紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第七話「満月の夜の新月は破滅の足音」#5



・・・よくわからんが、確かにまずは俺が正面から突っ込むしかないようだな。
ザイツェフの武器はどう見ても近接戦闘用ではないし、
それにこの『日本の技術の粋の結晶』とやらを試してみたい。
そして・・・

なぜだか、負ける気がしない。

俺は、正面からセルシオと渓に向かって駆ける!

「正面から迂闊に飛び込んじゃいけないよ」
「!!」
渓がこちらに手を向け、目視でもわかるほど圧縮した空気の弾丸を放つ。

だが、次の瞬間、ザイツェフの方からの銃声と共に空気の弾丸はバァン!と轟音を放ち『何か』と相殺した。
「!?」

「さぁ一馬君、安心して緊張を保って攻めるといい。
 後ろには私がいる。全力をかましてやれ!」
「言われなくても!」
俺は剣に黄炎を纏わせる。



その時、ふと俺は異変に気付いた。






刀身が・・・火炎と同化している・・・!?






だが、そんな事に気を取られている暇はない。
俺はそのまま炎剣を縦に振りかぶり、渓に一撃を叩き込もうとする。
「火炎なんて、俺の風で吹き飛ばして・・・」
そこまで渓が言った時だった。

「馬鹿、避けるんだ!」
そう言い、セルシオがおそらく能力で渓を吹き飛ばす。






そして空を切り振り下ろされた俺の一撃は目の前の景色を、竹林を一瞬で火炎の海に変えた。

「「!?」」



「はっはっは。予想以上だな」

「ザイさん、これは・・・?」



「さっきも言っただろう? 世界一のクリアの技術の粋を集めて鍛えられたものだと。

 ・・・『使用者のクリアの能力に順応し、その性能を限界を超えて強化する剣』・・・。



 そうだな。『村正(むらまさ)』とでも呼ぼうか」





細かい原理はよくわからない。
おそらくこの剣の素材か、剣に刻まれている文字に秘密があるのだろう。


・・・なんて考察はどうでもよかった。
俺はただ一つの事を感じ、煌々と燃え盛る剣を見つめ、思わずそれを言葉にして放っていた。






「・・・スゲェ」