紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第六話「赤眼の師弟は風を操る」#6



「いやぁ、本当に死んじゃうところだったよ!助けてくれてどうもありがとう」
茶髪を肩の辺りまで伸ばし、大きめの丸眼鏡をかけた男は朗らかに言った。
眼鏡の奥からは右が蒼、左が紅のオッドアイが光を覗かせている。

「・・・どういたしまして」

「えと、君達名前は何て言うんだい?」
友好的な眼差しを向けながら茶髪丸眼鏡の男は訊いてきた。

「あ、と・・・俺、黄河一馬っていいます」
「・・・小山餡子といいます」
「あたしは、憂追杙菜っていいます」
「蚯蚓山蜘蔵といいます。よろしく」


「・・・ところで、あなたのお名前は・・・」





「あ・・・僕、セルシオ=ライクライン!考古学者であり、この図書館の館長もやってる。よろしくね」

なるほど、コイツが『裏社会随一の情報屋』か・・・。
蜘蔵はコイツは22歳だと言っていたが、16歳とか言っても通用しそうな外見だ。

「で、向こうにいるのが夜桜 渓(よざくら けい)君。
 よくこの図書館に来てくれるんだ」
セルシオがそう言うと、司書の席に座っていた赤眼黒髪の少年、渓はこちらに向かって少し頭を下げた。

「渓君、さっきは何で助けてくれなかったんだよぅ」
「あまりに突然のことだったんでパニクってました」
「あはは・・・」
セルシオと渓のやりとりを、杙菜は苦笑しながら眺めていた。





「さて、この図書館は見ての通りさびれていて僕と渓君以外はほとんど誰も来ないようなところだけど、
 その分静かで読書に集中できるし、






 何より、君たちみたいな『客人』が来たときに話がしやすい」



「・・・俺達が来た理由はお見通し、ってワケか」
「そりゃあね、こんな辺鄙な場所にある図書館にわざわざ団体さんで来る理由なんてそれぐらいしか思いつかないよ。

 ・・・それで、用件は何だい?」






「・・・『大太法師』に関する情報が欲しい」

「・・・・・」



・・・さて、ここからが問題だ。
情報屋にとって、情報は金にも等しい。
特に『大太法師』なんてやつの情報を只でホイホイ言う訳が無い。
いや、情報を渡さない可能性もあるし、知らない可能性もある。

まあその時の為に『読心』を使える蜘蔵も来た訳だが。





「うん、いいよ」

「あら!?」

余りにあっさりした返事に、俺は思わず変な声を上げてしまった。



「あ、いいんですか?」
蜘蔵も意外だったようだ、肩すかしを喰らったような顔をしている。


「うん、さっき助けてもらったお礼もあるしね。でも条件がある」

一瞬、セルシオのかけている丸眼鏡の奥のオッドアイに怪しい光が宿る。

「条件・・・?」

杙菜が訊き返すと、セルシオはにやり、と笑みを浮かべて言った。






「トゥルーズの『チームマッチ』で僕達に勝てたら、僕が持っている『大太法師』の情報を全て教えてあげよう」

           第六話・完