紫電スパイダー 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作

俺達は、セルシオ達に連れられてとある竹林まで来ていた。
しばらく竹林を進み開けた場所へ出ると、不意にセルシオが足を止め言った。
「ここなら、僕達が暴れても被害は出ないだろう」
セルシオは微笑みながら蝙蝠を模した仮面を、渓は無表情のまま桜を模した仮面を付けた。
第七話「満月の夜の新月は破滅の足音」#1
もうかれこれ十分経っただろうか。いや、もっとか?
とにかくその位の間、俺と蜘蔵、餡子と杙菜は武器を構え、セルシオは腕組みをして、渓は棒立ちのまま対峙していた。
「・・・どうしたの?かかってきなよ」
セルシオは腕組みをしたまま言う。
本来ならこちらとしても速攻で攻めて速攻で決めたいところだが。
一人は頼り無さそうな優男。もう一人は中学生くらいのガキ。
加えてこちらは四人。端から見れば圧倒的に有利な状況だろう。
だが、本能がそれは危険だと告げている。
それほどまでに危険な相手だと、こうして正面に対峙しているだけでわかる。
二対四など全くハンデにならないような相手だとわかる。
加えてついこの間剣を『グレーテル』にへし折られてしまって、今俺の武器はハンドガンしかない。
蜘蔵の『読心』を使って情報だけをいただき、戦わずして逃げる、という手も考えたが
おそらく逃げられるような相手ではないだろう。
それに先程、蜘蔵が気になることを言っていたし、
第一、ここで尻尾を巻いて逃げるのは俺のプライドが許さない。
・・・このまま睨みあっていても仕方が無い。
___一丁しかけてみるか!
「おわ!?」
俺はハンドガンでセルシオの足めがけて弾丸を放つ。
「危ない危ない」
セルシオがわざとおどけて言う。どうやら弾丸は外れたようだ。
でも残念、ホントの狙いはそっちじゃないんだなぁ、これが。
セルシオの足元、弾丸がめり込んだ辺りの地面から黄色い火炎が燃え上がる!
「!!」
そして火炎は一瞬でセルシオを包み込んだ。
地の利を生かしてこそプロ。ここは竹林、火炎との相性は抜群。
「次はアンタだ。どうする、降参するか?」
俺はそう言いながら、ハンドガンの銃口を渓に向ける。
「・・・降参?まさか」
渓がそう言い終わるのと同時に、セルシオを包み込んでいた炎が吹き飛ぶ。
「「「!?」」」
「いやぁ、危ないなぁ全く。山火事にでもなったらどうするつもりだい?」
___マジかよ、火傷一つ無いとか。
「・・・一応後で情報が吐けるように火加減はしたけどよ、そこまで加減した覚えはないぜ?」
やばい、冷や汗出てきた。
「うん、結構能力の加減が上手いね、君。
黄色い炎っていうのも珍しいし、今の攻撃方法からして君は戦闘に精通していると見た」
「・・・そりゃあ、こう見えても裏トゥルーズで食って生きていますからね」
・・・と、俺が言い終わるのと同時。
「「「・・・!!」」」
急に、セルシオの纏う空気が変わった。
「いいね、いいね・・・」
ククク・・・とセルシオは嗤った。
「非常に面白そうじゃないか・・・早く壊したいよ」
セルシオが、どす黒い殺気を放つ。
全身に悪寒が走る。
俺達は、とんでもない化け物に戦いを挑んでしまったのかもしれない。

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