紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第二話「白金の道化に会ってはいけない」#3



・・・え?

今なんて言った?

「本気か?」
「退屈な賭けはしたくない」




トラジェディ。

一対複数で行うトゥルーズ。

自らこのルールを申し出る奴は、まずいない。



なぜなら只のリンチだからだ。

四方からの攻撃、一人毎に違う能力。
その全てに対応できる者なんている筈もなく、
俺が知ってる限りでそのルールで生き残った奴なんて一人だけだ。
第一それも俺が直に見たわけじゃない。

「さて、と」

馬鹿な・・・やめろ!
只でさえ十中九割死ぬようなルールだってのに・・・
ましてやここは・・・「パンドラ」。
他の店よりも・・・明らかにレベルが高い。
そんなもん・・・自ら負けを晒しに行くようなもんじゃないか・・・!



俺はそう言おうとした。だが・・・言葉は出なかった。


それほどの、圧倒的な威圧感。


俺と同じ年のガキ。

だというのに・・・何だ・・・このプレッシャーは・・・!





「どうせなら人生を賭けた方が面白い
  ・・・コードネーム『紫電』、トラジェディを希望。
  
  賭け金は、一人頭一億円だ」





・・・は?


オイ、今何て・・・?

一人頭一億ってことはつまり、

一人着たら一億・・・五人来たら五億・・・
十人来たら十億・・・


三十人来たら・・・三十億!



「お・・・おい・・・
  ほんとにそんなに払えんのかよ・・・」

「十人以上来て、負けたら破産だな」

いやいやいやいや。

こんな破格の条件、勝つとわかってる賭け、
十人どころか百人来てもおかしくねえぞ

「だが」
「?」


「勝てば十人来れば十億、百人来れば百億だ」


だから利益じゃなくてリスクが問題なんだっての・・



「それに最初から・・・」

「?」







「興味が無い、金も命も」





・・・え?





「ただ俺が楽しめれば、それでいい」





狂気の沙汰。

この男・・・最初から・・・

利益とかリスクとか考えていない。

只戦いの快楽のみを・・・求めてやがる!





俺は奴を止めることができずに、

デスマッチ『トラジェディ』が始まった。