紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第六話「赤眼の師弟は風を操る」#3



「世界を相手に・・・戦争・・・!?」
「せや。この日本を含めた、世界のすべての国々に喧嘩を売るつもりなんや」

「でもいくら『大太法師』でも世界を相手に回して勝てるわけが・・・」

「せやな。とても日本をはじめとするクリアの権威達、
 そして列強諸国の強力な兵器の数々、全てを敵に回して勝てるとはとても思えへん」

「だったら問題無いんじゃ・・・」
「いや・・・」
「?」

「問題なのは、それによって生じる被害、そして勝てる訳も無いのに戦争を吹っ掛ける自信、その理由や。
 
 只でさえあの破壊力、耐久力や。アレが更に強うなったらと思うと、それこそ・・・



 地球そのものを滅ぼしかねんで」

「・・・・・」



「・・・せやから、それを防ぐには奴が戦争を起こすまでに奴を探し出し、奴に気取られぬよう始末するしかないんや」

「・・・・・」

自我を持った兵器とはここまで厄介なものなのか・・・。

いや、本当に厄介なのは俺達人間を滅ぼす事ができるまでに発展してしまった俺達の文明だろうか?

・・・にしても本当に後に引けなくなっちまったなあ。
確かにこんなことを聞かされたんじゃ、もうやるっきゃないだろ。

それに、冷静に考えて世界を敵に回すような化け物に勝てるわけがない。が、


まだここにいるメンバーの実力も把握していないが、
それでも何故か、コイツらとなら頂点へ登りつめることができる、そう思った。

そして・・・

「・・・今更怖気づいた?」
不意に、焔が言う。






___とある公園。



「・・・いくら軍隊とはいえ、この人数で俺を仕留められると思ったのか?」
紫苑は武装された兵士たちに包囲されたまま、ザイツェフを睨みつけながら言う。
「いや、まさかこの面子で君に勝てるなんて思っちゃいないよ。
 何せ君は、国が誇る研究所を潰したほどの男だ。
 ・・・だがここで君が抵抗するのならば、我々はそれを国を敵に回したものだと判断する。
 この目立つ場所でなら、誤魔化しも効かない。

 ・・・さあ、世界随一のクリア先進国、日本を敵に回すか、大人しく我々日本政府に付くか」



その言葉が終るとともに、兵士たちはジャキン、と一斉に銃を構えなおす。






「・・・クックック・・・。成程ね・・・」






刹那。

紫苑が特殊鋼糸を掴み、その腕が空を切る。

その挙動に反応した兵士達が、一斉に紫苑に向かって発砲する。



だがその弾丸の全ては紫色の閃光に・・・正確には、紫電を纏った特殊鋼糸に弾き返された。





再び紫苑が腕で空を切る。



そして紫色の閃光が、装甲ごと兵士たちを切り裂いた。



「・・・ふむ、つまり我々政府に付く気は無い、と?」

「アンタらに付いた所でどんな処遇を受けるかは目に見えているしな。束縛を受けるのは嫌いでね」

「・・・自由を奪われるくらいなら命を捨てると?」

「別に。捨てやしないさ」

ニヤリと嗤い、言う。





「賭けるんだよ、命をな。



 ・・・政府が相手、か・・・」





「まさか。むしろ楽しくなってきましたよ」

俺は焔に言い返してやった。
全く、アイツの戦闘狂が俺にもうつったかな?





紫苑は、ザイツェフに言った。

俺は、焔に言ってやった。






「「相手にとって不足は無い!」」