二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.421 )
- 日時: 2014/02/20 17:16
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
偽りの悪魔神(コードデーモン) バロム・ミステリー 光文明 (7)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド/アンノウン 12000
進化—自分のデーモン・コマンド1体の上に置く。
自分のデーモン・コマンドがバトルに勝った時、カードを1枚引いてもよい。その後、進化でないデーモン・コマンドを1体、手札からバトルゾーンに出してもよい。
T・ブレイカー
《ブラック・ガンヴィート》から進化したのは、ゼニスに支配され、アンノウンの力を受けた《バロム》、その名も《バロム・ミステリー》だ。
光のデーモン・コマンドの頂点に立つ悪魔神であり、その力も非常に強力である。
「まずは《ガチンコ・ルーレット》でマナを加速させます。そしてガチンコ・ジャッジ!」
葵が捲ったのはコスト8《偽りの羅刹 アリバイ・トリック》、このみはコスト6《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》。
葵がガチンコ・ジャッジに勝利し、《ガチンコ・ルーレット》を手札に戻す。
「そして、ここからが本番です。《バロム・ミステリー》で《スーパー大番長「四つ牙」》を攻撃! バトルで破壊します!」
《バロム・ミステリー》の両手から放たれる光線が《「四つ牙」》を射抜き、消滅させる。《「四つ牙」》は為す術もなく破壊されてしまった。
しかも、ただ破壊されたのではない。
「バトルで勝ったので《バロム・ミステリー》の能力発動! 山札からカードを一枚引き、手札のデーモン・コマンドをバトルゾーンへ! 《威牙の幻ハンゾウ》を呼び出し、《隻眼の鬼カイザー ザーク嵐》のパワーを6000下げて破壊します!」
《「四つ牙」》に続いて、《ザーク嵐》まで破壊されてしまった。これでこのみのバトルゾーンのクリーチャーが一掃される。
「《バロム・ミステリー》……強いなぁ……」
このみが呻く。
つまりこれから、《バロム・ミステリー》がいる限り、葵のデーモン・コマンドがバトルに勝つたびにまた新しいデーモン・コマンドが出て来るのだ。このみのクリーチャーは削られ、葵は逆に悪魔を増やしてく。
「相手を破壊しながら自分はデーモン・コマンドを増やす……御舟さんみたいなスタイルだよ……」
メインとしている文明やサイドカラー、細部こそ違うものの、破壊と踏み倒しを連打してフィールドアドバンテージに差をつけていく戦い方は、汐と通じるところがある。
だとすれば、攻め切れなかったこのみでは厳しい戦いになりそうだ。
「まーでも、やるしかないよね。マナは十分にあるんだし、攻めるだけ攻めるよっ! まずは《超次元フェアリー・ホール》! マナを増やして、超次元ゾーンから《勝利のガイアール・カイザー》を出すよ! 続けて《堀師の銀》召喚! 《堀師の銀》をマナゾーンに! そっちもクリーチャーを一体、マナゾーンに送って」
「では、《ハンゾウ》をマナゾーンへ」
《堀師の銀》でクリーチャーを除去するこのみ。しかし当然、葵は《ハンゾウ》をマナに送った。
「まだまだ! 《アパッチ・ヒャッホー》を召喚!」
アパッチ・ヒャッホー 火文明 (4)
クリーチャー:メルト・ウォリアー/ハンター 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト4以下のハンター・サイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
召喚された《アパッチ・ヒャッホー》の叫びで、超次元の門が開く。
「《アパッチ・ヒャッホー》の効果でコスト4以下のハンターのサイキック・クリーチャーを出すよ! 《剛腕の政》をバトルゾーンに!」
サイキックも絡めて次々とクリーチャーを呼び出すこのみ。相手にクリーチャーを展開される前に、こちらが大量展開し、数で押す作戦だ。
「とりあえず並べられるだけ並べたけど、どうしよう……《勝利のガイアール・カイザー》で攻撃しようかな……」
葵のシールドは残り三枚。スピードアタッカーの《勝利のガイアール・カイザー》で攻撃すれば二枚に減るが、次のターンに殴り返されれば、《バロム・ミステリー》の効果がまた発動する。
しかし、今は少しでも葵のシールドを削り、勝利に近づきたい。このみは少し悩んだが、最終的には《勝利のガイアール・カイザー》に手を置いた。
「……《勝利のガイアール・カイザー》でシールドをブレイク!」
《勝利のガイアール・カイザー》をタップし、葵のシールドを粉砕する。
だが、その砕けたシールドの破片が、光の束となって収束した。
「S・トリガー発動《プリズン・スパーク》」
「うわっ、S・トリガー……!?」
可能性を考慮していなかったわけではないが、こんなタイミングで踏んでしまった。しかも当たったのがよりによって《プリズン・スパーク》だ。
プリズン・スパーク 光文明 (7)
呪文
バトルゾーンに自分の光のデーモン・コマンドがあれば、この呪文は「S・トリガー」を得る。
バトルゾーンにある相手のクリーチャーをすべてタップする。
自分のターン中にこの呪文を唱えた場合、バトルゾーンにある相手のクリーチャーはすべて、次の相手のターンのはじめにアンタップされない。
「私の場には《バロム・ミステリー》がいるので《プリズン・スパーク》はS・トリガーを得ます。あなたのクリーチャーをすべてフリーズ」
《アパッチ・ヒャッホー》や《剛腕の政》は勿論、攻撃した《勝利のガイアール・カイザー》までもがフリーズしてしまう。
だが、この場合フリーズはあまり関係ない。なぜなら、どの道すべて破壊されてしまうのだから。
「私のターンです。まずは呪文《超次元バイス・ホール》。あなたの手札はないので、ハンデスは行いません。ですが、超次元ゾーンからクリーチャーは呼び出します。開け、超次元の門!」
《バイス・ホール》により、超次元の門が開かれる。
「《時空の封殺ディアスΖ》をバトルゾーンに!」
時空の封殺ディアスΖ 闇文明 (8)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド/ドラゴン・ゾンビ 7000
E・ソウル
殲滅返霊4(このクリーチャーが攻撃する時、自分または相手の墓地からカードを4枚選んでもよい。あるいは両方の墓地からカードを4枚ずつ選んでもよい。選んだカードを好きな順序で持ち主の山札の一番下に置く。こうして選んだカード4枚につきこのクリーチャーの返霊能力を使う)
返霊—相手は、バトルゾーンまたは手札から自身のカードを1枚選び、山札の一番下に置く。
W・ブレイカー
覚醒—自分のターンの終わりに、そのターン、相手のクリーチャーが3体以上バトルゾーンを離れていた場合、このクリーチャーをコストの大きい方に裏返す。
超次元の門より現れたのは、Ζの力を持つ封殺の悪魔《時空の封殺ディアスΖ》。
「うっ、でも、《ディアスΖ》はこのターン攻撃できないし、だいじょ——」
「さらに続けて呪文《ダイヤモンド・ソード》! これで《ディアスΖ》はこのターンに攻撃できるようになります」
「嘘っ!?」
《ディアスΖ》の強みはその能力、殲滅返霊にある。とはいえそれも攻撃時にしか使えないので、場に出してすぐに能力発動、というわけにはいかないのが難点だ。
だが《ダイヤモンド・ソード》は召喚酔いなどの、クリーチャーの攻撃出来ない状態をすべて無効化するため、このターンから《ディアスΖ》も攻撃に参加できるようになる。
「まずは《ディアスΖ》で《アパッチ・ヒャッホー》を攻撃、そして殲滅返霊4発動です!」
その瞬間、このみと葵の墓地にあるカードが四枚ずつ、それぞれの山札の底へと戻される。
「互いの墓地のカードを四枚ずつ山札に戻すので、返霊能力を二回発動します。さあ、クリーチャーを二体、山札の底に戻してください」
このみは手札がないので、場のクリーチャーを山札に戻すしかない。
「うー……どうせ《アパッチ・ヒャッホー》はバトルで破壊されちゃうし、《バロム・ミステリー》の効果が発動するのも嫌だから、《アパッチ・ヒャッホー》と《剛腕の政》を戻すよ」
《ディアスΖ》の能力により、《アパッチ・ヒャッホー》は山札の底に、《剛腕の政》は超次元ゾーンに、それぞれ戻される。
攻撃対象を失った《ディアスΖ》の攻撃は無効になるが、さしたる問題はない。葵にとって重要なのは、このみのクリーチャーが場を離れることだ。
「続けて《バロム・ミステリー》で《勝利のガイアール・カイザー》を攻撃、破壊します」
《バロム・ミステリー》の攻撃により《勝利のガイアール・カイザー》も破壊された。それもバトルで破壊されたので《バロム・ミステリー》の能力が発動する。
「カードを一枚ドロー、そして手札から《虚構の支配者メタフィクション》をバトルゾーンに。これで私はターンエンド——」
だが、その瞬間《ディアスΖ》に異変が起こる。
このターンこのみのクリーチャーは《ディアスΖ》の殲滅返霊と《バロム・ミステリー》の攻撃で、三体場を離れている。
つまり、《ディアスΖ》の覚醒条件を、満たしているのだ。
「《時空の封殺ディアスΖ》を覚醒」
空気が震撼し、《ディアスΖ》はその力を覚醒させる。
「私と共に駆け抜ける、悪魔のΖ——《殲滅の覚醒者ディアボロスΖ》!」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.422 )
- 日時: 2014/02/20 20:30
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
殲滅の覚醒者ディアボロスΖ 闇文明 (16)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド 18000
E・ソウル
バトルゾーンにある相手のクリーチャーすべてのパワーは−5000される。
バトルゾーンにある自分の他のクリーチャーすべてのパワーは+5000される。
Q・ブレイカー
解除
《時空の封殺ディアスΖ》が覚醒した姿、それが《殲滅の覚醒者ディアボロスΖ》。
その力は、《殲滅の覚醒者》という名に相応しい、凄まじいものだ。
「《ディアボロスΖ》が場にいる限り、このみちゃんのクリーチャーのパワーは全部マイナス5000……これじゃあ、クリーチャーを召喚しても……」
このみのデッキは、わりと重いカードもあるようだが、それでも軽い小型クリーチャーが中心だ。5000もパワーを下げられては、大抵のクリーチャーは召喚してもすぐに破壊される。
完全な詰みとまではいかないが、このみの動きは甥によってほとんど遮断されてしまった。あとは、その圧倒的な破壊力で、シールドを殲滅されるのみ。
「とりあえず、あたしのターン……」
このみもクリーチャーの召喚が制限されることは分かっているようで、苦しそうにカードを引く。
「……ターン、終了」
そしてマナチャージもせず、引いたカードを一瞥するだけでターンを終える。出してもすぐに破壊されるようなカードだったのだろう。最後の最後で抵抗もできないほど、《ディアボロスΖ》の制圧力は凄まじいのだ。
「私のターンです」
そして、葵のターン。
葵の場にはQブレイカーの《ディアボロスΖ》Tブレイカーの《バロム・ミステリー》Wブレイカーの《メタフィクション》と、重量級クリーチャーが並んでいる。如何にこのみのシールドが五枚あると言っても、それを余裕で突き破るだけの打点が揃っている。
「……《ヤミノストライク》を召喚。さらに呪文《緊急再誕》、効果で《ヤミノストライク》を破壊します」
《緊急再誕》が発動し、《ヤミノストライク》も破壊された。つまり、二体のクリーチャーが一気に並ぶ。
「まず《緊急再誕》の効果で《悪魔聖霊バルホルス》をバトルゾーンへ。続けて《ヤミノストライク》の効果で二体目の《メタフィクション》を呼び出します」
ブロッカーを並べ、防御の構えも見せる葵。S・トリガーを踏んでしまった時の保険だろう。抜かりはないようだ。
「どの道このターンで決めるつもりですけどね。では、行きます」
遂に攻撃の構えを見せる葵。今まで溜めに溜めてきた破壊の力が、解放される。
「《ディアボロスΖ》で、シールドをQブレイク!」
刹那、凄まじい闇の波動が放たれる。天を地を飲み込むほどに暗く、そしておぞましい波動は、その先にあるものをすべて飲み込み、このみのシールドを四枚まとめて突き破った。
「っ、うぅ……!」
残りシールドは一枚。仮にこのカードがS・トリガーで、葵のアタッカーを一体除去できたとしても、《ディアボロスΖ》の存在がある限り、このみはまともにクリーチャーを召喚できない。
「このみちゃん……」
絶体絶命の危機に瀕したこのみ、だが、
「大丈夫ですの」
ヴィーナスの優しい、包み込むような声が聞こえる。
「このみ様を、信じるんですの」
「……うん、そうだね」
デュエルが始まってしまった以上、もう姫乃にはなにもできない。だが、信じることはできる。
今までそうしてきたように。
「《バロム・ミステリー》で、最後のシールドをブレイク!」
残る一枚のシールドを、《バロム・ミステリー》の光線が射抜く。これでこのみのシールドはゼロ。
だが、その最後に砕けたシールドが、光の束となって収束する。
「来た……! S・トリガー発動! 《ナチュラル・トラップ》!」
土壇場で引けたS・トリガー。これで《メタフィクション》をマナゾーンに送れば、1ターンはもつ。
だが、このみはそうはしなかった。
「《ディアボロスΖ》を選択するよ!」
「……? では、《ディアボロスΖ》の解除が発動します。《ディアスΖ》へ解除」
このみがマナに送ろうとしたのは《ディアボロスΖ》。だがそれも、解除能力で《ディアスΖ》へと戻るだけ。戦力は少し落ちたが、場数はまったく変わらない。
「まさか《メタフィクション》が攻撃できるブロッカーだと知らないわけではないですよね……まあ、知らないならそれはそれで構いません。まずは、《ナチュラル・トラップ》が発動したので《メタフィクション》の能力で墓地の《ダイヤモンド・ソード》と《超次元バイス・ホール》を回収。そして、《メタフィクション》でダイレクトアタックです」
シールドもクリーチャーもいないこのみにとどめを刺すべく、虚構の悪魔が迫るが、
「残念、いくらあたしでもそのくらいは分かってるよ! ニンジャ・ストライク発動! 《光牙忍ハヤブサマル》を召喚! 《ハヤブサマル》をブロッカーにしてブロック!」
その攻撃は、守護の忍によって防がれてしまった。
「シノビを握っていましたか……《ハンゾウ》だったらマイナスですが、《ハヤブサマル》ならむしろプラスです。デーモン・コマンドがバトルに勝ったので《バロム・ミステリー》の能力発動」
《バロム・ミステリー》の能力は、自身だけでなく味方のデーモン・コマンドがバトルに勝てば発動する。《メタフィクション》もデーモン・コマンドで、今しがた《ハヤブサマル》とのバトルに勝っている。
「カードをドローし……今引いた《偽りの羅刹 ミスディレクション》をバトルゾーンに」
さらに大型のデーモン・コマンドが追加され、ますます苦しくなるこのみ。
「よし、これなら、行ける……!」
だが、彼女の手の内には、逆転の一手が隠されていた。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.423 )
- 日時: 2014/02/20 23:23
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
このみと葵のデュエルは、終盤も終盤、決着間近というところまで来ていた。
このみのシールドはゼロ、バトルゾーンにはなにもない。
一方、葵の場には《時空の封殺ディアスΖ》《偽りの悪魔神 バロム・ミステリー》《悪魔聖霊バルホルス》《偽りの羅刹 ミスディレクション》そして《虚構の支配者メタフィクション》が二体。シールドも二枚残っている。
S・トリガーとニンジャ・ストライクで、なんとか《殲滅の覚醒者ディアボロスΖ》の破壊的な支配から逃れ、ダイレクトアタックも阻止したが、このターンで巻き返さなくてはどうしようもない。
ここでどうにかしないと、次のターンには大量の悪魔たちに、今度こそやられてしまうだろう。
「あたしのターン」
このみはいつも通りカードを引く。このみの手の内には、この状況を打開する準備がほとんど整っている。だが、この盤面をひっくり返すには、あと一枚、パーツが足りない。
そのパーツが来れば——そう思いながら、しかし自然体で、このみは山札からカードを手に入れる。
そして、
「……来た」
このみは小さく呟く。さらにその直後、
「さあ、ここからがあたしのが逆転劇だよ!」
叫ぶように、豪語した。
その言葉を真に受けたわけではないだろうが、葵も少し緊張を走らせる。この状況をひっくり返すようなカードがあるのかと疑念を抱くが、今の彼女には、行く末を見届けることしかできない。
「まずは《薫風妖精コートニー》を召喚!」
「《コートニー》……?」
マナゾーンのカードをすべての文明にする《薫風妖精コートニー》。一般的にはコンボパーツとして採用されるようなカードだが、このみのデッキは見るからにビートダウン。このカードの存在は些か奇妙だ。
だが、次にこのみが繰り出すカードを見た瞬間、彼女の思惑に気づかされる。
「行くよ、みんな! 《若頭 鬼流院 刃》!」
若頭 鬼流院(きりゅういん) 刃(じん) 自然文明 (10)
クリーチャー:ガイア・コマンド/ビーストフォーク/ハンター 17000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自然のハンター・クリーチャーを好きな数、自分のマナゾーンからバトルゾーンにタップして出してもよい。
T・ブレイカー
現れたのは、若頭と呼ばれるハンター《鬼流院 刃》。その風格は力強さと勇敢さを兼ね備え、数多の狩人は彼に付き従っている。
「《鬼流院 刃》の能力発動! あたしのマナゾーンのハンターをすべてバトルゾーンへ!」
直後、《刃》が咆号する。その瞬間このみのマナゾーンで眠っていた数多のハンターが目覚め、彼の元へと集結した。
即ち、このみのマナゾーンのハンターがすべてバトルゾーンへと出て来たのだ。
「《コートニー》……そういうわけですか」
本来、《刃》の能力で呼び出せるのは自然のハンターのみ。しかし場に《コートニー》がいれば、マナゾーンのカードはすべての文明となる。つまり、自然文明でもあるため、マナゾーンのハンターをすべてバトルゾーンに出せるようになるのだ。
「このみちゃん、すごい……いつの間にこんなコンボを……」
「だから言ったんですの、このみ様を信じればいいと。見るですの、このみ様の周りに集まるクリーチャーたちを」
「え?」
《刃》ではなく、このみの周りに集まるクリーチャー。ヴィーナスは確かにそう言った。
神話空間内でもないので、姫乃にはクリーチャーの様子など分からない。だが、言われてみれば、このみが《刃》も含めた数多のクリーチャーを従えている——いや、数多のクリーチャーに、寄り添われているように見える。
「このみ様は、夕陽様や姫乃様、汐様、流様たちとは違って、直感で物事判断しているんですの。普段はいいことではないかもしれないですし、そのような判断を嫌う方もいらっしゃいます。ですが、このみ様の周りに集まる彼らは、直感で行動する、自由気ままなこのみ様を好いているんですの」
自由気まま。夕陽から言わせてもらえば、身勝手が過ぎるとでも言うのかもしれないが、彼女のクリーチャーは、そうは思っていないようだった。
「クリーチャーにだって、意志はあるんですの。本人は無自覚のようですが、このみ様はその意志を尊重してくださっているんですの。そして、このみ様の何物にも縛られない、そして屈託のない純真で純粋な無邪気さは、自然そのものですの。だからこそ彼らはこのみ様を好いていて、そんなこのみ様に応えようとするんですの。それが、このみ様の力、ですの」
「このみちゃんの、力……」
直感的であるがゆえに、クリーチャーに好かれるこのみ。言い換えれば、彼女はクリーチャー、それも自然のクリーチャーに近い存在なのかもしれない。
だからこそそのクリーチャーたちは、自分たちに近い存在であるこのみを好き、寄り集まって力となる。
「このみ様の心はとても清らかですの。わたくしも、このみ様の野性的な包容力は魅力的だと思うんですの」
「……ヴィーナスも、このみちゃんと一緒にいたい?」
「やきもちですの? 大丈夫ですの、姫乃様。わたくしの一番のパートナーは姫乃様ただ一人ですの。それだけは変わらないんですの」
「そっか……ありがとう」
このみのクリーチャーに好かれるという性質は理解した。
ここで一度デュエルに戻るが、《刃》の能力でクリーチャーが呼び出されたとしても、このみが勝てるとはまだ言えない。
「《刃》の能力で一気にクリーチャーを呼び出すとは驚きましたが……その能力で踏み倒されたクリーチャーはすべてタップ状態です。このターンには動けません」
つまり、いくらマナゾーンからスピードアタッカーや進化クリーチャーを引っ張り出そうとも、攻撃できないのだ。
「そうだね。でも、場に出た時の能力は発動するよ」
このみが呼び出したのは《俊足の政》《アパッチ・ヒャッホー》《スーパー大番長「四つ牙」》《激流アパッチ・リザード》《若頭 鬼流院 刃》《不敗のダイハード・リュウセイ》《堀師の銀》三体の、合計九体。
《俊足の政》で手札を補充し、その《俊足の政》から《「四つ牙」》へと進化してマナを加速。《アパッチ・ヒャッホー》と《アパッチ・リザード》は、それぞれ《剛腕の政》と《不死身のブースト・グレンオー》をバトルゾーンに出す。
剛腕の政(ビシャモン・キッド) 火/自然文明 (4)
サイキック・クリーチャー:ビーストフォーク/ハンター 3000
覚醒リンク—自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《不死身のブーストグレンオー》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。
ハンティング
不死身のブーストグレンオー 火文明 (7)
サイキック・クリーチャー:フレイム・モンスター/ハンター 6000
このクリーチャーは破壊されない。
このクリーチャーがバトルに負けた時、自分の超次元ゾーンに戻す。
W・ブレイカー
だがこれらは、前座に過ぎない。このみにとっての本命は、こちらだった。
「《堀師の銀》の効果発動で、この子自身をマナゾーンへ!」
「私はタップしている《メタフィクション》をマナゾーンへ」
「なら次の《堀師の銀》の効果も発動、もう一度《堀師の銀》自身をマナゾーンへ送るよ!」
「では私は《ディアスΖ》を超次元ゾーンへ戻します」
「まだまだ! 三体目の《堀師の銀》で最初に召喚した《刃》をマナゾーンに送るよ!」
「……ならば《メタフィクション》の二体目をマナに送ります」
《堀師の銀》が出て来たのでクリーチャーがマナ送りにされるが、三体程度なら大丈夫だ。まだ戦力は残る。
——三体だけなら、だが。
「じゃあ最後に《刃》の能力で出た二体目の《刃》の能力発動! マナゾーンの《堀師の銀》二体と《刃》をバトルゾーンに!」
「え……?」
ぞわりと、葵に悪寒が走る。
「二体の《堀師の銀》をマナゾーンに送るよ!」
「……《バルホルス》と《ミスディレクション》を、マナゾーンへ……」
「なら出て来た《刃》の能力発動! さっきマナに送った《堀師の銀》をまたまたバトルゾーンに! 二体の《堀師の銀》をマナゾーンに送るよ!」
「っ……《バロム・ミステリー》を、マナゾーンに送ります……」
《堀師の銀》に《刃》を組み合わせることで能力を使い回し、葵のクリーチャーはすべてマナゾーンへと送り込まれてしまった。
「まさか、こんなことが……!」
正直、このみがここまでのコンボを見せてくるとは夢にも思ってみなかった。傍で観戦している姫乃も驚いている。
「くっ、私のターン。《超次元バイス・ホール》で《時空の戦猫シンカイヤヌス》と《時空の喧嘩屋キル》を呼び出し、《シンカイヤヌス》を《ヤヌスグレンオー》へループ覚醒、その効果で《キル》をスピードアタッカーに。さらに《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚し、自身を破壊。そちらは二体破壊してください」
「じゃあ《不死身のブースト・グレンオー》《アパッチ・ヒャッホー》を破壊するよ。でも《ブースト・グレンオー》は能力で破壊されないね」
「……ではG・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》を二体召喚です」
これでブロッカーが二体並んだわけだが、恐らく無意味だろう。
「《キル》で、ダイレクトアタックです」
「《ダイハード・リュウセイ》の能力発動、この子を破壊して、このターンあたしはデュエルに負けないよ」
爆散する《ダイハード・リュウセイ》。だがその不敗の魂は残り、葵のとどめの攻撃を防ぐ。
「……ターン、終了です……」
結局、葵はこのターンにこのみを仕留めることができなかった。
そしてこのターンに決められなかったということは、次のこのみのターンに、ほぼ勝負が決することを意味していた。
「よーし、あたしのターン!」
このみのターンが訪れる。その時、《剛腕の政》が吠えた。
《剛腕の政》の咆号に《不死身のブースト・グレンオー》も咆哮する。
「行くよ、二人とも! 覚醒せよ、そしてリンクせよ!」
二体の叫びが重なり合い、そして二体は光に包まれた。
「目指す勝利に全速全開! 爆裂の力で駆け抜けて!」
その光の中で、二体のクリーチャーは、一体となる。
「——《爆裂ダッシュ!グレンセーバー政》!」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.424 )
- 日時: 2014/02/21 01:49
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
爆裂ダッシュ!グレンセーバー政(まさ) 火/自然文明 (15)
サイキック・スーパー・クリーチャー:ビーストフォーク/フレイム・モンスター/ハンター 12000+
このクリーチャーは破壊されない。
ハンティング
T・ブレイカー
リンク解除
《剛腕の政》とその盟友である《不死身のブースト・グレンオー》が覚醒し、リンクした姿。それが《爆裂ダッシュ!グレンセーバー政》だ。
「これで逆転だよ! まずは《鬼流院 刃》で残るシールドをブレイク!」
「《ブラッディ・シャドウ》でブロックです!」
「なら二体目の《刃》でもブレイク!」
「同じく《ブラッディ・シャドウ》でブロック……!」
二体の《刃》の攻撃を《ブラッディ・シャドウ》で防ぐ葵。だが、それでは全然足りていない。
「念のために《堀師の銀》で《キル》を攻撃、《アパッチ・リザード》でも《ヤヌスグレンオー》を攻撃!」
葵のクリーチャーを殲滅するこのみ。葵の手札には《ダイヤモンド・ソード》があるのであまり意味があるようには思えないが、この際無意味でも構わない。
この攻撃さえ通れば、なんでも構わないのだ。
「さあお待たせ、今度こそ! 《スーパー大番長「四つ牙」》で攻撃! Wブレイク!」
ブロッカーを失った葵のシールドを守るものはおらず、《「四つ牙」》による攻撃が叩き込まれ、シールドが砕け散る。
もしここで《DNA・スパーク》のようなS・トリガーが出れば、葵にも逆転の逆転を起こすチャンスがある。
「……S・トリガー発動!」
割られたシールドは、光の束となって収束する。葵はそのカードを手に取った。
そして、そのカードは、
アポカリプス・デイ 光文明 (6)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにクリーチャーが6体以上あれば、それをすべて破壊する。
「っ……!」
歯噛みする葵。確かに、葵の場にはなにもいないが、このみの場には六体のクリーチャーが存在している。この《アポカリプス・デイ》が不発に終わることはない。
だがいくらこのみのクリーチャーを破壊しようとも、破壊できないクリーチャーというのが、今のこのみの場には存在するのだ。
「残念! 《グレンセーバー政》は破壊されない。だから、《アポカリプス・デイ》も効かないよ!」
刹那、このみのバトルゾーンにいるクリーチャーが爆散する。大爆発に巻き込まれ、ほぼすべてのクリーチャーが吹き飛んだ。
しかし、《グレンセーバー政》だけは、悠然と立ち、敢然としている。
結局、葵は《グレンセーバー政》を除去することも、止めることもできなかった。
「じゃあ、これで終わりだよっ!」
このみ同様、シールドもクリーチャーも失った葵に、紅蓮の大剣が振りかざされる。
「《グレンセーバー政》で、とどめだぁー!」
デュエルが終わった。
様々な知略、戦略、策略が交錯し、逆転に次ぐ逆転で何度も盤面はひっくり返された戦いであったが、その結果は、このみの勝利だった。
「ふぅ……なんとかなった……」
「このみー!」
一息つくこのみに、プロセルピナが飛びつく。
「ルピナは信じてたよ、このみーなら勝つって! やったよこのみー! ありがとー!」
「あはは……どういたしまして」
このみの周りをくるくると旋回するプロセルピナ。正に狂喜乱舞だ。
「このみちゃんが、勝ったね……」
「ですの」
「ヴィーナスは、この結果が分かってたの?」
「デュエルの結果は分からなかったんですの。正直、地力ではこのみ様よりも、少しだけ葵様が上手だったと思うんですの。だからこのみ様名が負ける可能性の方が高いのではと、わたくしは思っていたんですの」
だが、
「このみ様のクリーチャーを愛し、愛されるその魅力がクリーチャーたちを集めて、このみ様の力となったんですの。足りない実力は仲間の力で補ったんですの。でもそれも、このみ様の力、ですの」
「そっか……なんていうか、このみちゃんらしいね」
単独ではなく仲間を集めて戦う。それはこのみ自身にも言えることだし、彼女の所有する《萌芽神話》でも言えることだった。
そう考えると、やはり《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》は、このみが持つべきカードなのだろう。
「…………」
そんな風に喜ぶ者がいる一方で、そうでない者もいる。これはある種の賭け。賭博には勝つ者がいれば、負ける者もいる。
このみが勝者なら、敗者は葵だった。
葵は俯いたまま、動かない。
「……向田さん?」
「あおいん?」
その様子に、盛り上がっていた空気は一気に沈下する。プロセルピナもヴィーナスも、不安げな目で彼女を見つめていた。
「負けて、しまいました……また、こうして、出会えたのに……」
うわ言のように、声を漏らす葵。後悔、自責、慙愧の念がこもった、酷く重たい声。
心なしか、彼女の目元も、潤みつつあるように見える。
「…………」
気まずい。プロセルピナですらなにも言わない、重苦しい空気。
このみはジッと葵を見つめ、そして意を決したように、しかしやや控えめに、葵へと言葉をかける。
「やっぱり……返そうか?」
「え……」
「このみちゃん!?」
「このみ様?」
「このみー!」
四者同様の反応。ただ、葵は呆然、姫乃は吃驚、ヴィーナスは疑念、プロセルピナは非難がこもっていた。
「なんで!? このみーは勝ったんだよ! 渡す必要なんてないじゃん!」
「いや、だってあおいんの大切なカードなら、あたしが持ってるより、あおいんが持つべきなんじゃないかなって……プロセルピナも、あんまりわがまま言ってちゃダメだよ」
「でも……ルピナはやだ! このみーと離れたくない! このみーと一緒にいたい! 離れ離れはやだよ!」
「なに言ってるの」
このみは、さも当然、とでも言うように、
「あおいんはあたしたちの友達なんだから、離れ離れじゃないでしょ。いつでも会えるじゃん」
言い放った。
「っ……!」
その言葉になにより驚いているのは、葵だった。
認識の違い、と言ってしまえばそれまでだが、このみと葵の間には、ここまでの違いがあった。
それを、思い知らされる。
「そういうわけだから、プロセルピナ」
「うー……わかったよ。このみーがそう言うなら、いやだけど、いやいやだけど、わかったよ……」
プロセルピナは、渋々葵の元へと滑るように飛び、
「……よろしく」
と言って、拗ねた子供のようにすぐにカードに戻ってしまった。
「そういうわけだから、その子はあおいんに返すよ」
「……いいんですか。あなたにとっても、このカードは……」
「いいのいいの。そりゃあちょっと寂しいけどさ……【師団】の人とかなら絶対に渡したくないけど、あおいんならいつだって会えるもん」
それに、とこのみは続ける。
「あたしのデッキにいなくたって、みんな友達で仲間だからね。だから他の人の手にあるから離れ離れとか、そういうのって、違う気がする」
「…………」
カードを手に、葵は呆然と、しかし様々なことを思う。
自分はこのカードが大事だ。それこそ、元々一クラスメイトでしかなかった少女と対立するほどに大切なものだ。だがそれは葵だけでなく、このみだって同じはず。思い入れに差があったとしても、大事だという気持ちに遜色はない。
だが、カードに、そしてクリーチャーに対する考え方には、大きな差があった。頑としてでもこのカードを手中におさめたかった葵。それは自分の元にあったそのカードを失ったからこそだ。だがこのみは、それを手放しても、失ったと考えているわけではない。
度量が広い、というわけではない。単純に、純粋に、考え方の違いだ。だが、
「……やはり、これはお返しします」
葵は、《プロセルピナ》を、このみに差し出す。
「え? いやでも……」
「いいんです。春永さんの言葉でなんとなくわかりました。このカードはもう、私が持つべきカードではないような気がするんです……これは、あなたが持つべきカードではないかと、思いました」
それに、と葵も続けた。
「このカードがなくても、私と彼女は、まだ繋がっているはずですから」
「……? よく分かんないけど、あおいんがそういうなら……」
いまいち釈然としないというか、疑問は残るものの、このみは返された《プロセルピナ》を受け取る。同時に、プロセルピナがカードから出て来た。
「……いいの? ルピナ、いらない?」
「いらないとまでは言いません。でも、あなたは春永さんと一緒にいるべきなんじゃないかって、思っただけです。でも、また今度、私とデュエルしてください。またあなたと戦いたいです」
「……うんっ! ルピナも負けないよっ!」
再戦の約束を交わす葵とプロセルピナ。
その様子を、安堵の表情で見つめている姫乃とヴィーナス。
「……とりあえず、これでめだたしめでたし、なのかな」
「ですの。わたくしもここまでは予想外ですの。流石はこのみ様、ですの」
このみの純真無垢な心が葵を軟化させた、などと言ってしまえばこのみを美化しすぎているように思うが、しかしこのみの純真さに感化されただろうことは、言うまでもない事実だった。
「じゃあどうする? 早速もう一戦しちゃう?」
「……では、せっかくですし、そうさせてもらいますね。今度は負けませんよ」
「あ、ではわたくしたちはその次の対戦を所望したいんですの。姫乃様、どうですの?」
「うん、いいよ。わたしも向田さんとデュエマしたいな」
そんなこんなで、《プロセルピナ》を巡る争いは円満に解決した。
和気藹々と再びデュエマを始める三人。そんな時、
カランカラン
来店を告げる鈴が鳴り響く。
「あ……プレートかけ忘れてた!」
「そういえば、そうだったね……」
そもそも、そのために葵がここにいるようなものだ。いや、彼女の本来の目的を考えれば、かけていても入ってたかもしれないが。
だがこの時も、かけ忘れていることはさしたる問題にはならない。
なぜなら、
「おーいこのみー、またプレートかけ忘れて……ん? 光ヶ丘と……向田? なんで君がここに?」
「ゆーくんじゃん」
店に入って来たのは、夕陽だったからだ。
夕陽が『popple』を訪れた理由は、はっきりいってなかった。友人の家に遊びに行くような(実際、親友の家に遊びに行っているわけだが)感覚だ。
なので適当な時間になると、夕陽は普通に帰宅した。
「しっかし、向田まで巻き込んだのか……そろそろ僕らの活動も、色々なところに影響でてるな……」
実際のところ、葵は夕陽たちとはあまり関係のないところで巻き込まれているが、元を辿れば夕陽たちに行きつくので、夕陽たちの責任と言えなくもない。
「でもいいじゃねぇか、一緒に戦う仲間が増えたんだぜ」
「そんな簡単に言うなよ。僕らには安全安泰な日常ってものがある。それを投げ打ってまで、一緒に戦ってほしいとは思わないよ」
「そうなのか? オイラにはよくわかんね」
「そのうち分かるよ、っていうか分かれ」
日も暮れ、道に人はいない。実体化したアポロンとそんな会話をしながら、帰路を進んでいく。
「……そろそろ家だから、もう戻れ。誰かに見られたりしたら大変だからな」
「おう、合点だ」
アポロンはプロセルピナと違ってわりと従順だ。夕陽がそう言うと、あっさりカードに戻った。
「はぁー……そういえば、もうすぐクリスマスだな。今年はまだこのみからなにも聞いてないけど、あいつ、今度はなにをしでかすのやら」
などと言いながら、ほぼ無意識に郵便受けを探る夕陽。こんな時間に探ってあまり意味がないように思うが、半ば癖となってしまっているから仕方ない。
それに、今回に限って言えば、意味はあった。
「ん? なにこれ? 手紙?」
かさりと、夕陽の手になにかがふれた。
取り出すと、それは手紙だ。白い便箋に入った、シンプルな手紙。
「『空城夕陽様へ』……? なんだ、誰からだよ——」
妙に畏まったものを感じながら、差出人を確認する。その瞬間、夕陽は絶句した。
「……!」
目を見開く夕陽。まさか、こんなところでその名を目撃するとは思っていなかった。予想外すぎる。
その、差出人は——
「【神格社界】……!」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.425 )
- 日時: 2014/02/21 16:31
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「それは【神格社界】からの招待状だな」
十二月二十二日、クリスマスイヴの二日前。
いつものように賑わいを見せるカフェ『popple』の一角で、二人の男女が向かい合っていた。
空城夕陽と、火野亜実。半ば協力関係が築かれつつある二人だ。
「招待状……? なにそれ、パーティーでもするの?」
「その通りだ」
夕陽の問いに、亜実は即答。
先日、夕陽の家の郵便受けに一通の手紙が投函されていた。しかもその差出人が【神格社界】。あまりにも予想外の相手だったため、夕陽はとりあえず情報を得ようと、亜実をこの店に呼んだのだ。
「というかお前、その手紙の中身、見ていないのか」
「いやぁ……なんかこういうのって、下手に開けない方がいいかなって……」
「なんでお前はそういうところだけ慎重なんだ……まあいい。ともかく、明後日【神格社界】のパーティーがある、それはその招待状だ」
「明後日? クリスマスじゃん」
「そうだ。クリスマスパーティーだからな」
はっきりとクリスマスパーティーと言い切った亜実。“ゲーム”の世界はもっと殺伐としていると夕陽は思っていたが、そんなこともするのかと、少々意外に思った。
「まあ、一口に“ゲーム”と言っても、組織の数は膨大だからな……確かに戦うための組織も多いが、中には娯楽的な組織や、賭博を目的とした組織も存在する。【神格社界】はそういった組織をも飲み込むほど巨大な組織だ」
「……前々から思ってたんだけどさ、【神格社界】って、結局はなんなの? どういう組織?」
【師団】や【ラボ】は、やっていることが非常に分かりやすいので、その組織の全体像というものがなんとなくでも見えてくる。しかし【神格社界】は、全く見えてこない。
そもそも夕陽が、【神格社界】に属する者でよく知る相手が亜実だけというのもあるが、それれでもやはり分からない。
「そうだな、いい機会だ、教えといてやろう」
亜実は注文したコーヒーを一口啜り、語り始める。
「前にも言ったが、【神格社界】は様々な目的を持った者が集い、各々の目的を遂げるための手段として、自らを磨く場所だ。今では少数派だが、中には“ゲーム”参加者ですらない者もいる」
「そうなの?」
意外そうに声を上げると、亜実は首肯する。
「ああ。そもそも【神格社界】自体は、元々は“ゲーム”とは関係ないところで設立したらしいからな。この辺りはあたしもよく知らないが……話を戻すぞ。【神格社界】はそういった、組織としての共通目的がない組織、烏合の衆とも言える。むしろ組織ではなく、コミュニティと言った方がいいかもしれないな」
共通目的を持つ者同士が手を取り合い、そうでないものは対立する。組織として一つの目的を目指すのではなく、各人の目的を達成するための中継地点となる場所。
それが【神格社界】。
「一応、今の【神格社界】のトップの意向で、ここに所属するものには強さのランクが付けられているがな」
「そういえばいつか、AとかA+とかなんとか、そんな感じのこと言ってたな。それのこと?」
「そうだ。それがとりあえずある共通目的だが、そえを無視するものもいるし、それを咎める者もいない。咎める道理もないしな。さらに言えば、他の組織に属していながら【神格社界】にも属する者がいる。流石に【師団】や【ラボ】の人間ではいないだろうがな」
そう聞くと【神格社界】とは、“ゲーム”の世界においてかなり特異な組織に聞こえる。
「実際、相当異質な組織だとは思う。構成員の数も、ずば抜けて多いしな。それの【神格社界】は元々、社交界的な組織でもあったらしい。パーティーなどというのも、その名残だ」
さらに言えば、と亜実は付け足す。
「この手の集会は定期的に行っている。今まで言ったように、構成員が個々に分散しているために、組織としての一貫性や整合性が欠けている。このように集まる機会がなければ一生会わないような奴らもいる。まあ、情報交換とか、新しいコネクションを作ったりだとか、そんな風に活用されている」
「成程ねぇ……それで、亜実はどうするの? このパーティー、行くの?」
まだいまいちよく分からない点もあるが、概ね理解したので頷いておく。さらに夕陽は、亜実にそう問いかけた。
「あたしか? あたしは参加するつもりだ。今年に入ってから……特にお前たちが参戦した時から“ゲーム”は急激に加速している。今のうちに、手に入る情報は手に入れておきたい」
それから、と亜実は夕陽を指差して言う。
「お前も、参加した方がいい」
「え……?」
「お前たちはまだ、こっちの世界を知らなさすぎる。今回の催しはたかだかパーティーだが、少しでも“ゲーム”の世界の空気というものを知っておいた方がいい。強制まではしないが、参加すべきだと、あたしは思う。だがな……」
今度は椅子の背もたれに体重をかけ、悩ましげな表情を見せた。
「少し引っかかるところもある。本来、その招待状は【神格社界】に所属するものにしか送られないはずだ。それをお前が持っているのは、はっきり言って不自然だ」
「そんなこと言われても……これは郵便受けに入っていたし、僕の名前だってはっきり書いてある」
さらに言えば、この招待状をもらったのは夕陽だけではない。このみ、姫乃、流も同様の招待状を貰っている。夕陽たちがこのパーティーに呼ばれていることは、一目瞭然だ。
「私は貰っていないですが」
「御舟……いつの間に」
「さっきです」
気付けば、いつの間にか汐がすぐ横にいた。まったく来店に気づかなかった。
汐は空いている椅子に腰かけつつ、夕陽の持つ招待状を眺める。
「私は、先輩たちのように『神話カード』を使用していないですからね。その辺りが原因かもしれないです」
「……かもな。だが、正直な話、こんな紙切れなんてなくても、入ろうと思えば入れる。要するに、自分は【神格社界】とかかわりがあることを証明できればいいんだ。そしてそれは、“ゲーム”と関係している、という事実を証明することとイコールで結ばれる」
汐の言葉を受けて、亜実が口を開く。そして一枚のカードを、テーブルの上に置いた。
「そんなにパーティーに行きたいなら、これと同じ奴を持ってくればいい」
「『神話カード』……」
亜実がテーブルに置いたのは《マルス》。今は他の客がいるので、実体化はしていない。
「御舟も、一応持ってるんだよね?」
「……はい」
彼女が“ゲーム”に関わった初期も初期。その時に手にした『神話カード』。
一度もデッキに入れなかったそのカードが、彼女が“ゲーム”の関係者である証明となる。
「……話はまとまったな。なら、その手紙の中に時間が指定されている。まあはっきり言って夜だが……お前らだっていい歳だ、多少の夜遊びくらいなら問題ないだろ。その指定された時間に、指定された会場に来い。幸い、会場は県内でここから近い。その招待状と『神話カード』を忘れず持って来いよ」
言って亜実は、小銭をテーブルに置き立ち上がる。そしてそのまま、店を後にした。
「……見た目よりも、いい人でしたね」
「うん、そうだよ。意外といい奴なんだよ、亜実は」
と、いうわけで。
夕陽、このみ、姫乃、流、そして汐の五人は、【神格社界】主催のクリスマスパーティーへと、参加することとなった。
十二月二十四日、夜。
夕陽はできる限りの正装をして、家から出ようとするが、
「あれ? お兄ちゃんどこ行くの? こんな時間」
妹に見つかってしまった。
(面倒だなぁ……)
だが逆に考えれば、見つかったのは妹だ。頭の中身が残念な、文字通りの愚妹なら、いくらでも言い訳できる。
「……このみが赤点ラッシュで留年しそうだから、クリスマス返上で関係者総出で救済しに行くんだよ。なにかあったら僕の携帯にかけてくれ」
「ふーん、今年はこのみさんからなにも言われなかったから何事かと思ったけど、そういうことだったんだね。分かった。お母さんたちにもそう言っとくよ」
わりとリアリティのある嘘(前半は真実)だったのもあってか、彼女は簡単に納得した。
夕陽はコートに腕を通しながら、扉に手をかける。
「ああ、頼んだ。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃーい」
妹の見送りを受けながら、家から出る夕陽。十二月も下旬だ、夜になるとさらに寒い。
「しかし」
玄関の門を潜りながら、ふと呟いた。
「あいつ、僕が制服でいることについてはなにも突っ込まなかったな……」
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