紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第四話「昼蜘蛛はお人よし」#6



「・・・お前、何者だ?何故私の能力を防げた?」
『グレーテル』は紫苑に問う。

「人に名前を訊くときは自分から名乗れ」
紫苑は言った。



「・・・コードネーム『グレーテル』。それ以上を教える必要は無い」

「・・・コードネーム『紫電』だ」

『グレーテル』は大剣を構え、紫苑は足を肩幅開き半身になる。



次の瞬間両者の間に火花が散る。

おそらく『グレーテル』の大剣の一撃を紫苑が鋼糸で防いだのだろう。

『グレーテル』は間合いを取ろうとする。するとすかさず紫苑は蹴りで追い打ちをかける。
奴はそれを大剣で防ぎ、そのまま横に一閃する。
紫苑は大剣を軸にして回るようにしてそれをかわし、更に蹴りを放つ。
『グレーテル』はそれを素早くかわし、今度は縦に一閃。
紫苑はそれを先程の蹴りの勢いを利用して半身になってかわす。

そして次の瞬間、『グレーテル』の動きが止まる。
紫苑の鋼糸が『グレーテル』を捉えたのだろう。



「何者だあの少年は・・・あの化け物と互角以上に渡り合っているだと?」
インディ(ryが言ったので、

「・・・只の戦闘狂ですよ」
とだけ俺は教えといてやった。



「・・・その程度か?随分とあっけないな」
紫苑は勝負をつけようと鋼糸にぐ・・・と力を込める。





「フフフ・・・」
不意に、『グレーテル』は笑い声を洩らす。



「お前、やるじゃないか・・・」

その言葉が終らぬうちに、影の槍が紫苑の鋼糸を切り裂いた。
「!?」
そしてそのまま影は紫苑に襲いかかる。
だが紫苑は電撃を放ちそれを弾く。



「・・・さすが、一筋縄ではいかないな」

そう言う紫苑の顔には苦笑いが・・・
あ、いや普通に楽しそうだわ、コイツ。



「コードネーム『紫電』か・・・覚えておこう」
『グレーテル』はそう言うと、たたたん、と壁を駆け上がった。





「『紫電』、覚えておけ。お前の首は私が殺る」

「・・・できるものならやってみな」





そして『グレーテル』は夜空の闇へ消えた。





俺とインディ(ryさんはポカーン、とするばかり。

「・・・逃げた・・・?」



「そりゃあ、これ以上公衆の面前で自分の手の内を晒しても何も得はしないだろうからな」
紫苑の言葉にはっとして周りを見てみると、



パトカーの音。
武装した警察のみなさん。
黒いコートのおっさんが
「無駄な抵抗はやめて大人しく投降しろ」
とか言ってくる。

・・・ちょ、え、えええ!?



「・・・なんで警察が来てるの?」

「さっきの謎の爆発のせいだろうな、おそらく」



・・・ああ、あれか。
『逃げ場無しの俺のハイパー必殺技☆』



ホントだ、逃げ場無しだわ。
あれ?そういや俺裏トゥルーラー。
てかその前に街中でクリア使っちゃったよ、攻撃が目的で。
あれ?てことは俺これ捕まるの?
いや待て、俺は噂の殺人鬼に殺されまいと抵抗しただけであって、
つまり正当防衛なわけだよね?
てかその前に紫苑君、君ならこの包囲網を全滅なんて余裕だよね?
さあ!今こそその戦闘狂スキルを発揮するんだ!
てかあれ?なんか目の前が暗く・・・



・・・あ、俺腹に穴空きっぱなし。



スミマセン、血が足りないッス。





「ちょ・・・しっかりしろ君!」
「・・・すげえ出血量だな」



そしてそのまま俺は気絶した。

          第四話・完