紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第零話「戦が残すは爪痕と」#7



悲鳴。絶叫。

俺があの深紅の勾玉を砕いた翌日にもそれは響いた。
・・・しかし、廃人が出ることはなかった、と。研究者たちがそう話しているのを耳にした。

・・・つまるところ、ある意味での実験の成功なのだろう。
あれが人の精神に反応して、反発するのなら、生き残ったということはそういうことだ。
尤も、俺が砕いたあれが『最強に限りなく近い力』をもたらすかどうかはわからない。
きっと、あいつらが埋め込まれたのはあれ・・・『八尺瓊勾玉』の欠片だろう。
つまりは、最強・・・とまではいかなくとも、相当に屈強な子供の兵士たちが誕生した、と。

・・・どうでもいいけど。



そんなことを、煩い音を撒き散らす輸送用ヘリの中で42号は考えていた。
暗い無機質な壁の中には、42号他『アームチルドレン海上戦部隊』の隊員。の、一部の少年たち。
彼らは『失敗作』と呼ばれ、ここに放り込まれた。
紅い水を操る、黒髪の少年。元は漆黒だったその両眼は、右目が暗い緋色に染まっている。
恐るべき再生能力を持つ銀髪の少年は、両眼が深い緋色に。
風を操る、茶髪の少年と黒髪の少年。
茶髪の少年の元は蒼だったその眼は、今は左目が深い緋色に染まっている。
黒髪の少年の両眼もまた、暗い緋色に。
そして、紫色の髪に紫色の髪の少年。彼らに共通して言えることは、
彼らの瞳には人間らしさが感じられない、といったことだろうか。
彼らは無機質な金属の床に視線を落とし続ける。



おそらく、ヘリが着地したのだろう。不安定な振動、煩い音が止んだ。
不意に扉が開き、軍人と一目でわかる恰好をした男が「降りろ」と。






残されたのは、五人の少年たちと適当な食料など物資が入っているであろう大きい鞄。



地図などなくても少年たちに大方の予想はついた。自分達が、何処に放られたのか。
自分達を運んできたヘリが、戻る途中におそらく高射砲に撃ち落とされたであろう、墜落していった。
辺りは焼け野原、硝煙、爆炎、鉄屑、死体。



最前線どころじゃない、少年たちは爆弾よろしく敵国の戦場のど真ん中に投下されたのだ。