二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.346 )
- 日時: 2014/01/19 02:43
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりを探して町中を駆け回る夕陽たち。しかし、ひまりの姿は一向に見当たらない。
「いないですね、ひまり先輩」
「だねー……もうけっこーいろんなとこ探したはずなんだけどなぁ」
このみは連絡係として、定期的に他の者たちから連絡を受けているのだが、ひまりを見つけたという連絡はない。わりと大人数で探しているため、もう町の半分近くは見て回っているはずだ。神話空間が展開され、交通機関も利用できなくなっているのだから、ひまりだってそう遠くへは行けないはず。にもかかわらず、ここまで見つからないとなると些か妙だ。
「ひまり先輩が敵に捕まっている可能性もあるにはあるですが、あの人が安々と捕まるとは思えないです。となると、なにかしらの理由があって身を隠している、とかですか」
「理由って、なに?」
「流石にそこまでは分からないです……」
汐も困り果てている。身を隠しているとなれば、それはそれで厄介だ。一般人がいないということは、目撃情報を得ることもできない。なんの情報もなく、一から探すのは無理だ。
「まあ、身を隠していてもいなくても、状況は変わらないです。ここまで探しても見つからないということは、もしかしたら郊外の方にいるのかもしれないですね」
町の半分近くは見て回ったが、逆に言えばまだ半分残っているのだ。町中を探すとなると、入れ違いになる可能性も相当高いが、遠くにいる可能性も否定はできない。
「じゃあ、とりあえず街中から離れたとこにいる誰かに探してもらって、それからあたしたちも向かった方がいいかな?」
「そうですね。とはいえ、街中にいて見落としている可能性も捨てきれないので、半数くらいはこちらに残しておいた方がいいかと——」
と、汐は途中で言葉を切った。
「? どしたの? 汐ちゃん?」
「誰かの気配がするです」
妙に他人の気配に鋭い汐。普段なら一般人で済むのだが、ここは神話空間の中だ。汐たちに近づく人間は二種類しかいない。
一つは夕陽や姫乃、流など。しかし彼らがわざわざ姿を悟られないように近づいてくるはずがない。普通に呼びかければいいのだ。それに、三人とも今は汐やこのみから離れた位置にいる。それは先ほど確認したばかりなので、ここにいるはずがない。
だとすると、考えられるのはもう一つの可能性。それは、敵だ。
「【師団】でしたか。隠れていないで出て来たらどうですか」
物陰に向かって呼びかける汐。すると、思いのほかあっさりとその者は姿を現した。
「別に隠れていたつもりはないんですけれども。しかしあまり唐突に姿を現すのもどうかと思いまして」
「そんなこと、気にすることじゃないと思いますけどね。それこそどうでもいいのですが」
現れたのは二人、どちらも女だ。そして外見に分かりやすい特徴を持っている。
一人は、言うなればシスター。所々跳ねている、肩口までの金髪に碧眼。そして白い修道服を身に纏っている。
もう一人は民族的な意匠の女だ。細長い布を巻きつけたような出で立ち、いわゆるサリーを纏っている。
「……誰、ですか」
外見のインパクトが少々強く、圧倒されてしまいそうになるが、所詮はは外見。それだけでは恐れる材料にはならない。
「申し遅れました。私は【神聖帝国師団】第八小隊長、ルシエル・フォーリンジェルでございます」
「同じく【神聖帝国師団】第九小隊長、マカ=チャルルカよ。短い間だと思うけど、よろしくお願いするわ」
不気味な薄ら笑いを浮かべるルシエルに対し、ボーっとしておりまったく表情の読み取れないマカ。色々と対極的に見える二人だ。
「小隊長……それが何を意味する階位なのかは知らないですが、私たちになにか用ですか」
とは言うものの、この場面で出て来たのだから、言うまでもないだろうし、聞くまでもないことだ。
「……本来なら『太陽一閃』を探し、捕縛、ないしは無力化することが私たちの使命。しかし、そのための障害となるものを排除するのも、副次的な目的となりうる。この説明で、ご理解いただけますか?」
「私はただルシエルさんに着いてきただけだから、あまり気にしなくていいわよ」
言わなくてもいいことを付け足すマカはとりあえず無視。そして汐は、すぐさまルシエルの言葉を理解する。
つまり、見つけた後の対応こそ違うが、夕陽たちも【師団】も、ひまりを見つけるという目的は合致している。言い換えれば、夕陽たちからすれば【師団】が、【師団】からすれば夕陽たちは競争相手なのだ。
競争において、確実に目的を遂行するためにはなにをすればいいか。簡単だ、競争相手を潰してしまえばいい。相手がいなくなれば、目的を達成するのは残ったものになる。簡単な話だ。
ゆえにルシエルとマカ、【師団】の小隊長二人は、汐とこのみを狙ってきた、というわけだ。
「まあ、別段狙っていたわけではないのですけれど……たまたま、『太陽一閃』を探すついでに見つけたので、ここで潰しておこうと、そう思っただけにすぎません」
「要するに思いつきね。そっちの方が効率的かどうかはともかく効果的だし、私としても異論はないわ」
微妙にずれた発言をするマカは置いておくとして、汐はデッキケースに手をかける。
「このみ先輩、今までの話の流れ、理解できたですか」
「んー……びみょー。えっと、つまり、このおねーさんたちは、あたしたちと戦うつもりってこと、なのかな?」
「……とりあえずは、その理解で大丈夫かと。話の経過はともあれ、負けさえしなければ、問題はないのです」
今は経過よりも結果が大事だ。負ければそこで終わり。しかし勝てれば問題はない。
そこさえ理解できれば、このみにそれ以上の情報はいらないのだ。
「うん、それならわかる。じゃあ早速はじめようか」
「ですね。こちらも、あまり時間をかけてはいられないですし、手早く終わらせるですよ」
二人とも、それぞれデッキを取り出し、臨戦の構え。
「……手早く終わらせる、ですか。言いますね。ではお望み通り、すぐさま神々の贄としてあげましょうか」
「ルシエルさんは、黒髪の女の子の相手ですか? では私は、あちらのおさげの女の子ね」
こちらもそれぞれの相手と向かい合い、いつでも戦える体勢となる。
刹那、その場一帯が、歪み始める。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.347 )
- 日時: 2014/01/19 06:00
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「やっぱりいないなぁ、ひまり先輩……」
比較的近場の公共グランドの中央に立ち尽くす姫乃。探せど探せどひまりは見つからない。
「空城君やこのみちゃんも見つかってないみたいだし……どこにいるんだろう……」
携帯を片手に、ぼんやりと空を見つめる。ちなみに姫乃は携帯電話を所持していないので、汐のものを借りている。このみが汐と一緒に行動しているのは、そのためだ。
「早くしないと、【師団】の人たちに先に見つけられちゃう。それでもひまり先輩なら大丈夫だと思うけど……でも、やっぱり心配だし、早く見つけないとっ」
キリッと気を引き締め、一歩を踏み出す姫乃。その時だ。
「見つけた」
どこからか、声が聞こえてきた。
「え……っ? だ、誰……?」
「ここ」
きょろきょろと辺りを見回す姫乃。グランドには遮蔽物はないので隠れる場所はない。そのことに気付くと、視線を上げ、グランドに降りる階段の上を見遣る。
案の定、そこには一人の少女の姿があった。
「光ヶ丘姫乃、《慈愛神話》の所有者」
少女は妙に速い、しかし自然の足取りで階段を降り、姫乃の正面まで歩いて来る。
その容貌は明らかに日本人ではない。日光をほとんど浴びていないかのような白い肌、その白さと対比するかのようにはっきりしている鮮やかな長い赤毛を、二つに振り分けた髪型。背丈は姫乃よりも高いが、体つきは負けず劣らず華奢だ。黒いブレザーに赤いネクタイとプリーツスカートという、学校の制服を思わせる出で立ちをしており、どこか非難めいているじっとりとした視線を姫乃に向けている。
「私は【神聖帝国師団】“帝国四天王”が一人『炎精火滅』」
年齢的には姫乃とそう変わらないであろう少女、クトゥグアは静かに名乗る。しかし瞳の奥では、明らかに敵意の炎が見て取れた。
「【師団】の、四天王……?」
その名には聞き覚えがある。というより、数時間前に聞いたばかりだ。
「確か、空城君が言ってた……ニャルラトホテプって人と同じ——」
「あんなのと同じにしないでほしい」
姫乃の言葉を鋭く遮り、クトゥグアは主張する。抑揚のない静かな声ではあるものの、その言葉には、それだけは絶対に譲れないとでも言わんばかりの力強さがあった。
「あんな男か女かも分からない謎生物と同じ扱いなんて心外」
「えっと……」
言っていることはよく分からないが、どうやらこのクトゥグアという少女は、夕陽と戦ったニャルラトホテプを嫌っているようだ。【師団】の内部事情など微塵も知らない姫乃でも、それだけは理解できた。
「あれは『昇天太陽』に負けた。でも、私は違う。負けはない」
言って、いつの間にかクトゥグアはデッキを手にしていた。大人しそうな容姿と声だが、意外と好戦的だ。
「…………」
姫乃はこの状況で、思案する。今はひまりを見つけることが優先だ。だが目の前にいる少女はそれを阻害する。
しかし逆に考えれば、クトゥグアもひまりを探しているはずなのだから、ここで姫乃が彼女の相手をすれば、その分彼女を足止めできる。
それは同時に姫乃の足止めにもなってしまうのだが、相手は四天王と呼ばれるほど高い地位にいるであろう人物だ。それを止めておけるのは大きなプラスになるはずである。さらにここで姫乃が勝利すれば、そのプラスはさらに大きくなる。
それになにより、
「……うん、そうだよね。こんなところで逃げてたら、みんなの力に何てなれこいないし、ひまり先輩も喜ばないよね」
正直な話、姫乃はあまり戦うことに対して積極的ではない。仲間内で楽しくデュエマをするのであればいいが、こういう命懸けの対戦には抵抗がある。
しかし、この状況ではそんなことも言ってられれないし、なによりその抵抗感を踏み越えなければ、前には進めない。
そんなことを思いながら、姫乃もデッキを取り出す。そして、一歩前に進み出た。
その瞬間、二人は歪んだ空間へと誘われる。
「…………」
ひまりを探し回り、そのために走り回り、時には他の組織の者の私情から逃げ回り、夕陽は町の中央部のほぼすべてを回った。
そしてとある三叉路に差し掛かった今、凄まじい威圧感を発する男と相対している。
「……なんだよ、お前。【師団】の人間か……?」
怯みながらもそんな問いをぶつける夕陽。しかし、男は答えない。
その男は、かなり目を引く容姿をしている。まず体が大きい。2mはあるのではないかと思うほどの大男だ。染めているのだろう、不規則に垂れ下がるように伸びた青い髪。巨躯を包むローブの大きさも相当だ。
男と言うが、巨体の割に顔はまだ若い。まだ青年と言える程度の年齢だろう。
青年は夕陽の言葉を受けても、なにも言葉を発しない。だんまりを決め込んだまま、ジッと夕陽を見つめている。この巨人が黙ったまま睨みを利かせていると、その圧力は途轍もない。夕陽は決してメンタルが強いわけでも、精神が図太いわけでもないので、多少なりとも臆してしまう。
「おい……なにか言ったらどうだ。名前はなんだ」
いつまでも会話が進まず、どころか始まりさえせず、夕陽が何度か問いをぶつけてみるが、ようやっと青年は口を開いた。
「……我は【神聖帝国師団】“帝国四天王”が一人『夢海星辰』」
静かだが重い声で、彼——クトゥルーは宣告するように名乗った。
「四天王? ってことは、あのニャルラトホテプとかいう奴と、同じくらいの格、ってことか……?」
夕陽の言葉に、クトゥルーは肯定も否定もしない。まったく反応を見せない。
いきなり襲ってくる気配もないが、まったく反応がないのも困る。しかしやがて、クトゥルーはゆっくりとローブの内側から、なにかを取り出す。
「……? デッキ?」
それは、数多くのカードの束、即ちデッキだ。
「戦え、ってことか?」
その問いにも、やはり彼は答えない。しかし彼の発する空気ははっきりと告げていた。戦え、と。
「……仕方ない。正直、こんな不気味な奴とは戦いたくないけど、場合が場合だ。やって——」
夕陽もデッキケースからデッキを取り出そうとするが、その時だった。
三叉路の一方から、声が飛んでくる。
「待て」
短いが、力強く鋭い言葉だ。思わずそちらを向くと、夕陽は少しだけ目を見開く。
「……亜実!」
そこにいたのは、『炎上孤軍』こと火野亜実。【神格社界】に属する“ゲーム”参加者の一人だ。
「お前、なんでここに……?」
「知り合いの情報屋から聞いた。つーか、んなことはどうでもいんだよ」
ドスの利いた声で言い、コンバットナイフのように鋭い目つきで睨みつけてくる亜実に、一歩下がる夕陽。すると、次の瞬間、思い切り胸ぐらを掴まれた。
「うぉ……!」
「おいてめぇ、前にあたし言ったよな?」
「な、なにを……?」
どうやら怒っているように見える亜実。いつも厳しい目つきや声で、いつでも起こっているような様子だが、今この時は確実に激怒している。胸ぐらを掴む力を強め、夕陽にさらに詰め寄りながら、亜実は突き刺すように言う。
「強い敵が来たら、あたしにも知らせろって。なんだよ、わざわざ【師団】か来るって情報をくれてやったってのに、あたしには連絡の一つもなしか? あぁ?」
「ちょっ、近いというか怖いというか凄むなよ……! 知らせなかったのは悪かったから——」
どうやら、それについて怒っているようだ。強い敵と合い見えることが亜実の目的。同時に夕陽たちの戦力増強も合わせた協定を(半ば一方的ながらも)取り決めたにもかかわらず、連絡を寄越さなかったことに対して、亜実は憤慨しているらしい。
夕陽がそこまで言うと、亜実は不愉快そうに鼻を鳴らし、夕陽を誰もいない方の道路に投げ捨てた。
「ぐぁ……いつっ……!」
受け身も取れずアスファルトの地面に叩きつけられ、蹲りながら呻く夕陽。なにか抗議しようと亜実に視線を移すが、
「……お前は、さっさと『太陽一閃』を探して来い」
歪みだす空間の中で、亜実は声のトーンを少しだけ落として、告げる。
「あたしの目的は強い奴と戦うこと。だが、お前は違うだろ。あたしはあたしのやりたいこと、するべきことをするだけだ。だからお前も、同じようにしとけ。恐らく、それがこの状況における最善手だ」
「いや、でも……」
歪みに飲み込まれていく亜実を見つめながらも、足を進むことにためらいを感じる夕陽。
「いいからとっとと行け。いつまでもそこにいたら邪魔だっつーの」
追い払うように、吐き捨てるように言って、亜実はほんの少しだけ、口元を緩めた。
「……ここは、あたしに任せろ」
次の瞬間、亜実とクトゥルーは、完全に神話空間へと引きずり込まれていった。
「亜実……ありがとう」
二人が消えた空間を最後に一瞥し、夕陽は背を向けて走り出す。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.348 )
- 日時: 2014/01/19 07:50
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
汐とルシエルのデュエル。
まだお互いシールドは五枚。汐の場にはなにもないが、ルシエルの場には《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》が一体いる。
これだけ見れば、汐が一歩で遅れているようにも見えるが、しかし実のところ、汐はかつてない高速で動いていた。
「私のターンです。まずはマナチャージ、そして呪文《プライマル・スクリーム》です」
山札の上から四枚——《セブンス・タワー》《ボーンおどり・チャージャー》《デーモン・ハンド》《暗黒導師ブラックルシファー》——を墓地へと送る。
「そして墓地の《ブラックルシファー》を回収です。さらに呪文《再誕の社》。墓地の《ボーンおどり・チャージャー》と《デーモン・ハンド》をマナゾーンへ」
汐は前のターンから、闇文明における墓地肥しとマナ加速カード《ボーンおどり・チャージャー》だけでなく、《霞み妖精ジャスミン》や《フェアリー・ライフ》をも利用し、超高速でマナを加速させている。このターンで既に9マナだ。
「その分、手札の消費が激しいようですが……マナ加速ですか」
『神話カード』を持たないわけではないが、デッキに組み込んではいない汐は、わりと有名であった。普通、『神話カード』ほどの強さ、それも《賢愚神話》ほどの飛び抜けた強さを持つカードを所有しておきながら使用しないというのはありえない。“ゲーム”の世界でなくても、制限をかけられていなければ普通に使っているだろう。
しかし汐は頑なに《賢愚神話》を使用しない。そのことが彼女の名前を広めているのだ。そして名が広まっているということは、それだけデッキの中身も露呈しているということになる。
「確かあなたのデッキは、闇のデーモン・コマンドを連打する構築でしたね。ですが今回は、そのマナ加速を見る限り、特に重量級のデーモン・コマンド……《ドルバロム》の召喚でも狙っているのでしょうか」
「……どうでしょう」
汐は表情を一切変えず、ルシエルを軽くあしらう。しかし傍から見ても、汐の考えは見え見えだ。
マナを一気に加速させ、特に重いデーモン・コマンドを早期に呼び出す。この場合、汐の切り札でもある《悪魔神ドルバロム》辺りが狙いだろう。現に、マナゾーンに《ドルバロム》が一枚見えている。
「しかし《ドルバロム》では私は倒せません。そして、マナ加速に終始していては、肝心の進化元と進化先を用意できなくなりますよ?」
「……どうでしょう」
同じ答えを返す汐。事実、汐の手札は先ほど手に入れた《ブラックルシファー》一枚。マナが増えても手札がなければ意味はないのだ。
「……まあいいでしょう。こちらも早く準備を終わらせなければいけないことですし。私のターン《神門の精霊エールフリート》を召喚。山札の上から三枚を見ます」
ルシエルの山札の上三枚が表向きなる。そして彼女はそのうちの一枚を掴み取った。
「呪文を一枚手札に加え、ターン終了です」
ルシエルが手に入れた呪文を見て、汐はほんの少しだけ目つきを細める。
「そろそろ警戒ですね……私のターンです。マナチャージはせず、呪文《ライフプラン・チャージャー》。山札から《威牙の幻ハンゾウ》を手札に加え、このカードはチャージャーでマナに。続けて《ブラックルシファー》を召喚です。山札の上五枚を墓地へ」
一気に墓地を増やした汐。しかし序盤のマナ加速もあり、かなりデッキが削られている。
「10マナ溜まりましたか。しかし、肝心の進化先が確保できていなければ恐れることはありません」
言って、ルシエルはスッと手札のカードを一枚抜き取る。
「開きなさい、暗黒と祝福の門——《ウェディング・ゲート》」
ウェディング・ゲート 闇文明 (6)
S・トリガー
光でも進化でもないエンジェル・コマンドを2体まで、自分の手札からバトルゾーンに出す。
虚空より開かれた暗門。そこから漆黒の瘴気と共に、闇へと堕ちた天使が降臨する。
「私が出すのはこの二体。一体目は《偽りの星夜 エンゲージ・リングXX》。そして二体目、フフフフ……!」
偽りの星夜 エンゲージ・リングXX (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 9000
ブロッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、かわりに自分のシールドを1枚墓地に置いてもよい。
気がふれたように不気味に笑うルシエルは、もう一枚のカードをかざす。突如、暗門より凄まじい闇の激流が流れ、もう一体の堕天使が降臨する。
「暗黒の星夜よ、生ける者をすべて飲み込め! 《偽りの星夜 スター・イン・ザ・ラブ》!」
偽りの星夜 スター・イン・ザ・ラブ 闇文明 (9)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 13000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある他のクリーチャーをすべて破壊してもよい。そうした場合、自分のシールドをすべて墓地に置く。
T・ブレイカー
《ウェディング・ゲート》から呼び出されたのは、二体の堕天使。どちらもかなり大型の、アンノウンを併せ持つ闇のエンジェル・コマンドだ。
「しかも《エンゲージ・リングXX》と《スター・イン・ザ・ラブ》ですか……」
この二体の組み合わせは厄介だ。
「《スター・イン・ザ・ラブ》の能力発動です。さあ、バトルゾーンのクリーチャーをすべて破壊です!」
直後、《スター・イン・ザ・ラブ》は漆黒の光線を無差別に乱射する。敵も味方も関係なく、暗黒の砲撃を撃ち放った。
「墓地に進化デーモン・コマンドはいないです……《ブラックルシファー》が破壊されたですか……」
同時にルシエルの場も《スター・イン・ザ・ラブ》を除いて一掃されるが、しかし《エンゲージ・リングXX》は違う。
「《エンゲージ・リングXX》の能力発動。私のシールド一枚墓地へと置き、破壊を免れます。そして《スター・イン・ザ・ラブ》の能力で、私のシールドをすべて墓地へ」
《スター・イン・ザ・ラブ》は非常に強力なリセット能力を持つが、強力すぎるが故の弱点もある。それは自分のシールドがすべて墓地へと落ちてしまうことと、味方も巻き込んでしまうことだ。
流石にシールドが墓地へと落ちるのは仕方ないが、味方の破壊を防ぐ方法はある。それが《エンゲージ・リングXX》。このクリーチャーは自分のシールドを犠牲にすることで破壊を免れる効果があるため、《スター・イン・ザ・ラブ》による破壊を防ぐことができる。どうせ《スター・イン・ザ・ラブ》でシールドはすべて墓地へと落ちるため、一枚や二枚シールドが減ったところで関係ない。
自分のシールドを削ることで様々な能力を発揮するのが闇のエンジェル・コマンド。自らの肉を切り、相手の骨を断つその戦い方は、守りの力を持つ光のエンジェル・コマンドとはまるで異質なもの。
「これで私のターンは終了。ですがこの時、墓地の《結納の堕天ノシーレ》の能力が発動します。このターン、シールドから闇のコマンドが墓地ているので、《ノシーレ》を墓地からバトルゾーンに」
シールドがゼロで、守りが薄くなったと思われたルシエルだが、当然防御も考えている。《スター・イン・ザ・ラブ》で闇のコマンドがシールドから墓地に落ちているので、墓地の《ノシーレ》二体がバトルゾーンへと降り立つ。
「……私のターン、《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》を召喚、効果でエンジェル・コマンドを指定です」
ルシエルの残る一枚の手札が公開される。そのカードは《龍聖霊ウルフェウス》。エンジェル・コマンドなのでそのまま墓地へ。シールドは既にゼロなので、ハンデスだけに終わる。
「それだけですか。ならばもう、私が勝ったようなものですね」
不気味な笑みを崩さず、ルシエルのターンがやって来る。
「まずは《コアクアンのおつかい》です。山札の上三枚を公開」
捲られたのは《インフェルノ・サイン》《先導の精霊ヨサコイ》《超次元ブルーホワイト・ホール》の三枚。すべて光か闇のカードなので、三枚とも手札に入る。
「残ったマナで《ヨサコイ》を召喚。そして《スター・イン・ザ・ラブ》と《エンゲージ・リングXX》で攻撃! シールドをすべてブレイク!」
「っ……」
《スター・イン・ザ・ラブ》によるTブレイクと《エンゲージ・リングXX》によるWブレイク、合計五枚のブレイクを受け、汐のシールドはすべて吹き飛ばされてしまう……かに見えたが。
「S・トリガー発動。《デーモン・ハンド》で《エンゲージ・リングXX》を破壊です」
《スター・イン・ザ・ラブ》によってブレイクされた三枚目のシールドから悪魔の腕が伸び、《エンゲージ・リングXX》が破壊される。なんとか汐は二枚のシールドを残すことができた。
しかしルシエルの場にはまだブロッカーが三体。加えて《スター・イン・ザ・ラブ》という超大型の堕天使までいる。シールドブレイクで増えたとはいえ、この少ない手札で逆転するのは難しそうだ。
「流石に厳しいですね、これは……」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.349 )
- 日時: 2014/01/19 08:00
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
このみとマカのデュエル。
シールドはまだどちらも五枚あり、マカは《フェアリー・ライフ》で、このみは《霞み妖精ジャスミン》で、互いに2マナからの加速をしている。
このみの場には《天真妖精オチャッピィ》。墓地の《ジャスミン》をマナへと置き、さらに加速中だ。
対するマカの場には《スペース・クロウラー》と《西南の超人》の二体。ブロッカーと殴り返しのクリーチャーがいるせいで、このみは攻めあぐねている。
「《スペース・クロウラー》が邪魔で《オチャッピィ》が攻撃できない……《ジャスミン》残しとけばよかったのかなぁ……」
とはいえ、マナ加速は序盤に行ってこそ意味がある。《ジャスミン》は終盤、マナ加速が不要になってもアタッカーとして場に残せる点で《フェアリー・ライフ》などのマナ加速呪文に勝っているが、序盤は普通にマナを加速させるべきだろう。
などと序盤から困り気味のこのみは、引いてきたカードを見るなりすぐに表情を明るくする。
「よし来た! まずは《剛勇妖精ピーチ・プリンセス》を召喚! さらに《ピーチ・プリンセス》の能力で、二番目に召喚するクリーチャーのコストは2下がるから、2マナで《オチャッピィ》進化! 《機神勇者スタートダッシュ・バスター》!」
《オチャッピィ》から進化したのは、《スタートダッシュ・バスター》だった。『神話カード』を手にする前に、このみがよく使用していたカードだが、デッキカラーを自然単色からステロイドに変更したことで、色が合うため投入したのだ。序盤の物足りないパワーと打点を補うだけでなく、このみのデッキにはあまり投入されていない除去の役割も担っている。
「《スタートダッシュ・バスター》の効果で《スペース・クロウラー》をマナゾーンへ! そしてWブレイク!」
「……S・トリガー、《フェアリー・ライフ》。マナを一枚追加よ」
早速二枚のシールドをブレイクされてしまい、残りシールドは三枚だ。
「ターンエンド! 次のターンもガンガン攻めるよ!」
「……攻めるのは結構なんだけど、もう少し考えて攻めるべきかもしれないわね、貴女は」
表情を変えず、マカは静かに言う。声もどこか淡々としており、まったく心中が読めない。
「貴女のシールドブレイクのお陰で、『秘宝』が手に入ったわ」
「ひほー?」
明らかに言葉の意味が分かっていない様子のこのみ。マカは構わず、自分のターンを迎えた。
「私の場には《西南の超人》がいる。その能力でジャイアントの召喚コストは2下がる。さらにバトルゾーンにはジャイアントである《西南の超人》が一体、シンパシーでさらに1マナ軽減。計3マナ軽くし、5マナ——」
刹那、大地が震動する。このみは思わずよろけてしまうが、なんとか踏ん張った。
しかし踏ん張ろうがどうしようが、その巨大な存在には、圧倒される。
「我、進撃と勝利を渇望せり。汝、大地と大海の巨人を呼び覚ませ。我がチャルルカの秘宝、《剛撃戦攻ドルゲーザ》召喚」
剛撃戦攻ドルゲーザ 水/自然文明 (8)
クリーチャー:アースイーター/ジャイアント 9000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
シンパシー:アースイーターおよびジャイアント(このクリーチャーを召喚する時支払うコストは、バトルゾーンにある自分のアースイーターまたはジャイアント1体につき1少なくなる。ただしコストは2より少なくならない)
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分のアースイーターまたはジャイアント1体につき1枚、カードを引いてもよい。
W・ブレイカー
現れたのは、下半身が無数の触手を持つ大地を喰らう怪物となっている巨人、《剛撃戦攻ドルゲーザ》だ。
「うわっ、でかいなー……」
《ドルゲーザ》の巨躯を見上げ、圧倒されるこのみ。
「これぞ、チャルルカの一族に伝わる『秘宝』です。そして《ドルゲーザ》の能力発動。バトルゾーンにアースイーターは一体、ジャイアントは二体、合計三枚のカードをドロー」
《ドルゲーザ》は二つの種族を持つため、最低でも二枚はドローが約束されている。そこに《西南の超人》が加わり、三枚ドロー。
一見すると地味な能力だが、《西南の超人》とシンパシーでマカが払ったマナは5マナ。たった5マナで三枚ドローし、パワー9000のWブレイカーが出て来るとなれば、かなりのスペックと言える。
「残ったマナで二体目の《西南の超人》を召喚。これで私のターンは終了、貴女のターンよ」
増えた手札と、コスト軽減の《西南の超人》。次のターンから、マカは一気にクリーチャーを展開してくるだろう。
「うぅ……確かに《ドルゲーザ》は強いけど、あたしの場には《スタートダッシュ・バスター》がいるし、相手のシールドはあと三枚。ここは一気に突っ切るよ!」
《ドルゲーザ》の登場で気圧されそうになるこのみだが、言っていることは間違っていない。マカの場にブロッカーがいない以上、ここは相手が攻撃の体勢を整える前とにかく攻めて勝負を決めてしまうのが吉だ。
「えっと、とりあえずこっちも手札を増やさないとね。まずは《口寄の化身》を召喚。あたしのバトルゾーンにある種族は、《スタートダッシュ・バスター》がヒューマノイドとビーストフォーク、《ピーチ・プリンセス》がワイルド・ベジーズとスノーフェアリーだから、全部で四つ! 四枚ドローするよ!」
マカ以上にカードをドローするこのみ。火文明の投入により、クリーチャーの種族の種類が増えたため、これも汐の助言もあって投入したカードだ。
「それから、《ピーチ・プリンセス》の能力でコストを2減らして、1マナで《剛勇妖精フレッシュ・レモン》召喚! さらにスノーフェアリーがいるから、G・ゼロで呪文《妖精の裏技ラララ・ライフ》! マナを一枚増やして、今度は《フレッシュ・レモン》の能力発動! このターン三番目に召喚するクリーチャーのコストを3減らすよ! 1マナで《妖精のイザナイ オーロラ》を召喚!」
先んじてクリーチャーの大量展開を見せるこのみ。このターンだけでクリーチャーの数が倍以上に膨れ上がった。
「これだけクリーチャーが出れば、次のターンには倒せるよね。よーし、じゃあ《スタートダッシュ・バスター》で攻撃! Wブレイク!」
とにかく攻めるこのみ。殴り返されることも厭わず《スタートダッシュ》で攻撃を仕掛けるが、
「残念、その攻撃は通らないわ。ニンジャ・ストライク《威牙の幻ハンゾウ》をバトルゾーンに」
駆け出した《スタートダッシュ・バスター》の首は、突如出現した《ハンゾウ》の下により、吹き飛ばされてしまう。
「《スタートダッシュ・バスター》のパワーは6000、《ハンゾウ》でぴったり除去できるわね」
「あぅ、止められちゃった……」
このまま《ピーチ・プリンセス》で攻撃しても、割れるシールドは一枚、効果は薄いだろう。
殴り返されるのも嫌なので、そのままこのみはターンを終えた。
「では、私のターン。2マナで二体目の《ドルゲーザ》を召喚」
二体の《西南の超人》で4マナ軽くなり、シンパシーでさらに4マナ軽くなる。シンパシーのコストの下限は2なので、最小限のマナで《ドルゲーザ》を呼び出すマカ。
さらに、これでバトルゾーンにいるアースイーターは二体、ジャイアントは四体となるため、
「合計で六枚ドロー」
「六枚!? ちょっと引きすぎじゃない……?」
前のターンに一気に四枚ものカードをドローしたこのみだが、マカのドローはそれを軽く上回ってしまった。しかも、マナも十分にあり、コスト軽減の《西南の超人》が二体。一気にクリーチャーが展開されるだろう。
「《土隠雲の超人》を召喚。山札から《斬隠テンサイ・ジャニット》《光牙忍ハヤブサマル》《威牙の幻ハンゾウ》の三体を選んで、その中の一枚を手札に」
手札に加わったカードは相手には確認できない。そのため、三枚のうちどのカードを手札に加えたのかが分からず、心理戦を仕掛けることができる。
とはいえ、このみに心理戦など無意味だろうが。
「さらに《斬隠カイドウ・クロウラー》を召喚し、《土隠雲の超人》進化《宇宙巨匠ゼノン・ダヴィンチ》」
宇宙巨匠ゼノン・ダヴィンチ 自然文明 (11)
クリーチャー:ジャイアント/ドリームメイト/オリジン 9000
進化—自分のジャイアント、ドリームメイト、オリジンいずれか1体の上に置く。
ソウルシフト
自分の進化クリーチャーが破壊された時、自分の進化ではないジャイアント、ドリームメイト、またはオリジンのいずれか1体をマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
ソウルシフトと《西南の超人》の能力で8マナも軽くなり、3マナで《ゼノン・ダヴィンチ》が呼び出される。これでこのターンに攻撃できるアタッカーが増えた。しかもマナゾーンには《剛撃無双カンクロウ》が見えるため、迂闊に破壊することもできない。
このみばりの爆展開だが、このみと違って小型クリーチャーではなく、一体一体が大型のジャイアントだ。その破壊力は計り知れない。
立ち並ぶ巨人たちに囲まれ、流石のこのみも戦慄を覚えずにはいられなかった。
「うわ、うわうわ……やばいよこれ……」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.350 )
- 日時: 2014/01/19 13:22
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
汐にとっては苦しい展開となった、ルシエルとのデュエル。
シールドの枚数では、汐が二枚、ルシエルはゼロだが、やはり場数が違う。
汐の場には《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》が一体だけ。
対するルシエルの場には《偽りの星夜 スター・イン・ザ・ラブ》。さらにシールドがゼロのルシエルを守るブロッカー《結納の堕天ノシーレ》が二体と、《先導の精霊ヨサコイ》。
攻めるにしてもブロッカーが邪魔だ。かといってもたもたしていては《スター・イン・ザ・ラブ》に押し切られる。
「なら……私のターン。《ジャスミン》を召喚です。破壊はせず、《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚。私は《ジャスミン》を破壊です」
「……ちっ。なら私は《ノシーレ》と《スター・イン・ザ・ラブ》を破壊」
露骨に不愉快そうに舌打ちし、《ノシーレ》と前のターンに出したばかりの《スター・イン・ザ・ラブ》を破壊するルシエル。ルシエルとしては大型アタッカーである《スター・イン・ザ・ラブ》を残しておきたかっただろうが、ここでブロッカー二体を破壊すれば次のターンには《ガル・ヴォルフ》と《オルゼキア》にやられてしまうため、仕方ないだろう。
「さらに《ガル・ヴォルフ》で攻撃です」
「《ノシーレ》でブロック」
《ガル・ヴォルフ》の斬撃を《ノシーレ》で防ぐルシエル。これで残ったクリーチャーは《ヨサコイ》のみ。
このターンはもうできることはないが、このまま攻めて行けば押し切れそうである。幸いなことに、《ウェディング・ゲート》の反動でルシエルの手札も切れかけている。
「このまま押し切れる、だなんて思わないでほしいですね」
汐の胸中を見透かしたような、鋭い言葉を投げかけるルシエル。心なし、その声は棘っぽかった。
「この程度で終わる私ではありません。まずは呪文《リバース・チャージャー》。墓地の《ブラッディ・シャドウ》を回収し、G・ゼロでそのまま召喚。続けて呪文《超次元ブルーホワイト・ホール》。超次元ゾーンよりコスト5以下のサイキック・クリーチャーを呼び出します。開け、超次元門。《時空の霊魔シュバル》をバトルゾーンへ」
超次元の門より、《シュバル》がバトルゾーンへと呼び出される。覚醒すれば厄介なクリーチャーだが、覚醒するためにはコスト6以上のエンジェル・コマンド、ないしはデーモン・コマンドが二体場にいなくてはならない。今のルシエルの手札状況とバトルゾーンの状況では、覚醒は難しいだろう。
「光のクリーチャーを呼び出したので、手札を一枚シールドへ。ターン終了」
手札をすべて使い切り、ブロッカーを呼びながらシールドを追加して守りを固めてきたルシエル。その中でも、汐は追加されたシールドに視線を向ける。
(あの人の手札には、確か《インフェルノ・サイン》があったはずです。このターンに使用したカードを見るからに、追加したのはそのカードでしょう。墓地には《エンゲージ・リングXX》や《ラスト・プロポーズ》、《ブラック・オブ・ライオネル》が見えていることですし、迂闊に攻撃はできないですね)
わざわざこちらから罠に掛かることもない。ここはとどめを刺すために必要な戦力をじっくりと蓄えてから攻めるべきだろう。
「とはいえ、手札がこれでは攻めるものも攻められないですね……」
汐の命運は山札次第、とも言うべき状況だが、こんな時に引いてくるのは《カラフル・ダンス》。これ以上デッキを削るのも危険なので、即マナにする。
「《威牙の幻ハンゾウ》と《死神の邪険デスライオス》を召喚です。《ハンゾウ》で《ヨサコイ》のパワーをマイナス6000し破壊、《デスライオス》も能力発動です。私は《デスライオス》を破壊です。あなたもクリーチャーを一体破壊してください」
「なら、《シュバル》を破壊」
《オルゼキア》で除去した時とは違い、さほど感情がこもっていないルシエル。どうやら《シュバル》の覚醒は最初から狙っておらず、《ブルーホワイト・ホール》によるシールド追加が目的だったようだ。
「ここは攻撃せず、ターンエンドです」
汐のデッキには数多くの除去カードが入っているため、ブロッカーの一体や二体なら、軽く除去してしまえる。墓地のカード状況と、デッキの枚数から考えて、《オルゼキア》ならまだ引けそうな感じだ。
(あの邪魔なブロッカーを除去してからが勝負どころです。さて、どう動いてくるですかね……)
お互いに残りシールド、手札が少ない状況。迂闊に攻めても逆転を許してしまうが、かといって攻めなければ勝てない。かなり緊迫した状況だ。
「……《コアクアンのおつかい》を発動」
鬱陶しそうに汐とそのクリーチャーたちを見遣るルシエルは、山札の上三枚を捲る。捲られたのは《乾杯の堕天カリイサビラ》《先導の精霊ヨサコイ》《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》の三枚。またしてもすべて光か闇のカードだ。
「残ったマナで《ヨサコイ》を召喚、G・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》も召喚です」
とにかく守りに徹するルシエル。運よく引き当てたブロッカーを並べていく。シールドを削る戦略ゆえに、ブロッカーは多く積まれているようだ。
「ターン終了ですよ。さっさとしてください」
防戦になっているのが気に入らないのか、ルシエルの言葉が荒っぽくなってきている。それを気にする汐ではないが、場違いながらもマナーが悪いとは思う。
「では、私のターンです」
ここで除去カードを引きたいところだが、しかし天は汐を敵視しているかのように狙ったカードを引かせない。
(《ジャスミン》ですか……このまま召喚して場数を増やしてもいいのですが……)
ふと、汐は視線を動かす。その先にあるのは、ルシエルのバトルゾーン、そのクリーチャーたちだ。
「……《ボーンおどり・チャージャー》を発動です」
少し思案し、汐は《ボーンおどり・チャージャー》を使用。そしてバトルゾーンのクリーチャーに手を添えた。
「……《ハンゾウ》で攻撃、シールドをブレイクです」
「前のターンは攻撃を渋っていたというのに、ブロッカーが増えたら攻撃ですか。なかなかわけのわからない思考回路ですね。いいでしょう、そのブレイクは受けます」
《オルゼキア》の攻撃をスルーしたルシエル。そしてブレイクされたシールドは、当然S・トリガーが発動する。
「S・トリガー発動、《インフェルノ・サイン》。墓地から《偽りの星夜 ブラック・オブ・ライオネル》をバトルゾーンに」
偽りの星夜 ブラック・オブ・ライオネル 闇文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出したとき、相手のシールドを1枚選び墓地に置く。その後、自分の墓地からコマンドを1枚選び、新しいシールドとしてシールドゾーンに裏向きにして置く。
W・ブレイカー
地獄の扉から這い出て、墓地より蘇ったのは《偽りの星夜 ブラック・オブ・ライオネル》だ。光のエンジェル・コマンドを率いていた《ライオネル》が、その力を負の力へと差し引かれ、堕天使となった姿である。
正の力が負になったことで、その力も逆転する。
「《ブラック・オブ・ライオネル》の能力で、貴女のシールドを一枚墓地へ! そして私は、墓地の《スター・イン・ザ・ラブ》をシールドへ!」
汐のシールドを墓地へと送りつつ、ルシエルはシールドを追加する。これでシールドの枚数は並んだ。
「《ガル・ヴォルフ》でシールドブレイクです」
「……? ここでも攻撃ですか? では、その攻撃も通します」
これでルシエルのシールドはまたゼロになる。しかし、手札に《スター・イン・ザ・ラブ》が入った。
「いいんですか? 次のターンには《スター・イン・ザ・ラブ》が、またすべてを破壊し尽くしますよ? その残り少ない手札とシールドで、耐えきれるでしょうか?」
「……《オルゼキア》で攻撃です」
ルシエルの言葉を聞き流し、汐は《オルゼキア》でも攻撃を仕掛ける。ルシエルのシールドはゼロ枚、なのでこれが決まればとどめを刺せるが、
「《ブラッディ・シャドウ》でブロック」
当然、場に残っているブロッカーでその攻撃は防ぐ。
「なにやら企んでいるようですね……」
ここで攻めてきた汐に不信感を抱くルシエル。《スター・イン・ザ・ラブ》で、一度場をリセットしてから決めてしまおうと考えていたが、それは危険な気もする。
そんなことを思いながら、カードを引き——そして。
彼女の顔は狂気に歪む。
「……フフッ、ここで来ましたか。いいでしょう。では、貴女には最大級の祝福を授けましょうか」
ルシエルは手札の《カリイサビラ》をマナへと落とす。これで彼女のマナは9マナ。《ヨサコイ》がいなくとも《スター・イン・ザ・ラブ》は出せるが、彼女が選ぶ一手は《スター・イン・ザ・ラブ》ではない。
「すべてものに絶望の祝福を——《「祝」の頂 ウェディング》」
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