紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第十話「嘘吐きシンデレラ」#2



近頃、一部の裏社会の住人達の間で実しやかに囁かれている噂があった。



___それは、千載一遇のチャンス?



近頃、裏社会の住人達が不穏な動きを見せている。



___それは、世界の変革?



近頃、裏社会の住人達の間で、しばしば耳にする単語がある。



___それは、終わりの始まり?






・・・その名は、『大太法師』。






「・・・間違いないのね?」
とある廃墟。
白金の美しい髪の少女、『グレーテル』こと楠鈴瀬は、目の前の黒髪の美少年に問う。
「ああ。『アイツ』は今、銀嶺の奴らに味方している。どういう意図かは知らないが」
コンクリの床に腰をかけパソコンを開いていた、黒髪、赤のオッドアイの少年、黒鴉紅は問いにそっけなく答えた。
「・・・これでまた、『奴』を潰す理由がひとつ増えたな」
近くの柱に寄りかかっている銀色の髪の少年、季面隼は言う。
「・・・そして、ほぼ確実に銀嶺一家も参加してくる」
「・・・好都合じゃねえか。あの糞ジジイの首を殺るのには絶好の機会だ」
「・・・言っておくが」
鈴瀬の声に、二人が彼女のほうを向く。
「私はお前たちに味方したわけじゃない、それだけは覚えておけ」
「・・・それは俺たちも同意だ」
紅が、声のトーンを少し落として言った。
「当たり前だ。アイツらを仕留めた後は・・・次はお前だ、『グレーテル』」
静寂と、緊張。
両陣営はしばらく睨み合っていたが、やがて鈴瀬はふ、と笑うと
「そうでなくてはな」
と言い、包帯を巻いただけの足で屋上へ続く階段を上って行った。

「・・・あんな事を言っておいて」
「あ?」
「本当はそこで止まる気なんて更々無いんだろ?隼」
隼は、紅のその問いに
「当たり前だろうが。奴を・・・『大太法師』を倒せば俺が頂点だ」

「・・・見届けさせてもらうぜ」







近頃、一部の裏社会の住人達の間で実しやかに囁かれている噂があった。



___それは、千載一遇のチャンス?



近頃、裏社会の住人達が不穏な動きを見せている。



___それは、世界の変革?



近頃、裏社会の住人達の間で、しばしば耳にする単語がある。



___それは、終わりの始まり?






・・・その名は、『大太法師』。






「・・・ついに、三日後ですね」
突き刺すような寒さながらも、燦々と降り注ぐ日光には似合わぬ漆黒の遊覧船の甲板に、人が四人。
黒髪を長く伸ばした緑色の着流しの男、霊零十六夜は甲板の先頭で佇む男に言う。
「しかし、随分と思い切ったもんだな」
と、銀色の髪、赤い眼の男、黒西龍我が言うと、

「・・・後手を取った処で、此方には何の利点も無い」

と、甲板の先頭で佇む、優美な山と花吹雪が描かれている羽織を羽織っている袴姿の男は、厳かな声で。
右腕を通さない着方で露出している右胸には、桜吹雪の刺青。
「・・・そういえば、『彼女』は放っておいて大丈夫なんですか?
 ・・・随分と、彼らに肩入れしているみたいですが」
黒い髪、赤い眼光の少年、夜桜渓が問う。

「心配は要らん。『あれ』は儂の娘だ」

甲板の先頭で佇む、優美な山と花吹雪が描かれている羽織を羽織っている袴姿の男は言った。
声の具合からして、四十後半から五十くらいの年齢だろうか。
「・・・貴方の話を聞いていると、疑念を抱くことが実に滑稽に見えてくるね」
茶髪を肩まで伸ばした、大きな黒縁眼鏡の男、セルシオ=ライクラインは言った。
「・・・どちらにせよ、三日後」
と、十六夜が。
「その日に全ての終わりが始まりを告げる・・・」
「・・・非常に面白そうじゃないか」
「俺は師匠についていくよ」
「世界を相手に戦争、か・・・悪くねえな。






 ついて行くぜ、『大太法師』さんよ」






甲板の先頭に佇む羽織と袴姿の、白髪混じりの黒髪の男・・・

『大太法師』はその身に潮風を浴び、果て無き水平線を見据えていた。



「・・・後少しで、世界は儂のものになる・・・」






近頃、一部の裏社会の住人達の間で実しやかに囁かれている噂があった。



___それは、千載一遇のチャンス?



近頃、裏社会の住人達が不穏な動きを見せている。



___それは、世界の変革?



近頃、裏社会の住人達の間で、しばしば耳にする単語がある。



___それは、終わりの始まり?






・・・その名は、『大太法師』。