二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.220 )
- 日時: 2013/12/26 13:15
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
久しぶりに更新したと思ったら、突然のオリキャラ募集(二回目)を行います。
しばらくこちらの更新は止めるつもりでしたが、デュエマのカードイラストのデザインと戦略性がモノクロ好みだということに最近気付き、こちらも頑張って更新しようと思い直しました。
募集内容は基本的に一回目と同じですが、今回は募集キャラクターに制限をかけさせてもらいます。
制限というのは、今回募集するのは【神聖帝国師団】に属する人物のみとなる点です。
本編では【師団】が夕陽たちに接近しようとしており、今はその兆候が見えています。ネタバレになりますが、次章は夕陽たちと【師団】との戦いを描くつもりです。
そこで、【師団】に出て来る各小隊のキャラクターを募集したいのです。実はモノクロが全部考えていたのですが、なんだか性格やらなんやらが妙に偏ってしまった感があり、もういっそ募集しちゃえ、という投げやりな感じで募集しています。
デッキを考えるのが面倒になったというのはここだけの話です。
さて、そこで注意事項です。
基本的には>>36とほぼ同じ内容ですが、追加分を含めて改めて注意事項を明記します。
まず一つ、上記にもありますが、今回募集するのは『神話カード』の力で世界征服を目論む【神聖帝国師団】の団員です。それ以外のキャラクターは受け付けていません。
二つ、一つ目と通じるところがありますが、【師団】には小隊というものが、第一小隊から第十小隊まであります。そして各小隊には、その小隊をまとめる隊長と、隊長を補佐する副隊長がいます。今回募集するのはその小隊のいずれかに属する人物とさせていただきます。第六小隊には既にミウ・ノアリクがいるので、募集するのは第六小隊以外です。
三つ、国籍は問いません。外国人だろうがなんだろうが、日本語を話せれば問題ないです。
四つ、小隊番号と隊長、副隊長は早い者勝ちです。一度埋まってしまったら諦めてください。まあ、第一から第九までのすべてが埋まるとは思っていませんが。
五つ、はっきり言いますと、今回募集するのは負け役です。酷い言い方をすれば噛ませ犬です。流石にそこまで酷い扱いをするつもりはありませんが、基本的には負けることが前提だと思ってください。さらに言えば、出番もそこまで多くないと思われるので、あまり期待しないでください。最悪、単発の可能性さえあります。
六つ、デッキについてです。デッキ内容はできるだけ詳しいと嬉しいのですが、枚数まで完全に固定して決められてしまうと融通が利かなくなってしまうので、キーカードの種類だけを書いてください。キーカードだけなら何枚書いても大丈夫です。
七つ、これはかなり重要なことです。デッキの内容ですが、ゴッド・ノヴァのデッキに関しては、こちらの事情で採用できません。アウトレイジとオラクリオン(オラクルは可)のデッキも、内容によりますが、採用できない場合があります。理由は単純に、他のキャラと被るからです。申し訳ありません。ゴッド・ノヴァはかなり重要なのでほぼ完全に不採用、アウトレイジとオラクリオンは、とりあえず書いてくだされば、採用できるかどうか判断します。ただ、基本的にヒーロー性の強いカードが中心だと採用されないです。しかしこの二つが中心となったデッキだと採用しにくいというだけで、アウトレイジやオラクル単体でも強力なカードはあるので、それらをサポートカードに使用する程度なら問題ないです。分かりやすい例を挙げると、流が《飛散する斧 プロメテウス》を使用している点などですかね。あまりデッキに干渉したくはないのですが、こればっかりは許してください。本当にすいません。
注意事項は以上だと思います。これらの条件を許容できる心の広い方、是非ともオリキャラを投稿してくださいまし。
また何か不都合がありましたら、こちらに追記します。
追記
オリキャラの投稿は一人複数でも構いませんが、不採用になったり、単発でしか出て来ない可能性があることを留意しておいてください。
では、以下オリキャラ投稿用紙です。
名前:(できるだけ一発変換で出せるようなものを……)
年齢:
性別:
容姿:(出来るだけ詳しく)
性格:(同上)
所属:(今回は何番小隊かです。第六小隊以外で第一から第九小隊までです。隊長、副隊長かを選んでください)
備考:(あれば)
サンプルボイス:(そのキャラの口調が分かるように。三つ以上)
「」
「」
「」
使用デッキ:(中心となるカード、サポートカード、デッキの方向性が分かるように。切り札込みで最低三枚。必ず入れたい文明はあれば書いておいてください。)
・
・
・
もし切り札召喚時などの台詞があれば、ご自由にどうぞ。
「」
では、たくさんの投稿をお待ちしております。
- Re: デュエル・マスターズ メソロギィ ( No.221 )
- 日時: 2013/12/23 12:12
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「……ここは、神話空間か?」
正面にはシールド、手元には手札がそれぞれ五枚ずつ浮いており、周囲の感覚から考えても、そこは神話空間だった。
なにより一番の理由は、流と向かい合う形で真正面に鎮座する巨大な化け物——クリーチャーの存在だ。
「《キング・アトランティス》か……超大型のリヴァイアサンだな。なぜいきなり実体化したのかは分からないが、こうなってしまったからには仕方ない」
流は目の前の手札をまとめてつかみ、キッとキング・アトランティスを見据える。
「原因は後で考える。今は、戦うだけだ」
突如、流が消えて一人残されたひまりは、流が消えた空間をジッと凝視する。
「……やっぱり、流君は神話空間に入ったのかな」
目を凝らせば、微かだがその空間が歪んでいる。神話空間は本来この世界にあるはずのないもの。そのため、発生すると一時的にその空間が不自然になってしまうのだ。
「《アポロン》、お願い」
ひまりは《アポロン》のカードを取り出して掲げると、目の前の空間に、ディスプレイのような映像が映し出される。そこでは、流が大型クリーチャーとデュエルしていた。
『神話カード』限定ではないが、神話空間で多用されたカードは神話空間の影響力を受け、その時点で展開されている神話空間の中を映像として映し出すことができる。
「あれは、《キング・アトランティス》……かなりの大型クリーチャーだけど、流君、大丈夫かな……?」
流とキング・アトランティスのデュエルは、まだ共に大きな動きは見せていなかった。
たがいにシールドはゼロ。流はクリーチャーを出さず、ひたすら《ガチンコ・ルーレット》でマナを増やしており、既に10マナも溜めている。
キング・アトランティスもチャージャー呪文でマナを溜めているが、それ以上に《ニンプウ・タイフーン》や《月光電人オボロカゲロウ》で手札を整理している。
「俺もあまり人のことは言えないが、あまり悠長にしている暇はないぞ。俺のターン、呪文《戦慄のプレリュード》を唱え、次に召喚する無色クリーチャーのコストを5減らす。そして、7マナで《超絶奇跡 鬼羅丸》を召喚!」
流が呼び出したのは、12マナのゼニス《鬼羅丸》。味方のクリーチャーすべてにスピードアタッカーを与え、さらに召喚時にガチンコ・ジャッジを三回行い、そのガチンコ・ジャッジで勝利したカードをプレイするという、名前通り超絶的な奇跡を起こす可能性のあるカードだ。
「行くぞ、まずは一戦目だ」
ガチンコ・ジャッジ一戦目、流はコスト7《真実の名 リーアナ・グローリー》、キング・アトランティスはコスト3《勝負だ!チャージャー》
「一戦目は俺の勝ち、よって《リアーナ・グローリー》をバトルゾーンに出すぞ。続けて二戦目だ」
二戦目、流はコスト4《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》、キング・アトランティスはコスト4《ブレイン・チャージャー》。
「また俺の勝ちだ。《ニヤリー・ゲット》の効果で山札の上三枚を見て、無色カード——《真実の名 白金の鎧》《戦慄のプレリュード》《「武」の頂 マキシマム・ザ・マックス》の三枚——を手札に加える。そして最後、三戦目だ」
三戦目、流はコスト10《「智」の頂 レディオ・ローゼス》、キング・アトランティスはコスト2《月光電人オボロカゲロウ》だ。
結果、三戦中すべてのガチンコ・ジャッジに勝利し、大型クリーチャーが一気に三体並ぶこととなった。
「さらにこれらのクリーチャーはすべて、《鬼羅丸》の能力でスピードアタッカーだ。《鬼羅丸》でTブレイク!」
Tブレイカーが二体、Wブレイカーが一体いるので、余裕でダイレクトアタックまで行くことができる。しかも《リアーナ・グローリー》は選ばれないので、除去することも難しい。
まず《鬼羅丸》のTブレイクが炸裂。一気にキング・アトランティスのシールドが三枚消し飛ぶ。
「続けて《レディオ・ローゼス》で残るシールドもブレイクだ!」
さらに《レディオ・ローゼス》の攻撃も放たれ、これでキング・アトランティスのシールドはゼロとなるが、ブレイクされたシールドの一枚目が光の束となって収縮する。
「っ、S・トリガーか……」
発動したS・トリガーは《シークレット・クロックタワー》。山札の上から三枚を見て、一枚を手札、一枚を山札の上、一枚の山札の下へと送るカードだ。
このカード単体では、この状況はどうにもならない。しかし最後にブレイクされたシールドも、光を発する。
「またS・トリガー……?」
発動したS・トリガーは《転生プログラム》だ。
転生プログラム 水文明 (3)
呪文
S・トリガー
クリーチャーを1体選び、破壊する。そうした場合、そのクリーチャーの持ち主は、自身の山札の上から進化ではないクリーチャーが出るまでカードを表向きにする。そのプレイヤーは、出たクリーチャーをバトルゾーンに出し、表向きにしたそれ以外のカードを持ち主の墓地に置く。
「《転生プログラム》……!」
最近だとコスト踏み倒しコンボはもっぱら《ヒラメキ・プログラム》が使用されるが、《転生プログラム》は《ヒラメキ・プログラム》では出すことが難しいほどコストの大きなクリーチャーを出すのに適しているカードだ。
そしてキング・アトランティスは直前の《シークレット・クロックタワー》で山札を操作している。
キング・アトランティスは場の《オボロカゲロウ》を破壊し、山札を捲る。そして現れたのは、巨大な海洋の怪物だった。
キング・アトランティス 水文明 (12)
クリーチャー:リヴァイアサン 12000
T・ブレイカー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある他のクリーチャーをすべて、持ち主の手札に戻す。
「遂に出たか……!」
現れたのは、《キング・アトランティス》。他のクリーチャーをすべてバウンスする、単純だが強力かつ豪快な能力で場をリセットする。バトルゾーン全体に干渉するため、《リアーナ・グローリー》の選ばれない効果も通用しない。
攻撃を止められた流はターン終了。そして《キング・アトランティス》のターン。
まずは《パクリオ》を召喚し、流の手札に戻った《鬼羅丸》をシールドに埋める。続けて《キング・クラーケン》で守りを固める。
そして最後に、《キング・アトランティス》の攻撃が放たれた。
「ぐっ……!」
《キング・アトランティス》はTブレイカー。流のシールドが一気に半分まで削られる。
「まずい、このままでは次のターンにやられる……!」
《鬼羅丸》を失い、S・トリガーもスピードアタッカーも来ない流。相手にはブロッカーもおり、このままでは次のターンにダイレクトアタックを決められてしまうだろう。
このままでは、だが。
「……まずは、《戦慄のプレリュード》でコストを軽減した《真実の名 白金の鎧》を召喚、マナを追加。そして残る8マナで、こいつを召喚だ」
次の瞬間、流の周囲に水流が渦巻き、それらが虚空の一点に集中すると、その集合体が弾け飛ぶ。
そしてそこから、巨大な戦艦の如き怪物が姿を現す。
「巨艦となりし海嶺よ、偽りの名の下に、既知なる存在を排除せよ——《偽りの名 イージス》!」
《偽りの名 イージス》。その能力は、偽りの力を持たないものを排除すること。即ち、アンノウン以外のクリーチャーはすべて山札へと送還されるのだ。
この効果で、《キング・アトランティス》と《パクリオ》《キング・クラーケン》の三体はすべて山札へと送られてしまう。その分キング・アトランティスはカードをドローできたが、一気に場数が減ってしまった。
キング・アトランティスは続くターンで《キング・クラーケン》を出し、《クリスタル・メモリー》で山札からカードを手札に加えたが、
「《クリスタル・メモリー》で手札に入れたのはシノビか。だったらブロッカーが邪魔だな。《真実の名 アカデミアン》を召喚し《キング・クラーケン》をバウンス。《真実の名 白金の鎧》でダイレクトアタックだ」
ブロッカーを除去し、《白金の鎧》でダイレクトアタックを決めようとするが、その瞬間、キング・アトランティスの手札から颯爽とクリーチャーが現れ、《白金の鎧》を山札へと戻す。
「《斬隠オロチ》か、予想通りだな」
《白金の鎧》は《霞み妖精ジャスミン》へと小型化してしまうが、キング・アトランティスの場には何もなく、流の場にはまだ《イージス》がいる。
「《偽りの名 イージス》で、ダイレクトアタックだ」
- Re: デュエル・マスターズ メソロギィ ( No.222 )
- 日時: 2013/12/23 22:05
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「あ、流君! 大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
神話空間から出て来た流は、空中から舞い降りてくる一枚のカードを手に取る。さっき倒した《キング・アトランティス》だ。
「……クリーチャーがいきなり実体化したが、これはどういうことなんだ?」
「さ、さあ? 私にも詳しくは分からないけど、前にもこんなことがあったよ。夕陽君は、【神聖帝国師団】が関係してるんじゃないかって、言ってたけど」
「【師団】か」
流は師団についてはほとんど知らないのだが、文化祭での一件に【師団】が関わっているだろうということは知っている。
「大事になりそうだな……」
なにやら不穏な空気を感じ取る流。もう『神話カード』を持っていないとはいえ、この世界に足を踏み入れた以上、無関係でいられるとは思っていない。
と、そんなことを思いながら流が一歩踏み出した、その時だ。
「! 流君!」
「っ!」
流に衝撃が走る。強い力ではないが、不意打ちだったため、よろけて近くの塀にぶつかる。その時点で自分が誰かに突き飛ばされたことに気づく。
立ち上がりながら振り向くと、そこには誰もいなかった。誰もだ。
そう、ひまりすらも。
「朝比奈……?」
気付いた時、ひまりは神話空間にいた。
流があの一歩を踏み出した瞬間に、流の周りの空間が歪んのが見えたので、つい反射的に突き飛ばしてしまったが、彼は大丈夫だろうか。そんなことを思いながら、ひまりは目の前のクリーチャーを見る。
「《キング・アトランティス》……じゃ、ないね」
目の前の巨大な怪物。それは《キング・アトランティス》と酷似していたが、少し違う。完全な魚型ではなく、杖を持ち、宗教的な装飾が見て取れた。
「《深海の伝道師 アトランティス》……オラクル化した《キング・アトランティス》か。何があってこんな連続で出てきたのかは知らないけど、こうなっちゃたからには、やることは一つ」
言いながら、ひまりはサッとデッキケースからデッキを取り出す。
次の瞬間、彼女の目の前には、五枚のシールドが展開されていた。
ひまりとアトランティスのデュエル。
現在シールドは、ひまりが五枚、アトランティスが三枚だ。
クリーチャーはひまりがゼロ、アトランティスは《アクア・サーファー》と《火焔タイガーグレンオー》の二体。見て分かるように、ひまりは立て続けにS・トリガーを踏んでしまい、クリーチャーを一掃されてしまった。
アトランティスは、《ブレイン・チャージャー》でマナと手札を追加すると、攻撃せずにターンを終える。
「ちょっとまずいかも……私のターン」
クリーチャーは一掃されたものの、ひまりにはまだ手が残っている。
「まずは《ボルシャック・NEX》を召喚! 効果で山札から《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに出して、ターンエンド!」
とにかくドラゴンとファイアー・バードを並べる。攻撃手を絶やさず、さらにドラゴンをサポートするバードがいれば、主導権を握られることはない。
続くアトランティスのターン。アトランティスは、一体のクリーチャーを呼び出す。
ディープ・パープルドラゴン 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 6000
K・ソウル
W・ブレイカー
水の呪文または水のクリーチャーの能力によって、相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーがバトルゾーンから自分の手札に戻された時、自分の山札の上から1枚目を表向きにする。それが火のクリーチャーであれば、バトルゾーンに出してもよい。
「《ディープ・パープルドラゴン》? 珍しいカードが出たなぁ……でも、私のデッキに水のカードはないし、特に問題はないかな。私のターン、《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚して二枚ドロー! 《NEX》でWブレイク!」
《ボルシャック・NEX》の爆炎が、アトランティスのシールドを二枚粉砕する。これでアトランティスのシールドは残り一枚だ。
しかし、割られたシールドのうち一枚が、光の束となり収束する。
「っ、S・トリガー……!?」
収束した光は巨大な渦となり、水流を巻き起こしながら巨大な深海の伝道師を呼び起こす。
深海の伝道師 アトランティス 水文明 (10)
クリーチャー:オラクル/リヴァイアサン 4000
S・トリガー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体選び、残りを手札に戻す。その後、相手はバトルゾーンにある自身のクリーチャーを1体選び、残りを手札に戻す。
「うっ、出ちゃった……」
現れたのは、《アトランティス》そのもの。巨大なリヴァイアサンである《アトランティス》は、どこからともなく途轍もない激流を放つ。
《アトランティス》は《ディープ・パープルドラゴン》を場に残し、他のクリーチャーをすべてバウンス。
「じゃあ、私は《コッコ・ルピア》を残すよ」
次のターンにドラゴンを出しやすくするために《コッコ・ルピア》を残すひまり。
そしてこの時、アトランティスのクリーチャーが一気に手札へと戻っていったため、《ディープ・パープルドラゴン》の効果が発動する。
アトランティスは山札を捲る。三体バウンスされたので、捲るのは三回だ。一枚目は《熱湯グレンニャー》、二枚目は《マーシャル・クロウラー》。二枚目が水のカードで、山札の上から移動しないため、三枚目に捲れるのも同じカード。幸運にも、アトランティスは《グレンニャー》を追加しただけだった。
「よかった……相手のシールドは残り一枚だけど、ここは攻撃しないでおこう。ターンエンド」
ここでアトランティスのシールドをゼロ枚にしておきたいが、《コッコ・ルピア》で攻撃しても殴り返されて破壊されてしまうだけだ。手札にはスピードアタッカーもいないので、ここは攻撃しないでおく。
そしてアトランティスのターン。アトランティスはここで、さらに巨大な怪物を呼び出す。
マーシャル・クロウラー 水文明 (8)
クリーチャー:アースイーター 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の手札を好きな枚数、新しいシールドとしてシールドゾーンに裏向きにして加えてもよい。その後、同じ数のシールドを自分の手札に加える。
W・ブレイカー
続けて呼び出されたのは、上半身が美しい女性の姿、しかし下半身は大地を喰らう怪物という、異形のクリーチャー。世界を制した歌姫の力を取り込んだアース・イーター、《マーシャル・クロウラー》だ。
《マーシャル・クロウラー》は本家《マーシャル・クイーン》と同じく、自分の手札とシールドを入れ替える能力を持つ。まず最初に手札をシールドに置き、次にシールドを置いた枚数だけ手札に戻す。この時手札に加わったシールドは、シールドブレイクと同じ扱い。
即ち、S・トリガーが発動する。
「うっ……!」
アトランティスは手札のカードを三枚シールドに置き、置いたカードをすべてそのまま、手札に戻す。勿論、三枚ともS・トリガーだ。
「う、うわわ……」
一枚目は《アクア・サーファー》。ひまりの場に残った《コッコ・ルピア》がバウンスされる。
「《コッコ・ルピア》が……!」
二枚目に発動するのは《シークレット・クロックタワー》。山札の上三枚を見て、山札を操作する。
「山札操作……場には《ディープ・パープルドラゴン》がいるし、ってことは次に出て来るのは……」
それは、ひまりの察した通りのクリーチャーだ。
三枚目のS・トリガーは、《深海の伝道師 アトランティス》。能力で《ディープ・パープルドラゴン》を残し、自身と《アクア・サーファー》《マーシャル・クロウラー》《熱湯グレンニャー》をまとめてバウンス。
そして同時に《ディープ・パープルドラゴン》の効果が四回発動する。
最初に捲れたのは、また《熱湯グレンニャー》だ。次に《火焔タイガーグレンオー》。三回目は《極楽!オンセン・ガロウズ》。そして最後に捲れたのは、ひまりにとっては最悪なクリーチャー《永遠のリュウセイ・カイザー》だった。
「これって、かなりやばいんじゃ……」
アトランティスの場には、《ディープ・パープルドラゴン》《熱湯グレンニャー》《火焔タイガーグレンオー》《極楽!オンセン・ガロウズ》《永遠のリュウセイ・カイザー》の五体。しかもこれらのクリーチャーは《リュウセイ・カイザー》の能力でスピードアタッカーとなっている。
「ただの大型S・トリガー獣だと思ってたけど、まさか《アトランティス》にこんな使い方があったなんて……!」
一気に形勢逆転されてしまったひまり。
アトランティスが従える炎の獣たちは、その牙を彼女へと向ける。
- Re: デュエル・マスターズ メソロギィ ( No.223 )
- 日時: 2013/12/25 08:01
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
突如現れた《深海の伝道師 アトランティス》とデュエルをすることとなったひまりは、絶大な危機に直面していた。
ひまりの場には何もないが、シールドは五枚ある。
対するアトランティスは、シールドこそ一枚だが、バトルゾーンには《ディープ・パープルドラゴン》と《深海の伝道師 アトランティス》のコンボで一気に展開した《熱湯グレンニャー》《火焔タイガーグレンオー》《極楽!オンセン・ガロウズ》《永遠のリュウセイ・カイザー》と、《ディープ・パープルドラゴン》の五体。しかもこの五体は《リュウセイ・カイザー》の能力ですべてスピードアタッカーだ。
「まずい、このままじゃ……」
S・トリガーを引かなければ、ひまりの敗北は確定する。
そう思った直後、《オンセン・ガロウズ》によるシールドブレイクが叩き込まれる。
極楽!オンセン・ガロウズ 水/火文明 (7)
クリーチャー:サイバー・コマンド/フレイム・コマンド/エイリアン 4000+
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分のマナゾーンに水のカードが3枚以上あれば、このクリーチャーは「S・トリガー」を得る。
自分のマナゾーンに火のカードが3枚以上あれば、このクリーチャーのパワーは+4000され、「W・ブレイカー」を得る。
自分のマナゾーンに水または火のカードが合計7枚以上あれば、このクリーチャーは「このクリーチャーがシールドをブレイクする時、そのシールドをかわりに持ち主の山札の一番上に置く」を得る。
勿論、アトランティスのマナゾーンには火のカードが三枚以上、水のカードと合わせて七枚以上あるため、三つの能力のうちあとの二つが発動する。
《オンセン・ガロウズ》はWブレイカー、そしてブレイクしたシールドは山札の上へと送還されてしまう。
実質、ひまりはS・トリガーの可能性を半分近く削り取られてしまったことになる。
「残るシールドは三枚……この数のクリーチャーを何とかできる……?」
続けて《リュウセイ・カイザー》の剣が振り下ろされる。ひまりのシールドは二枚ブレイクされたが、今度のシールドは手札に入る。そしてそのうち一枚が、光り輝く。
「っ、来た! S・トリガー《ナチュラル・トラップ》! 《リュウセイ・カイザー》をマナゾーンに!」
大地へと取り込まれる《リュウセイ・カイザー》。これで残る《グレンニャー》と《タイガーグレンオー》は攻撃できなくなる。
だが最後に、《ディープ・パープルドラゴン》の攻撃があった。これで、ひまりのシールドはゼロ枚となってしまう。
「まだ……S・トリガー発動! 《ジャジャーン・カイザー》!」
ジャジャーン・カイザー 火文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 4000
S・トリガー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト6以下の相手の、「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体破壊する。
トリガーでドラゴンが出たが、アトランティスの場にはブロッカーがいないので、効果は発動しない。
「私のターン」
なんとかアトランティスの猛攻を凌ぎ切ったひまり。しかし、状況が劣勢なのは変わらない。スピードアタッカーが引ければこのターンでとどめを刺せたのだが、引いたのは《コッコ・ルピア》。
(しかも、相手の手札には《アトランティス》《マーシャル・クロウラー》ついでに《アクア・サーファー》とかも握ってるから、こっちのクリーチャーは全部手札に戻されちゃう。《ディープ・パープルドラゴン》でクリーチャーも増えるし、どうにかしてこのターンで決めないと……)
《深海の伝道師 アトランティス》と《ディープ・パープルドラゴン》、さらにその二体のコンボを起動する《マーシャル・クロウラー》と、こちらの残ったクリーチャーを除去するための《アクア・サーファー》。これらのクリーチャーの能力を組み合わせたコンボは、非常に強力だ。上手くはまれば、さっきのひまりのようにワンショットキルにすらなりうる。
「このターンで決める方法……やっぱり、これしかない! まずは《コッコ・ルピア》召喚!」
まず最初に《コッコ・ルピア》を召喚する。そして、
「次に《闘龍鬼ジャック・ライドウ》召喚! その効果で《ジャック・ライドウ》と同じ種族の進化クリーチャーを手札に加えるよ。来て、《アポロン》!」
山札からサーチするのは、やはり《アポロン》。そしてひまりの場には、ファイアー・バードの《コッコ・ルピア》と、二体の火のクリーチャーが並んでいる。
「《コッコ・ルピア》《ジャック・ライドウ》そして《ジャジャーン・カイザー》の三体を、進化MV! 出て来て、《アポロン》!」
三体のクリーチャーを包む爆風と爆炎から現れたのは、《太陽神話 サンライズ・アポロン》。
「これで決める! 《アポロン》で攻撃! その時、山札の一番上を捲って、それがファイアー・バード、ドラゴン、火文明のクリーチャーのいずれかならバトルゾーンに出せる!」
《アポロン》は小型太陽のエネルギーを凝縮。その際に発生する熱風で山札の一番上を吹き飛ばし、ひまりがそれをキャッチ。
「来たよ。《インフィニティ・ドラゴン》をバトルゾーンに! 《アポロン》で最後のシールドをブレイク!」
エネルギーの充填が終わり、凄まじい熱線がアトランティスの最後のシールドを突き破る。しかしそのシールドは、光に包まれた。
S・トリガーだ。
「最後の最後に出て来たね……!」
現れたのは《深海の伝道師 アトランティス》。
その能力で、《アトランティス》はどういうわけか自身を残し、他のクリーチャーを手札に戻した。同時に《ディープ・パープルドラゴン》の能力が四回発動し、《爆竜ンゴロ・ンゴロ》《熱湯グレンニャー》《戦攻竜騎ドルボラン》そして二体目の《ディープ・パープルドラゴン》が場に出る。
そしてひまりも自身のクリーチャーを手札に戻すのだが、ここでひまりが《アポロン》を残せば、《インフィニティ》はいなくなり、とどめまで行けない。しかし《インフィニティ》を残せば《アポロン》が消え、スピードアタッカーでなくなってしまう。
ひまりの命運もここで尽きたかに思われたが、しかし両方のクリーチャーを場に残せるのなら、その限りではない。
「残念だけど《インフィニティ・ドラゴン》の能力発動! 自分のドラゴンが場を離れる時、山札の一番上を墓地に置いて、それがドラゴンかファイアー・バードなら場にとどまる!」
ひまりは《アポロン》を残すことを選択し、《インフィニティ》がバウンスされる。ここで《インフィニティ》の能力が発動し、ひまりは山札の一番上を墓地へ。
「《エコ・アイニー》——ファイアー・バードだから、《インフィニティ》は場に残るよ」
さらに《ドルボラン》の能力で《アポロン》がバウンスされそうになるが、ここでも《インフィニティ》の能力が発動。
「今度は《ボルシャック・NEX》だよ。ドラゴンだから、《アポロン》は生き残る。さあ、もう除去は弾切れかな?」
《アトランティス》にはもうシールドがない。手札は豊富だが、そんほとんどが《アトランティス》の能力で戻したクリーチャーなので、シノビを握っているとも考えにくい。
無防備な状態を晒す《アトランティス》に、《インフィニティ》は飛翔する。
そして、《アトランティス》に向けて砲門を開いた。
「《インフィニティ・ドラゴン》で、ダイレクトアタック!」
神話空間が閉じ、ひまりが現実世界へと戻る。
「ふぅ……危なかったぁ」
一息吐くひまり。そんなひまりに、流は歩み寄る。
「大丈夫か?」
「え? うん、大丈夫だよ。ちょっと危なかったけど、なんとか勝てた」
ピースサインを送りながら微笑むひまり。顔には出さないが、それで流もホッとする。
「あ、それよりさ。これあげるよ」
そう言ってひまりは、流に一枚のカードを差し出す。
「《深海の伝道師 アトランティス》……?」
「うん、さっき私が戦ってたクリーチャーだよ」
「……それはお前が勝ち取ったものだろう。俺に受け取る資格はない」
ひまりの申し出を拒否する流。しかし、それに対してひまりは吹き出す。
「あはは! 汐ちゃんと同じことを言うね、流君は。資格とかそんな難しいこと考えなくてもいいよ。私にはこのカードは使いこなせないだろうし、私のデッキにも合わないからさ。それなら流君の方がうまく使ってくれると思うんだ。ほら、流君ってリヴァイアサンとか好きなんでしょ? 前にリヴァイアサンのデッキを使ってたって聞いたよ。やっぱりカードも使ってくれる人がいないとかわいそうでしょ」
「…………」
はっきり言って、リヴァイアサンを好む流には、《アトランティス》は魅力的だ。ひまりよりも上手く扱う自信もある。
だからだろうか、流は半ば無意識に、差し出されたカードを受け取っていた。
「……すまないな。ありがたく貰っておく」
「いいよいいよ、受け取って。それよりさ」
ひまりはにんまりと笑って、流に詰め寄る。
「私のこと、ひまりって呼んでよ。お近づきの印っていうかさ」
「いや、それは……」
いつもはクールな流も、困ったような表情になる。
「ほら、呼んでみて。ひまりって、ひーまーり!」
「っ……」
どんどん詰め寄ってくるひまりに、流はたじたじだ。そっぽを向いてひまりを視界に入れないようにする。
「照れてるの? あはっ、流君ってクールに見えるけど、意外と可愛いとこあるんだね」
「……お前は、やっぱり苦手だ」
そう言うと、流はひまりに背を向け、そのまま速足で去ろうとする。
「あ、待ってよ! 流君!」
逃げるように去っていく流を、ひまりは追いかける。
なんだかんだ言って、この二人は意外と相性が良いのかもしれなかった。
- Re: デュエル・マスターズ メソロギィ ( No.224 )
- 日時: 2013/12/25 14:02
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
日に日に深まっていく夕陽たちとひまりの親交。このみや姫乃、汐だけにとどまらず、聞くところによると流とも仲良くなっている模様だ。
そんなことはともかく、今日この日、夕陽たちとひまりはこのみの家——即ち、カフェ『popple』に来ていた。
「なんか喫茶店にデュエマ・テーブルがあるって凄い違和感だけど……使ってみるといいね、これ」
ひまりの感想は、わりと好評だった。そもそもひまりはあまり酷評をしないのだが。
「うーん、やっぱりまりりんせんぱいには勝てないなぁ……ホームなら勝てると思ったのに」
「デュエマにホームも何もないだろ」
というか、このみはひまりのことを、まりりんせんぱいなどと呼んでいるのか、と初めて知った夕陽だった。基本的に三音以上の名前を記憶できないこのみにしては長い愛称をつけたものだ。
「このみー、ちょっと来て」
「ん? どしたのー、おねーちゃん」
このみは姉、木葉に呼ばれ、ぱたぱたとカウンターへ向かう。
ひまりたちと談笑するこのみだが、今は営業時間帯だ。客の出入りは少ないものの、本来ならこのみは給仕をしなければならない立場にいる。ちなみに、姫乃は普通に働いていた。
「木葉さん、だっけ? すっごいい美人さんだよね……同じ日本人とは思えないよ」
「まあ、このみの姉ですし、容姿に関しては姉妹揃って、って感じですね」
しばしば現実離れしている、アニメからそのまま飛び出した、などと形容されるこのみ。だが姉である木葉も、ベクトルは違うものの一般的な女性の容姿とは一線を画していた。
一言で言ってしまえば、美人。このみがアニメから飛び出したのなら、木葉はドラマから飛び出したような美人だ。このみがアイドルかアニメキャラならば、木葉は女優かモデル、と言ったところか。
「スタイルもいいし」
「まあ……このみの姉ですからね」
体型に関しては、このみほど現実離れはしていないが、日本人離れはしている。このみがアニメキャラ、木葉がモデルという風に比較されるのも、無理からぬ話である。
木葉と言葉を交わしていたこのみは、夕陽に身振り手振りでサインを送ると、カウンターの奥、店の勝手口から外に出て行った。
「このみ先輩は、なんて」
「ちょっと待ってて、だってさ」
「え、今の仕草で分かるんだ……凄いね、夕陽君」
「付き合いだけは長いですからね」
もう少し距離が近ければ、アイコンタクトだけでも意思疎通は可能だ。ちなみに、意思疎通と言ってもこのみの理解力がなさすぎるせいで、夕陽の意思はまったく疎通されない。一方的な意思疎通である。
「ちょっと待ってて、か。何だろうね」
「勝手口から出て行ったんで、ゴミ捨てとか商品の運び出しとか、そんなところでしょう。デュエマでもして待ってればいいですよ」
ちょうど紅茶を飲み終えた夕陽は、デッキケースを手にしてデュエマ・テーブルに着く。だが、ひまりは、
「んー……ちょっと席外すね」
「え? はぁ……どこ行くんですか?」
「秘密、女の子にそういうこと訊かないの。ま、何もなければすぐ戻るよ」
と言うや否や、ひまりは店から出て行ってしまった。
「なんだろ……ま、いいか。御舟、二人が戻るまで相手してよ」
「了解です」
店の裏側、人通りのない裏路地で、このみは段ボールを積み上げていた。
「ふぅ、とりあえずここに置いとけばいいかな」
夕陽が言ったように、このみは新しく入荷する商品の整理をしていた。整理というより、ただ邪魔にならないところに置いているだけだが。
「さてと、おねーちゃんに言われたことはこれで全部だし、はやくゆーくんやまりりんせんぱいのとこに戻ろう——」
と、その時だ。
黒い影が、このみの目の前を高速で通過する。
「わっ、なに……?」
虫や鳥ではない。それにしては大きすぎる。
黒い影はひゅんひゅんと動き回り、このみの目では追えない。その姿を視認できないでいる。
だが、やがてその黒い影は動きを止める。
「な、なにこれ……クリーチャー……?」
それは、小さな妖精のような出で立ちだった。背中や頭部の大きな飾り、服装など、民族的な意匠。左手には軍配団扇のような杖を携えている。
見るからにその姿は、クリーチャーそのものだ。
「クリーチャーが実体化してるってことは、前にゆーくんが言ってた【師団】……?」
あまりよく覚えていないが、近頃クリーチャーが実体化して襲い掛かってくることが多いらしい。それに【師団】という組織がかかわっているようだが、このみの理解力では大したことは分かっていない。
しかし、目の前のクリーチャーが敵であることだけは分かった。
「……よーし、だったらあたしが——」
デッキケースを取り出し、好戦的な視線を向けるこのみ。しかし、
「待って!」
このみとクリーチャーの間に割って入るように、人影が飛び込む。
「まりりんせんぱいっ? え? どしたの? なんでここに?」
「ちょっと気になって……まあ、予想通りクリーチャーが実体化してるみたいだね。ここは私に任せて」
と言うと、ひまりはこのみの返答を待たずに神話空間へと入ってしまった。
「……行っちゃった」
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