二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.381 )
日時: 2014/02/08 20:32
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「——うん、もう着いたんだね、了解。じゃあ現地っていうか、例のポイントで落ち合おうか」
 ピッ、と携帯の通話を切り、ラトリはそれを白衣のポケットに仕舞い込む。
「……そろそろ、か」
 冬ならではの澄んだ空を見上げて、ラトリは誰に言うでもなく、呟いた。
「そういえば、三人が揃うのは、久し振りだな……」



 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは三枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《インフィニティ・ドラゴン》《コッコ・ルピア》《光神龍セブンス》《エコ・アイニー》《無双竜機ボルグレス・バーズ》。
 ジークフリートのシールドも三枚。バトルゾーンには《サイバー・N・ワールド》《神誕の大地ヘラクレス》《妖精左神パールジャム》とリンクした《真滅右神ジーザス・メリーチェーン》。
 そして、


神人類 ヨミ 無色 (8)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/オラクル 12000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、カードを3枚まで引いてもよい。
T・ブレイカー
中央G・リンク
このクリーチャーがカード3枚でリンクしていれば、自分のシールドはブレイクされない。


「《神人類 ヨミ》……!」
 ひまりは戦慄を覚える。このタイミングで、このクリーチャーはまずい。
「《プロジェクト・ゴッド》で出たから、召喚時の能力は使えねえが……リンク解除。《パールジャム》と《ジーザス・メリーチェーン》のリンクを外し、《ヨミ》とG・リンク!」
 左腕に《パールジャム》右腕に《ジーザス・メリーチェーン》を装着した、オラクルの頂点に立つ者《神人類 ヨミ》。
 《ヨミ》の力は、ゴッド・ノヴァ、ひいてはオラクルの中でも最上位に位置する。その中でも特筆すべきは、オラクル教団の教義に伝わる神話、その中オラクルが崇める天頂にして無情の神《シャングリラ》を雛形とした力だ。
「《神人類 ヨミ》が三体でリンクした時、俺のシールドはブレイクされない。お前はこの《ヨミ》を除去しない限り、俺へ攻撃を通すことができねえ」
 しかし仮に《ヨミ》を除去したとしても、彼には二つの腕がある。その腕をもぎ取っても、また新しい腕が付け替えられるだけだろう。両腕を同時に破壊しても、そうかもしれない。
 それは非常にまずい。さらに三体でリンクした《ヨミ》のパワーは27000、シールドブレイク数も実質四枚。加えて除去耐性や《ジーザス・メリーチェーン》の効果まであるのだから厄介だ。
「さて……じゃあ攻めるぜ。《ヘラクレス》でTブレイク!」
「っ! 《ボルグレス・バーズ》でブロック!」
 《ヘラクレス》の攻撃を、《ボルグレス・バーズ》が身を挺して防御。《インフィニティ》の能力で……生き残らなかった。運の悪いことに、捲れたのは呪文だ。
「続けて三体神《ヨミ》で攻撃! Tブレイクだ!」
「《セブンス》でブロック……!」
 今度はドラゴンが捲れ《セブンス》は生き残るが、このターンブロックできるブロッカーはいなくなった。
「バトルに勝ったので《ジーザス・メリーチェーン》の効果で、お前のクリーチャーを一体破壊しろ」
「《L・デストラーデ》を破壊。だけど、《インフィニティ》の能力で生き残るよ!」
「だったら俺は墓地の無色カードを回収させてもらう。さらに《サイバー・N・ワールド》でWブレイク!」
 そして最後に《サイバー・N・ワールド》の攻撃を喰らう。これで残りシールドは一枚。
「くぅ……S・トリガー発動! 《インフェルノ・サイン》で墓地の《炎龍王子カイザー・プリンス》をバトルゾーンに!」
 S・トリガーで《カイザー・プリンス》を呼び出し、ひまりは次のターンからシールドの回復を図る。今はまだ《セブンス》と《インフィニティ》で凌げているが、いつまでもつか分からない。シールドも増やしておくに越したことはないだろう。
「私のターン! 《閃光のメテオライト・リュウセイ》を召喚!」


閃光のメテオライト・リュウセイ 光/火文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 9500
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーをすべてタップする。
バトルゾーンにある自分のクリーチャーすべては「スピードアタッカー」を得る。
W・ブレイカー


「さらに《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》も召喚して、山札から《ヤバスギル・ラップ》を墓地へ! 《メテオライト・リュウセイ》の効果で私のクリーチャーはすべてスピードアタッカーだから、そのまま《メテオライト・リュウセイ》で《サイバー・N・ワールド》を攻撃! その時《カイザー・プリンス》の能力発動!」


炎龍王子カイザー・プリンス 光/火文明 (6)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分の光のドラゴンまたは名前に《プリン》とあるクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加える。
自分の火のドラゴンが攻撃する時、相手のシールドを1枚ブレイクする。


 《メテオライト・リュウセイ》は火と光のドラゴンなので、《カイザー・プリンス》の能力は両方とも発動する。
「だが、《ヨミ》が三体でリンクしている今、俺のシールドはブレイクできないぜ」
「分かってるよ」
 シールドをブレイクできないなら、せめて《ヨミ》のリンクが崩せるまで耐えるしかない。そのためにはシールドの追加で守りを固め、アタッカーもできる限り除去する。
「《ゼロ・ロマノフ》でも攻撃! その時、効果で墓地の《ヤバスギル・ラップ》を発動! 指定するのはリンクした《ヨミ》だよ!」
「破壊するわけねえだろ」
 ひまりの破壊の意思は一蹴され、代わりに墓地から《ヘヴィ》が蘇った。
「《ヘヴィ》を破壊!」
「《ヘラクレス》を破壊」
 そして《ゼロ・ロマノフ》の魔銃から放たれた弾丸がジークフリートのシールドに撃ち込まれたが、しかし《ヨミ》の発生させた結界により弾かれてしまう。
「……《カイザー・プリンス》と《セブンス》《L・デストラーデ》でもシールドをブレイク! 《カイザー・プリンス》の効果で、シールドを三枚追加!」
 このターン、《L・デストラーテ》の能力も合わせて一気にシールドを六枚にまで回復させたひまり。相手には《ヨミ》がいるので油断はできないが、これだけシールドが増えれば、《セブンス》と《インフィニティ》もいるのでもうしばらく耐えられるだろう。
 と思う、そんな余裕は甘かった。
「お前は、少し《インフィニティ》に甘えすぎだな」
 ジークフリートのターン。彼はカードを引きつつ、そうひまりに指摘する。
「今までさんざそいつに助けられたみてえだが……それももうお終いだ。《封魔左神リバティーンズ》を召喚。《インフィニティ》のパワーをマイナス2000!」
 《リバティーンズ》が召喚され、《インフィニティ》のパワーが下げられる。だがこれでもパワーは5000、まだ破壊されることはない。
 しかし、《リバティーンズ》の召喚と同時に、パキンッとなにかが割れる音が響く。
「リンク解除。《パールジャム》のリンクを外し、《ヨミ》と《リバティーンズ》をG・リンク! 《インフィニティ》をさらにマイナス2000だ!」
 《ヨミ》も《イズモ》と同じく中央G・リンクを持つため、リンク解除の能力を使うことができる。その能力で腕を付け替え、《リバティーンズ》のリンク時能力が発動。《インフィニティ》のパワーはさらに下げられ、これで3000。
「まだ終わらないぜ。《ジーザス・メリーチェーン》の能力で回収した《戦慄のプレリュード》を唱え、次は《悪魔右神ダフトパンク》を召喚! 再びリンク解除! 《ヨミ》に《パールジャム》をリンク! 《リバティーンズ》のリンクを外し、《ダフトパンク》とG・リンク! さらにマイナス2000!」
 これで《インフィニティ》の残りパワーは、僅か1000。
「そして、これで終わりだ! 《ダフトパンク》の能力発動! 墓地の《ニルヴァーナ》を復活! またまたリンク解除! 《ダフトパンク》のリンクを外し、《リバティーンズ》と《ニルヴァーナ》をG・リンク! 《ニルヴァーナ》の能力で《エコ・アイニー》《コッコ・ルピア》をタップ! 《リバティーンズ》の能力で《インフィニティ》のパワーをマイナス2000だ!」
「あ、ぅ……」
 弱ったような表情を見せるひまり。連続G・リンクにより限界までパワーを下げられた無限の龍の末路が、彼女には見えていた。
 これから無限の龍は、無限に生き延び、無限に殺される運命を辿る。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.382 )
日時: 2014/02/09 01:32
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは六枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《インフィニティ・ドラゴン》《コッコ・ルピア》《光神龍セブンス》《エコ・アイニー》《炎龍王子カイザー・プリンス》《閃光のメテオライト・リュウセイ》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》。
 ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《悪魔右神ダフトパンク》《封魔右神リバティーンズ》とリンクした《霊騎右神ニルヴァーナ》《妖精左神パールジャム》《真滅右神ジーザス・メリーチェーン》とリンクした《神人類 ヨミ》。
 シールドの枚数でも場数でも圧倒的にひまりが勝っているが、しかしひまりは三体でリンクした《神人類 ヨミ》のせいで攻められない。
 その上、《ヨミ》のリンク解除で《リバティーンズ》のリンク時能力を使い回され、《インフィニティ》のパワーは8000も下げられた。
 つまり、今の《インフィニティ》のパワーはゼロを下回っている。その意味が分からないひまりでもないし、ジークフリートも分かってパワーを下げ続けた。
「さ、《インフィニティ》を破壊しな……何度破壊されるかは、分からねえがな」
 《インフィニティ》のパワーはゼロ以下となり、破壊される。破壊される時、《インフィニティ》の能力で山札の一番上が墓地へ。ドラゴンなので《インフィニティ》は生き残る。
 しかし生き残っても《インフィニティ》のパワーはゼロ。再び破壊され、山札の一番上が墓地へ。ファイアー・バードなので生き残るが、やはりパワーはゼロのままなのでまたも破壊される。それが、延々と続けられた。
 無限に生き残る龍は無限に殺され、力尽きるまで何度でも破壊される。
「う、うぅ……」
 物凄い勢いでひまりのデッキが墓地へと落ちていく。途中で《フォーエバー・プリンセス》が落ち、一度山札が回復。そこからまた何枚かドラゴンやファイアー・バードが落ちると、遂に呪文が捲れる。
「呪文だから、《インフィニティ・ドラゴン》は、破壊されるよ……」
 龍に無限の命を授ける《インフィニティ・ドラゴン》も、“破壊され続ける”ことに対しては耐性がない。殿堂の力でも、弱点はあるのだ。
「これでブロッカーはいねえな。三体神《ヨミ》でQブレイク!」
 Tブレイクに、《パールジャム》の追加ブレイクが加わり、一気にひまりの三枚のシールドが吹き飛ばされた。
「っ、S・トリガー! 《オドル・ニードル》をバトルゾーンに!」
 四枚目のシールドが光の束となって収束し、《オドル・ニードル》が飛び出す。これで少なくともこのターン、シールドをすべてブレイクされることはない。
「《オドル・ニードル》か。生かしておいて後で《ヨミ》が破壊されるのはまずい。ならば《リバティーンズ&ニルヴァーナ》で攻撃、破壊だ」
 ゴッドも《オドル・ニードル》の効果で破壊され、ジークフリートは《リバティーンズ》を残した。
「これだけクリーチャーがいるのに、攻撃が通らないなんて……困ったよ……」
 様々な文明を取り込んでいるため、今のひまりのデッキはそれなりに除去カードが多い。しかしドラゴンが主体のデッキなので、相手クリーチャーをピンポイントで確定除去できるカードは、案外少ないのだ。《ヘヴィ》《アバヨ・シャバヨ》のように相手が選ぶか、《GENJI》《ヤバスギル・スキル》のように破壊できるクリーチャーが限定される場合が多い。
「……《チッタ・ペロル》と《「勝利」の頂 バトル・ザ・クライマックス》を召喚」


「勝利」の頂 バトル・ザ・クライマックス 無色 (11)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ゼニス/ハンター/エイリアン 12000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、そのターン、このクリーチャーは「スピードアタッカー」を得、すべてのバトルに勝つ。
このクリーチャーがバトルに勝った時、このクリーチャーをアンタップしてもよい。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 ここでひまりが召喚するのは、ゼニス。《「勝利」の頂 バトル・ザ・クライマックス》だ。
 バトルに勝てばアンタップし、無限に敵を破壊し尽くすゼニスだが、しかし如何にゼニスでも、三体神となった《ヨミ》のパワーには及ばない。勝利の頂点に立つ存在なのか、甚だ疑問を感じてしまうほど差がある。
「とりあえず……《メテオライト・リュウセイ》で《リバティーンズ》に攻撃。《カイザー・プリンス》の能力でシールドを追加して破壊するよ。続けて《バトル・ザ・クライマックス》で《ダフトパンク》を攻撃、こっちも破壊して、バトルに勝ったからアンタップ。最後に《カイザー・プリンス》で攻撃、シールドを追加」
 ゴッドを破壊しつつ、シールドを五枚にまで回復させるひまり。ドラゴンをアンタップキラーにする《チッタ・ペロル》と《バトル・ザ・クライマックス》なら、並大抵のクリーチャーは根こそぎ破壊できる。
 とにかく今は時間を稼ぎ、《ヨミ》を破壊する隙を窺うのだ。
「そんな隙、見せると思うか?」
 ひまりの心中を見透かしたような、ジークフリートの声が飛ぶ。
「まさかここまで粘って来るとは思わなかったぜ……舐めてたつもりはねえが、これほどとはな。流石、無敗の『太陽一閃サンシャイン』は違う」
 ひまりを称えるジークフリート。おだてるような口調ではない。純粋に、ひまりを強敵と認めた、ということだろう。
 しかし、
「だがな、無敗の称号はお前だけのものじゃねえ。俺だって、ほぼ無敗だ。今までロッテ以外に負けたことがねえ。そんでもって、“ゲーム”の参加期間で言ったら俺の方が遥かに長い。この意味、分かるよな?」
 ひまりと実力を認めた上で、自らの力を誇示する。それは決して高慢でも、自信過剰でもない。純然たる彼の力だ。
「G・ゼロ《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》。無色カードを三枚手に入れ、呪文《戦慄のプレリュード》。コストを5下げ《龍機左神オアシス》を召喚」
 同時に、パキンッと神の腕を繋ぐ紋章が割れる。
「《パールジャム》のリンクを外し、《オアシス》とG・リンク。《オアシス》の能力で《バトル・ザ・クライマックス》と強制バトルだ」
 左腕を《オアシス》に付け替えた《ヨミ》のパワーは28000。余裕で《バトル・ザ・クライマックス》は破壊された。
「くっ、ぅ……でも、エターナル・Ωで《バトル・ザ・クライマックス》は手札に戻る!」
「だからなんだ。バトルに勝利したので《ジーザス・メリーチェーン》の能力発動」
 ひまりはクリーチャーを一体破壊し、ジークフリートは墓地の無色カードを回収できる。
「……《エコ・アイニー》を破壊」
「俺は《プレリュード》を回収する。そしてそのまま《戦慄のプレリュード》、《精霊左神ジャスティス》を召喚。リンク解除、すべてのゴッドのリンクを外すぜ」
 ここでジークフリートは、不可解な行動に出る。
 《ジャスティス》が場に出て、腕を付け替える、リンク先を変更させるのはいいとして、しかしリンクを外すだけで新たにリンクしないのはどう考えてもおかしい。《ジャスティス》の能力で《プロジェクト・ゴッド》でも捲れ、新しくゴッドが出て来ればまたリンクできるとはいえ、それも確実ではない。
 だが時の流れはそんなことを考慮せず、山札上から五枚が捲られる。
 その中のカードを見て、ジークフリートは、今までにない、どこか凶悪で、しかし歓喜に満ちたような、そんな笑みを見せた。
「……来たぜ、最高だ。ここまで俺についてきたんだ、俺の切り札くらいは、見せてやらねえとな」
 ジークフリートはまず、捲られた五枚の中の呪文を唱える。
「《大地と永遠の神門》を発動。墓地、またはマナゾーンの、コスト7以下のゴッドを呼び出すぜ」
 刹那、世界が震撼する。空も、海も、陸も、宇宙や次元をも超えてすべてを飲み込むような絶対的な力が、ひまりに襲い掛かる。
 そして、立ち塞がる。

「《パールジャム》《オアシス》《ジーザス・メリーチェーン》……お前たちの命、俺が貰い受ける。そして、神の糧となれ!」
 腕を切り離された三体のゴッド・ノヴァが、神々しくも禍々しい光の中に取り込まれる。
「神と女神、合わせて神々——その片割れは、支配の神。信徒を従え、王国を築き、世界のすべてを我物とせん」
 神聖にして新星なる三体の神、しかしそれらの神も、神話の神々の前では、ただの種でしかない。
 太陽も、焦土も、萌芽も、賢愚も、慈愛も、海洋も、守護も、月影も、豊穣も、冥界も、生誕も——すべてを掌握し、支配せんとする神の前では、神であれ神話であれ、有象無象の塵芥同前。
 そして今、その神々の片割れが——
「神々よ、支配せよ! 進化MV!」
 ——降臨する。

「——《支配神話 キングダム・ユピテル》!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.383 )
日時: 2014/02/09 12:34
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは五枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《コッコ・ルピア》《光神龍セブンス》《炎龍王子カイザー・プリンス》《閃光のメテオライト・リュウセイ》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》《チッタ・ペロル》。
 ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《精霊左神ジャスティス》《神人類 ヨミ》。そして、
「『神話カード』……《支配神話》……!」
「ああ。これが俺の『神話カード』、神々の片割れ、《支配神話 キングダム・ユピテル》だ」
 その風貌、雰囲気は、高貴であり、厳格であり、凶悪であった。
 正にすべてを支配する王の如き風格。静かで、しかしそれでいて威圧的な眼をひまりに向けている。
「《ユピテル》の登場時能力発動、お前の手札をすべて捨てろ」
「っ……!」
 《ユピテル》の視線が強くなる。その瞬間、ひまりの手札が爆散した。
 エターナル・Ωで手札に戻った《バトル・ザ・クライマックス》も、他のドラゴン諸共叩き落とされてしまう。
「……《フォーエバー・プリンセス》が墓地に行ったから、墓地のカードをすべて山札に戻してシャッフルするよ」
「だからどうした。《ユピテル》は右G・リンク、ゆえに《ヨミ》の右腕となる」
 左腕には《ジャスティス》右腕には《ユピテル》を構える《ヨミ》。しかし、今までさんざんひまりを苦しめた《ヨミ》でさえも、《ユピテル》の前では霞んでしまう。どちらが主たる神なのか、分からなくなる。
 いや、主神ははっきりしている。それは中央の《ヨミ》ではなく、紛れもなく右神の《ユピテル》だ。
「さあ、喰らいな……ゴッドで攻撃」
 その時、《ユピテル》から一筋の光線が放たれ、《セブンス》が撃ち抜かれる。
「《ユピテル》は攻撃時、相手クリーチャーを一体破壊する。邪魔な《セブンス》を破壊だ」
 これでひまりは、ブロッカーを失ってしまった。
 そして《ジャスティス》《ヨミ》《ユピテル》の放つ光線が、ひまりに襲い掛かる。その一撃で、ひまりのシールドは四枚まとめて吹き飛ばされるが、その余波が凄まじい。
「くっ、ぅ……っ!」
 シールドの破片がひまりの身体をくまなく切り刻む。衝撃波で吹っ飛ばされそうになる。前のターンの《ヨミ》の攻撃はここまで強くはなかった。やはり、《ユピテル》の存在が大きい。
「……私の、ターン」
 心身ともにボロボロになりながらも、ひまりは辛うじて体を支え、カードを引く。
「《ポップ・ルビン》と、《偽りの名 バルキリー・ラゴン》を、召喚……」
「ほぅ、そいつで《太陽神話》を持ってくるのか?」
 《ポップ・ルビン》のドラゴンをアンタップする能力で《アポロン》のアタックトリガーを連続で使用すれば、《アポロン》のパワーは最大で45000にまで跳ね上がる。それならパワー36000となった《ヨミ》の三体リンクを崩し、残ったクリーチャーで総攻撃をかけることができる。
 しかしジークフリートは無駄だと思った。なぜなら、彼のシールドに埋まっているカードのうち一枚は、《クラフト・ヴェルク》で仕込んだ《DNA・スパーク》だ。一斉に攻撃してきたとしても、その攻撃は途中でストップされるし、《復活と激突の呪印》もあるので、片腕がもがれてもすぐに復活できる。
 だが、ジークフリートの予想は、外された。
「《星龍グレイテスト・アース》を手札に」
「あ……?」
 手札に入れたのは《アポロン》ではなかったのだ。
「《太陽神話》じゃねえ……? シールドに埋まってんのか?」
 こちらの仕込みが見抜かれたのかとも思ったが、見抜くもなにも、手札からカードを選んでシールドに置いたのだから、警戒されて当然だ。それに今のひまりは、そんなことを気にしていられる状況でもないはず。
「残ったマナで《ボルバルザーク・エクス》召喚……マナをアンタップして《アバヨ・シャバヨ》を召喚、《アバヨ・シャバヨ》を破壊」
「……《ジャスティス》を破壊だ」
 左腕が消し飛び、《ヨミ》の結界が破られる。これでひまりの攻撃は、ジークフリートに通る。
 とはいえ、S・トリガーを仕込んでいるため、ジークフリートに焦りなどはない。代わりに存在しているのは、疑惑。
 ひまりに対する、疑念だ。
「さらに《星龍グレイテスト・アース》を召喚」



「ひまり先輩、なんで《アポロン》を持って来ないんだ……?」
 神話空間の外で戦いを見守る夕陽も、ジークフリートと同じ疑問を抱いていた。
 夕陽はジークフリートの仕込んだS・トリガーのことは分からないが、それでもここで《アポロン》を出さない理由はないはずだ。
 なにより、《アポロン》はひまりの切り札。彼女を象徴する『神話カード』だ。夕陽がそうであったように、ひまりも幾度となく危機的状況を《アポロン》によって救われた。
 なのに、この状況で、この状況だからこそ生きるはずの『神話カード』を、彼女は使おうとしない。
「先輩……あなたは、一体なにを……?」


星龍グレイテスト・アース 光/水/闇/火/自然文明 (8)
クリーチャー:ワールド・ドラゴン 9000+
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに置く時、タップして置く。
相手のパワー6000以上のクリーチャーは、可能であればこのクリーチャーを攻撃する。
パワーアタッカー+4000
スレイヤー
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊された時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選んでタップし、その後、クリーチャーを1体、バトルゾーンから持ち主の手札に戻してもよい。


 いつものジークフリートなら、また面倒なクリーチャーが出て来たぜ、などと一笑に付しているところだろうが、しかし今はそれどころではない。
「そういや、こいつのデッキ……」
 あまり深く気にしていなかったが、ひまりのデッキは五文明のドラゴンを詰め込んだ異色すぎる連ドラ。各文明の特徴を最大限に生かし、デッキを凄まじい勢いで使い回していくデッキだ。
 とりあえずここでは一般的な連ドラの動かし方というものは置いておくとして、ひまりのデッキは奇妙な点がある。今でも十分おかしいが、《太陽神話》を主軸としているという点で見れば、妙な点だ。
 まず、色。文明だ。全色構成とはいえ、全ての文明が均等に入っているのではなく、ドラゴンの質が良い火や自然、闇のカードが比較的多く投入されているようだが、その中でも除去やマナ加速など、サポートに向いた自然、闇が目立つ。
 つまり、火文明のカードが少ない。今はコンセンテス・ディー能力を発動させるだけのカードが揃っているが、そうでない場合もそれなりに多かった。
 次に、ファイアー・バード。ひまりのデッキはドラゴンがメインなだけあり、ファイアー・バードも投入されているが、どうもその数が少ないように思えた。
 《コッコ・ルピア》や《エコ・アイニー》は複数枚投入されているようだが、それでも普段のひまりより枚数が抑えられているように感じる。他にも一枚挿しと思しき《チッタ・ペロル》や《ポップ・ルビン》などもいるが、やはり全体的に見てファイアー・バードの数が少ない。
 それらを踏まえて、ジークフリートは今までの対戦を振り返る。流石のジークフリートでも、目まぐるしく変化する彼女の墓地やマナゾーンのカードをすべて覚えているわけではないが、今までのデッキの消費から考えて、ほぼすべてカードがジークフリートの目に触れていても不思議はない。ジークフリートも『神話カード』は注意している。だがその中に《アポロン》はなかった。
 だとすると、考えられる可能性は——
「っ!」
 その考えに至ろうかというその時、ジークフリートのシールドが三枚吹き飛んだ。
「《メテオライト・リュウセイ》で攻撃、《カイザー・プリンス》の能力でシールドを追加しつつ、シールドを一枚ブレイクするよ」
 《カイザー・プリンス》の能力も合わせて、合計三枚のシールドをブレイクした《メテオライト・リュウセイ》。しかし、
「S・トリガー《復活と激突の呪印》《DNA・スパーク》《インフェルノ・サイン》。墓地の《リバティーンズ》を復活させ、お前のクリーチャーはすべてタップ。《サイバー・N・ワールド》も呼び戻し、シールドを追加、《リバティーンズ》は《ヨミ》とG・リンク。能力《コッコ・ルピア》と《ポップ・ルビン》のパワーをマイナス2000、破壊だ。最後に《サイバー・N・ワールド》で手札と墓地のカードをすべて山札に戻し、五枚ドロー」
 攻撃を止められてしまったひまり。しかし、それは予想の範疇であるかのように、彼女の表情は落ち着いていた。
 逆にジークフリートは、どんどん疑念を募らせていく。不可解なひまりの行動、言動、そして表情、仕草。
 再び、彼は今までのデュエルを回想した。ひまりの使用した、召喚した、マナに置いた、手札に入れた、墓地に捨てた、シールドから出た、全てのカードを思い返す。
「『太陽一閃サンシャイン』、まさか、てめえ……!?」
 そして、一つの仮説に辿り着いた。

「そのデッキ、《太陽神話》を入れてねえな……!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.384 )
日時: 2014/02/09 16:02
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ひまりとジークフリートのデュエル。
 ひまりのシールドは三枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《炎龍王子カイザー・プリンス》《閃光のメテオライト・リュウセイ》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》《チッタ・ペロル》《偽りの名 バルキリー・ラゴン》《星龍グレイテスト・アース》。
 ジークフリートシールドは一枚。バトルゾーンには《サイバー・N・ワールド》《神人類 ヨミ》とリンクした《封魔左神リバティーンズ》《支配神話 キングダム・ユピテル》。
「……ばれちゃったか」
 ひまりは特になんと思うでもなく、目を閉じて、静かに言葉を漏らした。
 彼女の『神話カード』——即ち《太陽神話 サンライズ・アポロン》。それは彼女を象徴するようなカードであり、そして今まで何度も彼女を勝利へと導いてきた、彼女の力そのもの、いやさ彼女そのものとさえ言えるカードだ。
 それを、ひまりは、デッキに入れていなかった。
 その事実には、夕陽も、このみも、姫乃も、汐も、少しだけだがシャルロッテも、驚きを禁じ得なかった。
 しかし最もそのことに驚き——いや、感情を高ぶらせたのは、ひまりと相対する男だけ。
「……はっ、ははっ。《太陽神話》を抜いたデッキな……」
 ジークフリートは片手で顔を覆った。そのまま俯き、乾いた笑い声を漏らしている。
 そして、

「——っざけてんじゃねぇぞッ!」

 激怒した。
 露わになった彼の表情からは、怒りしか読み取ることができない。今までの戦い、どんな状況であれ、舌打ちしようが目つきを鋭くしようが、苦笑であれ失笑であれ、軽く笑い飛ばしていた。
 だが今は違う。空間すらもひび割れてしまいそうなほど空気が震撼し、怒声が響き渡る。この上ない怒りの激情が迸る。
「お前、この期に及んで俺が何者か、知らないとは言わせねえぞ。【神聖帝国師団】師団長、ジークフリート・フォン・パステルヴィッツだ! 自分でもおこがましいとは思わねえ、戦績無敗、歴代“ゲーム”最強と謳われる、この俺だ。それを相手に、『神話カード』抜きで戦いを挑みに来ただと? 舐めた真似しやがって、ふざけんな!」
 ジークフリートの怒りの根底にあるのは、自分に対する評価の低さ。この戦いでは、結局《太陽神話》を手に入れられないという苛立ちもあるが、それ以上にひまりのこの戦いに対する臨み方が彼を激昂させている。
 強い相手には、それ相応の力で臨むべき。ジークフリートは、叩きに対してはそのような考えを持っている。一部例外を除き、誰に対してもその考えを貫いているし、相手にもそれを要求する。そもそもジークフリートを相手にして、手を抜ける者などはいないのだが。
 しかしひまりは、彼女がジークフリートを打破しうる、最も強力な力、『神話カード』を持たず、彼と戦った。それも、命を懸けた、死ぬか生きるかという戦いで、だ。
 いくら言葉で挑発されようと、ジークフリートは揺れない。しかし彼の言うひまりの「舐めた真似」は、ジークフリートの神経を逆撫でする。
「……別に、舐めてるつもりはなかったけどね。このデッキは、私が今まで作った中でも最高最強のデッキだよ。《アポロン》は、あなたと戦うに当たっては必要ないかなって、思っただけ」
「それを舐めてるつってんだよ! くそが! 胸糞悪ぃ……!」
 怒りが頂点に達したように、ジークフリートは地面を踏みつける。その足踏みだけで大地が割れてしまうのではと思ってしまうほどの勢いがあった。
「今まで何百何千何万というデュエリストと戦ってきたが、こんな屈辱は初めてだ。この俺を相手に、『神話カード』抜きで戦いに臨むなんざ、論外だろうが。くそっ、ムカつく、イラつく……!」
 怒りの形相などという言葉では収まり切らないほど、ジークフリートは憤慨していた。獣どころか魔獣のような鋭い目つきで、ひまりに引き裂くような視線をぶつけている。
「こんな舐めた真似されて黙ってられるかよ……ぶっ殺す! 俺のターン!」
 ひまりのクリーチャーは《DNA・スパーク》ですべてタップ状態。このターンはもう動けず、ジークフリートのターンとなる。
「《ニヤリー》を召喚! 山札の上三枚から無色カードをすべて手札に!」
 捲られたのはすべて無色カード、なので三枚とも手札に入る。
「呪文《戦慄のプレリュード》! 《イズモ》を召喚! リンク解除で《リバティーンズ》とG・リンク! 《チッタ・ペロル》を破壊! 続けて《戦慄のプレリュード》! 《双魔左神ディーヴォ》を召喚! リンク解除!」
 リンク解除で、ジークフリートは《リバティーンズ》《ディーヴォ》《イズモ》《ヨミ》の四体をリンクさせずに残した。
 この不可解なリンク解除は二度目、これでジークフリートの意図に気づかないひまりではなかった。
「《リバティーンズ》《ディーヴォ》《イズモ》、お前らの命はあいつのものだ。そして女神の糧となれ!」
 切り離された三体のゴッド・ノヴァは、神々しく煌々とする光の中に取り込まれる。

 

「……くる」
 《太陽神話》を持たないひまりに、いまだ吃驚している夕陽たち。シャルロッテも同様に驚いていたが、今はその驚きも消えていた。
 シャルロッテは激昂するジークフリートをぼうっと見つめながら、なにかに憑かれたように、小さく呟く
「かみとめがみ、あわせてかみがみ——そのかたわれは、せいたんのかみ。しんじゃをしたがえ、せいいきをつくり、せかいのすべてをかのものとせん」
 舌足らずだが、重く静かな声。それは神々の片割れたる女神を呼び出す儀式の言葉。
 太陽も、焦土も、萌芽も、賢愚も、慈愛も、海洋も、守護も、月影も、豊穣も、冥界も、支配も——すべてを包容し、生誕させる神の前では、神であれ神話であれ、有象無象の赤子同然。
 そして今、神々の片割れが——
「かみがみよ、せいたんせよ。しんかメソロギィ・ボルテックス」
 ——降臨した。

「——《生誕神話 サンクチュアリ・ユノ》」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.385 )
日時: 2014/02/09 17:27
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

支配神話 キングダム・ユピテル 無色 (7)
進化クリーチャー:メソロギィ/ゴッド/クリエイター 16000
右G・リンク
進化MV—自分のゴッド一体と無色クリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー・カオス(このクリーチャーの下にあるクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCDC能力を得る)
CDC6:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手は自身の手札をすべて捨てる。
CDC9:このクリーチャーがリンクしている間、このクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体破壊するか、相手は自身のクリーチャーを1体選び破壊する。
CDC12:このクリーチャーが《生誕神話 サンクチュアリ・ユノ》のみとリンクした時、相手は自身の手札、バトルゾーン、マナゾーン、シールドゾーンからカードを合計13枚選び、持ち主の山札の下に好きな順序で置く。
T・ブレイカー


生誕神話 サンクチュアリ・ユノ 無色 (6)
進化クリーチャー:メソロギィ/ゴッド/クリエイター 14000
進化MV—自分のゴッド一体と無色クリーチャー二体を重ねた上に置く。
左G・リンク
コンセンテス・ディー・カオス(このクリーチャーの下にあるクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCDC能力を得る)
CDC6:相手がクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
CDC9:このクリーチャーがリンクしている間、相手クリーチャーはこのクリーチャー以外を攻撃できない。
CDC12:このクリーチャーが《支配神話 キングダム・ユピテル》のみとリンクしている間、自分のターンの終わりに自分の山札を見る。その中からコスト13以下になるようにクリーチャーを選び、バトルゾーンに出してもよい。
T・ブレイカー


 《ユピテル》に続き現れた『神話カード』、神々の片割れである女神——《生誕神話 サンクチュアリ・ユノ》。
 その風貌は気高く、静かで、嫋やかだ。
 妃の如きすべてを包容する寛大さ。同時にあらゆる命を生み出し育む力強さを抱いた姿は、見る者を圧倒する。
 だが、《ユノ》の出現は、女神の力そのもの以上の意味を持つ。この場には既に《ユピテル》がいる。
 つまり、神と女神、神話最強の神々が、揃ったのだ。

「《ユノ》と《ユピテル》を——G・リンク」

 《生誕神話 サンクチュアリ・ユノ》《支配神話 キングダム・ユピテル》。生誕と支配、神と女神が、一つとなった。
「これでお前は終わりだ、正真正銘、絶対無比にな!」
 一体となった神々は、溢れんばかりの力を、今、解放する。
「《ユピテル》のリンク時能力発動! 《ユピテル》が《ユノ》のみとリンクした時、お前は自分のあらゆるゾーンにあるカードから十三枚選び、山札の下に置け!」
 その力は、正に支配。
 選択できるゾーンは、手札、バトルゾーン、マナゾーン、シールドゾーンの四ヶ所。選択範囲が広いとはいえ、十三枚は多すぎる。ひまりの場の被害は、相当なものとなるだろう。
「……じゃあ、《バルキリー・ラゴン》と《ゼロ・ロマノフ》手札全部、残りはマナゾーンから、山札に戻すよ」
 十三枚のカードを選択し、山札へと戻すひまり。クリーチャーやシールドを守ったため、マナへの被害がかなり大きい。
「《ヨミ》で《グレイテスト・アース》を攻撃!」
 単独で残った《ヨミ》が《グレイテスト・アース》へと光線を放つ。攻撃対象は《グレイテスト・アース》に絞られてしまっているが、破壊すれば問題ない。
 無論、破壊しても、だ・
「《グレイテスト・アース》のスレイヤー能力で《ヨミ》も破壊……でも……」
 破壊された《グレイテスト・アース》の能力は発動できない。いや、発動自体はできるが、その対象がいない。
「《ユノ》は選ばれない。当然、こいつとリンクした《ユピテル》もだ。そんな小賢しい真似が通用するかよ」
 バウンスもタップも出来ず、神々を止めることは、できなかった。
「……行け」
 一体となった《ユノ》《ユピテル》が動き出す。
「《ユピテル》の能力で《カイザー・プリンス》を破壊!」
 爆散する《カイザー・プリンス》。これで、攻撃するたびにシールドを増やすことも、打点を増やすこともできなくなった。
 だがそんなことを考える間もなく、神々の一撃が、ひまりに襲い掛かる。
「っ……!」
 残ったひまりの三枚のシールドがまとめて吹き飛ばされる。S・トリガーで出た《オドル・ニードル》も、《サイバー・N・ワールド》と相打ちになった。
「ターン終了時、《ユノ》が《ユピテル》のみとリンクしていれば、山札からコスト合計13以下になるようクリーチャーをバトルゾーンに出せる」
 その力は、正に生誕。
 《ユピテル》と繋がっていることで、新たな命を生み出すことができる能力は、強力すぎる。
「山札より出て来い、《聖霊左神ジャスティス》《爆裂右神ストロークス》!」
 ひまりの場に小型クリーチャーはいないので《ストロークス》の能力は発動しない。が、《ジャスティス》の能力は発動させた。
「山札上から五枚を見て、発動《神の裏技ゴッド・ウォール》! これで《ユノ》と《ユピテル》は無敵だ」
 除去耐性までつけられ、もはや手を付けられない。この神々を止めることは、不可能だ。
「……私のターン」
 手札がなく、マナもボロボロになったひまり。今の彼女にできることはほとんどない。
「最後でこの子か……《ボルシャック・NEX》を召喚」
 引いてきたカードは《ボルシャック・NEX》。《太陽神話》を呼び出すため、ひまりもこのカードにはかなり助けられている。
 だが、今の彼女のデッキに、《アポロン》はいない。
「《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに出して——ターン終了」
 攻撃せず、ひまりはターンを終了する。
 《ユノ》がリンクしている間、ひまりは《ユノ》以外に攻撃することができない。つまりシールドを直接狙うことができないのだ。
「こんなにブチ切れたのは久し振りだ……お前のことは脳みそから一生消えねえだろうが、お前の存在は影も形も跡形もなく、消し飛ばしてやる」
 ジークフリートの目は、本気だった。
「《悪魔右神ダフトパンク》を召喚、効果で墓地から《夢幻左神スクエア・プッシャー》をバトルゾーンに!」
 前のターン、リンクしていなかった《ジャスティス》と、このターンに現れた《ダフトパンク》、そして同じ境遇の《ストロークス》と《スクエア・プッシャー》が、一体となった。
 これでジークフリートのアタッカーは、リンクしたゴッドが三体。《L・デストラーデ》でシールドが増えているといっても、たった一枚では焼け石に水。いとも容易く、神々によって薙ぎ払われてしまうだろう。
「《ジャスティス&ダフトパンク》で、最後のシールドをブレイク!」
 光と闇の入り混じったエネルギー弾が、ひまりの残るシールドを吹き飛ばす。S・トリガーはない。あったところで、状況は、運命は、変わらないだろうが。
「……これまでか」
 そっと目を閉じ、諦念を滲ませたひまり。

 支配と生誕の神々による鉄鎚が、太陽の彼女へと放たれた——


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