二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

デュエル・マスターズ Mythology ( No.601 )
日時: 2014/10/20 20:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

 南西方面へと向かった九頭龍兄妹は、既に夕陽たちが発見した者と同じ現象を、見つけていた。
「どう見てもあれだよね」
「見るからに、そうね」
 住宅街の路地裏にある、形容しがたいなにか。時空が歪んでいるような、その空間にだけなにかしらの力が働いているかのような、とにかく視覚で言い表すことが難しい現象染みたなにかが、そこにはあった。
「なんなんだろう、これは。見たことも聞いたこともない……なんなんだろう」
「なにかに例えて表現することもできないし、どうやってデータを取れば——」
 と、その時。
 二人は目の前で存在感を放つなにかとは違う気配を感じ取った。同時に、その気配の主が姿を現す。
「クリーチャー……出て来るかぁ、やっぱり。となるとあれは、そういった類の力なのかな?」
「《偽りの名 ハングリー・エレガンス》と《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》か。なんというか、いまいち整合性がないクリーチャーね……」
 なんにせよ、この状況ではこのレベルで大型なクリーチャーを見過ごすこともできない。
「詮索は後回し。希道、あんたもやるのよ」
「せっかくの休日を黒村さんに潰されて、正直あんまり気乗りしないんだけど——」
「うるさい早くしろ」
「——可愛い妹の頼みだから仕方なく——」
「うるさい黙れ」
「——みんな僕に冷たいなぁ。まあいいや、僕とて職務怠慢な奴なんて思われたくないし、【ラボ】としての仕事くらいはこなすさ」
 そう言って、それぞれがそれぞれの相手へと相対する。
 そして、二人はそれぞれの相手と神話空間へ入るのだった。



 九頭龍とハングリー・エレガンスのデュエル。
 現在どちらもシールドは五枚。九頭龍の場には《エコ・アイニー》と《偽りの王 ヴァルトシュタイン》の二体で、墓地を溜めつつマナを大量に加速している。
 一方ハングリー・エレガンスの場には《スペース・クロウラー》が一体。ただし《天頂計画》も利用し、こちらもマナを溜めている。
「オデのターン、行くでガンス! 《偽りの名 ハングリー・エレガンス》を召喚!」


偽りの名(コードネーム) ハングリー・エレガンス 自然文明 (8)
クリーチャー:ジャイアント/アンノウン 8000
相手がカードを引いた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
アンノウンを自分のマナゾーンから召喚してもよい。
W・ブレイカー


「出たかぁ……」
 大型のアンノウンが出て来てしまった。早めに除去しなければ、自身のマナブースト性能と合わせてマナゾーンからさらにアンノウンが出て来てしまう。
「と言っても、いい感じに除去がないな。仕方ない、僕のターン」
『待ったガンス! オデの能力発動ガンス! 相手がドローした時、マナを増やすでガンスよ』
 九頭龍がカードを引くと、《ハングリー・エレガンス》が大地を踏み鳴らしてマナ畑を耕す。これで9マナ。
「……まあいいさ。《偽りの王 カンタービレ》を召喚して、墓地のドラゴンをすべてマナに戻すよ」
 《ヴァルトシュタイン》で増やした墓地をマナへと還元し、一気に加速する九頭龍。しかしこれはマナブーストだけでなく、墓地のドラゴンをマナに戻す役目もある。
(こっちも《カンタービレ》でマナゾーンから召喚させてもらおうか。《ヴィルヘルム》辺りを出せれば、マナゾーンのカードも消せるし、相手のマナにはこれといったアンノウンもいないし)
 そんな算段を立て、九頭龍のターンは終わった。
 そして《ハングリー・エレガンス》のターン。
『オデのターンでガンス! マナチャージして10マナ! 手札から《「俺」の頂 ライオネル》を召喚でガンス!』
「え? 手出し?」
 マナゾーンからなにかしら呼び出すものと思っていたが、普通に手札から召喚された。
 しかもそれは、ただのアンノウンではない。ゼロ文明の頂点に立つゼニスだ。
『《ライオネル》の効果でシールドを増やすでガンス! そして、オデのシールドを一枚、選ぶでガンスよ』
「S・トリガーでさらに増えるんだよねぇ……別にシールド追加とかはしてないし、どれでも同じか。左端のシールドにしようかな」
 九頭龍が選んだのは、シールド展開時に最初に置かれる、一番左端のシールド。それが捲れ、
『S・トリガーでガンス! 《「祝」の頂 ウェディング》!』
「げ……」
 よりにもよって二枚目のゼニスを引き当ててしまった九頭龍。最悪だ。
 S・トリガーで出たクリーチャーは召喚扱いになるので、当然この《ウェディング》の召喚時能力も発動し、
『さあ、クリーチャーと手札を合わせて四枚! シールドに置くでガンスよ!』
「全滅か……」
 九頭龍のクリーチャーと手札は、合わせてきっかり四枚。シールドは増えたが、場も手札も空になってしまった。
『ターン終了でガンス』
 しかも妙に慎重で、このターンは攻撃せず。手札を与えることを嫌ったのだろう。
「クリーチャーにしてはやるなぁ。僕のターン」
 とりあえずマナは腐るほどあるので、なにか逆転に繋がるカードを引ければいいのだが、しかしこんな時に限って引くのは《メンデルスゾーン》。迷わずマナゾーンに直行する。
「今日はついてない。ターン終了」
『オデのターン! オデの能力で、マナゾーンから《「呪」の頂 サスペンス》を召喚でガンス! シールドを二枚、墓地送りでガンスよ!』
 《サスペンス》の炎で、九頭龍のシールドが焼き尽くされる。しかも不運なことに、一枚は《「戦慄」の頂 ベートーベン》だったが、もう一枚が呪文の《ミステリー・キューブ》だった。
『山札をシャッフルし、その一番上を捲るでガンス! 《「勝利」の頂 バトル・ザ・クライマックス》でガンス!』
「またゼニス……今日は本当についてないな」
 幸い、召喚ではないのでスピードアタッカーこそつかないが、今の《ハングリー・エレガンス》の場にはゼニスが四体。一方、九頭龍はクリーチャーも手札もない。
『《ウェディング》でTブレイク!』
「っ、く……!」
 一気に三枚のシールドが焼き尽くされる。しかも不運は続き、三枚すべて《黒神龍オドル・ニードル》だった。マナゾーンに一枚あるので、これで九頭龍のデッキの《オドル・ニードル》は出尽くし、S・トリガーへの期待も薄まった。
『ターン終了でガンス』
「やっぱりこれ以上の攻撃はしないか。用心深いったらないね」
 九頭龍のシールドはあと四枚。攻撃可能な《ライオネル》と《ハングリー・エレガンス》で殴ってもとどめまでは行けない。
 手札を与えず、じっくりじわじわと攻め落とす気のようだ。場や見た目が豪快なわりに、プレイングは繊細だった。
「さて、そろそろどうにかしないと、押し切られちゃうな……」
 カードを引きつつ、チラッと《ハングリー・エレガンス》を見遣る九頭龍。《ハングリー・エレガンス》は地面を踏み鳴らしており、自身の能力でマナを増やしていた。
(なんか変だなぁ。全力じゃないとはいえ、僕をこんなに追い詰められるクリーチャーなんてそうはいない。しかも、自身の能力と相性がいいからって、こんなに強力なクリーチャーを連打するっていうのも、今までのクリーチャーの傾向からして微妙に外れてる)
 基本的に、実体化するクリーチャーが扱うデッキは、そのクリーチャーの力の範囲よりも少し大きい程度のカードしか積まれない。クリーチャー自身の力が大きければ、その分デッキのクリーチャーも強く、逆に小型クリーチャーが実体化しても、デッキ内に組み込まれるカードのカードパワーはそこまででもない。
(勿論、例外はあるけど……うーん、どうなのかな。僕の深読みかもしれないけど、今の状況とセットで考えると、そうでもない気がするんだよね)
 などと考えていても、現状では推測の域を出ない。そもそもこのデュエルに勝たなくては推測もなにも意味をなさないので、対戦に戻る。
「さて、あんまり長々やってても仕方ないし、ここいらで終わらせようか」
 引いてきたカードを見るなり、九頭龍はそんなことをのたまう。
 しかし実際、九頭龍はそのカードだけで、この戦況をひっくり返しうる可能性がある。
 そして彼は、それをゆっくりと捲った。

「——《運命》」

 どこからともなく力強い旋律が響き渡り、九頭龍の手札が五枚に増える。これで手札不足は解消された。
「さっきは僕が君のシールドを選択したけど、今度は君の番。僕の手札を選択し、君自身の運命を決めるんだ」
『ウヌヌ……なら、これとこれと、これでガンス!』
 三枚のカードを選んだ《ハングリー・エレガンス》。その三枚だけがその場に残り、他のカードは九頭龍の下へ。
「よし、じゃあ公開だ。これで君の運命が決定されるよ」
 フッと笑う九頭龍。そして次の瞬間。パタリパタリと、三枚のカードが捲られていった。
 捲られた三枚は——《偽りの王 モーツァルト》《龍世界 ドラゴ大王》《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》。
 
「赤き龍王よ、数多の種族を支配し、世界を龍のものとせよ——《龍世界 ドラゴ大王》!」

 そして、

「古代の力に目覚めし龍王よ、その絶対の力で、今日の世界に君臨せよ——《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》!」

 三体の超大型ドラゴンが、一気に出揃う。
 一体は偽りの力に魅せられ、戦慄の旋律に突き動かされる破壊の王《モーツァルト》。
 一体は龍だけの世界を作り出し、龍以外は認めずにその頂点に君臨する《ドラゴ大王》。
 一体は原始の力を呼び覚まされ、古代の力を宿し絶対の力を振りかざす《ワルド・ブラッキオ》。
 この三体が並ぶ姿は、正に圧巻だ。ゼニス四体にも、負けていない。
「まず《モーツァルト》の能力で、ドラゴン以外はすべて破壊だ」
「オデまで……だ、だが、《バトル・ザ・クライマックス》は残ったでガンス!」
「どうかな? 《ドラゴ大王》の能力発動。《ドラゴ大王》と《バトル・ザ・クライマックス》をバトルだ」


龍世界 ドラゴ大王  ≡V≡  火文明 (10)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン 13000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体と、相手のクリーチャーを1体、バトルゾーンから選んでもよい。その2体をバトルさせる。
ドラゴンではないクリーチャーがバトルゾーンに出る時、バトルゾーンに出るかわりに持ち主の墓地に置かれる。
T・ブレイカー


 《ドラゴ大王》は咆哮し、《バトル・ザ・クライマックス》に突っ込む。《バトル・ザ・クライマックス》も剣を構えて迎え撃とうとするが、剣は折れ、鎧は砕け、その身は粉砕されてしまった。
「オデのクリーチャーが全滅……だけんど、まだ勝機は残ってるでガンスよ! オデのターン! 《「俺」の頂 ライオネル》を召喚——」
「残念だけど、それは許されないな。《ドラゴ大王》がいる限り、僕らはドラゴン以外を場に出すことはできない」
 九頭龍のデッキは大半がドラゴンを占めているが、ハングリー・エレガンスはそうではない。《ライオネル》を出すことは叶わず、唸っていた。
「グヌヌ……な、なら、《バトル・ザ・クライマックス》を召喚! こいつはドラゴンだから召喚できるでガンス!」
「でも、僕の場には《ワルド・ブラッキオ》もいるよ」


界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ 自然文明 (11)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 27000
ワールド・ブレイカー
相手のクリーチャーがバトルゾーンに出て、そのクリーチャーの能力がトリガーする時、かわりにその能力はトリガーしない。(例えば、相手は「このクリーチャーをバトルゾーンに出した時」で始まる能力を使えない)


 《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》。パワーこそがすべてと謳うジュラシック・コマンド・ドラゴンの中でも破格のパワーと破壊力を備えているが、それだけではなく、他のクリーチャーのバトルゾーンに出た時にトリガーする能力を封殺してしまう、強力な能力も有している。
 それにより、ゼニスの召喚時の能力も封じられてしまうのだ。
「ま、《モーツァルト》がいるからどの道、君は攻撃できないけどね。どうする?」
「タ、ターン終了で、ガンス……」
 強力なロック能力を持つ三体のドラゴンに囲まれ、なにもできないハングリー・エレガンスは、そのままターンを終える。
「さて、僕のターンだ。再び《運命》を唱えるよ、カードを一枚だけ引いて、手札三枚を公開するよ」
 九頭龍の手札は三枚しかないので、余計なカードを引かず、確実にクリーチャーを呼び出しにかかる。しかもこうして捲られた三枚は《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》《偽りの王 ナンバーナイン》《超天星バルガライゾウ》だった。
「《バルガライゾウ》以外の二体をバトルゾーンへ。これで君はなにもできなくなったね。ご愁傷様」
 《ドラゴ大王》はドラゴンの登場を封じ、《VAN・ベートーベン》はドラゴンとコマンドの登場を封じる。この二体が並んだ時点で、相手は如何なるクリーチャーも場に出せない。仮にどうにかして場に出せたとしても《ワルド・ブラッキオ》で登場時の能力は封じられ、《モーツァルト》でドラゴンは攻撃できず、《ナンバーナイン》で呪文も唱えられない。
 正に、ほぼ詰みの状態だった。
「《ワルド・ブラッキオ》でワールド・ブレイク」
 刹那、ハングリー・エレガンスのシールドがすべて吹き飛んだ。召喚も呪文も封じられているので、S・トリガーも使えない。
 そして、偽りの名を得た巨人に、同種の王なる龍が、鉄槌を下す——

「《偽りの王 モーツァルト》で、ダイレクトアタック」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.602 )
日時: 2014/10/26 11:34
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

 希野とトラトウルフのデュエル。
 互いにシールドは五枚。希野の場にはなにもないが、トラトウルフの場には《ポーク・ビーフ》と《白骨の守護者ホネンビー》が一体ずつ存在している。
 そして希野のターンが来たが、
「使えるカードがない……」
 序盤からの手札破壊を受けてマナ加速を妨害され、マナカーブが重い方へと偏りがちな希野デッキは、動きが著しく悪くなっていた。
「……ターン終了」
「ガルルルル……オレのターン」
 そしてトラトウルフのターンへと回る。刹那、どこからか雷鳴が轟いた。

「《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》を召喚ッ!」


雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる。その後、その捨てたカードよりコストが小さい闇のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー


 暗い雷光の中から現れたのは、雷の力を操りし猛虎と餓狼が一体となった悪魔の龍。それが、新しい稲妻を放ち、この場へと君臨する。
「動かれた……!」
 先んじて切り札を呼び出され、ますます劣勢となる希野。
「あたしのターン……これに賭けるしかないか。呪文《スクランブル・タイフーン》!」
 希野は一気に山札を掘り進み、主要なカードを引き入れる。
「……さらに呪文《再誕の社》を使い、ターン終了」
『オレのターンッ!』
 《トラトウルフ》が吠えると、同時に稲光が放たれる。
『呪文《プライマル・スクリーム》! 墓地を増やし、その中から《爆弾魔 タイガマイト》を回収、そのまま召喚! マナ武装3発動! 手札を捨てろ!』
「また……」
 希野は渋々手札を捨てる。これで残り一枚となってしまったが、その一枚もすぐさま消し飛ばされてしまう。
『《トラトウルフ》で攻撃! その時、《トラトウルフ》の能力が発動するッ! さあ、残り一枚の手札も墓地送りだ!』
 雷鳴が轟き、希野最後の一枚となる手札が紫電の稲妻に貫かれる。貫かれたのは、《サイバー・N・ワールド》。
『ワァォォォォンッ! 《トラトウルフ》のもう一つ能力! 《トラトウルフ》の能力で手札を捨てた時、その捨てたカードよりもコストの小さい闇のクリーチャーを、墓地から蘇らせるッ! 復活せよ、《骨断の悪魔龍 ブッタギラー》!』
 《トラトウルフ》の咆哮で、墓地より悪魔龍が復活する。しかも、蘇ったのは《ブッタギラー》。
 これで希野は、クリーチャーを召喚してもすぐに殴らなければ、能力で破壊されてしまう。その分、《トラトウルフ》もクリーチャーを並べにくくなるが、しかしシールド枚数やクリーチャー数では圧倒的に負けているため、不利であることに違いはない。
『Wブレイクだッ!』
「っ……!」
 手札破壊にリアニメイト、その後にはシールドブレイク。今まで変動のなかったシールド枚数は、希野が先に減らすこととなってしまった。
「……あたしのターン。呪文《フェアリー・シャワー》! 山札の上から二枚を見て、一枚を手札へ、一枚をマナゾーンへ! そして《アクア・インテリジェンス 3rd G》を召喚!」
 とりあえずクリーチャーを並べるが、しかし一体では無意味だ。《トラトウルフ》の場には《ブッタギラー》がいる。
『オレのターンだッ! 呪文《復活のトリプル・リバイブ》! 蘇れ、死した雑兵ども!』
 ここで唱えられるのは《復活のトリプル・リバイブ》。復活されるのはコスト3以下の軽量クリーチャーだが、その数は三体。一気に数で不利を取られてしまう。
『蘇れ、復活せよッ! 《ポーク・ビーフ》《チューシャ・ジューシャ》《ボンバク・ボッボーン》!』
「う……!」
『さらに《トラトウルフ》で攻撃! 手札を破壊するぞッ!』
 またしても希野の手札が貫かれる。墓地に落ちたのは《ノーブル・エンフォーサー》。
『《特攻人形ジェニー》をバトルゾーンに出し、そのまま破壊! お前の残る手札も破壊だ! そして《ブッタギラー》で攻撃! その時、《チューシャ・ジューシャ》を破壊し、アンタップ状態の《アクア・インテリジェンス》も破壊! さらにさらに、《チューシャ・ジューシャ》が破壊されたことで、墓地の《特攻人形ジェニー》を回収! 最後にシールドブレイク!』
 《ブッタギラー》にぶった切られた《アクア・インテリジェンス》と希野シールド。これで、彼女のシールドはゼロだ。
 だが、まだ《トラトウルフ》の場にはクリーチャーが残っている。
『終わりだッ! 《タイガマイト》で、ダイレクト——』
「ストップ、S・トリガー発動! 《ドンドン吸い込むナウ》!」
『グルゥ……?』
「《ピクシー・ライフ》を手札に加えて、自然のカードを加えたから、《タイガマイト》をバウンス!」
 九死に一生を免れた希野ではあるが、まだ劣勢であることは変わらない。
「シールドはゼロ、クリーチャーもゼロ、手札は少ないし、相手クリーチャーは多数……」
 パッと見れば、絶望的な状況。この盤面をひっくり返すのは不可能だと、傍から見てそう思ってしまうのも無理はない場だ。
 しかし、
「それでも、あたしにはこの状況を打開するカードがある……まずは呪文《ピクシー・ライフ》。マナを追加して、マナゾーンから無色カードを回収」
 序盤にマナへと置いた切り札を回収するための呪文。ここで希野が手に入れるのは、彼女を勝利に導く天頂の存在。それは即ち、

「必勝を司る龍よ、その力を解き放ち、我らに勝利を——《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》!」

 金色と白銀の鎧に包まれた、頂に君臨せし龍。その力を得た者に“必勝”という二文字の言葉を授けるゼニス、《カイザー「刃鬼」》。
 このクリーチャーが出た時点で、ほぼ希野の勝利は絶対的なものへと変質していた。
「《カイザー「刃鬼」》の能力で、相手のシールドの枚数分ガチンコ・ジャッジを行うわ」
 《トラトウルフ》のシールドは、一枚もブレイクされていないため五枚。つまり、五回のガチンコ・ジャッジが行われる。
 一戦目。希野はコスト7《R.S.F.K.》、《トラトウルフ》はコスト3《ミラー怪人 ドテラバラ》。
 二戦目。希野はコスト2《霞み妖精ジャスミン》、《トラトウルフ》はコスト3《爆弾魔 タイガマイト》。
 三戦目。希野はコスト4《偉大なる恵み》、《トラトウルフ》はコスト4《裏切の悪魔龍 ウラギランド》。
 四戦目。希野はコスト3《セブンス・タワー》、《トラトウルフ》はコスト6《黒神龍オドル・ニードル》。
 五戦目。希野はコスト8《不敗のダイハード・リュウセイ》、《トラトウルフ》はコスト7《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》。
「——五回中三回……ま、それでも十分ね。三体のハンターを、手札、墓地、マナゾーンから呼び出すわ」
 《「刃鬼」》の呼び声に呼応するかのように、傷を負った狩人たちが集う。それも、修羅場を幾度と潜り抜けた、歴戦のハンターたちだ。
「《永遠のリュウセイ・カイザー》! 《鬼カイザー「滅」》! 《真実の皇帝 アドレナリン・マックス》!」
 三体のドラゴンにしてハンターなクリーチャーが並び、しかも《リュウセイ・カイザー》の能力でそれらすべてがスピードアタッカーとなっている。
『グ、グルゥ……!』
 いくらクリーチャーを並べていても、《トラトウルフ》の場にいるのは小型クリーチャーばかり。一体一体が場を大きく動かすクリーチャーがこれだけ並んでしまえば、流石に太刀打ちできない。
「さあ、行きなさい! 《リュウセイ・カイザー》でWブレイク、《カイザー「刃鬼」》でシールドをTブレイク!」
『《カイザー「刃鬼」》は《ポーク・ビーフ》でブロック!』
「《鬼カイザー「滅」》でシールドをWブレイク!」
『ガウゥ……ぬぅ?』
 と、ここで《トラトウルフ》は気付いた。
 自身の場にブロッカーは残り二体。そして、希野の場にはアンタップ状態のアタッカーが一体。そして自分のシールドは一枚。
 凌げる、まだ生き残れる。よく考えてみたらブロッカーが三体も並んでいるのだ。スピードアタッカーが四体いても、とどめまで刺されることはない。
 ——ただし、そのアタッカーが、普通のアタッカーでなければ、その考えは瓦解する。
「最後に《アドレナリン・マックス》で攻撃! 能力発動! あたしのドラゴンはすべてアンタップする!」
『なんだと……!?』


真実の皇帝(トゥルーカイザー) アドレナリン・マックス 火文明 (9)
レッド・コマンド・ドラゴン/アンノウン/ハンター/エイリアン 12000
各ターン、このクリーチャーがはじめてタップしたとき、自分のドラゴンをすべてアンタップする。
T・ブレイカ


 《アドレナリン・マックス》の、真の皇帝としての咆哮により、希野の龍たちはすべて、再び起き上がる。
 《アドレナリン・マックス》の二連撃により、《トラトウルフ》のブロッカーはすべて薙ぎ倒され、残る一枚のシールドも《リュウセイ・カイザー》の剣に切り裂かれる。
 そして、最後の一撃。

「《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》で、ダイレクトアタック!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.603 )
日時: 2014/10/26 13:25
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

「……所長」
「んー? ホワット?」
「なんなんですか、今回のこれは」
 北東方面へと進んでいく、黒村とラトリ。クリーチャーを蹴散らしながら進み、そのクリーチャーたちの勢いがやや衰えてきた合間に、黒村はラトリに問う。
「こんな現象は前代未聞です。夥しい数のクリーチャー、町一つを覆い尽くすほどの神話空間、そして今しがた九頭龍たちから報告のあった謎のなにか……これは、なんなんですか」
「そんなの私に聞かれてもアンノウン。それを解明するのが、私たちのワークだよ」
「それはそうですが……」
 なにか引っかかる。いや、そうではない。黒村はただ、探りを入れているだけだ。
 ラトリ・ホワイトロック。若くして【ミス・ラボラトリ】なる“ゲーム”研究機関の創立者。【神格社界】のルカ=ネロ、【神聖帝国師団】のジークフリート・フォン・パステルヴィッツらとも浅からぬ縁らしいが、詳細は不明。その他の経歴も一切不明。とにかく謎に包まれた人物だ。
 はっきり言って黒村は、彼女を疑っている。いや、その表現はやや語弊があるかもしれない。だが、信じきれないのだ。完全な信頼を置くには、彼女は謎が多すぎる。
 彼女の“ゲーム”に対するスタンスも、他の“ゲーム”参加者はおろか、【ラボ】の研究員とも違う。ただ知識欲を満たしたい、“ゲーム”の謎を究明したい、そういったこととは別の思惑があるように思える。
 さらに彼女は、自分たちになにかを隠しているような気さえするのだ。ゆえにこの現象についてもなにか知っているのではないかとカマをかけたような言い方をしたが、上手く躱されてしまった。
「……マスター、よろしいでしょうか」
「アテナ? 君もホワッツ?」
「この近辺一体に分散していた力が消失、代わりにここから約1km地点に、一際大きな力を確認しました」
「それは……」
 このタイミングでこの報告。アテナの言うことを信じるなら、明らかに事態が動いている。
「1kmかぁ。分散してたパワーが集まるってことは、スポット的にもそれなりの場所なのかな? この辺でそんなプレイスある?」
「パワースポットかそれに近いものでなくとも、分散した力を手元に引き戻したと考えるならば、力の場所を客観的に確認できるような場所に集まっているとアテナは考えます」
「客観的に確認できる場所か……周囲の不確定要素的な力やノイズに邪魔されたくないとするなら、高いところか……?」
 この街で高い建造物。ビルなどそういったものはいろいろあるが、ここから1kmという範囲も加味するのであれば——ラトリと黒村は、真っ先にそれへと視線を移す。

 この街における一種の象徴とも言える高層建造物——展望台だ。



 東京におけるスカイツリー、大阪における通天閣ほど有名で立派なものではないが、この街にもそこそこ高いタワーがあり、そこには展望台が併設されている。
 展望台というより、単に前方角に対して有料双眼鏡が設置されているだけだが。主に観光客向けに作られたもので、展望台と言うと語弊がある建物だが、しかし他の特徴が思いつかないため、一般的には展望台と呼ばれている。
 それはともかくとして、そんな展望台へとやってきラトリと黒村。当然のように中にはクリーチャーがひしめき合っていたが、その程度は彼らにはなんの問題もない。適当にいなして先に進む。
「どう、アテナ? なにかフィールする?」
「かなり近いところに強い力を感じます。この建物であることは間違いないでしょう」
「もっと正確な位置は分からないのか?」
 黒村がアテナへと尋ねる。が、アテナはすぐには答えず、少し間を置いて、
「……本来ならばマスターの問いにのみ答えるのですが、今の状況と貴方とマスターの関係を総合して検証した結果、その問いには答えてもよいと判断しました」
「…………」
 意外と頑固というか厳格というか、面倒な性格をしているようだ。
 そんなアテナの一面を垣間見つつも、彼女は答える。
「この地点、即ち地上からおよそ100m弱の高さです」
「100m弱ね。このタワーは確か100mちょっとだから」
「ほぼ頂上か。途中の雑魚のことも考えると、少々面倒だな」
 とはいえ、現状では周囲にそれらしいクリーチャーの姿は全く見えない。ここだけ特別な力が働いているのか、それとも単にクリーチャーの出現場所にばらつきがあるだけなのか。
 とりあえず二人はエレベーターで最上階まで行き、そこから上へと続く階段を探す。もしかしたらエレベーターで移動が終わりかとも思ったがそんなことはなかった。最上階と頂上は別物であるということがよく分かる。
「このドアだね。やっぱりキーでロックされてるけど」
「一般人は立ち入り禁止ですからね。少し待ってください」
 ロックの構造がもっと単純だったら逆に面倒だったが、幸いにも鍵穴のようなものが見えるので、鍵を差し込む型のようだ。
 黒村はなにか細長い針金のようなものを鍵穴に差し込み、なにやらがちゃがちゃと動かすと、針金を引き抜く。そしてドアノブを捻りながら、思い切りその扉に足を叩きつけ、蹴り開けた。
「開きました」
「ワォ、バイオレンス……でもサンクス。レッツゴー!」
 バイオレンス以上にヤバいことをしているのだが、しかし今は手段を選んでいる場合でもない。そのまま非常階段のような階段を駆け上がっていく。
 しかし、その道中。
「……マスター、後方よりクリーチャー反応出現。同時に上空の力が微弱ながらも乱れました。感づかれたようです」
「ばれちゃったか。でも、クリーチャーなんてキャンノットルック?」
 感づかれた、というのも上にいるであろうなにかが意志を持つ物であった場合だが、そのように解釈できなくもない。
 とはいえ、ここからではクリーチャーの姿は見えないが、
「いや……さっき曲がったところの陰にいますね。所長は上に行ってください。放っておいて奇襲されるのも困りますし、ここは俺が食い止めます」
「それ、死亡フラグだよ。まーでも、黒村君ならドントウォーリー、だね! 頼んだよ! アテナ!」
「はい」
 ラトリは黒村を置いて、そしてアテナを連れて、たったかと階段を駆け上がっていく。
 一方黒村は、静かにデッキケースに手を掛けつつ、ジッと曲がり角の陰を見つめる。
「俺は別に構わないが、出て来なくていいのか? 奇襲するならそれはもう失敗だ。そこで隠れていても意味はない——」
 と、その時。
 なにかが超高速で黒村へと突っ込んで来た。
「っ!」
 間一髪、顔を少し傾けるだけでそれは回避できたが、代わりにバランスを崩してしまい、階段から落ちかけた。しかし、手すりにつかまってなんとか体勢を整える。
「……《倍返し アザミ》か」
 直立体勢を取り戻しつつ、上を取られ、通行止めをしてくるクリーチャーを見て、黒村は呟く。
 これまでに報告があったクリーチャーは、《聖邪のインガ スパイス・クィーンズ》《機神装甲ヴァルボーグ》《拷問の魔黒スネーク・テイルコート》《偽りの名 ハングリー・エレガンス》《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》——夕陽と汐が探偵事務所に来る前に遭遇したものも含めると、《桜舞う師匠》《サイレンス トパーズ》もだ。
「やはり統一性はないか……まあいい」
 今の役目は、目の前に敵を倒すことのみ。
 そう自分に言い聞かせ、黒村とアザミは神話空間に溶け込んでいく——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.604 )
日時: 2014/10/26 16:15
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

 黒村とアザミのデュエルは、まだ序盤も序盤。どちらもクリーチャーを出していない状態だった。
 そんな中、先んじてアザミが動き出す。
「アタシのターン! 《倍返し アザミ》を召喚!」
 黒と緑を基調とした民族的な意匠の、小柄なクリーチャーが現れる。炎を両手、そして側頭部で燃やしており、表情からして勝気な雰囲気が伝わってくる。
「……《ボーンおどり・チャージャー》を使い、ターン終了だ」
『それだけ? じゃあガンガン行くわよ! 《蛙跳び フロッグ》を召喚! アタシでシールドブレイク!』
 見る限り《アザミ》のデッキはステロイドの速攻。あまり悠長に準備している暇はなさそうだ。
「俺のターン。《一撃奪取 ブラッドレイン》《西武人形ザビ・バレル》を召喚。《ザビ・バレル》の能力で手札を捨てろ」
 《ザビ・バレル》が《アザミ》の残った手札を撃ち落とす。速攻相手なら一枚のハンデスでもかなり有効だ。さらにブロッカーも並んだため、パワーの低い《アザミ》や《フロッグ》なら返り討ちにできる。
『無駄無駄! アタシのターン! 呪文《父なる大地》で《ザビ・バレル》とマナゾーンの《無重力 ナイン》を入れ替える! そしてアンタのマナゾーンにカードが置かれたから、アタシの能力発動!』


倍返し(ヘビー・ベイビー)アザミ 火/自然文明 (2)
クリーチャー:アウトレイジ 1000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
相手のマナゾーンに、手札以外のどこからでもカードが置かれた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。


 アウトレイジは総じて型破りな能力を持つが、そのすべてがパワーアタッカー+100万やら、ターンを飛ばすやらの派手な能力とは限らない。《アザミ》の能力は地味ながらも堅実、そして強力な能力だ。
 要するに相手のマナ加速に対してこちらもマナ加速をするという受動的な能力だが、本来マナ加速は相手より早く大型のカードを使うためにある。しかし、ただ《アザミ》がいるだけで相手の加速に追いつけるというのだから、相手の加速を躊躇わせることが、《アザミ》の強さの一つだ。
『《ザビ・バレル》一体がマナに行ったから、1マナ加速よ!』
 とはいえ、マナ加速を用いないデッキも存在する。そういったデッキには効果がないように思われるが、《アザミ》の能力は手札以外からマナゾーンにカードが置かれた時に発動する。つまり、相手のカードを“こちらからマナ送りにすれば”それでも発動するのである。
『アタシと《フロッグ》でシールドをブレイク! ターン終了』
「ちぃ……!」
 《アザミ》の連続攻撃で黒村のシールドは残り二枚。だんだんと追い詰められてきた。
「《ボーンおどり・チャージャー》を発動。さらに《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。墓地を増やし、回収はしない。《ナイン》で《フロッグ》と相打ちだ」
『それだけ? だったらアタシのターン行くわよ! 《龍覇 ケロスケ》召喚! 超次元ゾーンから《革命槍 ジャンヌ・ミゼル》を装備! 《ジャンヌ・ミゼル》の能力で《ホネンビー》をタップして、アタシでシールドをブレイク!』
 あくまでも攻め続ける《アザミ》は、ブロッカーを止めつつ残りシールドを一枚まで削っていく。
 しかし、それもそろそろ潮時だ。
「……俺のターン。《ブラッドレイン》でコストを下げ、墓地からこいつを召喚するぞ」
 墓地から不気味な唸り声が響く。地獄の底まで届くような、重苦しい声だ。
 なにも無法の力を使うのは《アザミ》だけではない。黒村も、墓地というアウトレイジが得意とするゾーンを十全に使い、操るのだ。

「不死なる無法の帝よ、魂蠢く墓地より解放されろ——《不死帝 ブルース》!」

 墓地から蘇ったのは、漆黒の姿に大鎌を携えた、死神のような無法者。闇文明の代表的アウトレイジ《不死帝 ブルース》だ。
『ぼ、墓地から召喚なんて……!』
「その程度で驚くな。《ブルース》が場に出た時、山札の上三枚を墓地へ送るぞ。そして《ブルース》の能力発動、墓地からデスパペットまたはアウトレイジを召喚する」
『で、でもマナはもう残ってないじゃない!』
「なら、マナを使わず召喚すればいい。俺の墓地にクリーチャーは六体以上いる、G・ゼロ発動《盗掘人形モールス》を召喚」
 《ブルース》の呼び声に応じて、墓地から《モールス》が釣り上げられる。
「《モールス》の能力で、墓地から《威牙の幻ハンゾウ》を回収。さらにG・ゼロ、俺の場にアウトレイジがいるので《無重力 ナイン》を召喚」
 気付けば、黒村の場にはクリーチャーが五体も並んでいた。一方、《アザミ》の場にはたった二体、手札もない状況だ。
「序盤で攻め切れなかったのが痛かったな。もっとお前が速ければ、また違っていたかもしれん」
『ぅ……! まだ、まだよ! まだ終わってない! 《霊騎ラグマール》を召喚! 互いのクリーチャーをマナに送る! 《ラグマール》をマナに送るわ!』
「《ナイン》をマナへ」
『アンタのカードが手札以外からマナに置かれたので、アタシの能力でマナを加速! 《ケロスケ》で攻撃、装備した《ジャンヌ・ミゼル》の能力で《ホネンビー》をタップ!』
 《アザミ》のアタッカーは二体、ここでブロッカーを封じれば、黒村のシールドを割り切り、そのままとどめまで行けるが、
「ニンジャ・ストライク発動。《ハンゾウ》を召喚し、《ケロスケ》のパワーをマイナス6000。ドラグナーが破壊されれば、ドラグハートも超次元ゾーンに戻る……厄介な龍解はさせない」
『くぅ……!』
 ここで《モールス》で回収した《ハンゾウ》が生きて来る。ターン終了時に装備クリーチャーがタップされていれば龍解する《ジャンヌ・ミゼル》を退かしつつ、《アザミ》の攻撃も止められた。
『あ、アタシでシールドブレイク!』
「……S・トリガーはない。が、それで終わりか?」
『…………』
 終わりしかない。これ以上、彼女のできることはない。
「なら俺のターンだ。《ホネンビー》を召喚し、山札の上三枚を墓地へ。墓地から《光牙忍ハヤブサマル》を回収。さらに《ブルース》の能力で、墓地からアウトレイジを召喚する」
 再び《ブルース》が雄叫びを上げ、墓地から死した無法者たちが蘇る。
「まずはこいつだ。G・ゼロ発動! 数多の屍を超え、百万の力を超越せよ——《百万超邪 クロスファイア》!」
 黒村の墓地にクリーチャーは六体以上いるので、《クロスファイア》がコストの支払いなく蘇る。
 だが、これだけでは終わらない。無法者は、《ブルース》の手でまだ復活を続けるのだ。

「帝の命により蘇り、無法者たちを蘇らせろ——《不死の猛者 シックス・センス》!」


不死の猛者(アンデッド・バンデット) シックス・センス 闇文明 (7)
クリーチャー:アウトレイジMAX 9000
W・ブレイカー
このクリーチャーを自分の墓地からバトルゾーンに出した時、コスト6以下の進化ではないアウトレイジまたはデスパペットを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出す。


 《ブルース》の力で蘇ったもう一体の無法者は、《ブルース》の腹心である《シックス・センス》。彼の臣下であるため、《シックス・センス》の能力も《ブルース》に近いものであり、また《ブルース》の力で最大限発揮される。
「《シックス・センス》が墓地からボトルゾーンに現れたので、能力発動。墓地から《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》をバトルゾーンに……これで終わりだ」
 墓地から蘇ることで大量の並んだ無法者たちが、一斉に《アザミ》へと牙を剥く。
「《ファルコン・ボンバー》で攻撃、能力で《シックス・センス》をスピードアタッカーに! 続けて《クロスファイア》でWブレイク!」
『し、S・トリガー発動! 《大きくて小さな農園》! パワー3000以下のクリーチャーをすべてマナ送りよ! さらにアタシの能力で、その数だけマナを加速!』
「それがどうした。《シックス・センス》でWブレイク!」
 黒村の怒涛の攻撃により、《アザミ》のシールドはゼロ。さらに、最後のシールドからも、これ以上S・トリガーは出ない。
 地獄の帝が、大鎌を振りかざす。

「《不死帝 ブルース》で、ダイレクトアタック——!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.605 )
日時: 2014/10/26 19:08
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

「最上階、到着、っと」
 黒村がいないため、最近は崩れつつあるキャラ作りのための口調も気にしない。いや、気にしていられない、と言うべきか。
「なんか、凄いのいる……」
 少し開けた最上階、ラトリの目の前には、妙な存在感を放つ、なにか。
 それがなんなのかを説明することは、彼女の知識を持ってしても無理だった。凄まじい力を感じるなにか、としか言いようがない。強いて言うのであれば、謎の力の集合体、とでも言うのか。
「アテナ、あれ?」
「そのようです。途轍もない力を感じます」
「アテナはあれがなんなのか、知ってるの?」
「……覚えはない、と思います。他の十二神話がそうであるように、アテナの過去の記憶、本来いるべきであった世界での記憶は完璧ではありません。しかし、どこかで感じたことがあるようにも思えます。個人感覚によるものなので、非常に不明確かつ不確定な情報ではありますが。信頼性はゼロと言っても良いでしょう」
 ならば、現状では未知の存在、と言っても差し支えないものであるようだ。
「でも……本当になんなのかな、これは。こんなよく分からないものじゃ調べようがないよ。持って帰るわけにもいかないし——」
 と言いながらラトリが一歩を踏み出した、その瞬間。
 目の前の力の集合体が、収縮していく。
「え、あ、ちょ、ちょっと……」
 ぐんぐん萎んでいく集合体に手を伸ばすも、もはや手遅れ、もうすぐに消えてしまう。
 しかし、
(……? なに……?)
 完全に消え去る一瞬だけ、その力の裏に、なにかの影が見えた。本当に一瞬だけだったので、それがなんなのかまでは分からなかったが。
「今のは……」
「マスター」
「え、なに?」
「クリーチャーが来ます」
 と、アテナが言い終えた瞬間。
 遥か上空から、一体のクリーチャーが落下してきた。
「うわっと……危なっ!」
 こんな高い場所で巨大なクリーチャーが落下して来たら、衝撃でバランスを崩す。下手したら建物が倒壊するレベルだが、なかなか耐久力のあるタワーだった。
 ラトリは身体を起こしつつ、目の前で直立する、巨大なクリーチャーに目を向ける。
「あれは……」
「《「命」の頂 グレイテスト・グレート》……ゼニスですね」
「ゼニス級のクリーチャーが実体化するなんて、相当だね。やっぱさっきのあれのせいかな?」
 まだ分からないことも多いが、そう考えるの自然だろう。
 なぜ集合体は消えてしまったのか、あの集合体はなんなのか、急にこの場所に出現した理由はなんなのか……解明すべきことは多いが、集合体そのものが消えてしまっては、それも叶いそうにない。
「ならせめて、このクリーチャーと一戦交えてみようかな。これがあの力によるものなら、なにか分かるかもしれないし。アテナ、行ける?」
「はい。アテナも、いつまでも戦わないままではいられません」
「よし、じゃあ頼んだよ」
「了解しました、マスター」
 アテナが光に包まれると、一枚のカードとなりラトリの手に収まる。ラトリはデッキケースからデッキを取り出した。
 そして、彼女たちはグレイテスト・グレート共に、神話空間を展開する——



「《霞み妖精ジャスミン》召喚! 即破壊してマナを増やすよ!」
「《霞み妖精ジャスミン》を召喚。破壊し、マナを追加」
「呪文《ライフプラン・チャージャー》! 《雷鳴の守護者 ミスト・リエス》を手札に!」
「呪文《ライフプラン・チャージャー》を発動。《黒神龍オンバシ・ラオーン》を手札に加える」
 ラトリとグレイテスト・グレートのデュエル。序盤はお互いにマナ加速とキーカードを手札に加えるという準備。双方ともまったく同じカードを使用していた。
「私のターン! 呪文《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》! 3マナ加速してさらに呪文《野生設計図》! 山札の上三枚を捲って、それぞれコストの違うクリーチャーを手札に加えるよ!」
 捲られた三枚は、《蔵録の守護者カメンビー》《超過の守護者イカ・イカガ》《霞み妖精ジャスミン》。それぞれコストが2、3、2だ。
「《カメンビー》と《イカ・イカガ》を手札に加えて、ターン終了!」
「今回は二枚手に入りましたが、同コストカードが多いデッキでそのカードチョイスはどうなのでしょう」
「むー、うるさいなぁ。上手くいったならいいじゃん」
「今回は、です。不安定なデッキメイクでは生き残れません」
「分かってるよ。私がこういうのダメだってことくらい」
 少し拗ねたような表情を見せるラトリ。しかし、すぐにいつもの表情に戻る。
「《黒神龍オンバシ・ラオーン》を召喚。ターン終了」
「着々と揃ってるなぁ……なら、こっちも準備していこうか」
 不気味に直立するグレイテスト・グレートに対し、陽気で朗らかなラトリは、勢いのままクリーチャーを並べ始める。
「《ミスト・リエス》を召喚! さらに《光器ペトローバ》も召喚! ガーディアンを指定して、《ミスト・リエス》の能力でで一枚ドロー! ターン終了!」
 《ミスト・リエス》でドローソースの確保、《ペトローバ》でこれから展開する予定のガーディアンの強化と、次の展開のための基盤を固めるラトリ。
 だが、それに対しアテナは、
「マスター、ブロッカーは出さなくて良かったのですか」
 と意見する。
「え? なんで?」
「次でマスターの敗北が決まるかもしれないからです」
 あっさりとのたまうアテナ。その言葉に対してなにかを言う前に、グレイテスト・グレートのターンが訪れた。
「《オンバシ・ラオーン》の能力により、アンノウンとゼニス、両方の種族を持つクリーチャーのコストを3軽減。7マナで召喚」
 ゴゴゴゴ、と空気の震えを感じる。《オンバシ・ラオーン》がその身を捧げることで、あらゆる命を司る天頂の存在が、君臨する——

「——《「命」の頂 グレイテスト・グレート》」


「命」の頂 グレイテスト・グレート 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 21000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンまたは墓地から好きな数のクリーチャーをコストの合計が7になるように選び、バトルゾーンに出す。
Q・ブレイカー
エターナル・Ω


 中世の戦争に使われたような甲冑を見に纏い、一本の長槍を携え、数多のトライストーンを浮かべた戦士が、場に現れる。
「あ……忘れてた」
「ここまでですか。早い終了ですね」
 《グレイテスト・グレート》は他のゼニスとは違い、汎用性に欠けたり起爆しにくかったりと、扱いづらい部分が目立つが、しかし使い方を工夫すれば非常に強力なクリーチャーであることは違いない。
『召喚して《グレイテスト・グレート》を場に出したので能力発動。マナゾーンよりコスト7の《神聖麒 シューゲイザー》をバトルゾーンに』
 《グレイテスト・グレート》の力で《シューゲイザー》の命あ呼び寄せられる。さらに今度は、《シューゲイザー》の能力が発動する。
『《シューゲイザー》の能力発動。手札よりコスト5の《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》をバトルゾーンに』
 これで《グレイテスト・グレート》のクリーチャーはすべてスピードアタッカーとなる。《グレイテスト・グレート》はQブレイカーなので、《シューゲイザー》《キリュー・ジルヴェス》と合わせてすべてのシールドを突き破りつつ、とどめまで刺せるようになってしまった。
『《シューゲイザー》で攻撃、その時に能力発動。マナゾーンより《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》をバトルゾーンに。シールドをWブレイク』
「っ、くぅ……!」
 《シューゲイザー》が操る光の杖がラトリのシールドを二枚粉砕する。砕かれたシールドの破片が、彼女を切り裂いた。
「マスター、大丈夫ですか」
「ちょっと痛い……っていうかそれどころじゃな——」
『《グレイテスト・グレート》で残りのシールドをブレイク』
 長槍の一撃が、ラトリの残ったシールドを三枚砕く。まだ《グレイテスト・グレート》の場にはスピードアタッカーが二体いるので、片方を除去しても防ぎ切れない。二体を同時に止めなければならないのだ。
「っ、……来たよS・トリガー発動! 《DNA・スパーク》!」
 三枚目のシールドが光の束となり収束していく。そしてそこから放たれる二重螺旋状の光が、《グレイテスト・グレート》の残ったアタッカー二体を封じ込めた。
「た、助かったぁ……」
「九死に一生を得ましたね」
「しかもシールド追加のおまけつき。これでなんとか……」
「シールド追加は無理ですね。《グレイテスト・グレート》はQブレイカー、先ほどブレイクしたシールドは三枚。残り一枚もブレイクされます」
 アテナの言う通り、《グレイテスト・グレート》はシールドを四枚ブレイクできるが、まだ三枚しかブレイクされていないので、S・トリガーでブレイク中に増えたシールドもブレイクされるのだ。
「シールドゼロ、相手はアタッカー四体か……」
 かなり厳しい状況。ここから巻き返すのは、ラトリの実力では難しいだろう。
 だが、しかし、
「私にはアテナがいる。負けるわけない。それに——」

 ——こんなところでは、終われないから——

 小さく呟くと、彼女は自らのデッキへと手を掛けた——


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