二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.591 )
日時: 2014/07/16 03:27
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「——消えた?」
「みたい、ですね……」
 神話空間から出て来る夕陽と汐。
 夕陽は足元に落ちる《聖邪のインガ スパイス・クィーンズ》のカードを拾い上げつつ、周囲を見渡す。
「あのよく分からないなにか……どこに行ったんだ?」
「さっきまで感じてたすげぇ力は、もう感じねぇぞ」
「急にぷっつり途切れたわね」
 《スパイス・クィーンズ》の頭上で発生していた、謎の力の塊。夕陽たちにも目視できていたそれが、気付けば消えていた。
「やっぱりさっきのクリーチャーが発生源だったのか……? そのクリーチャーを倒したから、発生した力も消えた、とか?」
「可能性としてはありえそうですが、断定はできないですね」
 とはいえ、ここでいくら考えても答えなど出ない。その答えを導き出すのは、ラトリたちに任せるしかなさそうだ。
「……そういえば、この辺ってさっきの商店街のすぐ近くなんだね」
「そういえばそうですね」
 ふとそんなことを言いながら、夕陽は歩を進める。すると、本当にすぐに——徒歩一分足らず——商店街へと戻って来た。
「どうしたのですか」
「いや、そもそも僕らはここになにしに来たんだっけ、ってことを思い出してさ」
「ああ、今なら店員さんもいないですからね。お金を払わずともばれないですね」
「そんなことは言ってない!」
 勝手に人を犯罪者にしないでほしいものだ、と思いながら、夕陽はそこらの店を物色する。
「でも、人がいないのはいいかもな。人目に付かないなら、普段じゃ気恥ずかしくて入りにくい店にも入れるし」
「会計する時はどうするのですか」
「…………」
 一瞬でメリットが消失した。
「……ま、まあ。入ってなにもなかったのと、我慢して目当てのものだけ買って会計するのとは、後者の方が無駄が少ないし……」
「メリットなのかデメリットなのか分かりにくいですね」
 とりあえずそれをメリットと考え、夕陽はまず、近くのファンシーショップを覗くことにした。
「へぇ、こういう店って入ったことないけど、中はこうなってるのか……」
「私もファンシーショップには滅多に入らないですね。ちょっと新鮮です」
 などと言いながら、二人はそれぞれ店内を見て回ることにした。
 思ったより中は広く、二階建てになっていた。汐が一階を回っているので、夕陽は二階に上ることにした。
「こういう店ってぬいぐるみとかばっかり置いてるもんだと思ったけど、意外といろんなものが置いてあるなぁ……」
 この辺りはネックレスなどのアクセサリーがメインのようだが、その前には文房具やバッグなどもあった。少々チープに感じられるものが多いが、値段が値段で、しかも若者向けなので仕方ないだろう。
「……ん? これ……」
 夕陽はふと、とあるものが目に付いた。
 華やかな店内と商品の中では、比較的地味に見えるそれを、夕陽はそっと手に取って見る。
(……そういえば、あの子の誕生日に送ったのも、こんな感じのものだったっけ)
 特に大した理由もなかったのだが、妹の親友である少女の誕生日にも、プレゼントを贈ったのだった。
 そのプレゼントは今でも大事にしてもらっているようだが、中学生と高校生では感性が違うかもしれない。
「…………」
 そんなことを思いながら夕陽は、手に取ったそれをジッと眺めているのだった。



 亜実と栗須のペアは、街の北西方面へと進んでいた。
 道中は、やはり数多のクリーチャーが行く手を阻むのだが、
「マルス!」
「任せな。お前のために、すべてを焼き払おう」
「そういうのはいらねぇから」
 そのクリーチャーは、亜実の有する《焦土神話》の力で焼き払っていく。
「ふむ、随分と強引だな」
「うるさい。お前も一緒に焼いてやろうか」
「できるものなら。それに、僕がいなくなれば、貴様の負担が増えるだけだぞ」
「……ちっ」
 露骨に舌打ちする亜実。
 確かにこの状況では、一応は協力関係にある栗須にいてもらった方がいいことは確かだ。夕陽たちは反応が一つの地点に向かっているが、亜実たちが向かているのは、反応が二つ、重なっている地点。ゆえのツーマンセルだ。
「しかし、あれだな。こうなってくると、貴様と組んで正解だったかもしれないな」
「はぁ? なに気色の悪いことを」
「僕は【ラボ】との関わりが薄く、『昇天太陽サンセット』と接触する時も、大概は貴様が邪魔していただろう? もう一人の少女に関しては、面識すらない」
 だが、亜実とは何度もいがみ合っている。これが初顔合わせでもないし、夏よりも前から、ずっと犬猿の仲だ。
 なので、
「貴様の力を気兼ねなく利用できる。ほら、またクリーチャーが来たぞ、早く焼き払ってくれたまえ」
「てめぇ……やっぱ先にこいつから焼くか」
 栗須は『神話カード』を持っていない。なのでクリーチャーを実体化させることはできないのだ。
 【ラボ】のように誰かの『神話カード』の力を借りることもできたのだが、亜実や夕陽や汐は渋り、ラトリは承諾したがアテナは「アテナはマスター以外にこの力を行使するつもりはないので。あと疲れました」と一蹴。
 そう考えれば、険悪であるがゆえに遠慮のないこの組み合わせは、最適だったのかもしれない。
 そんな風にいがみ合いながら進む二人は、やがて座標に示された地点に辿り着いた。
「この辺りだな」
「それらしいものは目視できないが……マルス、なにか感じるか?」
「感じるな、すぐ近くに。かなり大きな力だ」
 周囲を見回しながら、神妙な面持ちを見せるマルス。彼がそう言うのなら、ここで間違いないようだ。
 二人はマルスを先頭に住宅街を歩いていく。しばらく進むと、やがて空地の横を通り——
「——あれだな」
「推理するまでもなく、見ただけで明らかだな」
 目標らしきものを発見した。
 まず最初に目に飛び込むのは、二体のクリーチャー。
「《機神装甲ヴァルボーグ》とは、随分と時代遅れなクリーチャーだな」
「もう片方は《拷問の魔黒スネーク・テイルコート》か。微妙なところが出て来たものだ」
 とりあえずはそんな感想を述べる二人だが、それ以上に気になるものが、その二体の頭上にはあった。
「……あれはなんだ?」
「あたしが知るわけないだろう」
 二体のクリーチャーの頭上には、なにかがある。それがなんなのか、亜実にも栗須にも言葉にはできない。
 時空が歪んでいるようにも見える。そして、なんとなくだが、強い力も感じる。見るからに危なげな空気の漂う現象だ。
「マルス……」
「すまないアミ。あれがなんなのかは、俺にも分からない。だが、放っておかない方がいい。俺の勘がそう告げている」
 それは亜実も同感だ。そもそも、謎の力の原因を探りに来ているのだから、それに大きく関係していそうななにかを放置するわけがない。
「で、どうする。あれがなんなのかが分からないのなら、どう対処すればいいのかもわからないだろう。情報がなさ過ぎては推理もできない」
「……とりあえず、あのクリーチャーをどかすか。あのなにかがそれ単体で存在しているのか、それともあのクリーチャーありきのものなのかは知らないが、クリーチャーを野放しにしておくわけにもいかない」
 それらしいクリーチャーを見つければ、確固撃破ということになっている。
 亜実と栗須はそれぞれデッキを手に、亜実の傍らにはマルスが付く。
「勝手にやられるなよ。お前の取りこぼしを処理してやるほど、あたしはお人好しじゃない」
「それはこちらの台詞だ。軍人気取りに酔って、自滅なんてしてくれるなよ」
 互いにそんな憎まれ口を叩きながら、それぞれクリーチャーの下へと向かう。
 そして二人は、神話空間の中へと誘われる——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.592 )
日時: 2014/07/17 04:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 亜実とヴァルボーグのデュエル。
 互いにシールドは五枚をキープし、亜実の場には《守り屋ジョーオニー》。ヴァルボーグの場には《爆裂B—BOY》がそれぞれいる。
「あたしのターン。《鬼斗マッスグ》を召喚し、ターン終了だ」
「オレのターン! 《凶戦士ブレイズ・クロー》召喚! さらに《爆裂B—BOY》でコストを下げ、進化! 《機神装甲ヴァルボーグ》!」


機神装甲ヴァルボーグ 火文明 (3)
進化クリーチャー:ヒューマノイド 5000+
進化—自分のヒューマノイド1体の上に置く。
W・ブレイカー
攻撃中、このクリーチャーのパワーは、バトルゾーンにある他の火のクリーチャー1体につき、+1000される。


「出たか……」
 僅か3ターン目でWブレイカーが登場する。この手のデッキでは王道パターンだ。
『オレで攻撃、Wブレイク!』
「《ジョーオニー》でブロック」
 とりあえずWブレイクは防いだが、辛いことに今の亜実の手札に除去はない。デッキに《マルス》を組み込んだがゆえにビートダウン性能は向上したが、進化元を確保するために呪文が多く抜かれてしまっているのだ。
「まあ、そんなことを嘆いていても仕方ないか。あたしのターン。《爆走鬼娘モエル・ゴー》を召喚し、《滅殺鉄拳オニジゴク》を手札に加える」
『オレのターンだ! 《禍々しき取引 パルサー》を召喚! オレは手札がないから、そのまま二枚ドロー! そして残ったマナで《ブレイズ・クロー》を召喚!』
「手札補充も怠らず、クリーチャー展開……意外とやるな」
『オレでWブレイク! 《ブレイズ・クロー》でもシールドブレイクだ!』
 亜実が冷静にそんな評価をしているうちに、《ヴァルボーグ》が襲い掛かる。一気に亜実のシールドは三枚も削られた。
「残り二枚か……とりあえず、クリーチャーを殲滅していくか。《モエル・ゴー》を進化、《滅殺鉄拳オニジゴク》!」


滅殺鉄拳オニジゴク 火/闇文明 (4)
進化クリーチャー:ヒューマノイド/ハンター/エイリアン 6000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分のハンター1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のコスト5以下のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー


「《オニジゴク》が場に出たことで能力発動! 《パルサー》を破壊! さらに《ジョーオニー》を召喚し、《オニジゴク》で《ヴァルボーグ》を攻撃!」
『ぐおぉぉぉっ!』
 《オニジゴク》の鉄拳が《ヴァルボーグ》を打ち砕き、装甲を粉々に粉砕する。
「まだだ! 《マッスグ》で《ブレイズ・クロー》を攻撃!」
 続けて《マッスグ》の剣も、《ブレイズ・クロー》を切り捨てて破壊する。これで残るアタッカーは、二体目の《ブレイズ・クロー》のみ。亜実の場にはブロッカーもいるので、まだ耐えられると思われたが、
「呪文《火炎流星弾》! 《ジョーオニー》を破壊!」
「っ!」
「さらに《鬼切丸》を召喚! スピードアタッカーの《鬼切丸》でシールドをブレイク!」
 空から飛来した炎の流星によって、《ジョーオニー》は一瞬にして潰されてしまう。その隙を狙って、《鬼切丸》が亜実のシールドを砕く。
「ちぃ……S・トリガー《モエル 鬼スナイパー》召喚! パワー4000以下の《ブレイズ・クロー》を破壊!」
 なんとかS・トリガーでシールドを一枚キープする亜実。ここでシールドがなくなってしまえば、亜実が一気に不利になる。
「スピードアタッカーで一撃でも貰えば終わりだからな……だが」
 亜実は口角を少しだけ上げる。そして、鋭い眼光のまま、狙い通りと言わんばかりの笑みを見せた。
「そろそろ息切れしてきたか。残り手札がゼロなら、シールド一枚でも耐えられる」
 速攻の弱点は、その手札消費の激しさ。早いターンで決めることを重視し、長く戦うことを放棄した速攻デッキは、長期戦になれば手札がなくなって失速する。ヴァルボーグはその点を《パルサー》で補っていたようだが、それでも手札が枯れやすいことに変わりはない。
 序盤からクリーチャーを並べて攻め続けていたヴァルボーグは、完全に手札が切れてしまった。これならスピードアタッカーを引かれたところで、すぐにとどめは刺されない。
 速攻は耐えられたら負ける。亜実にここまで耐えられた時点で、ヴァルボーグの勝機は下降し続けているのだ。
「さあ行くぞ、《龍覇 グレンモルト》を召喚!」


龍覇 グレンモルト 火文明 (6)
クリーチャー:ヒューマノイド爆/ドラグナー 4000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト2以下のドラグハート1枚、または、コスト4以下の火のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
バトル中、このクリーチャーのパワーは+3000される。


 爆発と共にその姿を現したのは、龍と心を通わす紅蓮の戦士。ヒューマノイド爆にしてドラグナー《龍覇 グレンモルト》だ。
「《グレンモルト》がバトルゾーンに出た時の能力発動。超次元ゾーンからコスト4以下の火のドラグハートを呼び出し、それがウエポンなら《グレンモルト》に装備する! 来い! 《銀河剣 プロトハート》!」
 紅き鎖に封じられた剣の封印が解かれる。そして銀河の彼方より、その剣が持ち主を求めて飛来した。
 炎を纏い、銀河の剣は《グレンモルト》の足元に突き刺さる。《グレンモルト》はその剣を引き抜くと、その手でしっかりと握り締めた。
「《プロトハート》を《グレンモルト》に装備し、ターン終了だ」
「ぐぬぬ……オレのターン! 《鬼切丸》を召喚し、最後のシールドをブレイク!」
 遂に亜実の最後のシールドが割れた。次のターン、ヴァルボーグが再びスピードアタッカーで攻め込めれば、そのまま勝つ見込みも出て来る。
 次のターンがあれば、だが。
「さあ、準備完了だ。作戦を実行に移す。あたしのターン! 来い、マルス!」
「アミのためならいつでも駆けつけるぜ。俺の火力を、あのロートル機神装甲にぶち込んでやる」
 このターンのドローで引き当てたのは、《マルス》。これで必要なパーツはすべて整った。
「《龍覇 グレンモルト》《モエル 鬼スナイパー》《鬼斗マッスグ》の三体を進化元に——」
 三体の炎の戦士たちが、燃え盛る業火に包み込まれる。

「——硝煙より出でよ、焦土の神! 爆炎と銀河の剣を取り、あらゆる大地を蹂躙せよ! 我が戦友ここに進軍す! 神々よ、調和せよ! 進化MV! 《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》!」

 そしてその炎が弾け飛んだ次の瞬間、そのに立っていたのは焦土の軍神《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》。
『……剣が一振り多いな』
「持っておけ。お前なら、使いこなせるだろう?」
『当たり前だ、俺を誰だと思っている? こと戦と武具に扱いにおいては、十二神話随一の《焦土神話》だ』
 自慢げに語る《マルス》。しかしその間も、身体のいたるところに装着された重火器へのアクセスを忘れていない。
「行け《マルス》! シールドをTブレイクだ!」
『ああ! 全砲門開放! 一斉射!』
 すべての重火器の砲門が開かれ、一斉に砲火が放たれる。
 銃弾、砲弾、火炎放射、ミサイル——様々な兵器が飛び、ヴァルボーグのシールドを焼き払い、場を蹂躙する。
「《マルス》のCD能力で、ブレイクしたシールドは墓地へ! さらにブレイク・ボーナス! 《鬼切丸》を破壊し、マナを三枚墓地へ!」
 攻め込んだ相手の陣地を、爆炎と硝煙で焦土と化す。ゆえに《焦土神話》。一撃でこれだけの破壊をもたらした彼の侵攻は、しかしまだ終わらない。
「ここで《グレンモルト》を進化元にした意味が出て来る……《グレンモルト》は《プロトハート》を装備していたが、その装備したドラグハート・ウエポンは、進化後のクリーチャーにも引き継がれる」
『だから剣が一本多かったのか』
 要するに、《プロトハート》を装備した《グレンモルト》を進化元にした《マルス》は、今現在《プロトハート》を装備した状態となっている。つまり、
「攻撃した《マルス》はアンタップされる」


銀河剣 プロトハート 火文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが各ターンはじめてタップした時、アンタップする。
龍解:自分のターンの終わりに、そのターン、これを装備したクリーチャーが2度攻撃していた場合、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。


 再び攻撃可能となる《マルス》。彼は槍を地面に突き刺すと、右手に自身の剣を、左手に《プロトハート》を構え、大地を蹴る。
「《マルス》で残りのシールドをブレイクだ!」
『はあぁっ!』
 二刀流の剣で、ヴァルボーグのシールドが燃え尽きた。ついでにマナも焼け焦げ、バトルゾーン、マナゾーン、シールド——そのすべてが消え去った。
 すべてを失ったヴァルボーグに、地獄の拳がとどめを刺す——

「《滅殺鉄拳オニジゴク》で、ダイレクトアタックだ!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.593 )
日時: 2014/07/18 20:09
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 栗須とスネーク・テイルコートのデュエル。
 互いのシールドは五枚。栗須の場には《聖黒獣アシュライガー》が一体。スネーク・テイルコートの場には《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》が一体。
 まだどちらも大きな動きは見せておらず、準備段階のようだが、先んじて栗須が動き出す。
「ふむ……いい感じにパーツが集まっているな。いきなり解決編を出してしまうのはいただけない演出だが、デュエマは別だ。《エメラル》を召喚」
 まず最初に出て来るのは《エメラル》。その能力で手札とシールドのカードを入れ替え、残る3マナで、
「続けて呪文《クリスティ・ゲート》。選ぶシールドは、さっき《エメラル》で交換したシールドだ」
 謎と神秘の門が開き、栗須のシールドから光の悪魔が降臨する。
「出でよ、《偽りの羅刹 アガサ・エルキュール》!」


クリスティ・ゲート 光文明 (3)
呪文
S・トリガー
自分のシールドをひとつ見る。その中から、進化ではない光のデーモン・コマンドを1体、バトルゾーンに出してもよい。
カードを1枚引く。


偽りの羅刹(コードファイト) アガサ・エルキュール 光文明 (9)
クリーチャー:デーモン・コマンド/アンノウン 13500
相手がクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のシールドをすべて見て、その中から進化ではないデーモン・コマンドを1体選び、バトルゾーンに出してもよい。
相手が呪文を唱えた時、自分のシールドをすべて見て、その中から呪文を1枚選び、コストを支払わずに唱えてもよい。
T・ブレイカー


 この早いターンに、パワー13500のTブレイカーが降臨した。クリーチャーや呪文の踏み倒し能力も強力だが、純粋に早い順目に高パワー高打点のクリーチャーが現れるだけでも相当脅威だ。
「ふむ、それで終わりなら、私のターンですぞ」
 だが、対するスネーク・テイルコートは酷く落ち着いていた。
(なにか除去手段があるのか……?)
 仮にそうだとしても、《アガサ・エルキュール》の能力は除去される前に発動する。すぐにやられても、最低限の役目は果たしてくれるはずだ。
「《ブラッディ・シャドウ》を、《拷問の魔黒スネーク・テイルコート》に進化!」


拷問の魔黒スネーク・テイルコート 闇文明 (5)
進化クリーチャー:ゴースト 8000
進化—自分のゴースト1体の上に置く。
このクリーチャーが攻撃する時、自分の手札を1枚捨ててもよい。そうした場合、そのカードよりコストが小さい相手のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー


 返しのターン、《スネーク・テイルコート》は自身を呼び出すが、
「クリーチャーを召喚したな? 《アガサ・エルキュール》の能力発動だ」
 相手クリーチャーの召喚に反応して、《アガサ・エルキュール》はシールドからクリーチャーを呼び出すのだ。
「ここは……《怪盗パクルパン》だ」
 呼び出されたのは、コスト4の光のデーモン・コマンド。コストが低いので、下手をすれば《スネーク・テイルコート》に破壊されてしまいそうだが、むしろそれが狙いだ。
(《パクルパン》を破壊するためには《スネーク・テイルコート》で攻撃する必要がある……殴り掛かってきたところを、《アガサ・エルキュール》で殴り返す)
 そんな算段を立てる栗須。しかし《スネーク・テイルコート》が取った行動は、栗須のさらに上を行く。
『私で攻撃、そして能力発動ですぞ! 手札のカードを一枚墓地へ』
 そして、こうして墓地に送ったカードよりも低コストのクリーチャーを一体破壊する。破壊するのは、
『捨てるのは、コスト11の《白騎士の聖霊王ウルファス》』
「なに……っ!?」
『コスト9の《アガサ・エルキュール》を破壊ですぞ』
 《スネーク・テイルコート》の背中から、蛇のような黒い影が伸びる。影は一瞬で《アガサ・エルキュール》を取り囲み、金色の身体を貫く。
「まさか《アガサ・エルキュール》が破壊されるとは……!」
 栗須の失態は《アガサ・エルキュール》のコストを過信したことだ。確かに《アガサ・エルキュール》を破壊するためには、コスト10以上のカードを捨てなければならない。
 しかし《スネーク・テイルコート》の能力を生かすのなら、高いコストのカードを組み込んでいてもおかしくはない。そして、コストが高くとも、低く扱えるカードも存在することを、彼は失念していた。
『Wブレイクですぞ!』
「くっ……!」
 《クリスティ・ゲート》で《アガサ・エルキュール》を高速召喚した栗須だが、その弊害としてシールドが減っている。そのため、早くも残りシールドが一枚に。
「だが、まだ終わりじゃない。僕のターン。二体目の《アシュライガー》と、その二体でコストを4減らした《虚構の支配者メタフィクション》を召喚! 《パクルパン》でシールドブレイクだ!」
 そしてこのターンの終わり、《パクルパン》の能力でシールドを追加。これで二枚だ。
『私のターン。《穿孔の影ノーテン・ドリル》を召喚。ガチンコ・ジャッジで勝てば、墓地からクリーチャーを二体回収できるのですぞ』
「勝てればな。僕のデッキは高コストのクリーチャーが多い。そう簡単に勝てると思うな」
 そして、互いの山札が捲られる。
 《スネーク・テイルコート》は、コスト8《優位の守護者サメンビー》。
 栗須はコスト8《偽りの羅刹 ゼキア・エクス・マキナ》。
「く……っ」
『ガチンコ・ジャッジは私の勝ちですな。墓地の《ウルファス》と《ノーテン・ドリル》を回収し、二体目の《ノーテン・ドリル》を召喚ですぞ。ガチンコ・ジャッジ!』
 《スネーク・テイルコート》はコスト7《風迅の精霊アイネスガゼル》、 栗須はコスト3《ロジック・スパーク》。
『余裕で私の勝利でしたな。墓地の《メリコミ・タマタマ》と《ウエスタン・バレル》を回収ですぞ。そして私で攻撃!』
 再び、《スネーク・テイルコート》の毒牙が剥かれる。
『手札の《メリコミ・タマタマ》を捨て、《メタフィクション》を破壊! Wブレイクですぞ!』
「これでシールドゼロか……」
 対戦前は微妙なクリーチャーだと称したが、こうして相対してみれば、なかなか厄介なクリーチャーだ。手札さえ整えられれば、こちらのクリーチャーがどんどん破壊されていく。
「なら……《悪魔聖霊アウゼス》と《アクア・スーパーエメラル》《メタフィクション》を召喚! 《パクルパン》で攻撃!」
 自分のデーモン・コマンドが攻撃する時、《アウゼス》の能力が発動する。
「タップ状態の《スネーク・テイルコート》を破壊だ!」
 そしてこのターンの終わりには、シールドがさらに一枚追加される。
 《スネーク・テイルコート》の弱点は、能力発動に手札が必要なことと、一体ずつしか破壊できないこと。
 今までは防御を考えてあまり攻めなかった栗須だが、《スネーク・テイルコート》がいなくなったことで、次のターンは凌げるはず。
 そう、思ったが、
「甘いですなぁ……私のターン。《騒乱の影ウエスタン・バレル》を召喚。手札を一枚捨ててもらいますぞ」
「……っ」
 《ウエスタン・バレル》の弾丸が、栗須の最後の手札も奪い取る。
 しかし、それだけではない。
「さらに《ウエスタン・バレル》を私に進化ですぞ!」
「っ!」
 これでアタッカーが三体。栗須にはブロッカーが二体、シールドが一枚あるが、
『私で攻撃する時に手札の《ウルファス》を捨て、《メタフィクション》を破壊ですぞ!』
 《スネーク・テイルコート》の繰り出す影の蛇に《メタフィクション》が破壊されてしまう。
「くっ……《アクア・スーパーエメラル》でブロック!」
『ならば《ノーテン・ドリル》で最後のシールドをブレイク!』
 栗須の最後のシールドが砕かれる。
 これでS・トリガーがなければ、もう一体の《ノーテン・ドリル》にやられてしまう。
 しかし、そのシールドは光の束となり収束する——
「——S・トリガー《クリスティ・ゲート》だ!」
『なにが出るかと思えば、《クリスティ・ゲート》ですか? シールドがなければ無意味ですぞ』
「無意味ではない。カードを引ける」
 そう。《クリスティ・ゲート》は光のデーモン・コマンドをシールドから踏み倒す呪文だが、能力が不確定ゆえに、おまけとしてカードをドローする効果もある。
 とはいえこんな状況でカードを引いたところで、どうしようもない。それが一般的な見解だ。
 しかし栗須の推理では、別の答えが導き出される。
「……引いたぞ」
 栗須は顔を伏せ、静かに微笑む。
 そして、その引いたカードを捲った。
「今、僕が引いたカードはこれだ——《知識の破壊者デストルツィオーネ》」


知識の破壊者デストルツィオーネ 闇文明 (10)
クリーチャー:デーモン・コマンド 17000
このカードを山札から引く時、このカード以外に自分の手札が1枚もなければ、すべてのプレイヤーに見せてもよい。そうした場合、相手のクリーチャーを1体破壊する。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手は自身の手札をすべて捨てる。
T・ブレイカー


 他に手札がない時にこのクリーチャーを引くことで、相手クリーチャーを破壊するという特殊な能力を持った悪魔《デストルツィオーネ》。
 《クリスティ・ゲート》で引きこまれたかの悪魔は、まず最初に命を破壊する。
「《ノーテン・ドリル》を破壊! これでダイレクトアタックまでは届かないぞ」
『ぬぅ……!』
 呻く《スネーク・テイルコート》。ここで決めきれなかったのは、かなり手痛いだろう。
 そして次に、《デストルツィオーネ》は、その名を体現し、知識を破壊する。

「導き出せ、一筋の答えを。偽りの光の中にある唯一つの真実をここに打ち出せ。破壊せよ、あらゆる知識と知恵を。全てを白紙に戻せ。召喚——《知識の破壊者 デストルツィオーネ》」

 刹那、《スネーク・テイルコート》の手札が消し飛んだ。
『な……っ!?』
「《デストルツィオーネ》の登場時能力で、貴様の手札はすべて墓地送りだ」
 《スネーク・テイルコート》が握っていたのは《光牙忍ハヤブサマル》。栗須の場にはクリーチャーが並んでいるので一体や二体止めらても問題ないが、シールド次第では攻め切れないかもしれなかった。
「さらに《アウゼス》で残った《ノーテン・ドリル》を攻撃! 《アウゼス》自身の能力も発動し、《スネーク・テイルコート》も破壊だ! さらに《パクルパン》でシールドをブレイク!」
 栗須は確実にとどめを刺すべく、クリーチャーを殲滅しつつシールドを増やす。相手のデッキは色からしてスピードアタッカーはいない。進化クリーチャーが出てもシールドは一枚ある。墓地進化などは危ないが、《スネーク・テイルコート》の能力を考えれば、比較的コストの低い墓地進化獣は積まれていそうにない。
 以上の推理から、栗須は次のターンまではもつと判断し、ターンを終える。
「ぐぬぬ……私のターン! 《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を召喚!」
 シールドを増やしつつブロッカーを並べるスネーク・テイルコート。しかし、それも無意味だ。
「僕のターン。《コアクアンのおつかい》でカードを手札に加え……そのまま手札に加えた《凍結の魔天ダイイング・メッセージ》を召喚。《ブラッディ・シャドウ》をフリーズ。《アウゼス》で攻撃し、自身の能力で《ブラッディ・シャドウ》を破壊!」
「だ、だがS・トリガー《炸裂の影デス・サークル》を二体召喚! 自爆して、そちらのアンタップクリーチャーを二体破壊!」
「《アシュライラー》と《エメラル》を破壊……で、終わりか?」
「ぐぬぅ……!」
 シールドを失い、クリーチャーを失い、手札も失った。もうスネーク・テイルコートにできることはなにもない。
 後はただただ、破壊者の手によって、存在そのものを破壊されるのみ——

「《知識の破壊者デストルツィオーネ》で、ダイレクトアタック——」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.594 )
日時: 2014/07/21 06:08
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 『popple』から出たクロ、仄、葵の三人。クリーチャーがどこにいるのか分からないため、とりあえず手分けして捜索することとなった。
 と、思った矢先。
 三体のクリーチャーが『popple』の前に立ち塞がっていた。
「流石にこれはビックリ……さっきの界長とかいう人は、なにをやってたの……?」
「たぶん、あの人が出た後で出て来たクリーチャー……」
 目の前に鎮座しているのは《守護聖天タース・ケルケルヨ》《レジェンダリー・バイロン》《ダイヤモンド・ブリザード》の三体。
「喫茶店の前にこの光景……些かシュール、ですね……」
「まあ、そんなこと言ってる場合でもないんだけど」
 種族柄か、今はまだ大人しいが、このクリーチャーたちがいつ動き出すか分からない。
 後手を踏んでもいいことなどはない。先手を取った方が有利になるのがこの世界。なんとなく、そんな意識だけは芽生えていた。
「……じゃあ」
「行こうか!」
「はい!」
 三人は各々デッキを手にし、それぞれの敵と神話空間に入りこんでゆく。



 クロの相手は、タース・ケルケルヨだった。
 どちらもガーディアンを軸としたデッキで、シールドは双方五枚あり、どちらの動きも似通ったものだった。
 クロは《時空の庭園》と各種チャージャー呪文で手札を切らさずマナを加速。タース・ケルケルヨも《時空の庭園》や《ジオ・ブロンズ・マジック》を《神託の守護者ミント・シュバール》で使い回してマナを溜めている。
「ワタシのターン。《ミント・シュバール》を進化。《守護聖天タース・ケルケルヨ》」
 遂に現れた《タース・ケルケルヨ》本体。破壊された自分の他のガーディアンを自分の下に匿い、メテオバーンで再び射出することができる。
 だがこのカードの真価は、ガーディアンを破壊から守ることではない。自身の下にあるクリーチャーなら、なんであってもコストを踏み倒せる点だ。
『呪文《時空の庭園》。マナを加速。マナゾーンの《真実の名 ワクワク・チャップルン》をワタシの下に。私で攻撃。能力発動』
 《タース・ケルケルヨ》が砲撃を放つ直前、その下にあるクリーチャーが射出される。射出するのは、直前に《時空の庭園》で仕込んだ、あのクリーチャーだ。

『《真実の名 ワクワク・チャップルン》をバトルゾーンへ』



 仄の相手は、レジェンダリー・バイロンだった。
 現在、仄のシールドは四枚。場にクリーチャーはゼロ。
 レジェンダリー・バイロンの場には《キング・クラーケン》《キング・ブルファング》の二体。こちらはまだ、シールドが五枚ある。
「大型リヴァイアサンのわりに、序盤から攻めて来るな……私のターン」
 相手クリーチャーは大して強くないが、こちらは起動が遅い。そろそろブロッカーを出しておきたいところだ。
「《天門の精霊キバッテ・キャット》を召喚。山札の上から四枚を見て……《ヘブンズ・ゲート》を手札に。ターン終了」
 《キバッテ・キャット》で《ヘブンズ・ゲート》を手に入れた仄。あと2マナ溜まれば、手札の大型ブロッカーを一気に展開できる。
 とはいえ、相手の攻撃もなかなか緩まない。
「《キング・ケーレ》」
 レジェンダリー・バイロンは《キング・ケーレ》を召喚し、《キバッテ・キャット》をバウンス。これで仄の場からクリーチャーが消えた。
「《キング・クラーケン》《キング・ブルファング》」
 その呼びかけで、二体のリヴァイアサンが仄のシールドに突っ込んで来る。これで残りシールドは二枚。そろそろ危なくなってきた。
「私のターン。《知識の精霊ロードリエス》を召喚して、カードをドロー……ターン終了」
 まだ大きくは動けない。しかし、そうやって手をこまねいているうちに、海の怪物は大波と共に押し寄せてくるのだ。

「《キング・ケーレ》——《レジェンダリー・バイロン》!」




 葵の相手は、ダイヤモンド・ブリザードだった。
 互いにまだシールドは五枚をキープしているが、やはり相手のデッキは速いビートダウンのようだ。前のターンに《蒼天の守護者ラ・ウラ・ギガ》と《冒険妖精ポレゴン》が相打ちになっている。
 葵の場にクリーチャーはなし。ダイヤモンド・ブリザードには《希望の親衛隊クラップ》。
「私のターンです。《超過の守護者イカ・イカガ》を召喚。能力で手札からコスト3以下のブロッカー《光陣の使徒ムルムル》をバトルゾーンに出します!」
 とにかくブロッカーを並べる葵。相手がビートダウンなら、今は耐えるしかない。《ムルムル》がいるので、最低でも《イカ・イカガ》は《クラップ》と相打ちに持ち込める。
 はずだったが、
「わたしのターン! 呪文《火炎流星弾》で《ムルムル》を破壊!」
「っ!」
「さらに《無頼勇騎タイガ》召喚! 《クラップ》と《タイガ》でシールドブレイク!」
「《タイガ》は《イカ・イカガ》でブロック……!」
 早速一枚割れてしまった。理想としては、次のターンまでシールドを割られない予定だったのだが、思ったより相手の攻めがきつい。
「くっ……私のターンです」
 カードを引き、マナチャージ。
「やっと5マナ……呪文《超次元ドラヴィタ・ホール》で、墓地の《フェアリー・ライフ》を回収。そして超次元ゾーンより《時空の雷龍チャクラ》をバトルゾーンに!」
 葵の切り札の一枚《時空の雷龍チャクラ》。それをなんとか呼び出すが、覚醒条件がホーリー・フィールド、つまりシールド数が相手以上でなければならないので、相手の攻撃を止めつつ、シールドを削らなければ覚醒はできない。
(しかし、一度でも覚醒すれば、後はこちらが一気に有利になれる……とにかく相手のシールドブレイクはできるだけ止めて、こっちも攻めにかかる……!)
 かなり厳しい展開になりつつある葵だが、大型クリーチャーを出せれば形勢はこちらに傾くはずだ。
 出せれば、だが。
「呪文《火炎流星弾》! 《チャクラ》を破壊!」
「っ、また……!」
「《クラップ》と《タイガ》でシールドをブレイク!」
 《チャクラ》を破壊され、そのままさらにシールドを割られてしまう。これでは再び《チャクラ》を出したとしても、覚醒はかなり難しい。
「なかなか、厳しいですね……!」
 ダイヤモンド・ブリザードの猛攻に堪える葵。彼女の防戦は、いつまで続くか——

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.595 )
日時: 2014/07/22 04:16
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

真実の名(トゥルーネーム) ワクワク・チャップルン 光文明 (7)
クリーチャー:ガーディアン/アンノウン 9000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から《守護秘伝ウィング・スパーク》を1枚選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。
W・ブレイカー


『能力発動。《守護秘伝ウィング・スパーク》を手札に。ワタシでシールドをWブレイク』
 クロのシールドが二枚砕かれる。マナ加速を重視するあまり、ブロッカーを呼び出すのが遅れてしまったために、先手を取られてしまった。
「……私のターン。《白骨の守護者ホネンビー》《埋葬の守護者ドルルフィン》《漆黒の守護者ハラッカダン》を召喚」
 一気にブロッカーを並べ立てるクロ。しかし、一歩手遅れだ。
『ワタシのターン。《侵攻の守護者ガチャピンチ》《蔵録の守護者カメンビー》《幸運の守護者ヤラレ・タイラッキー》を召喚。《ワクワク・チャップルン》で攻撃』
 その時、先ほど手札に加えた、あの呪文が発動する。

『アタック・チャンス発動——《守護秘伝ウィング・スパーク》』


守護秘伝ウィング・スパーク 光文明 (8)
呪文
アタック・チャンス—《真実の名 ワクワク・チャップルン》
バトルゾーンにある相手のクリーチャーをすべてタップする。その後、バトルゾーンにある相手のタップしているクリーチャー1体につき1枚、カードを引く。
バトルゾーンにある自分の《真実の名 ワクワク・チャップルン》を1体、アンタップする。


 刹那、眩い閃光がバトルゾーンを覆い尽くした。
『《ウィング・スパーク》の能力。相手クリーチャーをすべてタップ。その後。相手のタップクリーチャーの数ドロー。さらにワタシの場の《ワクワク・チャップルン》をアンタップ。《ワクワク・チャップルン》でWブレイク』
「っ……!」
 クロのシールドがさらに二枚、砕け散った。
 《タース・ケルケルヨ》のアタッカーは、自身とアンタップした《ワクワク・チャップルン》の二体。クロの残りシールドは一枚。この時点でクロを殴り切るだけの戦力はある。
 しかし、《タース・ケルケルヨ》はそこで万全を期す。
『ワタシで《ドルルフィン》に攻撃。能力発動。《ミント・シュバール》をバトルゾーンに。スリリング・スリー発動』
 ここで進化元の《ミント・シュバール》を呼び出し、スリリング・スリーで山札を捲る。捲られたのは《クレスト・EVOチャージャー》《迎撃の守護者エビンビー》《時空の庭園》。
『ガーディアンが一体。墓地の《ウィング・スパーク》を回収』
「……《ドルルフィン》が破壊されたから、山札の上から五枚を墓地へ……」
『《ワクワク・チャップルン》で攻撃。アタック・チャンス発動。《守護秘伝ウィング・スパーク》』
 さっき回収したばかりの《ウィング・スパーク》が再度放たれる。これで《ワクワク・チャップルン》はまたアンタップされ、しかもカードもドローされる。
 もしそのドローで二枚目の《ウィング・スパーク》を引かれてしまえば、仮にS・トリガーでブロッカーが出ても、連続攻撃で殴り切られてしまう。
『《ワクワク・チャップルン》をアンタップ。最後のシールドをブレイク』
「……S・トリガー発動」
 ——とはいえ、クロのデッキは相手をタップさせるタイプのS・トリガーが多い。連続攻撃なら、簡単に止められる。
「《大行進・スパーク》。相手クリーチャーをすべてタップ」
 守護者たちの行進が稲妻を呼び、《タース・ケルケルヨ》のクリーチャーをすべてタップしてしまう。これで、なんとか1ターンは凌いだ。
 とはいえ相手の《ワクワク・チャップルン》が辛いところだ。いくらブロッカーを並べても《ウィング・スパーク》でタップされてしまい、また連続攻撃が始まってしまう。なので防御はブロッカーでは弱い。
 ならばどうするか。簡単な話だ。
 攻撃そのものを無にしてしまえばいい。
「私のターン……呪文《無情秘伝 LOVE×HATE》」
 序盤から大量にマナ加速をしていたクロが唱える呪文は、《シャングリラ》専用のアタック・チャンス呪文《LOVE×HATE》だ。
 単体で使えば、墓地から問答無用でクリーチャーを蘇らせる呪文。ここでクロが復活させるのは——

「——《「無情」の極 シャングリラ》」

 彼女の、切り札だ。
 《LOVE×HATE》は今までのリアニメイト呪文と違い、復活させるクリーチャーの制限がない。つまり、進化クリーチャーでも呼び戻せるのだ。
「進化元は墓地の《シャングリラ》……さらにゼニスが場に出たから、《LOVE×HATE》のもう一つの能力も発動。《ガチャピンチ》を山札に送る。そしてそのまま《シャングリラ》で《ワクワク・チャップルン》を攻撃。メテオバーンで進化元の《シャングリラ》を墓地に送って、《タース・ケルケルヨ》を山札へ」
 さらにこの時、手札から再びあの呪文が放たれる。
「アタック・チャンス発動……《無情秘伝 LOVE×HATE》。墓地からメテオバーンで墓地に送った二体目の《シャングリラ》をバトルゾーンに。進化元は墓地の《ドルルフィン》と《ドクロンビー》。そしてゼニスが場にいるから《ヤラレ・タイラッキー》を山札へ」
 《シャングリラ》と《LOVE×HATE》の凄まじいシナジーによって、タース・ケルケルヨのクリーチャーが次々と消し飛ばされていく。
「二体目の《シャングリラ》で攻撃……メテオバーンで《カメンビー》を山札へ。シールドをTブレイク」
『S・トリガー《大行進・スパーク》。相手クリーチャーをすべてタップ』
 タース・ケルケルヨもクロの追撃を凌ぐが、ほとんど無意味だ。
 そもそも《シャングリラ》が二体おり、どちらもタップ状態という状況で、まともに攻められるはずがない。
「《カメンビー》《ミント・シュバール》《ヤラレ・タイラッキー》を召喚」
 とりあえずブロッカーを並べるタース・ケルケルヨだが、
「私のターン。呪文《大行進・スパーク》」
 そのブロッカーも、すぐさまタップ状態に。
「《シャングリラ》で残りのシールドをブレイク」
 そして、守りを封じられた守護聖天に、無情を極めた天頂の存在が襲い掛かる——

「《「無情」の極 シャングリラ》で、ダイレクトアタック」


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