二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.361 )
- 日時: 2014/01/25 14:21
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
《エンド・オブ・ザ・ワールド》は、数ある墓地肥やしカードの中でも、最大級の力を持つ、非常にトリッキーかつリスキーなクリーチャーだ。
「山札からカードを三枚選択して……それ以外のカードは墓地へ」
《エンド・オブ・ザ・ワールド》の咆哮で、ごっそりとハスターのデッキが削り取られる。
考えなしに使えばデッキ切れを起こすだけの《エンド・オブ・ザ・ワールド》は、当然ながらコンボに組み込むことが必須と言える。真っ先に思いつくのは墓地利用だろう。墓地に落ちたカードを呼び戻したり、回収したり、または墓地を参照する能力を最大限に活用したりと、いろいろ考えられる。
一番ありそうな可能性は墓地利用だが、流はその考えを否定した。
(……奴はマナ加速カードとして《ダンシング・フィーバー》を使用していた)
《ダンシング・フィーバー》も、コンボデッキによく利用されるカードだ。同じ6マナで3マナ加速できるカードには《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》があり、こちらはマナゾーンに置くカードがタップされず、他にも効果がある。
なのでただマナを増やしたいだけならそちらを使うところが、ハスターが使用したのは《ダンシング・フィーバー》。つまり、マナゾーンに落ちて欲しくないカードを取捨選択してマナを加速させた。
(奴の墓地には能力なしのクリーチャーも相当数落ちている……なんらかの手段でこれらを山札に戻し、《神聖祈 パーロック》の能力を発動させるつもりか)
《エンド・オブ・ザ・ワールド》は墓地を増やす能力に目が行きがちだが、実は残す三枚の山札も好きなように操作できる。つまり、山札操作のカードとしても利用できるのだ。
流はハスターの目的は山札操作だと読む。そう思った流の行動は早かった。
「《鬼羅丸》はとりあえず置いておくとするか……代わりにこいつを召喚だ。《偽りの名 イージス》!」
流が召喚したのは《偽りの名 イージス》。バトルゾーンのアンノウン以外のクリーチャーをすべて山札に戻す。
流のバトルゾーンにはアンノウンしかいないが、ハスターの場にはクリーチャーがい二体、どちらもアンノウンではないので、まとめて山札へと送還された。
その後、ハスターは山札に戻されたクリーチャーの数だけカードを引くが、山札に戻されたクリーチャーもろともデッキがシャッフルされたため、デッキトップのカードは変わっている可能性が高い。
「これでお前のデッキはかき混ぜられた。デックトップになにを仕込んだかは知らないが、お前の思い通りにはいかない。《レディオ・ローゼス》でTブレイク!」
さらに《レディオ・ローゼス》で残ったシールドを二枚粉砕する。S・トリガーは出ず、これでハスターはバトルゾーンにもシールドにも、カードはなにもなくなった。
「僕の思い通りにはいかない、ね」
かき混ぜられた山札を見つめ、ふとハスターは呟く。
「——そうかなぁ?」
嘲るかのような笑みを浮かべ、首を傾げるハスター。その笑みは、少年らしからぬ不気味さがあった。
「なに……? どういうことだ」
「だってさぁ、君はぼくが山札の“上”にカードを仕込んだ、って思ってるみたいだけど、順番なんて関係ないんだよ。だって」
一瞬、言葉を区切り、ハスターは続ける。
「ぼくがデッキに残したカード、全部同じカードだし」
「なんだと……?」
嫌な予感がする。流の背筋に、悪寒が幾度と走り抜ける。
「だから君がいくらデッキをかき混ぜようとも、デッキの総数が減らないんじゃあ意味ないんだよ。確かに《イージス》は強いけど、この場面では意味なかったね」
それじゃあそろそろお見せしようかな、と一息吐いてから、ハスターは残り少ないデッキからカードを引く。
「まずは《鬼人形ブソウ》を召喚。効果で墓地のクリーチャーを好きな数山札の上に戻すね」
鬼人形ブソウ 闇文明 (3)
クリーチャー:デスパペット/ハンター/エイリアン 3000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、クリーチャーを好きな数、自分の墓地から好きな順序で山札の一番上に置いてもよい。
せっかく墓地に落としたカードを、再び山札へと戻すハスター。しかし《鬼人形ブソウ》は狙ったカードだけを山札に戻せる。これと《エンド・オブ・ザ・ワールド》を組み合わせることで、山札から不要なカードだけを抜き取ることが可能になるのだ。
「それから《クリスタル・メモリー》で持ってきたこれを発動だ。《転生プログラム》! 《鬼人形ブソウ》を破壊!」
そして、《鬼人形ブソウ》の能力で積み込まれたカードが、山札の一番上から飛び出す。
「新たなる時代の波に乗れ、そして希え……《神聖祈 パーロック》!」
神聖祈 パーロック 無色 (7)
クリーチャー:オラクリオン 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から、クリーチャー以外のカードまたはカードに能力が書かれているクリーチャーが出るまで、カードをすべてのプレイヤーに見せる。そのカードを自分の手札に加える。その後、残りの見せたカードをバトルゾーンに出す。
バトルゾーンにある自分の、名前に「パーロック」とあるクリーチャーはすべてブロックされない。
遂に現れた人造の神、オラクリオン。その名も《神聖祈 パーロック》。
遥か昔、太古の時代にゴッドとの戦いを終わらせるために旅立った《パーロック》。彼は長い旅の中で、時に子供の姿となり、時にエイリアンとなり、時に瀕死の重傷を負ったり、様々な苦難と出会い、そして別れを経験した。
そんな彼が行きついた先は、彼自身が楽しみを司る神。そう、オラクリオンだった。彼はすべての弱きものを統べる、海賊神となったのだ。
「《神聖祈 パーロック》の能力で、能力なしでないクリーチャー、またはクリーチャー以外のカードが出るまで、山札を捲っていくよ」
普通に使えば運任せだが、しかしハスターは前のターン《エンド・オブ・ザ・ワールド》を、このターンには《鬼人形ブソウ》を召喚している。
つまり、《転生プログラム》で踏み倒された《神聖祈 パーロック》の下には、大量の能力なしクリーチャーが眠っているはずで——
「じゃあ捲るね。《パーロック》、《カムバック・マイ・パーロック》、《パーロック〜陰謀に立ち向かえ〜》、《パーロック〜最後の航海〜》、《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》、《パーロック》、《カムバック・マイ・パーロック》——」
——山札から、次々と《パーロック》の名を冠するクリーチャーを湧いて来る。
「——《パーロック〜最後の航海》、《パーロック》、《パーロック》、《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》……《鬼人形ブソウ》」
最後に《鬼人形ブソウ》が出たところで、《神聖祈 パーロック》の効果は打ち止めとなる。しかし、ハスターのバトルゾーンはおぞましいことになっていた。
《神聖祈 パーロック》が一体。《パーロック》が四体。《カムバック・マイ・パーロック》が二体。《パーロック〜陰謀に立ち向かえ〜》が一体。《パーロック〜最後の航海〜》が三体。《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》が一体——合計十二体のパーロックが立ち並んだ。
いかに能力なしのクリーチャーと言えども、この数は凄まじい。
「最後の仕上げに、呪文《キリモミ・スラッシュ》! これぼくのクリーチャーはすべてスピードアタッカーだ」
《クローン・ファクトリー》でこのカードも回収していたので、まさか召喚酔いで攻撃は次のターンに持ち越される、などとは思っていない。このターンに、攻めてくる。
「じゃ、決めちゃいますか……行け」
次の瞬間、大量の《パーロック》たちが徒党をなして流へと迫る。この数のクリーチャー、一枚や二枚のS・トリガーではとても太刀打ちできないだろう。
「っ……ニンジャ・ストライク! 《威牙の幻ハンゾウ》で《神聖祈 パーロック》を破壊!」
攻められる前に、まず流は、《レディオ・ローゼス》で手に入れた《ハンゾウ》を呼び出して《神聖祈 パーロック》を破壊する。《神聖祈 パーロック》がいると、ハスターの《パーロック》をブロックできなくなってしまうため、先に潰しておく方がいいのだ。
とはいえ、十二体のクリーチャーが十一体に減っただけだが。
「ニンジャ・ストライク! 《光牙忍ハヤブサマル》で《ハンゾウ》をブロッカーにし、《パーロック》の攻撃をブロック!」
これで十体。
「S・トリガー発動だ! 《アクア・サーファー》で《カムバック・マイ・パーロック》をバウンス! もう一枚も《アクア・サーファー》だ、次は《パーロック〜最後の航海〜》をバウンス!」
二回連続でシールドトリガーを引く流。これで残る《パーロック》は六体。
「S・トリガー! 《ホーガン・ブラスター》で、山札から《真実の名 アカデミアン》をバトルゾーンに! 《パーロック》をバウンス! 続けて《ミステリー・キューブ》! 《真実の名 リアーナ・グローリー》で、《パーロック〜陰謀に立ち向かえ〜》をブロック!」
もはや奇跡などという言葉では収まり切らないレベルでS・トリガーを引いてくる流だが、しかし《パーロック》の勢いは衰えない。流のシールドは残り一枚、対する《パーロック》はまだ二体残っている。
最後にシールドが《パーロック》によってブレイクされた。同時に、そのシールドは光の束となり収束する。
「S・トリガー発動!」
まさか五枚のシールドすべてがS・トリガーという強運に恵まれた流。彼はその光の束を手にし、視線を向けるが、
「……!?」
次の瞬間、絶望感すら漂う眼差しを、見開いた。
「《深海の伝道師 アトランティス》……!」
最後のシールドから飛び出したのは、《アトランティス》。神がかりの奇跡を乱発した流だったが、最後の最後で、その奇跡は消えてしまったようだ。
「……ぷっ。あはははは! すっごい勢いでS・トリガー引いてくると思ったら、最後は《アトランティス》? うーわー、タイミング悪っ! もっと早くトリガーしてれば勝てたのにねー」
なにがつぼにはまったのかは分からないが、軽く腹を抱えて大笑いするハスター。《アトランティス》の能力でクリーチャーを一体残し、それ以外は手札に加える。
《アトランティス》でバウンスするクリーチャーは各プレイヤーが決定する。流が《アトランティス》を残したように、ハスターもアンタップ状態で場に残っている《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》を残した。
最後の一撃を防ぎたい流だが、《アトランティス》はその一撃を不正ではくれない。
「じゃ、これで終わりだね。結構楽しかったけど、やっぱこんなもんか。案外君らって大したことないんだね。なんでニャルは負けたのかなぁ?」
などと言いながら、ハスターは最後の《パーロック》に手をかける。
「《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》で、ダイレクトアタック」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.362 )
- 日時: 2014/01/25 21:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「……随分とあっさり行かせたな」
神話空間へと引きずり込まれた亜実は、直立不動で黙しているクトゥルーを睨みつける。
わざわざ夕陽の前に立ち塞がったにもかかわらず、こうも簡単に対戦相手を変更するとなると、なにか裏があると読んでも不思議はないだろう。
「お前たちの目的は《太陽神話》なんだろうが……それ以外にもなにか企んでいるのか? それとも、そのための策略か? あたしが『昇天太陽』と交代した時には、あたしと戦う気だったようにすら思えるが」
「…………」
亜実の問いに対し、クトゥルーは口を開かない。答える気は毛頭ないようだ。
「……まあいい。お前たちの目的がどうあれ、あたしはあたしの目的を完遂するだけだ。【師団】の四天王……お前たちのトップの側近と戦うのであれば、相手にとって不足はない」
亜実とクトゥルーのデュエル。
「《一撃奪取 トップギア》召喚!」
先攻、2ターン目に亜実は《トップギア》を召喚。まだクトゥルーのデッキの内容が分からないので、どの程度の速度で攻めるかは決めきれない。
「……《ピクシー・ライフ》」
対するクトゥルーは、返しのターンでマナを加速させる。その一手で、亜実はこのデュエルでの方針を決定した。
(マナゾーンのカラーは光と自然……《ピクシー・ライフ》でマナ加速しているということは、ゼロ文明のクリーチャーを主軸に据えたコントロール系デッキ、か? ゼニスかオラクリオンかは分からないが、起動は遅そうだな)
亜実は手札に視線を落とす。この手札の状況で、相手はコントロール気味のデッキ。ならばここは、速攻で殴り切る。
「あたしのターンだ! 《トップギア》進化! 《金属器の精獣カーリ・ガネージャー》!」
《トップギア》の能力でそのターン最初に召喚する火文明のクリーチャーの召喚コストは1軽くなる。そのため、3マナで《カーリ・ガネージャー》を呼び出し、攻めに出た。
「お前がなにを考えているかは知らないが、あまり悠長にマナを溜めていると、置いていくぞ。まず《カーリ・ガネージャー》の登場時能力で一枚ドロー。そして《カーリ・ガネージャー》で攻撃し一枚ドロー、Wブレイク!」
早速二枚のシールドを叩き割る。まだクリーチャーも出せていない状態でシールドを三枚に減らされてしまったクトゥルー。とはいえ、まだ三枚だ。先は分からない。
「……《青銅の鎧》、《予言のファミリア オラクルト》を召喚」
「ブロッカーか。それにまたマナ加速……」
これでクトゥルーのマナは6マナ。ゼニスが出て来るのであればまだ余裕はあるが、オラクリオンならそろそろだ。
「なら、これだな。呪文《スーパー獄門スマッシュ》で《オラクルト》を破壊! 《カーリ・ガネジャー》でWブレイク!」
最初からそのつもりではあったが、亜実は速攻で攻めていく。速度が衰えることはない。
ブロッカーを破壊され、またしてもクトゥルーはシールドを二枚失ってしまう。もう残り一枚だ。
「……《無頼聖者スカイ・ソード》、《信心深きコットン》召喚」
しかし今度はブロッカーやマナだけでなく、シールドまで増やしてくる。防戦一方にはなっているが、なかなかしぶとい。
「ならば、手数で勝負だ。《熱湯グレンニャー》《腐敗電脳ディス・メルニア》を召喚! 《カーリ・ガネジャー》でWブレイク!」
《グレンニャー》と《カーリ・ガネージャー》により、手札を減らさないまま攻め手を増やしていく亜実。さらに《ディス・メルニア》がいればブロッカーも意味をなさず、大型クリーチャーが出て来たとしても素早く対処できる。
とりあえず今はブロッカーが邪魔なので、《ディス・メルニア》で牽制しつつ、《コットン》にブロックさせようとするが、
「なに……っ?」
クトゥルーは《カーリ・ガネージャー》の攻撃をスルーした。
(どういうことだ? ここでシールドがゼロになれば、次のターンにはアンブロッカブルの《ディス・メルニア》でほぼ確実にとどめを刺せる。それとも、手札に除去カードの類があるのか……?)
そんな風に考える亜実だったが、除去カード以前の問題であった。
「S・トリガー発動《DNA・スパーク》」
「っ、なんだと……!」
刹那、螺旋状にうねる雷光が放たれ、亜実のクリーチャーたちは、縛り付けられるようにその光を受けた。
これで亜実が並べたクリーチャーはすべてタップ状態。そしてシールドが二枚以下なので、クトゥルーはシールドを一枚追加する。
さらに、
「《雷鳴の守護者ミスト・リエス》を召喚。呪文《超次元ホワイトグリーン・ホール》、《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンへ」
今までマナ加速やブロッカーを並べてばかりだったクトゥルーが、違う動きを見せた。
「《プリンプリン》の効果は《カーリ・ガネージャー》を指定。《ホワイトグリーン・ホール》の効果でマナゾーンから《DNA・スパーク》を手札に加える。手札を一枚シールドに置く」
《カーリ・ガネージャー》は攻撃を封じられ、あからさまにS・トリガーも仕込み、
「《コットン》で《グレンニャー》を攻撃。《青銅の鎧》で《ディス・メルニア》を攻撃」
タップされた亜実の小型クリーチャーを殲滅していく。これでは迂闊に攻撃できないどころか、攻撃することすらままならない。
(速攻で決めるつもりだったが、持ちこたえられたか……こうなると、今度はこちらが立て直さなければ、厳しいか……)
亜実のデッキは単純な速攻ではない。というか速攻とは言えないデッキであり、ビートダウンとしてみても相当異質なデッキなのだが、速攻の観点としてみれば、早期に決着をつけられなければ敗北とほぼ等号で結ばれる。
速攻デッキというのは、ひたすら速さを追い求めたデッキとも言えるため、デュエル・マスターズにおける他の要素をとにかく排して、スピードよる攻撃、その一本に特化しているのだ。ゆえに息切れを起こす前にとどめを刺せなければ、まず巻き返される。
とはいえ先ほども述べたように、亜実のデッキは速攻ではない。コントロールデッキとも言えず。異色のビートダウン、というのが一番適切か。乱暴に言ってしまえば中途半端なビートダウン、ということになるだろうが。
それは速さが足らなくなり、今のように攻め切れなくなってしまうことが多く出て来てしまう、ということに繋がるのだが、同時に速攻デッキや攻めに特化したビートダウンでは難しい、立て直しが利く、ということでもある。
つまり、クトゥルーが本格的に動き出すまでに体勢を立て直せるかが、彼女が勝利を掴む鍵となるだろう。
「このターン《カーリ・ガネージャー》は攻撃できないか……ならば。まずは呪文《ボーンおどり・チャージャー》! 山札の上から二枚を墓地へ送り、続けて《リバース・チャージャー》! 墓地の《グレンニャー》を回収だ!」
体勢を立て直す。状況によって立て直すものは変わって来るが、今の亜実の場合は次の一手を叩き込むための準備を整えることだ。クトゥルーに守りを固められてしまっているため、その防御を突破することが必要。そのための準備である。
「《オラクルト》と《青銅の鎧》を召喚。《スカイソード》を召喚」
追加のブロッカーを並べ、マナを加速させ、さらには《ミスト・リエス》の効果で引いてきた《スカイソード》でシールドを増やすクトゥルー。クリーチャーの数も多くなってきたため、処理するのも難しくなってきた。
「……とりあえず《グレンニャー》を召喚だ」
ここでなにか、状況を打破するカードが引ければ、そんな思いでカードを引く亜実。
そしてその思いにデッキが応えた、とでも言うのか、今現在最も必要としているカードが手に入った。
「こいつだ……無法の叫び、雑兵どもを蹴散らせ! 《演奏と真剣のLIVE》!」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.363 )
- 日時: 2014/01/26 07:53
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
演奏と真剣のLIVE(ヴァーミリオン・プレッシャー・ライブ) 水/火 (6)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
相手のパワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊する。その後、こうして破壊したクリーチャー1体につき1枚、カードを引いてもよい。
突如、どこからか凄まじいシャウトが響き渡り、《プリンプリン》を除くクトゥルーのクリーチャー六体がまとめて消し飛んだ。
「クリーチャーを六体破壊したため、カードを六枚ドロー! さらに《カーリ・ガネージャー》でWブレイクだ!」
クトゥルーの小型獣を一気に薙ぎ払うだけでなく、大量の手札も得た亜実。マナも前のターンで十分に溜められているので、かなり有利に場を進めることができるようになるだろう。
「……S・トリガー《DNA・スパーク》」
あと一押しというところで攻撃を止められるのも嫌なので、《グレンニャー》は殴り返しの憂き目に遭うが、ここは先に《DNA・スパーク》の仕込まれたシールドを割っておく。
「ターンエンドだ」
豊富な手札とマナ、シールドもまだ五枚フルにある。対するクトゥルーは、マナこそ多いが、ドローソースを失い、小型クリーチャーもまとめて消し飛ばされてしまっている。
そう見ると、亜実が非常に優勢に見える。実際、その通りだ。
だが、相手は帝国四天王。ただの逆境は、逆境にはならない。
「……《コットン》を召喚」
まずはブロッカーを並べるクトゥルー。そして、
「《神聖斬 アシッド》を召喚」
遂に現れたオラクリオン、《アシッド》。むしろ今まで登場するのが遅すぎたくらいだ。
「《プリンプリン》でシールドをブレイク」
「シールドブレイク……?」
また怪訝な目をクトゥルーへと向ける亜実。《プリンプリン》が攻撃するのは《アシッド》の能力発動に必要な生贄を用意するためだろうが、それなら《グレンニャー》を攻撃してもよかったはず。亜実は今、大量手札があるので、手札が一枚増えてもあまり変わらないが、逆に言えばその大量の手札から大量展開を考えるはずである。
だからここは、手数を少しでも減らしておくべきであり、《グレンニャー》を殴り返すのがベターなのだが、クトゥルーはそうはしなかった。
(なにを企んでいる……?)
極端に口数が少ないため、クトゥルーの真意がまったく読み取れない。表情にも変化はなく、たまに見せる不可解なプレイングも合わせて不気味だ。
「ターン終了……《アシッド》の能力発動」
生贄となるのは、タップされている《プリンプリン》。そして山札から、コスト7以下の無色クリーチャーが呼び出される。
「《神聖騎 オルタナティブ》をバトルゾーンに。《カーリ・ガネージャー》のパワーを6000下げる」
「くっ、《カーリ・ガネージャー》はやられたか……!」
パワーがゼロとなった《カーリ・ガネージャー》は破壊される。しかし《オルタナティブ》を出すつもりだったのなら、やはり《グレンニャー》も破壊し、場を殲滅しておくべきだったように思える。
「だが、《グレンニャー》が残っていて助かったな。一体でもクリーチャーが残っていれば、このマナ数でも行ける」
亜実は手札からカードを一枚抜き取り、叩きつけるように《グレンニャー》に重ねる。
「《グレンニャー》進化! 《魔水晶スタートダッシュ・リバイバー》!」
亜実のデッキの切り札の一枚、《スタートダッシュ・リバイバー》。墓地のカードはあまり多くないが、この場合は特に問題はない。
「《スタートダッシュ・リバイバー》の能力で墓地から《惨劇のアイオライト》をバトルゾーンに。そして《アイオライト》進化! 《永遠のジャック・ヴァルディ》!」
永遠のジャック・ヴァルディ 闇/火文明 (4)
進化クリーチャー:スピリット・クォーツ 7000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分の多色クリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手の多色ではない、コスト5以下のクリーチャーを1体破壊するか、バトルゾーンにある相手の多色ではない、コスト5以下のクロスギアを1枚選んで持ち主の墓地に置く。
W・ブレイカー
「《ジャック・ヴァルディ》の効果で《コットン》を破壊! さらに墓地の《ディス・メルニア》を進化、《死神術士デスマーチ》!」
これで亜実の場には、このターンに攻撃できるクリーチャーが三体。うちWブレイカーは二体いるので、《アシッド》でブロックされたとしても残り二枚のシールドを割り、そのままダイレクトアタックを決めることが可能だ。
「このまま終わらせるぞ。《スタートダッシュ・リバイバー》でWブレイク!」
これ以上デュエルを長引かせたくもないので、亜実はこのターンで決めにかかる。まずは《スタートダッシュ・リバイバー》で残るクトゥルーのシールドをすべて粉砕。S・トリガーはない様子。ならば、もう勝ったようなものだ。
「続けて《ジャック・ヴァルディ》で攻撃、ダイレクトアタックだ!」
もしこの攻撃を《アシッド》に止められたとしても、まだ《デスマーチ》が残っているため、とどめを刺すことはできる。
しかし、ブロックするクリーチャーが《アシッド》でなかった場合は、その限りではないが。
「……ニンジャ・ストライク。《光牙忍ハヤブサマル》を召喚。《ハヤブサマル》をブロッカーにする。《ハヤブサマル》でブロック」
「っ!」
その時、クトゥルーと《ジャック・ヴァルディ》の間に一つの影が割って入り、《ジャック・ヴァルディ》槍が止められた。だがそれを止めたのは《アシッド》ではない。ニンジャ・ストライクで飛び出した《ハヤブサマル》だ。
「ニンジャ・ストライク……!」
どうやらシノビを握っていたようだ。クトゥルーのブロッカーは軒並みブロックせずに破壊されていったが、ここで初めて、クトゥルーへの攻撃を防いだ。唐突に現れた《ハヤブサマル》は《ジャック・ヴァルディ》の槍に貫かれて大破する。
「防がれたか……なら、これ以上の攻撃はしない。ターンエンドだ」
とどめまでは行けなくなってしまったが、どちらにせよクトゥルーのシールドはゼロ。亜実の手札にはスピードアタッカーや、他の進化クリーチャーもいるので、次のターンこそはとどめを刺せるだろう。
そのためにはクトゥルーのターン、彼が攻撃を仕掛けてきた場合に凌ぐ必要がある。クトゥルーの場には大型クリーチャーはい二体いるが、一応《デスマーチ》はブロッカーなので、いざとなれば犠牲になってもらえばいい。
そう、高を括っていたが、
「《神聖麒 シューゲイザー》を召喚」
クトゥルーは《シューゲイザー》を召喚。これで彼の場には《アシッド》《オルタナティブ》《シューゲイザー》と、三体のオラクリオンが立ち並んだ。
さらに《シューゲイザー》の効果が発動する。
「マナゾーンから《緑銅の鎧》をバトルゾーンに出す。《緑銅の鎧》の効果で山札から《聖忌祭 レイヴ・ディアボロス》をマナゾーンに置く」
この時、亜実はなにか嫌な感じ、悪寒のようなものを覚えた。なにか巨大な存在が迫り寄ってくるような感覚。その存在によって、なにかが崩されそうな予感。昔からこの直感はあまり外れたことがない。
ゆえに今回もその直感が当たっていると、直感的に感じていた。そしてその直感が当たってしまうことは、すぐに証明される。
「呪文《母なる星域》。《緑銅の鎧》をマナゾーンに置く」
「《星域》……ということは……!」
そのカードを見れば、直感などに頼らずともクトゥルーの魂胆が見えてくる。この呪文を唱える直前に、彼はマナゾーンにあのカードを置いているのだ。
「《シューゲイザー》進化」
そして、《星域》から時代の終わりを告げる神が降臨する。
「衰亡せし時代に終焉を、世界に新たな調和を。全ての始まりたる無に、全ての事象を為せ——《聖忌祭 レイヴ・ディアボロス》」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.364 )
- 日時: 2014/01/26 10:11
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
聖忌祭(せいきまつ) レイヴ・ディアボロス 無色 (10)
進化クリーチャー:オラクリオン/ワールド・コマンド 23000
進化—自分のオラクリオン1体の上に置く
このクリーチャーが攻撃する時、相手の光のクリーチャー、水のクリーチャー、闇のクリーチャー、火のクリーチャー、自然のクリーチャーを1体ずつ破壊する。
Q・ブレイカー
エターナル・Ω
時代を終わらせる世紀末のオラクリオン。しかしその存在は、時代どころか世界すらも終わらせる、最凶の支配者の力を受け継いだ偽りの神。ただのオラクリオンや、他の進化オラクリオンにはない歴史がある。
クトゥルーが呼び出したのは、そんな存在だ。《聖忌祭 レイヴ・ディアボロス》——かの《時空の支配者ディアボロスΖ》そしてその覚醒した姿である《最凶の覚醒者デビル・ディアボロスΖ》の力を受け継いだオラクリオン。その力はオリジナルの《ディアボロス》と遜色ないものであり、また天頂の存在が有していた不滅の力をも取り込んでいる。
(まずい……!)
今までの悪寒が焦燥へと変換され、募っていく。この状況で《レイヴ・ディアボロス》は非常に厳しい。さらに、亜実のデッキにとってもこのクリーチャーはきつい。
まず亜実が理解したのは、前のターンの《プリンプリン》によるシールドブレイク。恐らくあの時点で、クトゥルーには《レイヴ・ディアボロス》を出すためのキーカードが概ね揃っていたのだろう。
《レイヴ・ディアボロス》はQブレイカー、一度に四枚のシールドをブレイクできる。即ち、その一撃で亜実のシールドがすべて割られてしまうのだ。
(一度の攻撃であたしのシールドを割り切るために《プリンプリン》でシールドを割ったのか……!)
さらに、《レイヴ・ディアボロス》は攻撃時に各文明の相手クリーチャーを一体ずつ破壊する。最大で五体ものクリーチャーを破壊する可能性があるが、五色デッキであっても五文明すべてが揃うことはそう多くないだろう。そもそも五体もクリーチャーが並ぶという状況が稀である。普通はそうなる前に除去するなりなんなり、手を打つものだ。ゆえに平均で破壊できる数は、二体か多くて三体といったところだろう。
そもそも《レイヴ・ディアボロス》の効果では相手のデッキに入っている文明以上の数は破壊できないのだ。亜実のデッキは三色、つまり最大三体は破壊できる。だが亜実のデッキの場合、《レイヴ・ディアボロス》によってクリーチャーを破壊されやすい構成となってしまっているのだ。
(あたしのデッキは多色クリーチャーが多い……だからこそ《レイヴ・ディアボロス》に引っかかりやすい……くそっ、こんな形でデッキの弱点を突いて来る奴は初めてだ)
恐らくそれは偶然だろうが、それはともかく。
亜実のデッキは、彼女自身が言うように多色カードが多い。三文明ともなると、単色カードばかりでは安定してデッキを回しづらくなってしまい、多色カードもわりと増えて来るのだが、亜実のデッキはそれ以上に多色カードに意味がある。
まず多色カードというのは、基本的に単色カードと比べてカードパワーが高い。単純にパワーが大きいというだけでなく、コストパフォーマンスが良かったり、能力が強力だったり、また複数の文明の特徴が表れているので、一枚で様々な役割を持てる。
状況に応じて様々な動きを見せる、というのが亜実のデッキの売りであるため、デッキ内のカードの種類が多い。一枚積みのカードも少なくはない。ハイランダー気味の構成を取っている。そのため、一枚で複数の能力を持つこともある多色カードは、彼女のデッキには都合がよいのだ。
他にもマナ基盤として役になったり、進化元としても優秀だ。たとえば《熱湯グレンニャー》は水と火の文明を持つクリーチャーなので《スタートダッシュ・リバイバー》と《カーリ・ガネージャー》、さらには多色なので《ジャック・ヴァルディ》と、三体の進化クリーチャーの進化元となれる。これが《ディス・メルニア》になれば、闇文明になるのでその三体に加え《デスマーチ》の墓地進化元としても運用可能だ。
このように多色カードは強力かつ様々な効果があるので、デッキスロットを圧縮するのに役立つ。そういった理由で、亜実のデッキは、事故が起こらないようにかなり気を配ってはいるものの、多色カードの枚数が多い。
(普段ならそれは利点となるはずだ。事故が起きやすいという問題は、多発しない程度に多色カードの投入を押さえて防止している。だが、こいつはそれを逆手に取りやがった……!)
多色カードは、一枚で複数の文明を持つカード。火と闇の多色クリーチャーなら、そのクリーチャーは火文明でもあり、闇文明でもある、ということだ。
普通ならそれは、大概は利点となる。しかし《レイヴ・ディアボロス》の前では欠点だ。
重ね重ね言うが《レイヴ・ディアボロス》は最大で五体破壊できるが、平均で見れば二、三体程度だ。もし相手が単色のデッキを使っていた場合は、一体しか破壊できない。複数の色が入ったデッキを使っていたとしても、単色カードが多ければ、複数の色を持つクリーチャーが場に並ばないこともある。
逆に言えば、多色クリーチャーが多いデッキなら、その選択肢は広がるのだ。火文明しか持たないクリーチャーは、火文明としてしか選べないが、火と闇の二文明を持つクリーチャーなら、火文明としても、闇文明としても選ぶことができる。
亜実の場にいるのは、水闇の《スタートダッシュ・リバイバー》、闇火の《ジャック・ヴァルディ》、そして闇の《デスマーチ》の三体。
そして、クトゥルーの静かな言葉が響き渡る。
「《レイヴ・ディアボロス》で攻撃」
亜実の焦燥を加速させるように、《レイヴ・ディアボロス》動き出した。同時に、その腕と背にある多数のエネルギー状の槍から、破滅の光線が放たれた。
「水の《スタートダッシュ・リバイバー》、火の《ジャック・ヴァルディ》、闇の《デスマーチ》を破壊」
「ぐ……っ!」
ブロッカーの《デスマーチ》は勿論、亜実のデッキにおける切り札級の進化クリーチャーまでもが破壊されてしまった。これで亜実の場にはなにも残らない。
クリーチャーどころか、シールドさえも、残らない。
そしてなにも残っていない亜実に、偽りの神が襲い掛かる。
「《神聖騎 オルタナティブ》でダイレクトアタック」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.365 )
- 日時: 2014/02/01 21:04
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
多数の【師団】の団員が巣食う廃墟。
その一室で、男は己の傍らで眠る少女に手を伸ばした。
「おい、起きろ」
「んん……んにゅ」
雑だが、どこか気遣うような優しい手つきで、彼は少女を揺り起こす。少女もゆっくりと瞼を持ち上げ、もそもそと上半身を起こした。
「んー……おはよぅ」
「おう……じゃねえよ。もう昼前だっての。朝と呼べる時間じゃねえ」
その辺は人によって判断が微妙に別れる範疇だが、彼の言うことも概ね正しい。というのはさておき。
「どーしたの?」
「そろそろ俺たちも出るぞ」
彼のそんな言葉を聞き、彼女は首を傾げる。
「もう、いくの?」
「ああ。『太陽一閃』以外の連中なら、隊長の奴らや四天王に任せとけばなんとかなると思ったが、ちっとばかし奴らの実力を見誤ってたみてえだ。つーか、はっきり言って舐めてたぜ。甘く見すぎた」
などと口ではそう言うが、その声にはまるで反省の色は見えない。
「あの女が介入してくることも予想外だったが……これももう少し考えてりゃよかったな。あいつの性格を考えれば横槍を入れて来ることも十分に考えられた。らしくもなく焦っちまったんかね、俺は」
大きく溜息をつくように、灰の中の空気を吐き出す。それは失敗して焦っているというよりは、面倒なことになったから憂鬱だ、とでも言うような仕草だった。
「でも、なんでいまなの? みんなは?」
「お前の言うみんながどの範囲を指してるかは分からねえが、とりあえず現時点で隊長クラスが全滅した。四天王はまだ連絡ねえから、まだ交戦中か、そもそも戦ってすらねえかのどっちかだろ。普通に考えりゃ、一つの組織が俺たちにこれだけ抵抗できるなんてありえねえ。できたとしたら奴らは相当な手練れってことになる。ま、そもそも人数が合わねえし、たぶんあの女んとこの連中と、あとは【神格社界】の馬鹿野郎どもが嗅ぎつけてきたってとこだろ」
ともかく、今回連れてきた隊長クラスのメンバーは全滅したのだ。ゆえに、そろそろ彼らも、のうのうと居座っていられる場合ではなくなってきた。彼らにも彼らの面子というものがある。
「ふーん。みんなしっぱいしたんだ。みんなしょけい?」
「なわけねえだろ。あいつらは歴代隊長の中でも、一位二位を争うレベルだ。一度や二度に失敗くらいで捨てるなんざもったいなすぎる。労働力は殺さない程度に死ぬまで使わねえとな」
「でも、だいごしょーたいのひとだっけ? あのひとはこのまえ、しんじゃったよ?」
「別にあいつは俺が手を下したわけでもなんでもねえがな……つーかなんで死んだかも分かんねえんだよな、あいつ。あいつが死んじまったせいで《月影神話》も失い、【師団】として所有する『神話カード』も三枚になっちまった。その前はどっかの馬鹿が【神格社界】なんかに負けやがって、《豊穣神話》もねーし。ここんところ踏んだり蹴ったりだ」
だが、と彼は笑う。
「《冥界神話》はともかく、俺たちにとって『神話カード』は二枚あればそれでいい。他の『神話カード』なんざ、おまけみてえなもんだ。そのうち手に入るだろ」
『神話カード』を二枚失う。その重さを知らない彼らではないが、しかしその重さですら、彼にとっては些末な問題だった。
重さを知ってはいても、その重さを実感することはない。
「……まあそういうわけだ。流石に隊長クラスが全滅ってなると、『太陽一閃』を捜索する効率も落ちる。奴らは強いが癖も強いからな、もう一度出撃させるのも危険だ。それに、俺個人としては『太陽一閃』自身にも興味がある」
とにかく俺たちも行くぞ、と言って、彼は立ち上がる。彼女もそれに合わせて、彼に寄り添う。
そして彼と彼女は、軋んだ扉を押し開け、外へと出て行った——
雀宮高校の保健室。生徒も教師もほぼ全員がいなくなったこの学校にはほとんど人間がいないが、その一室には二人の男女がいた。
男はベッドで目を閉じ、女はその傍らに座っている。
「ん——」
「あ、起きた」
男がゆっくりと目を開くと、女は軽い口調で男の顔を覗き込む。
「所長……?」
「やっほー黒村君。ボディはいかが? グッド? バッド?」
とりあえず男——黒村は体を起こす。
彼の隣にいるのは、彼の上司であるラトリだった。
「…………」
「なにかトークしてよ。サイレントなままじゃあ気が滅入っちゃうよ?」
「すみません」
反射的に謝ってしまったが、黒村は決して形の上だけで頭を下げているのではない。
黙ったままでいたことについて謝るつもりは毛頭ないが、謝る必要性を感じるところはあった。
「所長に《守護神話》を託されたのに、こんな体たらくで……」
「いやー、別にいいよ。ドント、ウォーリー。《守護神話》自体は無事だったしね。それに」
少しだけ声のトーンを下げて、ラトリは口を開く。
「謝るのは私の方だよ。元々、こうなるかもしれないって思って渡したんだし、結果を言えば自分がその負荷に耐えきれないから、黒村君に押し付けたんだし。ごめんね」
「所長……」
その口振りは、表面上ではいつもの軽い彼女のそれであった。しかしその裏に、彼女なりの重荷があることを読み取れないほど、黒村は鈍感ではない。
「……そんなことをセイしておきながらバッドなんだけど、もう少しそのカードはハブしててくれるかな? ダメそうなら、九頭龍君にアスクするけど?」
「いえ……俺は大丈夫です」
実を言うと全然大丈夫ではない。頭痛やら嘔吐感やら疲労感やらが凄まじい勢いで押し寄せ、口を開くのも辛いくらいだが、ここで弱みは見せたくない。黒村にも、彼なりの矜持や意地というものがあるのだ。
「そっか。まあ今の所有者は黒村君なわけだし、本当にやばかったら九頭龍君をコールすればいいよ。隣のクラスルームで……向田葵ちゃんだっけ? とスピークしてるはずだから」
と言って、ラトリは立ち上がった。
「? どこ行くんですか、所長」
「少し野暮用……って言うか、昔のマイフレンドとちょっとね。すぐにはバックしないけど、まあ大丈夫だよ」
「はぁ……」
よく分からないが、これ以上追及するほどの元気は、黒村にはなかった。ラトリが大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろう。
彼女も彼女で、それなりに危険な現場へと赴いている。しかし彼女が負傷したり敗北したりしたことは、いまだかつて一度もない。
「……じゃあね、黒村君」
そして彼女は、その部屋から出て行った——
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