紫電スパイダー  紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE /作



第三話「季節は天上天下唯我独尊」#1



「・・・ふう」



パンドラのビルの前。

紫苑は仮面を外し、辺りを一瞥する。



少し遅れて、一馬もビルから出てきた。







結局あの後、紫苑は五十七億円を受け取らなかった。





「___今日未明、XX県XX市のとあるビル地下の
  スタジアムで、大量殺人事件が起こったようです。
  警視庁の調べによると___」




第三話「季節は天上天下唯我独尊」






・・・思い出した!




確か昨日俺はあの後、
紫苑に無理矢理居酒屋、つまり今の今まで俺が爆睡していたここに連行されて・・・



・・・一杯目飲んだ後の記憶が無いんですが。



そして紫苑の姿が見当たらない。ついでに外が騒がしい。




「あったまいてぇ・・・」
これが噂の二日酔いか。俺は頭を押さえながら外に出る。空気がうめえ。
(会計は紫苑が済ませといてくれたようだ)



外に出ると、『パンドラ』のビルの辺りに人だかりができていた。



内部告発でもあったか?そんなことを考えながら、適当に近くの人に訊いてみた。


「あのー、スミマセン。何かあったんですか?」

話しかけた後に気付いたのだが、
俺が話しかけたのは俺と同じ年くらいの少女だった。

髪は淡い水色のショートカット、服は制服を着ている。どこの学校のだかは知らないけど。
顔は・・・やばい、ちょっと好みかも。

「・・・大量殺人が、あったみたい」

少女は静かに言った。



・・・大量殺人、か。
少なくとも、紫苑のことではないな。





昨日の『トラジェディ』。
あれだけの人数が戦闘不能になったにも関らず、
死人は一人も出なかった。

いや、正確には「出さなかった」だろうか。

岩猿の時といい、なんだかんだで奴は俺の目の前では一人も殺していない。

そういう主義なんだろうか?まあいいや。

とか考えていると、少女がまた口を開いた。





「事件の時、『パンドラ』にいた人は皆死んでしまったみたい。店側の人も含めて」





「・・・え?」




思わず訊き返してしまった。




バカな。




『パンドラ』に集った猛者達が・・・全滅・・・!?



「・・・それと、これはまだ出回ってない情報」







「犯人は、白金色の髪に黒いワンピースの少女」