紫電スパイダー 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作

第五話「狐の眼は全てを見渡す」#1
___目を開けると、白く殺風景な天井。
成程、ここが天国か。
あれ?ちょっと待って、俺って確か地獄行き確定じゃなかったっけ?
てことはここ地獄?
なんて、ね。
こんな薬臭い地獄があるわけないでしょうって。
「お、起きたか」
気が付いた時俺がいたのは、病院のベッドの上。
第五話「狐の眼は全てを見渡す」
起きてすぐ俺に声をかけたのは見知らぬ男。
とは言っても、服装と声で大体見当はついた。
「えと・・・昨日のインディアン仮面さん?」
「インディアン仮面て。まあその通りなんだけど」
「・・・昨日は巻き込んじまってすみませんでした」
「いや、勝手に俺が割って入っただけだから」
インディアン仮面は苦笑いしながらぼりぼりと頭を掻く。
てかいつまでもこの呼び方だとちょっとアレだな。一応命の恩人だし。
「そういえばインディ(ryさんは名前、何て言うんですか?」
「Σインディ(ry・・・?まあいいや。
それよりも名前を訊くときは自分から名乗るものじゃないかい?」
ぐっ・・・。
と、言葉に詰まった俺の様子を見ると、
「なんてな。あの少年のまねをしてみただけさ。
俺の名前は蚯蚓山 蜘蔵(みみずやま くもぞう)。コードネームは『虫』。よろしく」
「・・・黄河 一馬っていいます。コードネームは『炎馬』。」
俺は少しはにかみながら蜘蔵さんの握手に応えた。
「・・・っと、少年と言えばそういえば紫苑は・・・」
「ああ、彼ならそこで・・・」
蜘蔵が指さした先には空きベッドで自分の両手に頭を載せて寝息を立てる籐堂紫苑。
「・・・いいんすか?あれって・・・」
「・・・空きベッドだし、いいんじゃない・・・かな・・・?」
我らがエアークラッシャー(紫苑)が作り出した沈黙を破り病室に入ってきたのは黒いコートのおっさん。
「おや、目が覚めたかね」
「・・・一名寝てますけど」
「まあいい。先に君たちと話をさせてもらおう」
「てかアレ?アンタ昨日の警察の人たちに混じってた・・・」
「ああ、そうだ自己紹介が遅れたな。私の名はザイツェフ・エストランデル。刑事だ。
よろしくな、黄河一馬君、蚯蚓山蜘蔵さん」
「え・・・あ・・・ああ、どもっす。
・・・ん?刑事?」
「そうだ」
二秒後、俺は土下座していた。
やばい俺裏トゥルーラー。しかも市街で爆発起こしたし。
「すまっせんしたー!」
「「え?」」
「俺は悪くないんです!全部あの紫色の髪のやつにそそのかされて・・・
とにかく逮捕とかは勘弁してお願いしまs・・・」
我ながらわけのわからない言い訳はザイツェフの笑い声で遮られた。
「いやいや、君達を逮捕するつもりは無いよ」
「え?」
「私は君たちに少し話を訊きたいだけだ」
「・・・話?」
「まああと一人来るから、そいつもそろったら話を始めようか・・・と。
噂をすれば、だな」
失礼します、と静かに言い、病室のドアを開け入ってきたのは
「あ、昨日の少女。
えと・・・小山さん、だっけ?」
「・・・餡子でいい」
「あれ?知り合い?」
「昨日たまたま会ったんです」
「この子の能力には我々警視庁も随分世話になっていてな、高校生だがこうして捜査に協力してもらうこともある」
「能力?」
「まあ、その話は置いといて、そろそろ本題に入りたいんだがいいかな?」
「あ、ハイ」
少しの沈黙の後、場の空気が整ったと見てザイツェフが口を開く。
「用件は、大まかに分けて三つある。
一つ目は、連続大量殺人犯『グレーテル』に関する情報を我々に提供してほしい。
二つ目は、我々の個人的な捜査に協力してほしい。
そして、三つ目は・・・」
「君達は、『大太法師(でいだらぼっち)』という名を知っているか?」

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