紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第四話「昼蜘蛛はお人よし」#3



「ぐぁっ・・・!」

反射的にかわしたおかげで、何とか急所は免れた。
だが俺の左脚には赤い血がたっぷり。

「超痛って!」

___何だあの能力は!?

身体強化系・・・じゃなかったのか?



「・・・おい、ズボンが台無しじゃねえか」
俺は無理矢理顔に笑みを浮かべながら言う。これが多分苦笑いって奴なんだろうな。

不意に『グレーテル』が言い放った。



「・・・それがお前の全力か?」
「あ?」



『グレーテル』は、ふー、と溜め息をつき、






「弱い奴に興味は無い。もう死ね。」



奴の足元の影が槍のように形を変えて俺に襲いかかってきた。
この足じゃアレをかわすのは無理だな。



剣で防ぐしか・・・






「!?」

影の槍は、見事に俺の剣をバキン、と叩き割り、
そして俺を貫いた。






「が・・・は・・・!」



影の槍がずるり、と抜ける。
俺は膝をつき、その場に倒れた。



『グレーテル』がこちらへ歩いてくる。
奴は倒れた俺の頭のところまで来ると、その大剣を振り上げた。



・・・おい、アンタ。
その剣で俺をどうするつもりだ?

って、どうもこうもないか。

人間意外と死ぬときって走馬灯見ないのな。
てっきりフラッシュバック見ながら死ぬんだと思ってたけど。俺。

てか俺死んだら地獄と天国どっち行くのかな?
って考えるまでもないか。地獄に決まってんだろヴァカめ。ぶはは。

針山地獄ってさ、アレ絶対新型のマッサージチェアでしょ。
『鋭い針があなたの全身のツボを刺激します』的な?



結構人間って死ぬ時考えることくだらねえのな。






奴は大剣を振り下ろす。






ああ、死んだわ、俺。








その時だった。
いきなり『グレーテル』の動きが止まったかと思うと、
俺は誰かに抱えられていた。

「「!?」」






「我ながらお人よしすぎるこの性格が嫌になるよ」





ボサボサの茶髪、野暮ったい感じの服装、どこかの民族のような仮面をつけた男は俺を抱えながら言った。