にこれをやるのは不可能だし、そうでなくても長時間の継続は不可能だ。

 だが、不可能じゃない」



それはつまり、自身の能力を電気信号レベルで操作していたということ・・・。

改めて思う。






この男、尋常じゃない・・・!




「・・・フフフ、完敗だ。
 良いだろう、話してあげよう。我々が行っている捜査について」
「ザイツェフさん・・・いいの?」
餡子はザイツェフに問う。

「なに、構わないさ。彼らになら話しても問題は無いだろう。
 それにどの道自力で辿りつくだろうからな」

「・・・?
 自力で辿りつく・・・?」



「・・・このゲームを始める前、君達に『大太法師』について何か知っているか、と訊いたね?」

俺はうなずく。

「でもさっきも言った通りアレは既に処分された筈では・・・?」

「ああ、そういうことになっている。・・・表向きではな」






「やつはまだ日本に潜んでいる。裏社会の頂点として」