紫電スパイダー 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作

第十一話「紅水鴉が降らすは血の雨」#6
「【・・・意外な伏兵だな・・・っ!】」
一馬が腰からぶら下げている、斗夢特製のクマのキーホルダーから破魔矢の焦燥が表れた声が聞こえた。
「!?破魔矢さん、どうかしたんすか!?」
一馬がクマのキーホルダーに向かって、声を荒げて言う。
「【斗夢君が・・・ほぼ一人で相手を全滅させた・・・ッ!】」
「・・・は?」
『千里眼』を持ち、戦術構成が得意な餡子以外の『政府組』の全員が同時に間抜けな声を上げたという。
「・・・物量作戦で僕に勝てると思わない方が良いよ」
いつものにこやかな優しい笑みで放った斗夢の一言は
「こいつならイケる!」と思い彼に襲いかかった者共に一生モンのトラウマを与えたとか与えてないとか。
斗夢の能力は『自作の玩具の完全・遠隔操作』。
後に破天荒破魔矢は語る。
「【まるで侵攻し進撃する一国の軍隊のようだった】」
と。
「食堂、予選リーグ一回戦終了。予選通過者は『仙人掌』『悪熊』『死神』『夜夢』」
「・・・俺達も負けてられないな」
別の船、左後部甲板。
蜘蔵がぼりぼりと頭を掻きながらやれやれと言わんばかりに。
「当たり前でしょ!それより『仕込み』はもう済んだ!?」
焔が若干イラつき気味に言う。いつもの事ではあるが。
「うん。思いっきりぶちかましてくれ」
蜘蔵のその言葉を聞くと、焔は満足そうににやり、と口角を上げ
「それじゃ、遠慮無く」
次の瞬間、辺りを黒炎が奔り回った。
蜘蔵が『読心』を使い相手の隙をつき周囲の相手に糸を巻き付かせ、それを導火線に焔がクリアを発動する。
逃れられる筈も無い、黒炎の蛇。
「『ウロボロス』とでも名付けようか」
「・・・いいわね、それ」
焔の意外なキャラが発覚した瞬間であった。
「うにゃあ。危ないとこじゃったの、姉者」
「うむ。しかしネコのお陰で助かったぞ、礼を言う」
「・・・ん?」
蜘蔵の視線は当然、その声が聞こえた銀色の手すりの上へ。
「左後部甲板、予選リーグ一回戦終了。予選通過者は『陽炎』『虫』『緋色の虎』『赤の薬剤師』」
___更に別の船、第二ダンスホール。
「鈴瀬、ああ鈴瀬・・・僕の鈴瀬。やっと、やっと会える・・・」
破壊された照明の下、短い白金色の髪のツナギ、細めの男が呟く。
辺りには死体と血痕と銃痕と、血の水溜り『のみ』。
「やっと会える・・・ああ、やっと会える!」
男は高らかに嬉しそうに半分狂ったように、ご機嫌に血の水溜りをぱちゃぱちゃ音を立てながら歩いていく。
「第二ダンスホール、予選リーグ一回戦終了。予選通過者は『A bloodstained clown(血に染まった道化師)』」
第十一話・完

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