紫電スパイダー 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作

第三話「季節は天上天下唯我独尊」#2
___とあるネットカフェ。
紫色の髪の少年はパソコンの画面を眺めながらマウスを動かす。
無機質な文字の羅列を斜め読みする彼、籐堂紫苑は
ある記事に目を止める。
『白金の髪の少女』
紫苑はその記事にマウスのカーソルを合わせ、クリックした。
・・・ありえない。
あの岩猿をはじめとする大型裏トゥルーズ店『パンドラ』の常連たちが、
たった一人の少女の手によって・・・全滅・・・!?
困惑、動揺する俺に、水色の髪の少女は更に告げる。
「きっと・・・彼女の次の狙いは貴方達」
「・・・貴方・・・『達』?」
「・・・うん。貴方ともう一人・・・
紫苑、だっけ?」
紫苑はとある掲示板の書き込みをスクロールしながら読んでいく。
『176:20XX年6月7日 23:30:47 ペンネーム:名無しさん
裏店潰すとかwwwどんだけ勇者www』
『177:20XX年6月10日 7:34:12 ペンネーム:名無しさん
そういえば最近本当に裏店が次々潰されてるらしい』
『178:20XX年6月11日 15:07:59 ペンネーム:名無しさん
177>>その話kwsk』
『179:20XX年6月25日 18:22:45 ペンネーム:名無しさん
なんでも、白金の髪ででかい剣持った奴が来た店は翌日潰れるとか』
『180:20XX年7月1日 23:35:09 ペンネーム:名無しさん
179>>都市伝説乙』
『181:20XX年7月9日 12:54:01 ペンネーム:名無しさん
180>>俺が通ってた店がやられた。能力で何とかやり過ごしたけど』
『182:20XX年7月13日 01:17:14 ペンネーム:名無しさん
潰された店に残ってた会員表に奴のコードネームが載ってた。
奴のコードネームは
その次の文章を読んだところで、紫苑は誰ともなく呟く。
水色の髪の少女は俺に告げる。
「遭ったらすぐに逃げた方がいい。
彼女のコードネームは・・・」
「「・・・『グレーテル』・・・」」
「・・・ありがとう。でも、なんでわざわざ俺にそんなことまで伝えてくれたんだ?」
俺は水色の髪の少女に訊く。
「・・・ただ・・・なんとなく。
それに・・・『視えちゃった』から」
『視えた』・・・?
・・・まあいいや、なんとなく訊かないでおこう。
「・・・わかった。ありがとうな、
・・・え、と・・・」
一馬が「名前は?」と訊く前に少女は口を開いた。
「・・・小山 餡子(こやま あんこ)
・・・コードネームは『化け狐』」
紫苑はしばらくその書き込みを見ていたが、
すっ・・・とパソコンの画面に手を当て、静かに目を閉じた。
そして数分後、静かに目を開き、パソコンの画面から静かに手を離した。
紫苑はパソコンをシャットダウンすると、個室を出てどこかへ行ってしまった。
___とある廃ビル。
「・・・で、奴の情報は手に入ったのか?紅」
銀髪に緑色の目、手には長い刀を携えた男が、黒髪の少年に催促する。
「・・・奴のコードネームは『グレーテル』。
お前が使ったネットの書き込みからだけど・・・
多分、間違いない」
紅と呼ばれた少年は銀髪の男に言う。
「・・・『グレーテル』、か・・・
・・・なめた真似しやがって・・・
この俺様が『逃げ』とかマジあり得ねえ」
「『グレーテル』・・・
次会ったときは・・・殺す!
この季面 隼(きおもて じゅん)様がな」

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