二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

ミス・ラボラトリ 〜デッキ調査室〜 №1 空城夕陽1 ( No.95 )
日時: 2013/08/08 15:15
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

 ミス・ラボラトリ。それは、十二枚の神話カードと、それを巡る者たち、そして彼らを取り巻くゲームの真相を研究し、探究し、究明する機関。
 参加ではなく、傍観、観察という立場を取る彼らは、今日も今日とて神話カードやゲームについて研究している。
 そしてここは、そんなミス・ラボラトリの研究所。その一角にある、小さな研究室——



???
「うーん、今日は新しい研究員が入って来るって聞いてたけど、なかなか来ないなぁ……とか言ってる間に、なんか慌ただしい足音が——」

???
「すみませんっ! 遅れてしまいました!」

???
「いや、別に時間を指定してたわけじゃないから遅れるも何もないんだけど、とにかく走ってきた勢いのまま入って来るのはやめてね。扉の前に誰かいたら、確実に吹き飛ばされてるから。とにかく落ち着いて」

???
「あ……は、はい……」

アルフ
「落ち着いたなら、まずは自己紹介でもしようか。俺はアルフ、一応、この『デッキ調査室』の室長だよ」

ミーシャ
「わ、私はミーシャです、今日付けで、ミス・ラボラトリのデッキ研究室に配属されました。よ、よろしくお願いしますっ」

アルフ
「うん、よろしく。にしても、随分若い子が来たなぁ……ま、新しい人が入ってくれるだけで、凄い嬉しいけど」

ミーシャ
「そ、そんな、私なんて別に……それより、室長さん。その、他の研究員の方は? どこにも見当たらないのですが……?」

アルフ
「……全員さぼり」

ミーシャ
「えぇ!? 全員ですか!?」

アルフ
「うん、そうなんだよね……俺の他にあと三人いるんだけど、皆どっか行っちゃって。まあ逆に言えば、さぼっても咎められないくらい、俺らの活動は評価されてないんだけど。デッキを研究するって言っても、ゲーム参加者のデッキは常に移り変わるから調査してレポートをまとめた時にはもう完全に違うデッキになってたり、他の研究室にやること取られたり、経営合理化で人員削減されて今や四人、予算も少ししかなくて潰れかけてるんだ、この研究室……」

ミーシャ
「なんか、生々しい話ですね……」

アルフ
「うん、だから誰でも入ってくれるのは嬉しいんだよ。本当、もう、凄く」

ミーシャ
「……えーっと、じゃあ、室長さん。このデッキ研究室って、どんなことをするんですか?」

アルフ
「その名の通りだよ。ゲーム参加者のデュエルを見て、そのデッキがどのようなものかを研究する。そこからその人がどんな作戦を得意としてるのか、どんなカードを多用する傾向にあるのか、とかそんなことを調べるんだ。最終的にはその人が使ってると思われるデッキを再現したりもするよ」

ミーシャ
「結構本格的にやってるんですね……それが潰れかけてるなんて、にわかに信じ難いのですが……」

アルフ
「他が優秀すぎるんだよ。それと、ここに配属されてる研究員は皆、かなりアクが強い。慣れていくのは大変だよ?」

ミーシャ
「が、頑張りますっ。せっかく夢に見たミス・ラボラトリに入ることが出来たんですから、ここで挫けたりはしません!」

アルフ
「その結果、配属されたのがここっていうのは災難だと思うけど……とにかく、まずは仕事だ。今日のために考えてきたネタがあるんだよ」

ミーシャ
「ネタとか言っちゃうんですか……」



[ファイアー・バード&ドラゴン 二つのルートでビートダウン]

アルフ
「今回、誰のデッキを研究するのかはもう決めてるんだ」

ミーシャ
「誰ですか?」

アルフ
「それは、今僕らの界隈で騒がれている少年、『昇天太陽サンセット』こと空城夕陽君のデッキだ!」

ミーシャ
「あ、その名前なら私も聞いたことがあります。でも疑問なのですが、神話カードが別の人の手に渡るのって、そんなに珍しいことじゃないですよね? ならなんで、空城さんはそんな有名人になっちゃったんですか?」

アルフ
「俺もそこまで詳しいわけじゃないけど、有名なのは空城君よりも彼が持つ神話カードの方かな」

ミーシャ
「《太陽神話 サンライズ・アポロン》ですね!」

アルフ
「うん。そのカードが空城君の手に渡った、ってことが重要らしいよ」

ミーシャ
「いや、よく分かんないです」

アルフ
「まあ俺たちにはそこまで関係あることじゃないし、ここでは置いておこう。その空城君のデッキなんだけど、彼はどうすれば《アポロン》を生かせるのか試行錯誤中で、コロコロデッキの中身を変えてるから、今回研究するのは《アポロン》を手に入れる前のデッキだ」

ミーシャ
「《アポロン》を手に入れる前? その時はまだ、空城さんは観察対象じゃないですよね? どうやって調べたんですか……?」

アルフ
「それは俺にも分からない。でもデータはある。だから研究する。研究者ってそんなもんだよ」

ミーシャ
「そうなんですか」

アルフ
「そうなんだ。で、肝心の空城君の初期のデッキだけど、なんて言うか、彼は手に入れるべくして《アポロン》を手に入れたって感じのデッキだね」

ミーシャ
「? どういうことですか?」

アルフ
「ミーシャちゃんは、《アポロン》の進化元って知ってる?」

ミーシャ
「え? えーっと、確か……ファイアー・バード、でしたっけ?」

アルフ
「そう! 正確には、ファイアー・バード一体と火文明のクリーチャー二体だ。そして空城君が最初に使っていたのは、ファイアー・バードをメインにしたデッキなんだ」

ミーシャ
「あ、なるほど」

アルフ
「その昔、ファイアー・バードはドラゴンを引き立てるための存在だったけど、今は違う。ファイアー・バードも単体で十分に戦える世界だ。そして彼はドラゴンより、ファイアー・バードで攻めるデッキを好んだんだ」

ミーシャ
「へえ。私、ファイアー・バードはドラゴンのサポートがメインだと思ってましたけど、ファイアー・バードだけでも戦えるんですね」

アルフ
「勿論、ドラゴンも入ってるけどね。ただ彼のデッキは序盤からファイアー・バードで攻撃していくビートダウンデッキ。序盤に小型ファイアー・バードを並べ、《火之鳥ピルドル》や《火之鳥ガルダン》に進化させて一気に押していくんだ」


スピア・ルピア 火文明 (3)
クリーチャー:ファイア・バード 1000
このクリーチャーは、アンタップされているクリーチャーを攻撃できる。
このクリーチャーが破壊された時、次のうちいずれかひとつを選ぶ。
?自分の山札を見て、その中からドラゴンを1体選び、相手に見せてから自分の手札に加える。その後、山札をシャッフルする。
?バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体は、このターン、アンタップされているクリーチャーを攻撃でき、ターンの終わりまでパワーが+000される。


火之鳥ピルドル 火文明 (1)
進化クリーチャー:ファイアー・バード/オリジン 5000
進化—自分のファイアー・バードまたはオリジン1体の上に置く。



ミーシャ
「タップされていないクリーチャーを攻撃できたり、1マナでパワー5000のファイアーバードですか。すごい攻撃的ですね。でも室長さん、ファイアー・バードはパワーが低い種族ですから、進化する前に攻撃してたらすぐにやられちゃうんじゃないですか?」

アルフ
「そうならないために1マナ進化の《ピルドル》がいるんだけど、確かにそういうこともあるね。でも、とにかく数を並べていけば、除去される前に進化まで辿り着けるだろう?」

ミーシャ
「そんなこと可能なんですか?」

アルフ
「可能さ! このクリーチャーの力があればね!」


ボルシャック・NEX 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から、名前に《ルピア》とあるカードを1枚、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。
このクリーチャーは、自分の墓地にあるファイアー・バード1体につき「パワーアタッカー+1000」を得る。
W・ブレイカー


アルフ
「このクリーチャーで後続のファイアー・バードを呼べば、中盤以降にかけてもどんどん攻撃できるよ」

ミーシャ
「そっかぁ、確かに《ボルシャック・NEX》はファイアー・バードをサポートしているようなものですね。これならファイアー・バードがメインっていうのも分かります」

アルフ
「分かってくれてなにより。そして、これが空城君の使用していたと考えられるデッキのレシピだ!」



枚数:コスト:文明:名前

3枚:1マナ:火:《火之鳥ピルドル》
3枚:2マナ:火:《翔天幻獣レイヴン》
3枚:3マナ:火:《コッコ・ルピア》
3枚:3マナ:火:《スピア・ルピア》
2枚:4マナ:火:《ボッコ・ルピア》
1枚:4マナ:火:《火之鳥ガルダン》
1枚:5マナ:火:《火之鳥ペリュトン》
2枚:6マナ:火:《ボルシャック・NEX》
2枚:6マナ:火:《フレイムバーン・ドラゴン》
1枚:6マナ:火:《神羅ライジング・NEX》
2枚:6マナ:火:《スーパー炎獄スクラッパー》
1枚:7マナ:火:《フレイムウイング・ドラゴン》
1枚:7マナ:火:《ソウルバーン・ドラゴン》
1枚:7マナ:火:《インフィニティ・ドラゴン》
1枚:8マナ:火:《翔竜提督ザークピッチ》
2枚:2マナ:自然:《コッコ・ギルピア》
2枚:2マナ:自然:《マッス・ルピア》
2枚:4マナ:自然:《エコ・アイニー》
2枚:5マナ:自然:《緑神龍バルガザルムス》
3枚:6マナ:自然:《ナチュラル・トラップ》
3枚:4:マナ火×自然:《ルピア・ラピア》



アルフ
「今更言うのもなんだけど、このデッキの動かし方は、実は二通りあるんだ」

ミーシャ
「えっ? そうなんですか?」

アルフ
「うん。一つはファイアー・バードから攻めるパターン。序盤から軽いファイアー・バードを並べて、すぐに進化して攻撃! っていう動きだ」


マッス・ルピア 自然文明 (2)
クリーチャー:ファイアー・バード 2000
バトルゾーンにある自分の他の、名前に《NEX》または《ルピア》とあるクリーチャーすべてのパワーは+1000される。


火之鳥ガルダン 火文明 (4)
進化クリーチャー:ファイアー・バード 4000+
進化—自分のファイアー・バード1体の上に置く。
パワーアタッカー+4000
W・ブレイカー


ミーシャ
「《マッス・ルピア》は他のルピアをパワーアップしてくれますし、《火之鳥ガルダン》はW・ブレイカーで一気にシールドが削れますね!」

アルフ
「これがこのデッキのメインとなる動き。そして二つ目の動きが、ドラゴンから入るパターンだ!」

ミーシャ
「さっき言ってた《ボルシャック・NEX》からルピアを展開していく、ということですか?」

アルフ
「それもあるんだけど、それだけじゃない。なんだかんだ言ってこのデッキも、ドラゴンをサポートするカードは多いからね」


コッコ・ルピア 火文明 (3)
クリーチャー:ファイアー・バード 1000
自分のドラゴンの召喚コストを2少なくする。ただし、コストは2より少なくならない。


エコ・アイニー 自然文明 (4)
クリーチャー:ファイアー・バード 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。そのカードがドラゴンであれば、自分の山札の上からさらに1枚、自分のマナゾーンに置く。


アルフ
「《コッコ・ルピア》みたいなドラゴンのコストを軽減するファイアー・バードや、《エコ・アイニー》のようにマナを増やすカードでドラゴンに繋げるんだ。他にも《ルピア・ラピア》はマナを増やしたり、序盤マナに置いたドラゴンを回収できる」

ミーシャ
「そこから《ボルシャック・NEX》を呼んで、さらにファイアー・バードを展開するんですか?」

アルフ
「そうだね。ただ、《ボルシャック・NEX》が一番軽くて使いやすいけど、他にもいるよ」


フレイムウイング・ドラゴン 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 7000
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札を見る。その中からファイアー・バードを1体選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。
W・ブレイカー


アルフ
「《フレイムウイング・ドラゴン》は攻撃しながらファイアー・バードをサーチできるし、同コストの《ソウルバーン・ドラゴン》はファイアー・バード版の《紅神龍バルガゲイザー》みたいに使えるんだ」

ミーシャ
「なるほど、こうやってどんどんファイアー・バードを並べながら攻撃していくんですね」

アルフ
「それでももう一押し必要、っていう状況になったら、このデッキの切り札の出番だ! それが、こいつだ!」


神羅ライジング・NEX 火文明 (6)
進化クリーチャー:ルナティック・エンペラー/アーマード・ドラゴン 13000
究極進化—自分の進化アーマード・ドラゴンまたは進化ファイアー・バード1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手は自身のパワーが一番小さいクリーチャーを1体選んで破壊する。
ゴッドスレイヤー
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊された時、相手は自身のパワーが一番小さいクリーチャーを1体選んで破壊する。その後、自分のパワーが一番小さいクリーチャーを1体破壊する。その後、進化ではないドラゴンを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。


ミーシャ
「わわっ、究極進化ですか!?」

アルフ
「そう! 《神羅ライジング・NEX》は究極進化ゆえに召喚しにくいけど、出せれば一気に相手を攻めきれるはずだ!」

ミーシャ
「ドラゴンサポートと進化ファイアー・バードの多いこのデッキなら、結構召喚できそうですね」

アルフ
「その通り。じゃあ、一通り解説も終わったところで、今回のポイントを押さえておこうか」



POINT

1、ファイアー・バード展開
 軽い《スピア・ルピア》や《マッス・ルピア》を並べ、進化クリーチャーの《火之鳥ピルドル》などに繋げ!

2、ドラゴンでサポート
 《ボルシャック・NEX》や《フレイムウイング・ドラゴン》で次々とファイアー・バードを呼び込め!

3、大型クリーチャーでフィニッシュ
 攻めきれない時は《神羅ライジング・NEX》で小型クリーチャーを破壊し、一気に突っ切れ! 



アルフ
「とまあ、こんな感じかな」

ミーシャ
「これで終わりですか……意外と疲れますね……」

アルフ
「甘いよ。まだこれで終わりじゃない」

ミーシャ
「え?」

アルフ
「デッキを研究して、その中身を知って、それで終わりというわけにはいかないってことさ。さあ、次行くよ!」

ミーシャ
「つ、次ってなんですかっ?」



[スピード特化 ドラゴン強化]

アルフ
「デッキの中身を知った次は、そのデッキをどう改造できるかを考えるのも重要だ。それが次に繋がることもあるからね」

ミーシャ
「な、なるほど」

アルフ
「このデッキを改造するなら、やっぱりもっと攻撃的にするのがいいかな。なんだかんだでドラゴンに頼ってる部分も大きいし、出し難い《ライジング・NEX》や、《フレイムバーン・ドラゴン》を抜く代わりに、軽量ファイアー・バードを増やして速攻寄りにするのがいいかも」


希望の親衛隊クラップ 火文明 (2)
クリーチャー:ファイアー・バード/ハンター/エイリアン 2000+
パワーアタッカー+2000


ライラ・アイニー 火文明 (3)
クリーチャー:ファイアー・バード 2000
K・ソウル
スピードアタッカー
このクリーチャーがバトルする時、自分のシールドをひとつ手札に加える。ただし、その「S・トリガー」は使えない。


アルフ
「《希望の親衛隊クラップ》はパワーアタッカーもあって、軽量ファイアーバードの中ではパワーが高い方だし、《ライラ・アイニー》はスピードアタッカーで即攻撃できてシールドから手札も補充できるよ」

ミーシャ
「あ、だったら攻撃的な進化ファイアー・バードも、もっと投入できますね!」


火之鳥ボレアス 火文明 (3)
進化クリーチャー:ファイアー・バード 5000
進化—自分のファイアー・バード1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体破壊する。


火ノ鳥カゲキリ 火文明 (2)
進化クリーチャー:ファイアー・バード/オリジン 4000
進化—自分のファイアー・バードまたはオリジン1体の上に置く。
メテオバーン—このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚選び墓地に置いてもよい。そうした場合、このクリーチャーをアンタップする。


アルフ
「そうだね。ドラゴンの比率を少なくすれば《ボッコ・ルピア》よりも《ボレアス》の方が使いやすくなるし、《カゲキリ》がいれば攻撃回数が多くなるだけじゃなくて《幻獣翔天レイヴン》の効果も生かしやすくなるよね」

ミーシャ
「でも、ファイアー・バードが増えるのがいいんですけど、やっぱりドラゴンがいなくなるのは寂しいですね……」

アルフ
「うーん、まあ、《ボルシャック・NEX》とかはルピアを展開してくれるからいいんだけど、《インフィニティ・ドラゴン》は完全にドラゴンサポートだからね……だからファイアー・バードがいることで真価を発揮するドラゴンとかを入れるのがいいんじゃないかな?」

ミーシャ
「ファイアー・バードがいることで真価を発揮するドラゴン、ですか?」

アルフ
「そう、たとえば《爆竜ストームXX<天地爆裂>》なんかはファイアー・バードがたくさんいれば凄い爆発力を得られるよ」


爆竜ストームXX<天地爆裂(トルネード・チェーン)> 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から2枚を墓地に置く。その2枚の中にファイアー・バードがあれば、そのターン、このクリーチャーは「スピードアタッカー」を得る。
W・ブレイカー
自分の墓地にファイアー・バードが5体以上ある時、このクリーチャーは「パワーアタッカー+6000」と「T・ブレイカー」を得る。


ミーシャ
「なるほど……でも、このカードってすごく手に入れにくいですよ?」

アルフ
「そこ突っ込んだらダメだよ……まあ、手軽なところでは《アンビシャス・ドラゴン》とかいるけどね。そんなことも踏まえて、そろそろ改造するポイントもおさらいしようか」



改造POINT

1、速攻性能強化
 《希望の親衛隊クラップ》や《ライラ・アイニー》など、より速く攻撃し、ガンガン攻めろ!

2、進化ファイアー・バード
 ブロッカーを破壊する《火之鳥ボレアス》や連続攻撃可能な《火ノ鳥カゲキリ》で追撃!

3、パワーアップドラゴン
 《アンビシャス・ドラゴン》や《爆竜ストーム<天地爆裂>》など、ファイアー・バードで強化されるドラゴンたちで決めろ!



アルフ
「とりあえず、これで一通り終了だね。お疲れ様」

ミーシャ
「少し、疲れました……」

アルフ
「最初だからね。でも、今回はチュートリアル的なところがあったけど、次回からはもっとガンガンやってよ。覚悟してね」

ミーシャ
「あうぅ……が、頑張ります……」

アルフ
「あはは! まあ、あんまり気負わないで。俺たちも結構緩い感じでやってるし」

ミーシャ
「そうですか……」

アルフ
「そうそう。あ、言い忘れてたけど、ここの研究室は活動が不定期だから、次に活動する時は連絡するよ」

ミーシャ
「えぇ……なんか、部活動みたいですね……」

アルフ
「仕事だから本当は毎日にやらなきゃいけないんだけど、それだけの費用がね……」

ミーシャ
「……大変なんですね、この研究室も……」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.96 )
日時: 2013/08/08 18:54
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

「うっ、うっ、うぅ……終わんないよぅ……」
 雀宮高校の一階にいくつかある学習室の一室で、このみはすすり泣きながら手元のシャーペンを走らせていた。
 現在、このみは補習を受けている身。本来なら昨日の時点でほとんどの対象者は補習が終わっているのだが、このみはほとんどのテストで赤点を取り、成績が終わっているため翌日まで補習に駆り出される羽目に陥っている。
 山どころか山脈のように連なる大量の課題プリントをせっせと解いていくこのみ。問題自体はこのみの頭でも教科書などを見ればなんとか解けなくもない程度の簡単な問題だが、如何せん量が多く、しかも本人の頭がポンコツなのでなかなか進まない。
「うぅぅ、せっかくデッキを組み替えたから汐ちゃんとこでデュエマしようと思ったのに、今日も補習なんて聞いてないよぅ……ってゆーか、こんな量のプリントが今日だけで終わるわけないじゃん……」
「まったくだ、この量はどうかしてるぜ」
 ふと、隣から声が聞こえてくる。どうやらこのみと同じ境遇の生徒のようだ。意識がプリントに向き過ぎていたので、このみはその生徒の存在に初めて気づいた。
 その生徒の言葉を皮切りに、両者はプリントとシャーペンを投げ捨て、向かい合った。声の主は男子生徒、見たところ二年生のようだ。
「? あれ? なんで二年生が、あたしと同じ教室で補習を受けてるの?」
 プリント作業なので配布されているプリントが違うのだろうか。周りに他の生徒はおらず、補習を受けているのはこのみとこの男子生徒だけ。たった二人のために教室を二部屋開けるのを嫌ったのかと思われるが、しかしそれは否定される。
「覚えておけ一年、この学校は前の学年で取得単位が足らないと、次の学年に持ち越される。つまり、一年の時に欠点を取りまくっていると、二年になってから一年の課題をやらされることになるんだ」
 凄く実感のこもった言葉だった。このみは良い情報を得たと思うと同時に、自分にとって決して遠いことではない現実に恐怖を覚える。
「……あ。あたし、一年四組の春永このみです!」
「おぉ? まさかここで自己紹介してくるとは思わなかったぜ……だがまあ、ここで会ったのもなにかの縁か。俺は潮原零佑、補習仲間同士、仲良くやろうぜ」
 シンパシーというか、妙な仲間意識が妙な所で芽生える二人だった。
「んん? しおはられーすけ? どっかで聞いたことあるよーな……?」
 難しい顔をして目を閉じるこのみ。しばらくして、バッと目を見開く。
「思い出した! 二年生でデュエマがすっごく強いって噂の『荒波の零佑』!」
「お? その通り名を知ってるのか。一年にまで知られてるとは、結構広まってんのな」
 その男子生徒は胸を張り、威風堂々とした佇まい再び名乗りを上げる。
「そう、俺こそが『荒波の零佑』こと潮原零佑だ。自分で言うのもなんだが、デュエマの腕には自信がある、だからこその通り名だしな」
「おぉ! すごい、かっこいい! あたしもそんな風に呼ばれてみたいなー……」
 脳の構造が小学生レベルなこのみは、そんな零佑の名乗りにすぐ食いついた。
「そういえばお前、さっきデュエマがどうこうとか言ってたな。お前もデュエマするのか?」
「あ、うん、しますよ? あたしも、デュエマにはけっこー自信があります」
「へー、なら機会があれば一度手合せしたいところだな。いや、もうこんなプリント山脈に付き合うのも嫌になってきたところだし、いっそ気分転換も兼ねて、ここでやっちまうか?」
「さんせーい! あたしもデュエマしたくうずうずしてたところですよ!」
 もはや課題に向かう集中力が完全に途切れてしまった二人は、素早くデッキケースを取り出してデュエルを始めようとしていた。二人ともノリノリで、もう課題のことなど忘れているかのようだ。
 しかしその時、ガラッと教室の扉が開け放たれる。
「うえっ?」
「やばっ……!」
 監督の教師が戻って来たか、それとも他の教師が見回りに来たか、どちらにせよ明らかに今からデュエマを始めようとする二人の姿は言いわけできない。
 だがそれは、入室したのが教師だった場合だ。
「……見つけた」
 現れたのは、教師でも生徒でもない。子供だ。
 このみよりも小さい体躯、それを包み込む外套はその子供をすっぽりと包むほどのサイズがあるが、浮浪者の衣服のようにボロボロだ。目深にフードをかぶっており、顔は見えない。素肌もほとんど晒しておらず、両手両足にはぐるぐると包帯が巻かれている。
 声からして少女。彼女はペタペタと緊張感のない音を立て、教室の中へと入り込んでいく。
 教師ではないと分かり安堵する零佑だが、しかし今度は誰かも分からぬ、しかも非常に奇怪な恰好をした少女の登場で困惑している。
 零佑の反応は当然のもので、これが普通の格好なら誰かの兄妹などといった線も考えられたが、こんな浮浪者染みた意匠では反応にも困る。
 しかし、このみは違った。
(この子……!)
 記憶力には自信のないこのみだが、忘れるはずもない。自分が初めて“ゲーム”の戦いに身を投じた時の出来事。そして、その時の相手。
 元《プロセルピナ》の所有者であった少女。それが今、自分の目の前にいる。
「《プロセルピナ》を、返して、もらう」
 少女は片手を突き出し、言い放つ。
「……それはできないかな。汐ちゃんから聞いたよ、あなたは——」
「私は、【神聖帝国師団】、第六小隊、副隊長、『白虹転変シーレーン』、ミウ・ノアリク」
 言い切る前に、すべて自己紹介されてしまった。出鼻を挫かれたこのみは言葉を詰まらせる。
「今回の、【師団】の、指令は、《プロセルピナ》の、奪還。春永このみ、力ずくでも、《プロセルピナ》を、返して、もらう」
 十二枚存在する『神話カード』、そのうち一枚を失ったという【神聖帝国師団】の損害は大きなものだったのだろう。そしてミウは副隊長と言っていた。こんな子供がそんな軍隊のようなものを率いることができるのかと疑問を抱くが、面子の問題というのもあるのかもしれない。だからまた、彼女が出向いて来たのだろう。
 すぐそこには“ゲーム”とは無関係な零佑もいる。ここで問題を起こすのは得策ではないだろう。ここは大人しく『神話カード』を渡すのが、最も平和的な打開策だが、
「ごめんね、《プロセルピナ》は渡せないんだ。姫ちゃんの時で分かったの、『神話カード』はその力で悪い使われ方もされるって。それをおいおい渡すことは、ちょっとできないな。それに、」
 けっこー気に入ってるし、とウィンクする始末。本人にその気はないのだが、挑発とられても仕方ない行動だ。
 だが、ミウは極めて冷静だ。感情をまったく出さない。
「……交渉、決裂」
 そうミウが呟いた、次の瞬間。
「えっ?」
「んあ?」

 教室に、一体の女が現れる。

 女と言っても、明らかに人間ではない。人間型ではあるが、大きさは普通の人間の半分以下、しかも宙に浮いている。
「これって……クリーチャー?」
「《妖精のイザナイ オーロラ》だ……!」
 クリーチャーが実体化している。その現象自体に、このみはそこまで驚きはない。だが、デュエル中でもない今、クリーチャーが実体化するとなると話は別だ。
「春永このみ、あなたの相手は、それ。師団長からの、贈り物」
「……プレゼントは嬉しいけど、できればカードの状態で渡してほしかったよ」
 冷や汗をかくこのみ。クリーチャー相手にどうしろというのだ、と言わんばかりに狼狽している。
 そうこうしているうちに、オーロラが携える杖から、このみに向けて光弾が放たれる——

 ピキッ

「……あれ?」
 反射的に目を瞑ったこのみは、攻撃されても何も起こらないことに不審を抱き、恐る恐る目を開く。
 視界に広がっていたのは、まずシールド。すぐ横には山札と、そこから五枚の手札が展開される。そしてそれらの中心にいるのが、
「《プロセルピナ》……これ、きみがやったの? てゆーか、クリーチャー相手にデュエマしろってこと?」
 このみの問いに答える代わりに《プロセルピナ》は、彼女のデッキの中へと入っていった。
「お、おい、大丈夫か……?」
 声のする方向に視線を向けると、そこにはやや焦ったような、しかしどこか安心したような表情の零佑がいた。
「うん、だいじょうぶ。よくわかんないけど、なんかクリーチャーとデュエマしなきゃいけないっぽいです」
「そうか……正直、なにが起こってるのかさっぱりなんだが、かなりやばいことに巻き込まれたっていうのは、なんとなく分かった。それと」
 零佑は毅然とした態度を取り戻し、このみに背を向けてミウに向き直る。
「俺の相手は、お前ってことだな」
「……一般人には、関係、ない。危害を加える、つもりも、ない。だから、下がって、欲しい」
「そういうわけにもいかないんだよ。あいつは俺の同士だからな、見過ごせねえさ」
 ミウの言葉にも引く様子のない零佑。ややあって、ミウはデッキを取り出す。
「……忠告は、する。この戦いは、危険。退くなら、今のうち」
「断る」
 一蹴された。
 そして次の瞬間、零佑のミウ。二人の間の空気が、豹変する。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.97 )
日時: 2013/08/09 12:03
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

 夕陽と黒村、そしてクロの三人は誰も人がいない、一階の廊下を駆けていた。目的地は補習に使われているはずの学習室。【神聖帝国師団】の目的はこのみの持つ《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》らしいので、このみがいるはずの場所を目指しているというわけだ。
 だが、普通なら走ればすぐに到着するその教室へも、三人はなかなか辿り着けないでいる。その理由は、
「《アポロン》でワールド・ブレイク! 《コッコ・ルピア》でダイレクトアタックだ!」
「二体の《コダマンマ》でシールドブレイク。《デスマーチ》でとどめだ」
「呪文《大行進・スパーク》。《テルス・ルース》二体と《ハラッカダン》二体でシールドブレイク。《パラ・オーレシス》でダイレクトアタック」

 教室に向かう道すがら何体ものクリーチャーが行く手を阻んでいたからだ。

 それらを蹴散らしながら進んでいるため、かなり時間がかかっている。
「【師団】の差し金か……まったく、面倒な奴らをばら撒いたものだな」
 道中で黒村がぼやく。すると夕陽が、それに対しての疑問をぶつけた。
「先生。さっきも僕らはクリーチャーとデュエルしてましたけど、なんですか? これ」
 “ゲーム”におけるデュエル中、クリーチャーが実体化することは知っている。だが現実にクリーチャーが現れるという現象は、今日初めて体験したことだ。
 それは誰かが能動的に何かをすることで起こる現象らしいが、詳しいことは聞いていない。なのでこの機会に、その理屈を知っているらしい黒村に尋ねる。
「簡単な話だ。『神話カード』にはそれぞれ個別の特殊な力が備わっているが、それとは別にすべての『神話カード』に共通する能力がある。能力というよりは、影響力と言うべきか」
「影響力?」
 個別の力というのは、《マルス》の周囲を炎上させる力だったり、《ヴィーナス》の思想を同調させる力のことだろう。だが、影響力というのは初めて聞いた。
「『神話カード』は強大な存在だ。その存在は、そこにあるだけで他のカードにも影響を及ぼす。具体的に言えば、一枚『神話カード』があれば他のクリーチャーを実体化させることができる。正確には、クリーチャーが実体化するカードにすることができる」
「『神話カード』があるから実体化するじゃなくて、『神話カード』の影響を受けているからカードが実体化できるようになるってこと?」
「そうだ、物分りがいいな。そうして実体化したクリーチャーは、そのカードの主の命令を聞くようになり、クリーチャーの空間を形成し、デュエルもできる」
 クリーチャーの空間と聞き、さらに疑問を投げかける夕陽。
「そういえば、さっきも校舎内を走り回ってたけど、あの時の被害は……?」
「あれは特殊な空間の中で起こったことだから、なかったことになっているはずだ」
 この際だから、と言って黒村は続ける。
「お前もその場の空気のようなものが変わる感覚を知っているはずだ。俺達がデュエルをする時に発生する空間、それを俺達は“神話空間”と呼んでいる」
「神話空間?」
「ああ、『神話カード』を巡るために戦う空間、という意味を込めてそう呼ばれている。この空間は、基本的に“ゲーム”の参加者しか入れない。参加者の定義は、大まかに言うと「『神話カード』の存在を知っているか」「神話空間に入ったことがあるか」の二つに分けられる」
「へぇ……っていや、ちょっと待って」
 思わず流しそうになるが、黒村の言葉に矛盾を見つけた夕陽は慌てて言い返す。
「神話空間は“ゲーム”参加者にしか入れないんだろ? だったら二番目の理由はおかしくないか?」
「今からそれを説明するつもりだ。神話空間はクリーチャーが実体化するという共通項があるが、いくつか種類がある」
「種類?」
「そうだ。まず一般的なのは、デュエリスト同士の空間。これはお前も最も経験が多いだろう。基本的には片方が空間を展開させ、二人でデュエルを行うものだ」
 確かに、夕陽は今まで人間とデュエルする時だけあの空間の中にいた。発生させる術ももう分かっている。
「次にクリーチャーの空間。これは『神話カード』の影響を受け、実体化できるクリーチャーが実体化する時、自動的に発生する空間だ。大きさはクリーチャーによってまちまちだが、その空間内でのみクリーチャーは実体化でき、そして力を使うことができる。お前は窓から溝を足場にして一階に降りたが、その時に《ドルボラン》と《ガネージャー》の空間から出ていた。そこで俺はあの二体を回収してからひっそりとお前に近付き、あの二体を再び実体化させた」
「じゃあ、霊崎があの空間に入れたのは……?」
「“ゲーム”参加者とあまりにも接近している時、近くで空間が展開されると周囲の無関係な人間も一緒に巻き込む。それが原因だな」
 色々とごちゃごちゃしたことを言われたがざっくり言ってしまえば、クリーチャーが単体で実体化することもあり、クリーチャーもデュエルができる、ということだろう。そして“ゲーム”参加者がデュエルをすれば、近くの一般人も巻き込まれる。
「……とりあえず、説明は一度中断だ。来たぞ」
 黒村がそう言った瞬間、その場の空気が変わる。目の前には、行く手を阻むようにクリーチャーが並んでいた。
「雑魚クリーチャーばかりか……乗り込んできたと言っても【師団】はそこまで本気ではないようだ」
 だが、雑魚でもある程度は手間取る。今は三体いるが、一人一体倒すだけでもそれなりの時間がかかってしまう。
(そういえば、空間云々は分かったけど、周りの景色とかは変わんないな……)
 理屈は不明だが、きっと聞いても無意味だろうと考え、そういうものなんだろうと思っておく。
 そして三人は、再びデッキを構え、デュエルを開始する。



 このみとオーロラのデュエル。現在、このみの場は《剛勇妖精ピーチ・プリンセス》と《魅了妖精チャミリア》が一体ずつ。シールドは五枚あり、うち一枚を《ハッスル・キャッスル》が要塞化している。
 対するオーロラの場は《信心深きコットン》が二体《雷鳴の守護者ミスト・リエス》が一体、《爆裂のイザナイ ダイダラ》が一体。シールドは四枚だ。
「あたしのターン! 《冒険妖精ポレゴン・ジョーンズ》召喚! さらに《ピーチ・プリンセス》の効果で二体目に召喚するクリーチャーのコストは2下がる。2マナ軽くなった《剛勇妖精フレッシュ・レモン》召喚! さらに今度は《フレッシュ・レモン》の効果で三体目に召喚するクリーチャーのコストが3下がって、3マナ軽くなった《豪腕妖精レイジ・ボッコル》召喚!」
 1ターンで一気にクリーチャーを展開するこのみ。しかもまだ4マナしか使っていない。
「まだまだ行くよ! 《ジャスミン》召喚! 破壊してマナチャージ! そんで二体目の《ポレゴン・ジョーンズ》召喚! 最後に《チャミリア》のタップトリガーで《ミスティーナ》を手札に加えて、ターン終了!」
 たった1ターンで、クリーチャーが六体になったこのみ。だがオーロラは、焦った素振りを見せない。
『ふふっ。じゃーあ、私のターンだね』
 どこか余裕なオーロラはカードを引き、動き出す。
『まずは《妖精のイザナイ オーロラ》——つまり私を召喚!』
 オラクルの位階の中でイザナイの称号を持つ《オーロラ》は、自らの同胞を光臨させる力を持つ。そして、呼び出すための条件が、
『さらに《交錯のインガ キルト》も召喚! 効果で私をタップ!』
 自身をタップしていることだ。
『さーあ、《ダイダラ》! 《チャミリア》を攻撃して!』
 《オーロラ》と同じイザナイである《ダイダラ》は、杖を振り炎を放ち、このみの《チャミリア》を破壊する。
 これ以上は攻撃しても無駄なので《オーロラ》はターンを終えるが、その時《オーロラ》と《ダイダラ》の杖が光り輝く。
『行くよ《ダイダラ》、光臨発動!』
 二体が杖から発する光に、何かの影が浮かぶ。大きな威圧感のようなものを放ちながら、二体はその姿を現す。
『《ダイダラ》が呼ぶのは7マナ以下のフレイム・コマンド、《爆裂右神ストロークス》。そして私が呼ぶのは——』
 まず現れたのは、赤色に燃える馬のようなクリーチャー。エネルギー状の鎌を携えている。
 神の右腕である《ストロークス》が現れ、それの続き《オーロラ》の放つ光からも神が出でる。

『——光臨せよ! 《妖精左神パールジャム》!』

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.98 )
日時: 2013/08/09 13:23
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

 零佑とミウのデュエル、先に動き出したのはミウ。しかも、先攻1ターン目からだ。
「発動、呪文《ラッキー・ダーツ》」


ラッキー・ダーツ 光文明 (1)
呪文
自分のシールドを1枚相手に選ばせ、見る。それが呪文であればコストを支払わずにすぐ唱えてもよい。唱えない場合やそのカードが呪文でない場合、元の場所に戻す。


「《ラッキー・ダーツ》? サイキック中心のデッキか……?」
 パッと予想してみるが、《ラッキー・ダーツ》は殿堂入りしているため、一枚しかデッキに入れられない。ミウがそれを順守していることが前提だが、デッキを超次元呪文ばかりにしてもその引き金となるカードが一枚しかなければ安定性を損ねてしまうため、その予想が間違っている可能性も高い。
「一枚、選んで」
「なら……左端のそれだ!」
 ともかく零佑はミウのシールドを一枚選ばなければならない。ミウの正面に展開された五枚のシールドから一枚を選択し、それが公開される。
「……呪文。発動、《デ・バウラ・チャージャー》。《ラッキー・ダーツ》を、回収。チャージャー呪文の、効果で、発動後、マナへ」
「当たっちまったか。まあ、当たったのが《デ・バウラ・チャージャー》で良かったか。俺のターン」
 後攻2ターン目、零佑のターン。こちらの動きも早かった。
「こっちも初っ端から飛ばして行くぞ! 《海底鬼面城》を要塞化、ターンエンド!」


海底鬼面城 水文明 (1)

自分のターンのはじめに、相手はカードを1枚引いてもよい。その後、自分がカードを1枚引いてもよい。さらに、バトルゾーンに自分のサイバーロードがあれば、カードを1枚引いて、自分の手札を1枚山札の一番下に置いてもよい。


「……マナを、チャージ。ターン、終了」
「なにもしないのか? ならガンガン攻める! 《鬼面城》の効果で互いにドロー、そして1マナで《マリン・フラワー》召喚、残る1マナで進化《エンペラー・ティナ》!」
 1マナの軽量サイバーをすぐさま進化させ、攻めに出る零佑。見たところ、これが彼のスタイルのようだ。
「《ティナ》でシールドブレイク!」
「……S・トリガー、発動。《スパイラル・ゲート》」
 砕け散ったシールドの破片が光の束となり、ミウの下へと戻ってくる。そして次の瞬間、《ティナ》は激しい渦に飲み込まれ、零佑の手札へと帰っていった。
「くっ、戻されたか……ターンエンド」
 序盤から積極的に攻めていくのが零佑のの戦い方なのだが、初撃からその勢いを削がれてしまう。だが最初の《ラッキー・ダーツ》もあってミウのシールドはもう三枚だ。
「《魔光王機デ・バウラ伯》召喚。効果で、《スパイラル・ゲート》を、回収。ターン、終了」
 だがミウはそれに対抗するかのように、呪文を回収しながら守りを固める。
「ブロッカーか。飛ばすつもりが、出鼻を挫かれたぜ……《マリン・フラワー》と《電磁封魔オッキオ》を召喚。《ロッキオ》の効果で山札を操作し、ターンエンド」
「私の、ターン。発動、呪文《ポジトロン・サイン》」


ポジトロン・サイン 光文明 (5)
呪文
S・トリガー
自分の山札の上から4枚を見る。その中から「S・トリガー」付きの呪文を1枚選んでもよい。残りを好きな順序で山札の一番下に戻し、選んだ呪文があればコストを支払わずに唱える。


 《ポジトロン・サイン》の効果でミウの山札の上四枚のカードが浮遊し、彼女の目の前に浮かぶ。そして、ミウの正面に光り輝く魔方陣が浮かび上がった。
「発動、呪文《スーパーバースト・ショット》」
「なぁ!?」
 《スーパーバースト・ショット》は、火文明のS・トリガー呪文。その効果は、相手のパワー2000以下のクリーチャーをすべて破壊するというもの。
 零佑の場にはパワー2000以下のクリーチャーしかないないため、まとめて一掃される。
「さらにG・ゼロ、《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を、二体、召喚」
「またブロッカー、しかも二体かよ……!」
 呪文を唱えるとタダで召喚できる《ブラッディ・シャドウ》を二体並べ、ミウのターンは終わる。
(クリーチャーはまとめて除去されるし、ブロッカーは増えるし、踏んだり蹴ったりだ。《鬼面城》で相手にも手札を与える効果が裏目に出たか……)
 しかもおまけ程度とはいえ、零佑はまだ《鬼面城》の手札を入れ替える効果を使えていない。それだけ、クリーチャーが展開できていないということだ。
「俺のデッキのクリーチャーは軒並みパワーが低いしな、展開力で勝負できなきゃ話になんねえ」
 クリーチャーを出しても除去される。攻撃しようにもブロッカーが阻み、パワーも足りない。酷い状況だ。
「だが、こいつでどうだ! 《ツイート》召喚!」
 《ツイート》はそのままだと3マナでパワー1000のバニラだが、マナゾーンに水か無色のカードしかなければ、パワー5000、攻撃時に一枚ドローするクリーチャーに化ける。
 零佑は、返しのターンで《ツイート》が除去されなければこれを皮切りに攻めていくつもりのようだ。
「私の、ターン。発動、呪文《ヘブンズ・ゲート》」
「なにっ、大型ブロッカーで《ツイート》を止める気か?」
 普通ならそう考えるだろう。実際《ヘブンズ・ゲート》は大型ブロッカーを並べる手段として用いることが多い。だがこの時ミウが出したのは、《ツイート》を止められるほど大きなブロッカーではない。
「《神門の精霊エールフリート》を、二体、バトルゾーンに」


神門の精霊エールフリート 光文明 (5)
クリーチャー:エンジェル・コマンド 4500
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚を表向きにする。その中から呪文を1枚選んで手札に加え、残りを自分の墓地に置く。


 出て来たのは山札から呪文を手に入れるエンジェル・コマンド、《エールフリート》。そのサイズに胸を撫で下ろす零佑だが、《エールフリート》は召喚されるだけではない。効果で山札の上から三枚公開し、うち一枚を手札に加える。この場合、二体いるので六枚公開し、二枚呪文を手札に入れられる。
 そして、零佑に大きな衝撃が襲い掛かる。
「!?」
 ミウの山札の上から《インフェルノ・サイン》《クルトの気合釣り》《大きくて小さな農園》の三枚が公開された。
「全部呪文……!?」
 驚愕する零佑をよそに、ミウは《クルトの気合釣り》を手札に加え、次の三枚が表向きとなる。次に公開されたのは《ヘブンズ・ゲート》《スーパー炎獄スクラッパー》《英知と追撃の宝剣》の三枚。
「《ヘブンズ・ゲート》を、手札に」
 コストが大きいだけでなく、文明もバラバラな六枚の呪文。それだけで零佑は、ミウのデッキがどのようなものかがほぼ判明した。
「最初に《ラッキー・ダーツ》を撃った時から思っていたが、デッキのほとんどを呪文で埋め尽くしてるのか……!」
 よく見ればミウのマナも呪文が多い。恐らく、デッキの半分以上は呪文だろう。
 デュエル・マスターズの花形と言えばクリーチャー。基本はクリーチャーが攻撃してシールドをブレイクを、とどめを刺す。なので普通のデッキならクリーチャーがメインとなり、デッキの多くはクリーチャーだ。
 そのため、使い捨ての呪文が過半数を占める、ミウのデッキはかなり異質だ。
「くっ、俺のターン! 《電磁封魔ルチアーノ》を召喚して進化! 《エンペラー・マリベル》! さらにG・ゼロで《パラダイス・アロマ》も召喚!」
 呪文が多く搭載されたデッキとはいえ、クリーチャーがいないわけではない。実際、零佑の行く手を阻む五体のブロッカーがいる。
「《ツイート》と《マリベル》で攻撃! 《ツイート》のアタックトリガーでカードをドロー! 《マリベル》のメテオバーンで《エールフリート》をバウンス! さらに墓地に置かれた《ルチアーノ》の効果でドローだ!」
「《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》で、《ツイート》を、《神門の精霊エールフリート》で、《エンペラー・マリベル》を、ブロック」
 破壊される《ブラッディ・シャドウ》と《マリベル》。《マリベル》を失ったのは小さくない損害だが、ブロッカーを減らさなければ攻撃は通らない。ミウは《鬼面城》でかなりの枚数のカードを引いており、また《エールフリート》の効果を発動すると山札切れになる恐れもある。
 そして迎えた、ミウのターン。
「……発動。呪文《ホーガン・ブラスター》」


ホーガン・ブラスター 水文明 (5)
呪文
S・トリガー
自分の山札をシャッフルし、上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。そのカードがクリーチャーであれば、バトルゾーンに出してもよい。呪文であれば、コストを支払わずに唱えてもよい。


「っ、今度はなにが出るんだ……?」
 完全に運任せな《ホーガン・ブラスター》だが、零佑にはどうしても嫌な予感しかしない。そして不幸にも、その予感は的中してしまう。
 ミウのデッキがシャッフルされ、一番上のカードが捲られる。
 次の瞬間、激流と共に蒼き龍が飛び出す——

「——召喚《蒼の潮流スーパー・スペル・グレートブルー》」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.99 )
日時: 2013/08/09 18:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

爆裂右神ストロークス 無色 (6)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/フレイム・コマンド 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーがゴッドとリンクした時、バトルゾーンにある相手のパワー3000以下のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
右G・リンク


妖精左神パールジャム 無色 (6)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/スノーフェアリー 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーがゴッドとリンクした時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。
W・ブレイカー
左G・リンク
このクリーチャーがリンクしている時、このクリーチャーはシールドをさらに1枚ブレイクする。


 《爆裂のイザナイ ダイダラ》と《妖精のイザナイ オーロラ》によって光臨した二体の神は、その身を二体で一つのものとする。
 即ち、G・リンク。
「あぅ、リンクされちゃった……」
『リンクするだけじゃないよ? 《ストロークス》の召喚時の効果で、《レイジ・ボッコル》を破壊! さらにリンクした時能力発動で《ピーチ・プリンセス》も破壊する!』
 これでこのみの場は、《フレッシュ・レモン》と二体の《ポレゴン・ジョーンズ》だけとなってしまう。
『《パールジャム》の召喚時効果とリンク時効果でマナを増やして、ターン終了!』
 小型クリーチャーを殲滅しつつマナを増やし、しかもパワー13000のT・ブレイカー。このみのデッキに多く搭載されている小型クリーチャーではどうしたって太刀打ちできない相手だ。
「……《ジャスミン》召喚、破壊してマナチャージ。次に《冒険妖精ポレゴン》を召喚。そして《フレッシュ・レモン》の効果で3マナ軽くして——」
 このみは場の《フレッシュ・レモン》と《ポレゴン・ジョーンズ》、そして今しがた召喚した《ポレゴン》の三体を重ねる。
 小型クリーチャーでは太刀打ちできない。なら、大型クリーチャーで攻めればいい。
「進化MV! 出て来て《プロセルピナ》!」
 現れたのは《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》。
 パワー13000のT・ブレイカーと、神と同じだけの力を持ち、しかもCD能力で相手クリーチャーをマナに送れる。
「効果でゴッドをマナに送るよ!」
『うーぅ、そんなクリーチャーが出るなんて……《パールジャム》を残す!』
「じゃあ続けて行くよ! 呪文《時空の庭園》!」
 このみは手札からカードを二枚抜き取り、一気に発動させた。


時空の庭園 自然文明 (2)
呪文
自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。その後、クリーチャーを1体、自分のマナゾーンから、バトルゾーンにある自分の進化クリーチャーの下に置いてもよい。


 マナを加速させつつ、進化クリーチャーの下にクリーチャーを仕込む呪文。本来はメテオバーン発動の弾を装填するのだが、『神話カード』に使うとなれば話が少し変わってくる。
「マナゾーンの《春風妖精ポップル》と《反撃妖精ポコペン》を《プロセルピナ》の下に置くよ! これで《プロセルピナ》の下にあるカードのマナコストの合計は12! 全部のコンセンテス・ディー能力が発動!」
 どこか力が滾っているように見える《プロセルピナ》。
「《プロセルピナ》で《ダイダラ》を攻撃! その際に山札の上から一枚目をマナゾーンへ!」
 このみの山札の一番上のカードが吹雪と共に飛ばされ、マナゾーンへと落ちる。
「そして、マナに置かれた《斬雪妖精バケット・バケット》をそのままバトルゾーンへ!」
『やっば、《コットン》でブロック!』
「まだまだ! 《ポレゴン・ジョーンズ》で《ダイダラ》と相打ち!」
『ブロック!』
 また《コットン》が犠牲となる。これで《オーロラ》の場は、自身を含め《ダイダラ》《キルト》そして《ミスト・リエス》となった。
『まずいまずい、早くなんとかしないと……』
 焦る《オーロラ》。まずは《プロセルピナ》を破壊したいところだが、《オーロラ》のデッキで彼女に敵うのはリンクした神ぐらいなものだろう。
『……とりあえず《信心深きコットン》と《交錯のインガ キルト》を召喚。《キルト》の効果で私をタップして、《ミスト・リエス》の効果で二枚ドロー』
 今の《オーロラ》では《プロセルピナ》に太刀打ちできない。なのでクリーチャーを展開し、カードを引いて逆転の手を探す。
『……これ! 《炎晶バクレツ弾》発動! パワー5000以下の《ポレゴンジョーンズ》を破壊して、マナの《ストロークス》を回収!』
 とりあえず右神を手札に入れた《オーロラ》。しかしこのターンで召喚できるほどマナは余っていない。
『《ダイダラ》でシールドブレイク!』
 初めてこのみのシールドがブレイクされるが、シールド一枚では戦況は大きくは変わらない。
『ターン終了! そしてこの時、私と《ダイダラ》の光臨が発動する! 出て来て《護蓮妖精ミスティーナ》! 《爆竜 GENJI・XX》!』
「じゃ、あたしのターン」
 次のターンを見据えてクリーチャーを展開する《オーロラ》。次の自身のターンに総攻撃して押し切るつもりだろう。
 しかしこのみは、《プロセルピナ》を召喚して完全に余裕を取り戻していた。そしてその余裕が、彼女の力となる。
「これで決めるよ! 《ダイヤモンド・カスケード》!」


ダイヤモンド・カスケード 自然文明 (5)
進化クリーチャー:スノーフェアリー 5000
マナ進化—自然のクリーチャーを1体自分のマナゾーンから選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、スノーフェアリーをすべて、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。そうした場合、スノーフェアリーをすべて、自分の墓地からマナゾーンに置く。


 《ダイヤモンド・カスケード》。効果でマナゾーンのスノーフェアリーはすべて手札に戻ってしまうが、代わりに墓地のスノーフェアリーがすべてマナへと還ってくる。
 そしてこのみのデッキはほとんどがクリーチャーで、クリーチャーのすべてがスノーフェアリー。つまり、
「マナのスノーフェアリーを一気に回収! そして墓地のスノーフェアリーは全部マナに戻して、《プロセルピナ》の効果でそのままバトルゾーンに!」
 マナはごっそり減ってしまったが、代わりにバトルゾーンに破壊されてしまったスノーフェアリーが戻ってくる。しかも、
「場に出た《ジャスミン》四体を破壊して、マナチャージ! そこでマナに置かれたクリーチャーも、そのまま登場だよ!」
 マナにクリーチャーが置かれれば、とにかく場に出せる《プロセルピナ》。その力で場に出たのは、《ポニーネイチャー》と《オチャッピィ》そして二体目の《ダイヤモンド・カスケード》だった。
 つまり、《カスケード》の効果で墓地の《ジャスミン》がマナへ置かれ、《プロセルピナ》の効果で場に出て、自身の効果で破壊しマナチャージ。そこからさらなるクリーチャーが展開される。
『あ、うぅ、あぁ……』
 結果、このみの場には《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》を筆頭に《ダイヤモンド・カスケード》が三体並び、味方を強化する《ダイヤモンド・フォール》など、夥しい数のスノーフェアリーが立ち並んでいる。
「さあ行くよー! 《プロセルピナ》と《ダイヤモンド・フォール》で攻撃!」
『《コットン》でブロック!』
 数ある信者の中でも特に信仰の深い女信者《コットン》が身を挺してシールドを守るが、無駄だ。
 《ダイヤモンド・フォール》はシールドが三枚か四枚の時、味方クリーチャーのパワーを2000プラスする。そしてパワーが6000以上になったクリーチャーは——
「《ダイヤモンド・カスケード》二体でW・ブレイク!」
 ——W・ブレイカーとなる。
「汐ちゃんの言った通りだったよ。《ハッスル・キャッスル》があれば手札が減らないし、《時空の庭園》があれば重いスノーフェアリーを出さなくても《プロセルピナ》の能力が使える。それに《ダイヤモンド・フォール》がいれば、クリーチャーが一気に強くなる」
 今回は一人で改造せず、汐のアドバイスを受けたこのみ。汐の助力は功を奏したようで、《オーロラ》の敗北はこの時点で確定した。
「これでお終い! 最後の《ダイヤモンド・カスケード》で、とどめだぁー!」


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