二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.125 )
日時: 2013/09/23 21:55
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: geEpMW.a)

九頭龍の名前を変更しました。それと、デッキのカードの追加・変更もしました。さらに漫画のあのキャラのデッキと同じカードをいれることになってしまいましたが....。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.126 )
日時: 2013/09/25 17:56
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

タクさん


 すみません、コメントを見逃していました。申し訳ないです。今更感はありますが、とりあえず返しておきます。
 仰る通り、今回の舞台は前に少し触れていた海ですが、だからと言ってそれらしいイベントはないです。いつものようにデュエマしかしないと思います。
 しかし、わりと重要な回にはなると思います。既存キャラが出るか新キャラが出るかはお楽しみに。ついでに言うと、今回は夕陽らの中の誰かが活躍する予定です。


大光さん


 了解しました。ですがまあ、正直モノクロは漫画の方は読んでいないのであんまり知らないんですよね。だから無問題です。
 キング・コマンド・ドラゴンのデッキはまだ動かしたことがないので、どう動かすかを楽しみにしながら、その動かし方を考えておきます。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.127 )
日時: 2013/09/25 18:14
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 数時間ほどデュエマをし続けた四人。時計の針はもう真上を指しており、昼休憩に入った。
 ……のだが、
「昼過ぎたらもうあんまり客来ないから、適当に遊んで来てもいいよ」
 という店長の一言で、このみが爆発。汐と姫乃の腕を引っ掴んで浜辺へと爆走していった。
「相変わらず落ち着きない奴だなぁ……高校入ったら少しは変わると思ったけど、そうでもなかったな」
「あれ? お前は海行かないの?」
 昼時も過ぎて人もかなり減った店のテーブルに夕陽が一人で座っていると、店長から声がかかった。彼女の言うように、夕陽は浜辺をぼんやりと眺めているだけで、動こうとする気配がない。
「ちょっと午前中ではしゃぎすぎて、疲れたんですよ。あと僕は、海は泳ぐよりも見る方が好きなので」
「へぇ、犯罪的だな」
「人を見てるわけじゃないですよ!?」
 またあらぬ誤解を受け弁解する夕陽だが、店長は笑って返すだけだった。冗談なのだろうが、どうしてもペースを狂わされる。
「で、夕陽だっけ? あの三人のうち、誰がお前の女?」
「……いや、いやいや。なに自然な流れでとんでもないこと聞いてるんですか。別にそんな間柄じゃないですよ、あの三人は」
 あまりにも唐突で、しかし自然すぎる流れだったために反応が遅れたが、そこはきっちりと否定する夕陽。
「このみはただの腐れ縁ですし、御舟は後輩で、光ヶ丘は友達ですよ」
「はぁん、腐れ縁に後輩に、友達なぁ……」
 いまいち納得していないような店長の態度。しかし意外にも、深くは追及してこなかった。しきりに店内の壁時計を確認している。
「どうしたんですか? 団体客でも入る予定があるんですか?」
「そんなシステムはうちにはねぇよ。いやなに、そろそろ“あいつ”が来る頃だなと思ってな。さっきはあんなこと聞いたが、お前はハナッからここに残すつもりだったんだ」
「あいつ? 誰ですか? その言い方だと、その人もデュエマするんですか?」
「まあそんなとこだ。ここらじゃ一番強い奴でな、歳はお前と同じぐらいだが……お? 噂をすればなんとやらだ、来たぞ」
 そう言って店長が指差す方向には、正直に言って人混みしか見えない。しかしやがて、その人混みからゆっくりと出て来る人影を見つけた。その人影は、こちらに歩んできている。
 そのうち人影の姿が明瞭になる。性別は男、確かに年齢は夕陽とそう変わらなさそうな青年だ。背は夕陽より少し高いくらい。前髪の切れ目からは鋭いが、どこか無感動さも感じられる瞳が覗いている。
 服装は遊びに行くためのものと言っても不自然ではないが、見たところ手ぶらなため、海水浴が目当てではなさそうだ。しかし腰には、明らかにデッキケースがぶら下がっている。
 青年は無言のまま店内へと入り込み、店長の目の前まで来る。しかし、先に言葉を発したのは店長だった。
「よう、リュウ坊。今日は少し遅かったな」
「何度も言ったが、俺の名前はナガレだ。いい加減間違えるな。今日は少し海岸を歩いていたから遅れた、それだけだ」
「あっそ。そういや、今日で最後だっけか。まあそんな遠くに行くわけでもないみたいだし、休みの日くらいは顔出せよ」
「暇だったらな。それより——」
 どこか気の置けない間柄と言うか、関係と言うか、そんな空気を醸し出す二人の間に入り込めないでいた夕陽。青年はそんな夕陽に視線を移した。
「今年はバイトが足りないんじゃなかったのか? それともフロア担当か?」
「いや、おまえの思ってる通りだよ。ちょっとダチに頼んで来てもらったのよ。ちょろっと見たけど、結構強いみたいだぜ? お前も危ないんじゃないのか?」
「それはやってみないと分からないな」
 などと、また二人の会話が始まったかと思うと、青年が踵を返して店の奥——つまりデュエルスペースへと歩いて行った。
「ほら、なにぼけっとしてんだ。お前も行くんだよ」
「え? 僕ですか?」
「たりめーだ。バイトだろ、ほら」
「はぁ……」
 どうも釈然としないが、しかしやることはデュエマだ。午前中に来た相手の中で、高校生くらいの強い相手は汐がすべて受け持っていたため、夕陽は小中学生としか戦っていない。なので同じ年代の相手となると、多少は気合が入る。
「ねぇ、君さ。名前はなんて言うの? さっきはリュウって呼ばれてたけど」
 互いに位置に着くと、デッキをシャッフルしながら夕陽はそう尋ねた。すると青年は、店長の時と変わらないどこか無感動ながらもぶっきらぼうな調子で答える。
「違う、俺の名前はナガレだ。水瀬流、水の瀬で水瀬。流れると書いて、ナガレだ」
「へぇ……」
 成程、と思った。確かにその漢字なら初見だとリュウと呼んでしまうだろう。
「さて、じゃあ始めようか」
「ああ」
 こうして、夕陽と流のデュエルがスタートした。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.128 )
日時: 2013/09/25 23:25
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「俺のターン、《飛散する斧 プロメテウス》を召喚」


飛散する斧(スプラッシュ・アックス) プロメテウス 水/自然文明 (5)
クリーチャー:アウトレイジ 1000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から2枚をタップしてマナゾーンに置く。その後、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻す。


「効果で2マナ加速し、マナゾーンから《キング・シャルンホルスト》を回収。ターンエンドだ」
「じゃ、僕のターン」
 カードをドローし、夕陽は場を確認する。
 まだシールドはどちらも五枚あるが、流は序盤からマナ加速のカードを連打している。墓地には《霞み妖精ジャスミン》や《フェアリー・ライフ》。バトルゾーンには《青銅の鎧》とさっき召喚した《プロメテウス》だ。
 対する夕陽の場には《コッコ・ルピア》一体のみ。
「マナ加速しまくって、大型クリーチャーにつなげるデッキか……? だったら早く決めた方が吉か。《爆竜 GENJI・XX》を召喚、そのままW・ブレイクだ!」
 スピードアタッカーの《GENJI・XX》で早速二枚のシールドを叩き割る夕陽。しかし、
「……S・トリガー発動。《父なる大地》及び《ドンドン吸い込むナウ》。《父なる大地》の効果で《GENJI・XX》をマナゾーンの《スピア・ルピア》と入れ替える。そして《ドンドン吸い込むナウ》の効果で《鎧亜戦隊ディス・ピエロ》を手札に入れる。自然のカードを手札に加えたので、《コッコ・ルピア》をバウンス」
「うわっ、やるなぁ……ターン終了」
 二枚連続でS・トリガーを踏んでしまい、場のアドバンテージを失ってしまった夕陽。しかしまだいくらでも巻き返せる。
「《鎧亜戦隊ディス・ピエロ》を召喚。さらに《再誕の社》を使い、墓地の《父なる大地》と《ドンドン吸い込むナウ》をマナゾーンへ。そして《ディス・ピエロ》のスペース・チャージ発動」


鎧亜戦隊ディス・ピエロ 水/自然文明 (5)
クリーチャー:ロスト・クルセイダー/エイリアン 4000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スペース・チャージ:水/自然
SC—水:カードを1枚引く。
SC—自然:自分の山札の上から2枚を見る。その中からクリーチャーを1体見せ、手札に加えてもよい。その後、残りを好きな順序で山札の一番下に置く。


「山札の上二枚を見て、《キング・ケーレ》を手札に加える。さらに1ドロー。ターンエンド」
「なにもしない……?」
 結局、流はこのターン、マナチャージと手札補充だけに終わった。
「一気に攻めるタイプか……? だったらいまのうちに仕込みかな。《コッコ・ルピア》を召喚。《スピア・ルピア》で《青銅の鎧》を攻撃!」
 《スピア・ルピア》も《青銅の鎧》もパワー1000。同士討ちとなって破壊されるが、この時《スピア・ルピア》の効果が発動する。
「山札から持ってくるのは……こいつだ《ガイアール・アクセル》!」
 《ガイアール・アクセル》は他のドラゴンにスピードアタッカーを与えるクリーチャーだ。
「……俺のターンだ。《キング・シャルンホルスト》《キング・ケーレ》を召喚。《キング・ケーレ》の効果で《コッコ・ルピア》をバウンス」
「またかよ……くっ」
 マナを溜めるのは一時中断したが、今度はブロッカーで守りを固め、しかも《コッコ・ルピア》までいなくなってしまった。
 だがそれでも流は攻撃せず、ターンを終える。
「僕のターン。これで6マナ……ここは、《コッコ・ルピア》を召喚! そして残り3マナで《闘竜鬼ジャック・ライドウ》を召喚だ!」
 夕陽が召喚したのは、自身と同じ種族を持つ進化クリーチャーをサーチする《ジャック・ライドウ》。本来は《アポロン》をサーチするために投入したカードだが、勿論、一般人相手に《アポロン》は抜いている。そして代わりに投入したのが、
「山札から《超竜バジュラ》をサーチ。これで次のターンから、ガンガンマナを削っていくぞ。ターン終了」
 流がマナを増やして超重量級のクリーチャー——たとえばゼニスなんかを出す戦術だと読んだ夕陽が取った作戦は単純明快。マナを削っていく作戦だ。
 《バジュラ》は攻撃するたびに相手のマナを二枚吹き飛ばす能力を持つ。これで切り札召喚を遅らせ、攻めていくのが夕陽の作戦だ。
 しかしそんな夕陽の思惑に対し、流も手を打ってきた。
「……《霊樹海嶺ガウルザガンタ》を二体召喚」


霊樹海嶺ガウルザガンタ 水/自然文明 (5)
クリーチャー:リヴァイアサン/ミステリー・トーテム 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
シンパシー:ゲル・フィッシュおよびスノーフェアリー
進化クリーチャーがバトルゾーンに出た時、バトルゾーンにある進化クリーチャーをすべてタップする。


「うっ、先読みされたみたいに嫌なクリーチャーを出されたな……」
 流が出したのは《ガウルザガンタ》、端的に言えば場に出た進化クリーチャーをタップする能力を持っている。
 この能力があるせいで、次のターンに出す《バジュラ》の攻撃は1ターン遅れてしまう。その1ターンのタイムラグの間に、恐らく相手は《バジュラ》を除去してくるだろう。そうなってしまえばこちらの損失が大きい。
「となると、ここは無理に《バジュラ》は出さない方がいいな……」
 そう呟く夕陽。そして、
「《プロメテウス》と《ディス・ピエロ》でシールドブレイク」
「え……?」
 ここで流はシールドをブレイクしてきた。前のターンは攻撃しなかったというのに。まったくわけが分からないが、とりかく夕陽はシールドを手札に加える。
「ターンエンドだ」
(殴り返されないっていう条件なら、前のターンもそうだったはず。なんでこの局面で攻撃してきたんだ? 殴り手が増えたから、こっちにプレッシャーをかけるため……?)
 実際、夕陽は流のアタッカーを処理できなければ、次のターンにS・トリガーが出ない限りとどめを刺される。そう考えれば納得はできる。
 地味ではあるが危機的状況に対する手を考えながら、次のカードを引く夕陽。そしてそのカードを見て、笑みが零れる。
「よし来た、頼んだぞ《ドルボラン》!」
 夕陽が引いたカードは、いつか実体化した姿と戦った《戦攻竜騎ドルボラン》だ。
「《ドルボラン》の能力で、まずは邪魔なブロッカーを排除だ! 《キング・ケーレ》を破壊して、《キング・シャルンホルスト》をバウンス!」
「っ……」
「まだ終わらないよ。《ジャック・ライドウ》で《ディス・ピエロ》を攻撃!」
 これで流の場に残るのは《プロメテウス》と二体の《ガウルザガンタ》のみとなった。
(しかも、手札には《ガイアール・アクセル》と《ボルシャック・NEX》がいる。次のターン、《NEX》で《コッコ・ルピア》を呼んでから、《ガイアール・アクセル》に繋げて一気に攻め込んでやる)
 勿論、場のクリーチャーが除去される可能性もあるが、それでも大打撃を与えられることは間違いない。それに、目ぼしい除去カードはあらかたマナゾーンに落ちているようにも見える。守るにしても、中級ブロッカーを一、二体並べるのが精々だろう。
 そう思っていた夕陽。しかし流が次のターンに繰り出すカードは、そんな予想を遥かに超えたものだった。
「俺のターンだ。《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚」
「……あれ? バウンス、しないの?」
「ああ」
 意外と言うか、ありえないレベルの行為だ。確かに《ジャニット》の能力は任意だが、普通はここで《コッコ・ルピア》をバウンスする。
 しかし流には、そんなことをする必要はなかった。なぜなら、彼が行うのは手札へのバウンスなどというその場凌ぎよりも、さらに上位の除去なのだから。
 流が手札のカードに手をかける。その瞬間、夕陽の背筋に悪寒が走る。
(なに、この感じ。どこかで感じたことあるような……まさか——!?)
 不安と焦燥に駆られる夕陽。しかし、流の動きは止まらない。
「二体の《ガウルザガンタ》と《ジャニット》を種にして、進化」
 三体の水文明のクリーチャーが重ねられる。一見するとそれだけだが、夕陽はその裏に、大海に巻き起こる渦潮のようなものを見た。三体のクリーチャーが、吸収されるようにして一つの姿になる。
 そして、予想だにしない言葉が耳に届く。
「大海を支配せし海神よ、三叉の鎗を構え、怒りの嵐ですべてを飲み込め。神々よ、調和せよ。進化MV——」
「進化MVだって!?」
 驚愕する夕陽に構わず、流は続ける。巨大な渦潮は中心で一つの形を作り、巨大な“神”となって降臨する。

「——《海洋神話 オーシャンズ・ネプトゥーヌス》!」

 そしてその神は、『神話』という形で現れたのだった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.129 )
日時: 2013/09/27 08:01
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

海洋神話 オーシャンズ・ネプトゥーヌス 水文明 (9)
進化クリーチャー:メソロギィ/リヴァイアサン/ポセイディア・ドラゴン 18000
進化MV—自分のリヴァイアサン一体と水のクリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD6:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを3枚まで引いてもよい。
CD9:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の手札とシールドを見る。その後、相手の手札からカードを一枚選び、持ち主のシールドゾーンに置いてもよい。そうした場合、相手のシールドを一つ選んで持ち主の手札に加える。ただし、その「S・トリガー」は使えない。
CD12:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のバトルゾーンにあるクリーチャーをすべて持ち主の山札に加え、シャッフルする。
T・ブレイカー


「なんで、君みたいな一般人が『神話カード』を……!?」
 予想だにしない場面で現れた『神話カード』、《海洋神話 オーシャンズ・ネプトゥーヌス》だが、とりあえず今はデュエルを進行する。
 単純に考えて、流の場にはT・ブレイカーの《ネプトゥーヌス》と、《プロメテウス》がいる。これだけでシールド残り三枚の夕陽はダイレクトアタックを喰らってしまうのだが、流はさらなる追い打ちをかける。
「まずは《ネプトゥーヌス》の能力を発動させる。CD6で三枚ドロー。さらに、CD9で、お前の手札とシールドをピーピングする」
「っ……」
 手札とシールドを見られた夕陽。それだけなら構わないのだが、《ネプトゥーヌス》の能力は見るだけではない。一枚だけ、手札とシールドを入れ替えさせられるのだ。
「……なら、お前の手札《ガイアール・アクセル》をシールドに埋め、シールドからはこいつを手札に加えてもらう」
「くっ、《スーパー炎獄スクラッパー》が……!」
 手札は補充され、S・トリガーは潰される始末。しかも、
「CD12、お前のクリーチャーを全て、デッキに送り込む」
「全部デッキに!? なんて効果だ……」
 とはいえ、ただでさえ進化MVは進化元が確保しづらい中、《ネプトゥーヌス》の進化元は重量級のリヴァイアサン。しかも自身のコストも9とかなり重い。ゆえに、それに見合うだけのカードパワーを備えているのだろう。
 反撃の芽を摘み終えると、遂に流と《ネプトゥーヌス》による攻撃が始まる。
「行くぞ。《オーシャンズ・ネプトゥーヌス》でT・ブレイク!」
 夕陽の残り三枚のシールドがすべて割られる。その中に、S・トリガーはない。
「《プロメテウス》でダイレクトアタックだ!」
 そしてとどめを刺された。完全に夕陽の敗北である。
 だがこの時、夕陽には敗北感や悔しさより、疑問や驚きの方が強かった。そして夕陽は流を問い詰める。
「お前も、“ゲーム”の参加者だったのか……?」
「……? そういえば、さっき『神話カード』がどうとか言っていたな。聞き違えではなかったか。ということは、お前もか?」
「え? ああ、そうだけど。というか、僕の《アポロン》を狙って来たわけじゃないのか……?」
 今まで夕陽に戦いを挑んできた者はほぼすべて《アポロン》が狙いだったため、てっきりそう思い込んでいたが、しかし流の様子を見るからに、そういうわけでもないようだ。というより、夕陽が“ゲーム”参加者であることも知らなかったようである。
 だが、夕陽のことを何も知らないということでもなかった。
「《アポロン》……そうか、お前が『昇天太陽サンセット』か。名前は聞いたことがある。かなりの強者だと聞いていたが——」
 流が言葉を紡ぐ。ちょうどその時、視界の端に、海から戻って来たらしいこのみと姫乃、そして汐の三人が映った。しかし夕陽の脳はその三人を認識するよりも、流の言葉に反応する。

「——思ったほどでもない、弱いな」

 はっきりと、突きつけられるように放たれる。
 一人のデュエリストとしては反論したいところだが、負けた後ではなんの説得力も生まれない。夕陽は黙ってその発言を受け、そこで三人の存在に気付いた。向こうも、こちらの状況をある程度は察したのか、
「空城くん、もしかしてその進化クリーチャーって……」
「光ヶ丘の思ってる通りだよ、『神話カード』だ。そして、こいつも“ゲーム”参加者みたいなんだ」
 夕陽の一言で鋭い視線が流に集まる。しかし流は動じる素振りを一切見せず、淡々と語る
「参加者と言っても、どこかの組織に属しているわけではないがな。しようと思って参加しているわけでもない。今回も、別にお前を狙っていたわけではない、『昇天太陽サンセット』。ただ、実力に関しては少し拍子抜けだったが——」
「そんなことはどうでもいいです」
 流の言葉を遮ったのは、意外や意外、汐だった。
「汐ちゃん……? どしたの? なんか怖いよ?」
 このみの言うように、表情こそ変わらないが汐からは言いようもないオーラのようなものが滲み出ていて、恐怖すら感じる。そんな汐はこのみの言葉を無視して、
「さっきの言葉、撤回してください」
「? どの言葉だ?」
「先輩を弱いと言ったことです。先輩は、弱くなんてないです」
「御舟……?」
 汐の発言に首を傾げる夕陽。後輩が自分の名誉を気にしてくれているのは嬉しいが、しかし汐の性格を考えると、どうしても違和感を感じてしまう。やはり、いつもの汐とは少し違うように見える。
「俺はただ、思ったことを言っただけだが……しかし、現に『昇天太陽サンセット』は俺に負けている」
「たった一回の対戦では、デュエマの強さは分からないですよ。なら、こうしないですか」
 そこで、汐は一つ提案する。
「今から私と対戦してくださいです。それで私が勝てば、さっきの発言を撤回してください」
「……俺が勝てば、どうなるんだ?」
「これを譲渡するですよ」
 そう言って汐が取り出したのは、彼女が持つ『神話カード』、《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》だった。
「『神話カード』……」
 他の『神話カード』と比べて、《ヘルメス》の能力は明らかに異質である。強力無比なその力は、“ゲーム”参加者なら是が非でも欲しがるだろう。
「どうでしょうか。あなたのデッキは水文明が主体のようですし、少し構成を弄ればこのカードもすんなり入ると思うのですが」
「……分かった。その申し出、受けよう」
 しばし考え込んでから、流は汐の提案を受け入れた。
「では、私はデッキを取ってくるです。少し待っていてください」
 そう言って、汐は踵を返し荷物を置いてある部屋へと向かう。その間、流は夕陽とのデュエルで展開していたカードを片付け、シャッフルしていた。
「あ……御舟! ちょっと待って」
 と夕陽が言っても、汐は止まらず、結局ロッカールームのような荷物置き場まで同伴した。
「御舟、どうしたのさ。なんからしくないよ? 僕のことを思ってくれるのは嬉しいけど、負けたのは事実だし……それにあいつ、かなり強かった。一筋縄でいく相手じゃないよ」
 ごそごそと鞄を漁る汐にそう言う夕陽。しかし、汐はなにも言わない。
 だが、ふと一つのデッキケースを掴んだ時、彼女は振り返る。
「……先輩は、私がどうして今の学校にいるのか、ご存知ですか」
「へ? あー……まあ、覚えてるよ。転校してきたんだよね、東鷲宮中学に。デュエマの強い転校生がいるからって、このみに引っ張られたのはよく覚えてるよ」
「そうです。では、その前の学校はどこか、知っているですか」
「えっと……いや、それは知らないな……」
 夕陽がそう言うと汐は、でしょうね、と返して続けた。
「私は昔、周りの子供たちとの壁や両親の問題で、地元を離れたり一人で暮らしていた時期があるのです。この地に来る前は、いわゆるデュエリストの専門学校……いや、養成学校に在籍していたのです」
「そうだったんだ……それは知らなかった」
 汐の過去を垣間見た夕陽。同時に、汐がどうしてあんなにも強いのかも判明した。
「そこには、凄い“先輩たち”がいたのです。詳しくは言わないですが、その人たちのお陰で今の私があると言っても過言ではないくらいです。だから私は、“先輩”を侮辱する人が、許せないんです」
 無表情なのは変わらないが、いつになく感情的な汐。その様子は、夕陽たちの知らない汐の姿があった。
 そして汐の言う“先輩たち”の語感が、夕陽には自分たちに向けられる敬称と違うように思えた。本当の先輩と言うよりは、友達や仲間、といった感覚が伝わってくる。
「……では、行って来るですよ、先輩」
「あ、御舟っ」
 初めて見る汐の様子に戸惑っていると、汐は立ち上がってすたすたと歩き去ってしまう。反射的に手を伸ばす夕陽だが、その手は届かない。
「……あれ?」
 ふと夕陽は気付いた、汐が手に持つデッキケースがいつもと違うことに。
 そのケースは年季が入ったように傷だらけだった。


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