二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.190 )
日時: 2013/10/24 04:06
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 日蓮のターン。今までほとんど防御しかしていなかった日蓮が、遂に動き出す。
「行くぞ、《ミル・アーマ》でコストが1軽くなり、呪文《プライマル・スクリーム》! 山札の上から四枚を墓地へ送り、墓地から《ブラッディ・シャドウ》を回収」
「《プライマル・スクリーム》……」
 今更だが、日蓮は序盤からやたらと墓地を増やしていた。厄介なブロッカーたちに気を取られていたのと、墓地に行くのも軽量クリーチャーばかりなので特に気に留めていなかった。
 実際、墓地を利用するデッキは多いが、大抵の場合は墓地から大型クリーチャーを釣り上げたり、墓地にクリーチャーが溜まることで強化されるクリーチャーを採用していることが多い。だが日蓮の墓地には、そういったカードはない。
 だがそれでも、墓地を増やす理由があるとすれば——

「さらに呪文《復活のトリプル・リバイブ》!」


復活のトリプル・リバイブ 闇文明 (6)
呪文
コスト3以下の進化ではないクリーチャーを3体まで、自分の墓地からバトルゾーンに出す。


「やばっ……!」
 墓地を増やす理由、それは大型クリーチャーを呼び出すためでも、切り札を強化するためでもない。一気にクリーチャーを展開するためだった。
「さあ蘇れ、我が僕たちよ!」
 墓地から復活したのは《腐敗電脳ディス・メルニア》《電脳封魔マクスヴァル》《霊王機エル・カイオウ》の三体。いずれも厄介なブロッカーだ。
「さらに《ブラッディ・シャドウ》をG・ゼロでバトルゾーンに! 《アカダシ》で《ロッキオ》を攻撃!」
「ぐっ……!」
 予想通り殴り返されたが、ここまでブロッカーを並べられるとは思わなかった。しかも、また光臨が発動する。
「《アカダシ》、光臨発動! 山札から出でよ、大地を喰らう神聖にして新星なる戦攻の神! 《戦攻右神マッシヴ・アタック》!」


戦攻右神マッシヴ・アタック 無色 (6)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/アースイーター 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーがゴッドとリンクした時、カードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー
右G・リンク


 現れたのは、青くずんぐりした奇形の体。赤く光る一つ目に、手のような部位は枝のような剣を握っている。異形の神だ。
「《マッシヴ・アタック》の登場時能力で一枚ドロー!」
 派手さはないが、《スクエア・プッシャー》と比較して堅実で実用的、汎用性の高い能力だ。
「くそっ……とりあえず《ツクモ・スパーク》召喚! 《マッシヴ・アタック》をバウンス! そして進化《エンペラー・マリベル》! さらに《マリン・フラワー》を召喚! 《マリベル》で《アカダシ》を攻撃、メテオバーンで《ディス・メルニア》をバウンス!」
 まずはリンクされると困るゴッドを排除し、次にスレイヤーの《ディス・メルニア》をバウンス、さらに光臨を持つ《アカダシ》を破壊する。
「意外にあっさり破壊させたな……《アストラル・ラッシュ》でシールドブレイク!」
「それは《ブラッディ・シャドウ》でブロックだ」
 一気に日蓮のクリーチャーを削った零佑。しかしまだ《ミル・アーマ》《エル・カイオウ》《マクスヴァル》の三体のブロッカーが残っている。
「まずは《マッシヴ・アタック》を再び召喚し、一枚ドロー」
 ドローしたカードを見るや否や、日蓮はニヤリと微笑む。
「《黙示護聖ファル・ピエロ》召喚、即破壊して墓地から《神の裏技ゴッド・ウォール》を回収し、そのままG・ゼロで唱える。これで《マッシヴ・アタック》は、次の私のターンまで決して場を離れなくなる!」
「なんだと……!」
 日蓮の手札には左神である《スクエア・プッシャー》がいる。次のターンに除去できないということは、どうしたってゴッド・リンクされてしまうということだ。そうなってしまうと、現状でも苦しいのにさらに苦しい展開になる。
「まずい、このターンでなんとかしねぇと……」
 しかし、日蓮のシールドは四枚、ブロッカーも三体いる。
「《ツイート》を召喚、そのまま《アストラル・ラッシュ》に進化! 《ミル・アーマ》をバウンス!」
 これでブロッカーは二体。
「一応、こっちには《マリン・フラワー》がいるし、殴り返しは大丈夫か……《マリベル》と《ラッシュ》二体でシールドブレイク!」
「《マクスヴァル》《エル・カイオウ》でブロック。さらにニンジャ・ストライク、《光牙忍ハヤブサマル》で《マッシヴ・アタック》をブロッカーにし、《アストラル・ラッシュ》をブロック」
「なっ、ぐぅ……!」
 いくら攻めても日蓮に零佑の攻撃は届かない。ことごとく防御されてしまう。どころか、《アストラル・ラッシュ》を一体破壊されてしまった。
「さて、私のターン。さあ、神の真の力を思い知るのだ! 《スクエア・プッシャー》召喚! ゴッド・リンク!」
 左神《スクエア・プッシャー》と右神《マッシヴ・アタック》が一つとなる。
「《マッシヴ・アタック》のリンク時効果で一枚ドロー! さらに《スクエア・プッシャー》の登場時及びリンク時効果で山札の上四枚を墓地へ!」
 ドローや墓地肥やしを多用しているため、日蓮のデッキはかなり削られ、もうあと僅かしか残っていない。しかしそれでも、もうそろそろ勝負を決めに来るだろう。
 それに、そろそろなどという余裕も、ないのかもしれない。
「良いカードが引けた、そして良いカードが墓地に行った……これで終わりだ! 呪文《インフェルノ・サイン》! 墓地から《暗黒皇女アンドゥ・トロワ》をバトルゾーンに!」


暗黒皇女アンドゥ・トロワ 闇文明 (6)
クリーチャー:ダークロード 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト1のクリーチャー、コスト2のクリーチャー、コスト3のクリーチャーをそれぞれ1体ずつ、自分の墓地からバトルゾーンに出す。


「なっ……!?」
 墓地より蘇ったのは、闇の皇女。その能力は、墓地からコスト1、2、3のクリーチャーを復活させること。
 一見すると《復活のトリプル・リバイブ》が劣化した代わりにクリーチャーとなった能力とも取れるが、《アンドゥ・トロワ》と《トリプル・リバイブ》では決定的に違う点がある。それは、《トリプル・リバイブ》は進化クリーチャーを出せないこと。

 そして《アンドゥ・トロワ》は進化クリーチャーも出せることだ。

「さあ蘇れ、皇女の下僕共! 《ねじれる者ボーン・スライム》を墓地進化《死神術死デスマーチ》! 《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を墓地進化《鬼面妖蟲ワーム・ゴワルスキー》! 《電脳封魔マクスヴァル》を墓地進化《死神竜鳳ドルゲドス》!」


死神術士デスマーチ 闇文明 (1)
進化クリーチャー:デスパペット 1000
ブロッカー
墓地進化−闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーがバトルする時、そのバトルの終わりまで、バトルしている相手クリーチャーのパワーは−4000される。


鬼面妖蟲ワーム・ゴワルスキー 闇文明 (2)
進化クリーチャー:パラサイトワーム/デビルマスク 4000
墓地進化—闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーが破壊された時、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。


死神竜凰ドルゲドス 闇文明 (3)
進化クリーチャー:ティラノ・ドレイク 5000
墓地進化—闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーはブロックすることができない。


「マジかよ……!」
 墓地から蘇って来るのは、すべて進化クリーチャー。召喚ターンに攻撃できるクリーチャーだ。
 つまり、このターンで勝負を決めに来る。
「まずは《ドルゲドス》の能力で《マリン・フラワー》のブロック能力を無効にする!」
「やばっ、それはまずい……!」
 これで零佑は日蓮の攻撃を止められるクリーチャーがいなくなった。シールドは四枚あるが、T・ブレイカーのゴッドとアタッカーが三体、どうしたって止めきれない。
「まずは神でシールドをTブレイク!」
 神の一撃で、零佑のシールドは瞬時に一枚になる。しかし、割られたシールドのうち一枚が、光となって収束し、零佑の手元へと戻ってくる。
「S・トリガー《スパイラル・ゲート》! 《デスマーチ》をバウンス!」
 なんとかS・トリガーでアタッカーを減らすが、零佑のシールドは残り一枚、日蓮のアタッカーは二体。ギリギリとどめまで行かれてしまう。
「《ゴワルスキー》で最後のシールドをブレイク!」
 これでシールドはゼロ、S・トリガーも出ない。
「これで終わりだ! 《ドルゲドス》、とどめ——」
 その時だった。

 《ドルゲドス》が突如発生した荒波に飲まれ、日蓮の手札へと押し返される。

「っ!? な、なにが起こった……!」
「ふぅ……危ない危ない、最後のシールドがこいつで良かった」
 とどめの一撃を防がれ焦りを見せる日蓮と、対照的に落ち着きを取り戻した零佑。
「ニンジャ・ストライク《斬隠テンサイ・ジャニット》。コストが低いのが仇になったな、こいつの効果でコスト3以下のクリーチャーは手札に戻されるぜ」
 なんとか命は繋いだ零佑。それでも日蓮のシールドは四枚、零佑のアタッカーは二体。ここからとどめまで行くのは難しいが、
「やるっきゃねぇ……《ロッキオ》召喚! さあ来いっ!」
 山札の上二枚を捲り、その順番を入れ替える零佑。口元には隠しきれない笑みが零れ、勝利をほぼ確信していた。
「《ペロリ・ハット》召喚! 連鎖で山札の上を捲り、進化! 《アストラル・リーフ》! 三枚ドローし、サイバー・ロードがいるからG・ゼロ《パラダイス・アロマ》召喚! さらに、ソウルシフトで3マナ軽くなって4マナ《パラダイス・アロマ》進化!」
 怒涛のような勢いでクリーチャーを展開し、すぐさま進化させる零佑。最後、零佑の周囲に磁場が乱れるかのような激しい嵐が吹き荒ぶ。

「Zの力をその手に掲げ、呪文殺しの超電磁よ、吹き荒れろ! 《超電磁マクスウェルZ》!」

 磁場の嵐から現れたのは、電脳の使者にして零佑の切り札《マクスウェルZ》だ。
「これで俺の場にアタッカーは四体、うち一体がW・ブレイカーだ。終わりにしてやるぜ、《マクスウェルZ》でWブレイク!」
 《マクスウェルZ》は両手からバチバチと弾ける電撃を放ち、日蓮のシールドを二枚破壊。
「っ、S・トリガー発動! 《地獄門デス・ゲート》!」
 ここでS・トリガーを引き当てた日蓮。しかも《デス・ゲート》が発動すれば、零佑のアタッカーを減らしつつ墓地の軽量ブロッカーも呼び出せるため、このターンはほぼ確実に凌げるだろう。
 ——発動すれば、だが。
「それは無理だぜ、《マクスウェルZ》の能力で、俺たちは自分の墓地にある呪文と同じ文明の呪文は唱えられない。お前の墓地には《プライマル・スクリーム》や《復活のトリプル・リバイブ》があるから、闇の呪文は唱えられない!」
「なんだと……くっ!」
 歯噛みする日蓮。続けて零佑の《マリベル》と《アストラル・リーフ》もシールドをブレイク。また《デス・ゲート》がトリガーしたが、無論唱えることは出来ない。

「トリガーはもうないな、だったらこれで決めるぜ……《アストラル・ラッシュ》で、とどめだ!」

 《アストラル・ラッシュ》の無数の拳が凄まじい勢いで繰り出され、日蓮を吹き飛ばす。全身打撲どころでは済まなさそうなほど酷い打撃痕が出来上がる。
「ぐはっ……まさか、あそこで逆転されるとはな……だが、負けたところで私が失うものなどない。元より私たちは、お前たちを足止めするための、使い捨ての盾だからな……」
 クリーチャーとしての実態を維持できなくなっているのか、消えゆく中、日蓮は壁にもたれかかって、遺言のように呟く。
「もう間もなくだ。あれほど巨大なクリーチャーを顕現させるにはそれ相応の時間と準備が必要だが、それも整った……じきにお前たちの前に立ちふさがるだろう、神々を誕生させる大地の化身……《ヘラクレス》がな……」
 そして、日蓮は弾けるように光を発し、完全に消滅した。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.191 )
日時: 2013/10/27 12:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 汐と天草のデュエルは、互いにシールドは五枚、どちらもまだ大きな動きを見せていない、停滞した状態だ。
 汐の場には《電脳封魔マクスヴァル》と《暗黒導師ブラックルシファー》。
 天草の場には《熱湯グレンニャー》が二体と《氷牙フランツⅠ世》。
 デッキカラーは火と水、《グレンニャー》を使用しているところを見るとビートダウンのようだが、《フランツⅠ世》もいることを考えればまだ分からない。まだ確定して判断するのは危険だろう。
「我がターン。呪文《ブレイン・チャージャー》を唱え一枚ドロー、このカードはマナへ」
 手札とマナを同時に増やす天草。その雰囲気から嫌な気配を感じる汐。そしてその悪寒は、彼女にとって悪い結果として的中する。
「続けて呪文《シークレット・クロックタワー》。山札の上三枚を見る。そして一枚を手札に、一枚を山札上に、一枚を山札下に置く」
 手札を整理できる《シークレット・クロックタワー》だが、このカードの真価はそこではない。このカードは必要なカードだけを手札に入れ、残りは山札の下と、山札の上に置くのだ。
「さらに呪文《転生プログラム》。《グレンニャー》を破壊」
「やはりそう来るのですか……」
 山札の上に置けると言うことは、山札に好きなカードを仕込めるということだ。《転生プログラム》で《グレンニャー》は山札の上に込まれたクリーチャーへと転生する。
「我が身よ出でよ、《精霊のイザナイ 天草》!」


精霊のイザナイ 天草 無色 (7)
クリーチャー:オラクル/エンジェル・コマンド 6500
ブロッカー
このクリーチャーがバトルする時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。それがゴッドか無色クリーチャーであれば、バトルゾーンに出してもよい。それ以外であれば、自分の手札に加える。
W・ブレイカー


「まさかその色でそんな踏み倒しをするとは……かなり意表を突かれてしまったですが、墓地のデーモン・コマンドは三体、《ブラックルシファー》のパワーは9000、《天草》にやられることはないはずです」
 火・水のデッキカラーで《天草》を踏み倒すという戦術を取ったことには驚いたが、それだけだ。まだ汐が不利になったわけではない。
「私のターン。《魔城の黒鬼オルガイザ》を召喚、《グレンニャー》を破壊です」


魔城の黒鬼オルガイザ 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのターン、バトルゾーンにある相手のクリーチャーすべてのパワーは−1000される。
W・ブレイカー


 《オルガイザ》の登場で、《天草》の場のクリーチャーのパワーはすべて−1000、パワーがゼロとなった《グレンニャー》が破壊される。
「《ブラックルシファー》でWブレイクです」
 鈍色の鎌を振るい、《天草》のシールドをまとめて二枚、切り裂く《ブラックルシファー》。しかし切り裂かれたシールドのうち一枚が光り、収束する。
「S・トリガー発動《ディープ・オペレーション》。相手クリーチャーの数だけカードを引く。三枚ドロー」
 一気に手札を増やす《天草》。またも、汐は《天草》から嫌な気配を感じる。
「我がターン。《炎刃ズバット・アクセラー》をジェネレート」
「っ、それは……」
 クロスしたクリーチャーに「パワーアタッカー+3000」を与えるクロスギア、《スバット・アクセラー》。殴り返しに弱く、パワーを上げるだけではそこまで強くないが、場に《天草》がいるとなれば話は別だ。
「そのまま《天草》にクロス。これで攻撃時、《天草》のパワーは9500、貴様の《ブラックルシファー》を上回る」
「……ですが、私の墓地には進化デーモン・コマンドがいるですし、ブロッカーだってあるのです。このターンで《ブラック・ルシファー》を破壊することはできないですよ」
 そしてすぐさま《天草》を殴り返せる。一度はバトルが発生するので効果は発動するが、それは仕方ない。山札を操作されなければ不確定に発動する能力なので、そう都合の良いカードは出て来ないだろう。
 しかし、《天草》もそう甘くはない。
「無為なことだ。そのような浅知恵は、すぐさま突き崩して見せよう。《勝負だ!チャージャー》を発動。このターン《天草》はタップされていないクリーチャーを攻撃できる。続けて呪文《無限掌》」
「な……っ」
 バトルに勝てば無限にアンタップできる呪文、《無限掌》。これで汐の《ブラックルシファー》は、たとえ一度死を免れても、また破壊されてしまう。破壊から逃れることが出来なくなった。
 しかも《勝負だ!チャージャー》でアンタップ状態の《マクスヴァル》や《オルガイザ》までもが破壊される。
「無論、それだけではないがな。《天草》で《マクスヴァル》を攻撃!」
 青白い光を放つ豪奢な錫杖を振るい、《マクスヴァル》を破壊する《天草》。それもバトルで破壊したため、《天草》の効果が発動する。
「《天草》がバトルに勝った時、山札の一枚目を捲る……《センジュ・スプラッシュ》か。これは手札へ」
 続けて、アンタップした《天草》は《オルガイザ》へと視線を向けた。
「《オルガイザ》を攻撃!」
 錫杖から放たれる光を喰らい、《オルガイザ》も破壊され、
「《天草》の能力発動。山札を捲り《無限掌》を手札に加え、《ブラックルシファー》を攻撃」
「っ……《ブラックルシファー》の効果発動です、破壊される代わりに、墓地の《悪魔神バロム・エンペラー》を回収です」


暗黒導師ブラックルシファー 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から5枚を自分の墓地に置く。
このクリーチャーのパワーは、自分の墓地にあるデーモン・コマンド1体につき+1000される。
このクリーチャーが破壊される時、このクリーチャーを墓地に置くかわりに、進化デーモン・コマンドを1体、自分の墓地から手札に戻してもよい。
W・ブレイカー


 墓地に落ちた悪魔神を回収し、辛うじて破壊は免れるが、それはたった一度だけだ。敵を殲滅するまで、《天草》は止まらない。
「バトルは発生したため《天草》の能力発動、《ゴッド・シグナル》を手札に加え、アンタップ。再び《ブラックルシファー》に攻撃!」
 今度こそ破壊される《ブラックルシファー》。これで汐の場は何もなくなってしまう。
「さらに山札を捲り……遂に来たか。《神託のサトリ 最澄》をバトルゾーンに」


神託のサトリ 最澄 無色 (6)
クリーチャー:オラクル 5000+
バトルゾーンにある自分の他の無色クリーチャー1体につき、このクリーチャーのパワーは+5000され、シールドをさらに1枚ブレイクする。


「《最澄》ですか……そろそろ、本格的にまずいことになってきたようです……」
 《天草》の場には《最澄》以外の無色クリーチャーが二体、つまり《最澄》はパワー15000のT・ブレイカーとなる。
「そろそろ《天草》を破壊したいところですが、次のターンに無色クリーチャーを出されないとも限らないです。あまり高い打点の攻撃は受けたくないですし、ここは《最澄》を先に破壊した方がよさそうですね」
 汐はしばらく悩んでから、手札のカードを一枚抜き取る。
「《マクスヴァル》を召喚、続けて《狼虎サンダー・ブレード》を召喚、効果で《最澄》を破壊です」
 召喚時に相手クリーチャーを破壊する《サンダー・ブレード》で、《最澄》を破壊。そのまま汐はターンを終える。
(次のターン、《サンダー・ブレード》を《バロム・エンペラー》に進化させられれば、まだ逆転のチャンスはあるはずです)
 《ブラックルシファー》の死は決して無駄ではなかった。《天草》の効果を多く発動させてしまったが、その代わりに切り札を引き入れたのだ。《バロム・エンペラー》で《天草》の場を一掃すれば、まだ巻き返せる。
だがしかし、そんな汐の希望は、あっさりと打ち砕かれてしまうのだった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.192 )
日時: 2013/10/27 14:01
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 現在、汐はまだシールドが五枚、《天草》は三枚と、シールドの数では汐がリードしている。
 《天草》の能力は確かに強力だが、バトルが発生しなければ意味はない。なので汐は、次のターンに場の《サンダー・ブレード》を手札にいる《バロム・エンペラー》に進化させ、巻き返しを図ろうとするが、
「貴様の愚考などお見通しだ。逆転の余地など与えるものか。呪文《ゴッド・シグナル》、山札から《聖霊左神ジャスティス》を山札の上に」
 今度は確実に無色クリーチャーを山札の上に仕込んでくる《天草》。さらに、
「続けて呪文《センジュ・スプラッシュ》。我がマナの《告別のカノン 弥勒》を山札の上に」


センジュ・スプラッシュ 水文明 (4)
呪文
プレイヤーを一人選ぶ。そのプレイヤーは、バトルゾーンまたはマナゾーンから自分自身のカードを1枚選び、持ち主の山札の1番上に置く。


 だが《天草》の能力はバトルに勝たなければ発動しない。バトルさえ起こらなければ怖くはない……という考えは、流石に甘かった。
「呪文《勝負だ!チャージャー》及び《無限掌》」
「また、ですか……」
 先程と同じ手口で攻めてくる《天草》。これでこのターンも《天草》はタップされていないクリーチャーに攻撃できる。
「《天草》で《マクスヴァル》を攻撃、バトルが発生したため山札から《弥勒》をバトルゾーンに。手札を拝見」
 強制的に手札を公開させられる汐。その中で《天草》が目をつけたのは、やはり《バロム・エンペラー》だった。
「こちらもそのクリーチャーを出されたくない。《バロム・エンペラー》を山札の下に。そして再び《天草》で《サンダー・ブレード》攻撃!」
 錫杖から放たれる光で破壊される《サンダー・ブレード》。またしても汐のバトルゾーンは空となる。
「そして効果発動、山札の上から無色クリーチャーを呼び出す」
 《天草》はこのターン、二回山札の上にカードを仕込んでいる。うち一回は《弥勒》を出すための《センジュ・スプラッシュ》。そしてもう一回は、最初に発動した《ゴッド・シグナル》。
 即ち、無色ゴッドが呼び出される。

「出でよ、神聖にして新星なる天使の神! 聖者の正義を振りかざし、魔導の力を解き放て! 《聖霊左神ジャスティス》!」


聖霊左神ジャスティス 無色 (7)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/エンジェル・コマンド 8000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から5枚を見る。その中からコスト6以下の呪文を1枚、コストを支払わずに唱えてもよい。残りを自分の墓地に置く。
W・ブレイカー
左G・リンク
このクリーチャーがリンクしている間、このクリーチャーはシールドをさらに1枚ブレイクする。


 《天草》の力で呼び出されたのは、数多の腕を持ち、白い体毛で覆われた聖獣。
「続けて《ジャスティス》の能力発動! 山札の上五枚を見て、その中からコスト6以下の呪文をタダで唱える。唱えるのはこれだ、《プロジェクト・ゴッド》!」
 山札の上五枚を墓地へ送り、その中から場のゴッドとリンクできるゴッドをタダで場に出す呪文、《プロジェクト・ゴッド》。《ジャスティス》の能力もあって《天草》のデッキは大分削られたが、しかしその価値はあった。
 墓地に落ちたゴッド・ノヴァが、《天草》の計画通り、蘇る。

「出でよ、神聖にして新星なる悪魔の神! 罪人の悪行を覆いつくし、復活の力を解き放て! 《悪魔右神ダフトパンク》!」


悪魔右神ダフトパンク 無色 (7)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/デーモン・コマンド 8000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト6以下の無色クリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
右G・リンク


 次に現れたのは、紫色の体毛を持つ魔獣。数多の手にはそれぞれギョロリとした瞳が開眼しており、酷く禍々しい。
「《ダフトパンク》の能力で、墓地より《最澄》を復活! そしてゴッド・リンク!」
 《ジャスティス》も《ダフトパンク》も、召喚した時の効果しか持っていないが、リンクすればパワー16000のT・ブレイカー、《天草》と《フランツ》で合計六打点。このままとどめまで持っていかれてしまう。
「さあ、終わりだ! リンクした神でTブレイク!」
「う……」
 白と黒に輝く光弾が放たれ、汐のシールドは一気に三枚も吹き飛ばされる。
「続けて《天草》でもWブレイク! これで貴様のシールドはゼロだ」
 ゴッドの光弾と《天草》の光線で全てのシールドが割られてしまう汐。残る《フランツ》も、既に魔銃を構えており、とどめを刺す準備は万全だ。
 しかし、割られたシールドが光りの束となって収束する。
「っ……S・トリガー発動です。《インフェルノ・サイン》、墓地から《殲滅の英雄ハンニバルΖ》をバトルゾーンに」
「《ハンニバルΖ》だと? なにを考えている、召喚時にクリーチャーを破壊できる《サンダー・ブレード》か、ブロッカーの《マクスヴァル》を出せばいいものを、そんなクリーチャーを今更出してもなんの意味もない。《フランツ》でとどめだ!」
 普段は魔弾を軽量化して射出する《フランツ》だが、この時ばかりは敵を殺傷する、通常の弾丸を装填した射出する。銃口をシールドを失った汐へと向け、その引き金を引く、その時だ。
「ニンジャ・ストライク、《威牙の幻ハンゾウ》を召喚です」
 赤く長い舌が、《フランツ》の頭を弾き飛ばした。その奇襲で、《フランツ》は力を削がれ。破壊される。
「な……っ!?」
「なにをそんなに驚いているのですか。私が《ハンニバルΖ》を復活させたのは、《フランツ》を止める術があったからです。でなければ、私だって《サンダー・ブレード》を復活させるですよ」
 なんにせよ、これで《天草》の攻撃を防ぎきることが出来た。汐の、次のターンが訪れる。
「……今の攻撃を凌いだ事は称賛に値する、流石だ。しかし、私の場にはリンクしたゴッドと《弥勒》《最澄》《天草》の三体がいる。《ハンニバルΖ》の能力があっても、全てを破壊することなど不可能だ!」
「そうでしょうか。闇文明がなにを最も得意としているのか、忘れたのですか」
 すっかり冷静さを取り戻した汐。今まで《天草》に握られていた主導権を、取り返すことが出来た。
 そして同時に、《天草》は奪われる。主導権だけでなく、なにもかも、全てを奪われてしまう。たった一体の死神によって。
「《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》、召喚です」


死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 6000
相手のクリーチャーが破壊された時、自分の山札をシャッフルした後、上から1枚目を表向きにする。そのカードが進化ではないデーモン・コマンドであれば、バトルゾーンに出す。それ以外の場合、自分の手札に加える。
W・ブレイカー


「《ベル・ヘル・デ・ガウル》だと……!?」
 もはや動揺を隠しきれない《天草》。
 《ガウル》は相手クリーチャーが破壊するたびにシャッフルした山札を捲り、デーモン・コマンドなら場に出せる死神。デーモン・コマンドが出るかどうかは不確定だが、汐のデッキには大量のデーモン・コマンドが搭載されているため、そこはさほど問題ではない。
 もう一つ課題となるのが、《ガウル》の能力は相手クリーチャーが破壊された時にしか発動しないことだが、これもとくに問題ではない。なぜなら、汐の場には《ハンニバルΖ》がいるからだ。
「《ハンニバルΖ》で攻撃、そして地獄返霊4、発動です」


殲滅の英雄(カリスマ)ハンニバルΖ(ゼータ) 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 7000
E・ソウル
地獄返霊4
返霊—相手のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー


 E・ソウルのクリーチャーが使える能力、返霊。その中でも《ハンニバルΖ》の能力は、E・ソウルで唯一無二の地獄返霊だ。地獄返霊とは、その能力を持つクリーチャーが攻撃する時、またはその返霊能力を使った時、自分の墓地からカードを指定された枚数、山札の下に置くことで発動する能力。
 《ハンニバルΖ》の場合、ざっくり言ってしまえば、墓地のカードを四枚戻すごとに相手クリーチャーを破壊できる能力となる。
「墓地のカードを八枚、山札の下に戻し、ゴッドと《天草》を破壊です」
「くっ……《ジャスティス》を残す」
 シールドが二枚割られ、《天草》と《ダフトパンク》が破壊されたが、それでもまだ天草の場には三体のクリーチャーが並ぶ。まだ汐にとどめを刺すクリーチャーはいるのだ。
 だが、汐の場には《ガウル》がいる。
「《ガウル》の能力発動です。山札をシャッフルし、一番上を公開です」
 捲れたのは、《魔刻の斬将オルゼキア》だ。
「二体破壊したのでもう一回です。次は……《ガル・ヴォルフ》ですか」
 一気に二体の悪魔が汐の場に並んだ。まずは、《オルゼキア》の能力が発動する。
「《オルゼキア》自身を破壊です、そちらも二体破壊してください」
「……《弥勒》と《最澄》を破壊だ」
 なんとかゴッドは残した《天草》。だが、悪魔たちの虐殺じみた遊戯は終わらない。
「《ガル・ヴォルフ》の能力でオラクルを指定です。今度はこちらが手札を破壊させて頂くですよ」
 前のターンの意趣返しとでも言わんばかりに手札を公開させられる天草。大量に増えた天草の手札はほとんどが呪文だったが、クリーチャーもあった。
「どれを捨ててもそれほど変わらないですが……とりあえず《一休》を墓地送りです。そして、残るシ一枚のールドも墓地へ」
 《ガル・ヴォルフ》によって切り裂かれる手札の《一休》とシールド。クリーチャーは破壊され、手札やシールドまで削られた天草だが、無情にもまだ終わらないのだ。
「《オルゼキア》の能力で二体破壊したので、再び《ガウル》の効果が二回発動です……このカードは手札に入れるですよ」
 デーモン・コマンドではなかったのか、捲ったカードを手札に加える汐。しかし、次はそうはいかない。
「《死神の邪険デスライオス》です。私は《デスライオス》を破壊です」
「ぐ、ぬぅ……《ジャスティス》を破壊……!」
 度重なる除去により、場を一掃されてしまった天草。だが、それでも悪魔と死神は、虐殺をやめない。
「またまたクリーチャーが破壊されたので《ガウル》の能力発動です……さあ、出て来てください。《奈落の葬儀人デス・シュテロン》」


奈落の葬儀人デス・シュテロン 闇文明 (9)
クリーチャー:デーモン・コマンド 13000
各ターンの終わりに、プレイヤーは自身の手札をすべて捨てる。
T・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、クリーチャーをすべて破壊する。


 またも《ガウル》の力で呼び出されたのは、禍々しい気を発する巨大な獣。奈落の葬儀人と謳われる《デス・シュテロン》だ。
「これで私のターンは終わりですが……その時、《デス・シュテロン》の効果発動です。互いに手札をすべて墓地へ」
「っ……!」
 《デス・シュテロン》の雄叫び、汐と天草、両者の手札は墓地へと叩き落とされる。汐のデッキは墓地を利用するため、墓地にカードが落ちてもすぐに再利用できるが、天草のデッキはそういったことが不得手だ。加えて除去カードも少なく、手札に温存していた除去カードまでも捨てさせられてしまった。
「我がターン……! 《墓地の守護者メガギョロン》を召喚し、《天草》を回収……!」
 しかし、それ以上のことは出来ない。天草のターンは終了する。
「私のターンです」
 スッとカードを引く汐。そして、

「舞い戻って来たようですよ……《ガル・ヴォルフ》進化、《悪魔神バロム・エンペラー》」

悪魔神バロム・エンペラー 闇文明 (7)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド 9000
進化—自分のデーモン・コマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。
W・ブレイカー


 現れたのは、かの悪魔神《バロム》が転生に転生を重ね、蘇った《バロム・エンペラー》。環境に適応するために幾分小型となったものの、その力は超神星にも匹敵する。
 一度は《弥勒》の力で山札の底に封印されてしまった《バロム・エンペラー》だが、《ガウル》のシャッフルする能力によって山札がかき混ぜられ、デッキの一番上まで上ってきたようだ。
「《バロム・エンペラー》の能力で闇以外のクリーチャーをすべて破壊です」
 しかし、汐の場には闇のクリーチャーしかいない。よって天草の《メガギョロン》だけが破壊されるが、破壊だけで終わらないのが闇文明だ。
「再び《ガウル》の能力で山札をシャッフルし……カードを手札に加えるですよ。そして、これで終わりです」
 惑星級の巨大な悪魔神が天草に迫る。そして、その悪魔神は両手を振りかざし、

「《バロム・エンペラー》で、ダイレクトアタックです——」



 《バロム・エンペラー》の放つ闇の砲撃を受け、消滅しつつある中、天草はほとんど残っていない力でか細く呟く。
「これで私の役目は果たされた……私が、私たちが滅されようとも、もはや奴の召喚は止まらない……貴様も、奴の力で大地の糧となるのだ——」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.193 )
日時: 2013/10/27 20:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「ゆーくん! ゆーくんっ!」
「なんだよ? そんな大声出さなくっても聞こえるっての」
 夕陽たちは二手に分かれ、イザナイを探しながら、イザナイの呼び出したクリーチャーを殲滅していた。
 最初はその数の多さに辟易していた夕陽たちだが、倒すにつれ確実に数が減っていることを実感していた。それは夕陽たちの努力の賜物と言うより、夕陽たちがクリーチャーと戦っているうちに、他の者たちがイザナイを倒した結果だろう。
 このみと共に行動していた夕陽はこのみから、彼女の携帯に届いたらしいメールの文面を伝えられる。
「クロさんと佑さん、汐ちゃんからメール! みんな、イザナイを倒したって!」
 携帯を投げ渡される夕陽。差出人はクロ、零佑、汐の三人からで、クロは姫乃や仄の分の報告もしている。
「みんなやってくれたよ!」
「そうだな……ってことは、あとはこの雑魚共を蹴散らすだけか」
 大きな懸念ごとが消え、より明るくなるこのみ。夕陽も胸のつかえが取れ、少しホッとする。
 しかしイザナイを倒したとはいえ、イザナイがはなったクリーチャーはまだ残っている。それもすべて倒すのは時間の問題だろうが。
「よし、さっさと雑魚狩りを済ませるぞ」
「オッケー! あたしもがんばっちゃうよー!」
 と、意気込む二人。その時だった。

 二人の気合を吹き飛ばすかのように、激しい地揺れが起こる。

「っ……!」
「な、なになに!? 地震!?」
 思わず膝をつく二人。しばらくして地揺れは収まったが、二人の動揺は収まらない。
「なんだったんだ、今の地震……なんか、嫌な感じがするけど……」
「……あ、電話だ。もしもーし?」
「いつでもどこでも能天気だな、お前は……」
 緊張感なく携帯にかかってきた電話に出るこのみ。分かっていたことだが、最近になってますますその能天気さに磨きがかかっているような気がする。
「ゆーくん、トリッピーから電話」
「誰だよトリッピーって、どこの喋るオウムだ」
 などと言いながら、どうせ聞いてもこのみから答えを引き出すより実際に声を聞く方が早いと判断し、夕陽は電話を受け取る。
「もしもし?」
『ヘイ、『昇天太陽サンセット』君。それとも空城君? 夕陽君? どれがいい?』
 聞こえて来たのは、つい数時間前に聞いたばかりの女声。その独特の口調からも、誰かは特定できる。
「……このみ、お前この人のことトリッピーとか呼んでんのかよ。つーかいつの間に番号登録してんだよ……」
『んん? ホワット? どうかした?』
「いや、なにも……なんですか、ラトリ、さん」
 電話の相手はラトリだった。このみとラトリ、波長は合いそうだが、本当にいつの間に番号を好感していたのだろうかと疑問が湧くが、ひとまず置いておく。
『べっつに「さん」と無理にコールしなくてもいいよ? 私はそんなスモールなこと気にしないから。それほより本題だけど、そこからグランドはルックできる?』
「グランド? まあ、見えますけど」
 窓を覗けば、グランドなんてすぐに見える。ラトリの言うがままに、窓の外へと視線を向ける夕陽。そして、その目を見開いた。
「なっ……なんだ、あれ!?」
 夕陽が見たものは、黒い何か。それも相当巨大だ。若干茶味がかっており、その表面はまるで樹木のようでもある。
 そんな巨大な存在が、いつの間にかグランドのど真ん中に鎮座していた。
『私たちもナウ向かってるところだけど、たぶんそれ、クリーチャーだと思う。それもイザナイが呼び出したなんかじゃなくて、普通に実体化したクリーチャー』
「ってことは、まだカードをばら撒いている人間がいるってこと……?」
 そう問い返した夕陽の言葉を、しかしラトリは即座に否定する。
『ノット、それは違うかな。クリーチャーの実体化っていうのは、そんなにイージーなことじゃないんだよ。ビッグなクリーチャーほど、最初の実体化にタイムがかかるもの。君だって、3マナの《コッコ・ルピア》を出すより、6マナの《ボルシャック・NEX》を出す方がスロウでしょ? つまりはそういうこと』
 3マナのクリーチャーより6マナのクリーチャーの方が出すのが遅くなる。ラトリの例は分かりやすいが、口調が独特なので理解が遅れる。
 それでも、夕陽には理解できる範疇だが。
「クリーチャーの実体化にかかる時間は、マナコストに比例する、ってことですか?」
『ザッツライト! ま、正確なタイムが分からないけど、ここまで実体化するためにタイムを要するってことは、相当ビッグなクリーチャーなんだろうね。たぶん、コスト10はオーバーしてるんじゃないかな……?』
 コスト10以上のクリーチャーとなると、大型中の大型、その数や種類は限られてくる。しかし夕陽の頭の中でピックアップされていくクリーチャーはどれも強力で、彼の不安を煽る。
「とにかく、グランドに行けばいいんですね。すぐに向かいます」
『サンクス! じゃ、またアフター!』
 と、よく分からない別れを告げ、ラトリは通話を切った。夕陽も携帯をこのみに返す。
「トリッピー、なんて?」
「お前とあの人の関係はまた後で聞くとして、グランドに行くぞ。事情はその途中で話す」
 そもそも、このみが理解できるとは思っていないが。それに夕陽も、事情を説明出来るほどの情報がないので、どうしても不確定な話になるが。
 ともあれ二人は階段を駆け降りて、校舎の外を目指していく。



「にしても、一体なんなんだこいつは……」
 グランドに出て夕陽が真っ先に目撃したのは、巨大ななにか。表面は黒っぽく、樹木のような質感だ。
 ちなみにここに来る道中、少数ながらも残っているクリーチャーに遭遇してしまい、今はこのみが相手をしているため、ここには夕陽だけグランドに来ている。
「ヘイ、こっちこっち、カムヒア!」
 少し離れたところから、ラトリの声が聞こえる。どうやら一人のようだ。
「……黒村先生と、もう一人の人はどうしたんですか?」
「黒村君とミーシャちゃんなら、雑魚をハンティング中。それよりこれだけど」
 と言ってラトリが指差すのは、グランドの中央に鎮座する巨大な何かだった。
「ビッグすぎて全体像がアンノウンだけど、たぶんこれ、《ヘラクレス》だよ」
「《ヘラクレス》……ガイア・コマンドの、ですか?」
 コクリと頷くラトリ。ラトリはこの大型クリーチャーのコストは10を超えるだろうと予想していたが、見事的中していた。
「今のところはムーブする気配はナッシングだけど、いつバーサークするかも分かんないし、クイックで駆除しないと。と言うわけで、レッツゴー、空城君」
「は? 僕ですか!?」
 さも当然とばかりに名指しされる夕陽だったが、しかしあまりにも自然すぎる流れだったため、抗議する。
「あなた、【ラボ】のトップなんでしょう? 僕なんかより、こういうのはよっぽど適任なんじゃ……」
「ノンノン、そんなことナッシング。むしろ私、デュエマのアームに関してはそんなにストロングじゃないんだよ。たぶん君とやったら私がのロスト。そこらの雑魚程度ならデストロイできるけど、たぶんこのクリーチャーはラスボスクラスだから、私のハンドに負えない。というわけで、ゴー」
「えー……」
「ほらほら、残りタイムもあと30ミニッツくらいだし、ファスト、ゴー」
 いまいち釈然としないが、仕方なくデッキケースを取り出し、もぞもぞと動き始めた《ヘラクレス》の正面まで歩み寄る。
(近づいてみると物凄い迫力だな……)
 しかし今はその迫力に気圧されている場合ではない。デッキケースから一束のデッキを取り出し、《ヘラクレス》と向かい合う。
 刹那、夕陽と《ヘラクレス》の間の空気が、豹変した。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.194 )
日時: 2013/10/27 22:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

どうも、デュエマの大会行ったら、周りが凄すぎて一回戦落ちしてきたタクです。いや、自分が弱いだけですね。はい。
見事、イザナイ達を全員倒した夕陽達ですが、やっぱボスって出てくるものですね。ただ、意外だったのが、それがオラクリオン(特に最近登場したp-サファイア)でもなく、ゴッドでもなく《ヘラクレス》だったのには驚きました。というか、最初《ヘラクレス》の名前を聞いたとき、《大魂蟲オオ・ヘラクレス》かと思ったのですが、作中でガイア・コマンドとか書いてあったので、違うクリーチャーかと思って再度調べてみたら、《神誕の大地 ヘラクレス》の事だったんですね。自分、あんまり古いカードは知らないんで・・・・・・。
夕陽と《ヘラクレス》の対決を楽しみにしつつ、自分も執筆に励もうと思います。それでは。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。