紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第五話「狐の眼は全てを見渡す」#6



3巡目。

「・・・ビッド、200ポイント」
「コール」

「ビッド、500ポイント」
「・・・ドロー、3枚。・・・チェック」



餡子持ち点・1400ポイント。紫苑持ち点・600ポイント。



紫苑の言葉を警戒しているのだろう、餡子が賭けるポイントは俺の時よりも少なくなった。

だが、少しずつ確実に、紫苑のポイントは削られていく。



・・・アレは只のハッタリだったのだろうか?





そう思ったが、それは俺が流れの変化を把握していないだけであった。

そして俺がそれに気付いたのは6巡目。



「・・・ビッド、400ポイント」
「ドロップ」



そう言って紫苑が捨てた札は、4のフォアカード。

かなり強い役なのに、何故みすみす400ポイントを手に入れるチャンスを逃したのか・・・?



その理由は、すぐに分かった。
勝負をせずに捨てられた餡子の手札の役は、3~7のストレートフラッシュだった。



・・・成程ね。つまり紫苑はこうなることを読んでいたのか。






・・・いやちょっと待て。

ということは、紫苑は心を読む奴の心を読んだ・・・ってことか?

いや、あり得ない。
やつの能力は『紫色の電撃の放出・操作』だった筈だ。





などと考えていた時、紫苑がククク、と嗤い、話しだす。






「やっぱりな・・・。
 小山さん。アンタの能力、強化系『千里眼』だろ」

「「「!?」」」



「・・・どうしてそう思うの?」
突然の紫苑の発言に、餡子は問う。



「まずこのライアーが始まる前、蜘蔵さんは『ポーカー』という試合形式を提案した。
 自分から一つのゲームを指定する・・・つまりそれはそのゲームならば何か勝算があるということ。
 裏トゥルーラーと刑事ならそこまでは読める筈。だがあんたらはあえてその条件を受け入れた。

 ・・・つまり、アンタらの方にも秘策があるということだ。

 それも、負ければ極秘情報を晒す羽目になるにも関らず、
 そこの刑事さんが第一戦を落としても余裕でいられるような秘策がな」

「・・・・・」

「ポーカーという不確定要素の多いゲームでそこまで絶対的な自信を持つことができる能力・・・
 いや、自信だけじゃない。ワンペア同士の勝負で勝つことまでできる能力。
 つまり読心系、あるいは透視系・・・。
 だが読心系は相当な体力を消耗する。さっきの蜘蔵さんのようにな。
 しかし小山さんは二戦連続でゲームを行っている。
 休憩も無しでそんなに集中力は持つ筈が無い。だから読心系である線はそこで消える。
 後は残された可能性は透視系。だが生憎透視系はライアーには向いていない。
 なぜなら一般的な透視系の発動に必要な動作は『対象を集中して凝視すること』。
 これを使おうとすれば視線ですぐにばれ、発動の瞬間を押さえられずとも対処はされ、
 最悪、その能力を逆手に取られる。

 『予備動作がばれにくく、集中力が保てる、ライアーにおいて非常に有利になる能力』・・・

 それは、予備動作に『精神の集中』を必要とする『千里眼』の能力しかない」



「・・・見事だ」
流石のザイツェフも、顔に焦りの色が浮かんでいる。

「・・・当たり。だけど、それがどうしたっていうの?
 予備動作が具体的な動きでない以上、能力によるイカサマを押さえることはできない。
 そして、あなたの能力は『紫色の電撃の放出・操作』。

 ・・・さっきの言葉、あなたにそのまま返すわ。
 『貴方の能力では私には勝てない』」






「・・・それは俺が、『アンタの心を読むことができる』としてもか?」

「「「「!?」」」」







「さて、面白くなってきたな」