二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.581 )
- 日時: 2014/07/06 17:05
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
最近乱数に成功したパーセンターです。
お久しぶりです。
久々の本編、次のイベントはバレンタインデーですね。いやはや、やはりリア充というものはいつ見ても羨ましいものであります。
まあそれはそれとして、夕陽の女装はそれほどまでに似合っていたんですか。そう言えば私の高校時代にもガチで女装した写真を送りつけて来る友達がいました。割と似合ってました。
夕陽も夕陽で、そこまで見当がついていれば大体誰が何の噂をしてるか分かりそうな気もしますが。
ですがバレンタインの前に何者かの神話空間による襲撃。これはまた一悶着ありそうですね。
クリーチャーもそれほど強いわけではなさそうですが、こいつらを投下させた者の正体が気になるところです。
後、竜泉の出番がまだあるか分かりませんが、すこしデッキを変えてもよろしいでしょうか?
とは言っても主軸のバイオレンス・サンダーの召喚方法を、《母なる星域》主体から《ドラグストライク》主体に変えるだけですけど。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.582 )
- 日時: 2014/07/08 08:07
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
パーセンターさん
すみません、返信が遅れました。
最近は雑談板で感想を頂くことが多かったものですから、見落としていました……
本当なら昨年の内に済ませておきたかったイベントなのですが、季節外れのバレンタインイベントです。
そういえばモノクロの友人にも、コスプレで女装した写真を見せてくれた人がいましたね。かなりそれっぽかったですが、まあ、人間って実際に見るよりも、写真で見れば意外と誤魔化しが利くみたいですけど。
この作品ですし、温和なバレンタインで済ませるつもりはないですね。今回も色々と騒ぎ立てますよ。
今回のキーポイントというか、見所というかは、正にそれですね。クリーチャーの発生源がなんなのか、というところが物語の焦点になったりします。
龍泉はわりと出しやすいキャラなので、たぶんいつか再登場すると思います。
デッキの変更はいつでもOKですよー。個人的には《ドラグストライク》の踏み倒しの方が難易度高い気がしますが……まあ、そこは個人の自由ですし、そっちでもっとコンボ的に繰り出すのも面白そうですし。
《ドラグストライク》が入るとなると、自然がなくなるんですかね。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.583 )
- 日時: 2014/07/09 00:33
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
汐とサイレンス トパーズとのデュエル。互いにシールドは五枚。
汐の場には《一撃奪取 ブラッドレイン》。トパーズの場には《涼風の使徒ラプド》《一撃奪取 アクロアイト》。
「私のターンです。《豚乱舞 ブータン・ジャクソン》召喚」
豚(スリラー)乱舞(ダンス) ブータン・ジャクソン 闇文明 (4)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 1000
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーは−3000される。
ウルトラ・ドロン・ゴー:このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、名前に《乱舞》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《乱舞》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
「……なにこの豚」
汐が召喚したクリーチャーに、アルテミスはじっとりとした眼差しを向ける。
「汐、あんたちょっと趣味悪いわよ。なんなのよこの薄汚い豚は」
「アルテミス、あなたでもこのクリーチャーを侮辱することは許さないですよ」
無表情なままで淡々と、しかしその裏には様々ななにかが込められた言葉を、汐はアルテミスに返す。その底知れない眼に、アルテミスは言葉に詰まった。
「……ごめん」
「まあ、とにかく見ていてください。ターン終了です」
「オレのターンだ!」
光文明らしからぬ荒々しい口調のトパーズは、
「進化! 《涼風の使徒ラプド》を、このオレ《サイレンス トパーズ》に!」
サイレンス(呪文たちの沈黙) トパーズ 光文明 (4)
クリーチャー:アウトレイジ 6000
進化—自分のイニシエート1体の上に置く。
W・ブレイカー
誰も、自身のターン中、コスト4以上の呪文を唱えることはできない。
「呪文が唱えられなくなったですか……」
「面倒ね」
『オレでシールドをWブレイク! 《アクロアイト》でもブレイクだ!』
「……っ」
割られたシールドの破片が飛び散り、汐の裂かれた髪が数本舞う。
一気に汐の三枚のシールドが削り取られてしまった。この早いターンで、もう残りシールドが二枚だ。
「まずいわよ、汐。《トパーズ》がいるせいで、軽い呪文が唱えられない……あなたのデッキは序盤に軽量呪文で下準備をしなくちゃいけないのに、それが封じられたわ」
「そうですね。ですが、そのための《ブータン・ジャクソン》です」
「……?」
「見ていれば分かるですよ。《ブータン・ジャクソン》で《トパーズ》に攻撃、能力発動です」
《ブータン・ジャクソン》は攻撃時、相手クリーチャー一体のパワーを3000下げるのだ。
「《アクロアイト》のパワーを3000マイナスして破壊」
『だが、その豚はオレには勝てねぇぞ!』
「分かっているですよ」
むしろ、それが目的だ。
「《ブータン・ジャクソン》が《トパーズ》とのバトルに負け、破壊された……それにより、ウルトラ・ドロン・ゴー発動です」
破壊された《ブータン・ジャクソン》の魂が、闇に飲み込まれる。だがその闇は、無法の闇。束縛から解放され、自由を得るための闇だ。
「狂喜せよ、無法の国家。自由な者たちは無限の騎士、魔槍の帝の来臨です——《凶槍乱舞 デスメタル・パンク》」
凶槍(スピアー)乱舞(ダンス) デスメタル・パンク 闇文明 (8)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 8000
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーは無限にパワーを失う。
W・ブレイカー
ウルトラ・ドロン・ゴー:このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、名前に《乱舞》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《乱舞》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
唯一無二のドロン・ゴー、ウルトラ・ドロン・ゴーで転生した《ブータン・ジャクソン》は、刺々しく荒々しい姿の《デスメタル・パンク》となった。
『今更そんな豚が出て来たところで、オレの勝利は変わらねぇよ! 《希望の親衛隊ラプソディ》《幻盾の使徒ノートルダム》を召喚! そして、オレでWブレイク!』
再び《トパーズ》の攻撃が、汐のシールドを粉砕する。その破片が飛び散るが、まるで騎士の如く仁王立ちする《デスメタル・パンク》に阻まれ、汐には届かない。
しかし、それでもシールドがゼロ枚になったことには変わらない。
「クリーチャーを並べてきたようですね。ならば、こちらも親衛隊に任せるとするです。《希望の親衛隊ファンク》を召喚」
《ラプソディ》に対抗するようにして、汐が繰り出したのは《希望の親衛隊ファンク》。これで《トパーズ》のクリーチャーはすべてパワーが1000下げられ、《ラプソディ》がパワー−500となり、破壊された。
「続けて《デスメタル・パンク》で《サイレンス トパーズ》を攻撃、能力発動です」
攻撃を仕掛ける《デスメタル・パンク》の魔槍が《トパーズ》に伸びる。その時、彼の発した怒号で脇にいた《ノートルダム》が消滅した。
「《デスメタル・パンク》は攻撃時、相手クリーチャー一体のパワーを無限にマイナスするのです。《ノートルダム》は問答無用で破壊ですよ」
確定除去の上位互換とも言える、無限のパワー低下。《パーフェクト・マドンナ》なども、この除去から逃れることはできない。
《ラプソディ》《ノートルダム》に続き、《トパーズ》自身も《デスメタル・パンク》とのバトルに負け、破壊されてしまう。
「な……っ!」
「ターン終了です。あなたの場は全滅ですが、どうするですか」
「くっ、オレのターン……終了だ」
出せるクリーチャーが引けなかったのか、トパーズはマナチャージだけでターンを終える。
「私のターン。呪文《ボーンおどり・チャージャー》、そして《猛菌恐皇ビューティシャン》を召喚。オーバー・ドライブで追加コストを支払い、一枚ドローです」
「オレのターン……クソッ、雑魚ばっかり来やがる。ターン終了だ!」
《ファンク》のせいでこのターンもトパーズはなにもできず。ターン終了してしまう。
「では、そろそろ決めるですよ。墓地進化GV《大邪眼B・ロマノフ》を召喚です」
ここでフィニッシャークラスの大型クリーチャーが飛び出す。この時点で汐は、余裕でとどめを刺せるだけの戦力を揃えられた。
「《デスメタル・パンク》でWブレイク、続けて《B・ロマノフ》でTブレイクです」
さらにメテオバーンで、最初に《デスメタル・パンク》がブレイクし、手札に入ったシールドを山札下に送り込む。
「ぐぬぬ……まだだ! S・トリガー《DNA・スパーク》! お前のクリーチャーはすべてタップだ!」
さらにシールドも追加し、なんとか凌いだトパーズ。
ここから反撃に出たいところだが、
「……《ラプド》二体と《ノートルダム》を召喚だ!」
もしも自分自身を引けていれば、軽量イニシエートから《トパーズ》に進化させてとどめの一撃を与えられたのだが、トパーズは自身を引くことができず。なんとかブロッカーを並べて凌ごうとするも、
「そのような守りは通用しないですよ。呪文《一極両得 ボッカン&ドックン》、相手クリーチャーのパワーをすべてマイナス1000、《ファンク》と合わせて、これで二体の《ラプド》は破壊です」
「だが、《ノートルダム》は残ったぞ!」
「どうでしょう。《ボッカン&ドックン》は、私の場にエグザイルがいれば相手クリーチャー一体のパワーをマイナス3000です。《ノートルダム》のパワーは合計で5000ダウンですよ」
「なんだと……!」
「《B・ロマノフ》で最後のシールドをブレイクです」
ブロッカーに続きシールドもブレイクされ、いよいよトパーズを守るものがなくなった。
沈黙を与える無法者に、踊り狂う魔槍が襲い掛かる。
「《凶槍乱舞 デスメタル・パンク》で、ダイレクトアタックです」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.584 )
- 日時: 2014/07/10 15:43
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
「終わったか」
「大した相手じゃなかったな」
デュエルが終わり、夕陽と汐が神話空間から出て来る。
「…………」
「御舟? どうした?」
「いえ、さっきのクリーチャーは、誰が呼び出したものかと思いまして……」
もう慣れてしまっているが、本来“ゲーム”の世界においてでも、クリーチャーが現実世界で実体化することは普通はありえない話なのだ。
誰かが作為的にクリーチャーを実体化させ、解き放たなければクリーチャーが人を襲うことはない。あの【師団】だって、むやみやたらとクリーチャーを放つようなことはしない。
そして今回の件、一体誰が先のクリーチャーを遣わせたのか。
「最も可能性が高いのは【師団】でしょうが、それにしてはあまりに——」
「汐!」
唐突にアルテミスが声を荒げる。汐もそれに言葉を止めた。
「……どうしたのですか、アルテミス」
「あれ見なさいよ、あれ!」
「夕陽!」
「……うわ」
アルテミスとアポロンが、それぞれ違う方向を指差す。しかし、それぞれが指差しているものは同じだった。
「これは……」
「ま、まずくないか……?」
それは、大量のクリーチャー。夥しい数のクリーチャーが、商店街を両側から闊歩している。
というより、明らかにこちらに向かっている。
「流石にこれは、対処しきれないですよ……」
「逃げるしかない……御舟!」
夕陽は汐の手を取って、即座にその場から駆け出した。
「ちょっと、人の主人に来やすく触れないでくれるかしら。不浄な人間の不浄な汚物が感染するんだけど」
「そんなこと言ってる場合か!」
叫びながら脇道に逸れて町に出るが、向かう先にもクリーチャーが構えていた。
「こっちもか……くそっ!」
クリーチャーが道を塞ぐたびに脇道に逸れ、町の中を駆け回る夕陽と汐。
しかしこんな来たこともない町で走り回っているのだ。どこか目的地があるわけでもなく、適当にクリーチャーのいない方に走っているだけである。
そんなことを続けていれば、いつか、
「先輩っ、この先、行き止まりです」
「な……っ!?」
闇雲に走りすぎた。気付けば夕陽と汐は袋小路に追い詰められていた。
「なにやってんのよ人間! もっと考えて走りなさいよ能無し! あなたの頭は飾りなの?」
「だからそんなこと言ってる場合じゃ……ああもう、こうなれば」
夕陽はデッキを手に進み出る。
「先輩、まさか戦うつもりですか」
「こうなっちゃった以上、そうするしかないだろ」
とはいえ、狭い通路を埋め尽くすほどの数がいるクリーチャーたちだ。ちまちま倒していてもキリがない。
戦おうが戦うまいが、結末は目に見えてしまっている。
と、その時。
突如、通路が炎上した。
「な……っ」
「なんだ……!?」
ギリギリ夕陽たちの所には到達していないが、轟々と燃える火柱が通路を埋め尽くし、その前に通路を占拠していたクリーチャーたちを焼き尽くす。
「これは、焦土の炎……」
「焦土……? って、まさか、これ……」
アポロンの言葉を聞き、目の前の光景を思い出す。夕陽は以前にも、このような光景を見たことがある。
「ったく、いきなり神話空間が開いたり、クリーチャーが街中を行進したりしてるから、なにがあったかと思えば……またお前らか」
火柱が鎮火する。すると、通路を埋め尽くしていたクリーチャーはすべて燃え尽き、代わりにその消し炭を踏みしめる者がいた。
それは——
「亜実……」
——《焦土神話》の現所有者、火野亜実であった。
「まったく、相変わらず危なっかしいな、お前ら」
「助かったよ亜実、本当にもう終わりかと思った……」
「ありがとうございましたです、亜実さん」
礼を言いながら、汐は頭も下げる。
窮地を亜実に救われた夕陽たちは、とりあえず彼女と同行することとなった。
「ところで、さっきの炎ってさ」
「ああ、そうだ。《マルス》の力だ」
言って亜実は、ピッと一枚のカードを取り出す。同時に、そのカードから光が発され、クリーチャーが飛び出した。
「久し振りだな、空城夕陽……それに、アポロン」
「マルス!」
実体化したのは、二頭身でデフォルメされてはいるが、《焦土神話》の名を持つ『神話カード』マルスだった。
その登場に、アポロンが飛び出し、マルスと腕を交差させる。
「会いたかったぜマルス」
「俺もだ、アポロン。この姿になるまでは、同じ所有者の元にいたが……直に会うことは少なかったからな」
「……マルスから聞いた話だが、マルスとアポロンは旧友——というより、戦友だったそうだ」
「へぇ、それで」
今にも昔話に花咲かせそうな雰囲気の二体だったが、今はそれどころではない。
マルスの力があれば、炎を発生させることができる。その炎で先ほどのクリーチャーを焼き払ったわけだが、なにも無条件で使えるわけではない。あの炎を発生させるたびに、マルスのエネルギーが消費される。使い続ければいつかマルスのエネルギーが尽きてしまうので、無尽蔵に使えるわけではない。
だがクリーチャーの方は、無限に湧いて来るのではないかと思うほどに存在している。実際、この道中でも何度かマルスの世話になっていた。
「そういえば、亜実さんはどうしてこの町に来ているのですか」
「地元なの?」
「違う」
低い声で否定する亜実。まるで、こいつらと取り合うのは面倒だとでも暗に言っているかのようだ。
だが内心どう思っているのかは分からないが、彼女は自身がここにいる理由を語る。
「少しばかり、この町に用のある奴がいるんだよ」
「用のある奴? 誰?」
「もうすぐ着く……ほら、ここだ」
そう言って亜実は足を止める。
目の前にあるので、それほど大きくない雑居ビル。エステやらどこかの事務所やらバーやら塾やら、様々な店が詰め込まれたビル。
そんな中で最も目を引くのは、このご時世、というかこの現実世界において、ある意味非現実な一文。フィクションの中でしか存在しないようなものの名だった。
広い窓ガラスに大きく書かれているそれを、夕陽は読み上げる。
「『和登栗須探偵事務所』……?」
「……やれやれ、あろうことか貴様に見つかってしまうとはな『炎上孤軍』」
「いや、あれだけでかでかと書かれてたら誰でも分かるだろ……」
雑居ビルの三階に『和登栗須探偵事務所』はあった。
如何にもな探偵っぽい恰好をしていたのはただの趣味だと思っていたが、まさか本当に探偵事務所を開いているとは思いもしなかった。
そもそも探偵なんてフィクションの世界のような活躍などしないし、依頼する人だって少ない、その上に賃金も低い。儲かるような仕事ではないので、趣味で営んでいる自営業、といったところか。
「しかし、なぜこの場所が分かった?」
「いつか襲撃してやろうと思って、青崎に調べさせた」
「『機略知将』か……僕も情報収集力には自信がある方だが、奴には敵わないな」
襲撃、という言葉はスルーする栗須。単純に聞き流していたのか、それとも亜実に襲撃されても問題などないという意味か。彼の性格を考えれば恐らく後者だろう。
「で、なんの用だ。これでも僕は忙しいんだ」
「よく言う。どうせ仕事なんてないんだろ、探偵かぶれニートが」
あからさまな罵倒だった。仕事が来なくても職に就いているのだから、ニートとは言えないと思うのだが。
「本来ならここでお前をぶっ飛ばしているところだが、今は状況が違う。というかお前、気付いていないのか?」
「神話空間のことか?」
気付いていたようだ。当然か、彼も伊達に“ゲーム”の世界を生き抜いていない。
「今、外には大量のクリーチャーが蔓延っている。あたしらも、迂闊に外には出れない状況だ」
「ここは避難所ではないのだがな」
「とりあえずここにいさせろ。どうせ暇なんだろう」
「凄い言い分だな……」
傲岸不遜というか、図々しいというか、栗須相手だからか、亜実も随分と言いたい放題だ。
そんな亜実に、栗須は息を吐く。
「はぁ……今日は忙しいのだがな」
「どの口が言う。どうせ今は神話空間が開いている。まともな仕事なんて——」
「普段は人など来ないが、客が多すぎるのも考えものだ。一日に二団体も来るとは」
「二団体、ですか……」
少し引っかかる言葉だ。たかだか三人の集団を団体とは言わないものだが、三人を一つのグループと考えれば、分からないこともない。
それが、二つ。それはつまり、
「栗須くーん、座標の割り出しフィニッシュしたよー。電源サンクス!」
と、その時、奥の扉が開いた。そして中から出て来たのは、総計四人の男女。
そのすべてに、夕陽たちは見覚えがあった。
「っ、え、この人たち……」
「まさか、こんなところで出会うとは、ですね……」
「おいおい、どんな連中匿ってんだよ……!」
驚愕を隠せない夕陽たち。
扉の向こうから出て来たのは——
「お? おぉ! エブリワン、久し振りだね!」
——【ミス・ラボラトリ】の研究員、黒村形人、九頭龍希道、九頭龍希野、そして【ラボ】の所長、ラトリ・ホワイトロックの四人であった。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.585 )
- 日時: 2014/07/11 13:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
一方その頃、カフェ『popple』では。
チョコレートを冷やしている間、暇なのでとデュエマに興じている少女たち。なんだかんだでこうして女子だけで集まることは今までなかったので、思いのほか楽しくやっているのだが。
その空気をぶち破る、無粋な男が一人——と、その他二名。
「おーい、邪魔するぞー」
「お邪魔するわ」
「お、お邪魔します……」
カランカラン、と来店を知らせる鈴が鳴り、三人の男女が店内に入ってくる。
真っ先に目についたのは、二人の少女を連れた男。その姿を見て、このみはガタッと立ち上がった。
「ルカにーさん! どうしたの? 今日はお店、お休みだよ?」
「お前に会いに来たんだよ。ほら、年明ける前にも来たけど、あの時は結局、御舟汐——じゃないか。今は月夜野? だったか。のことでバタバタしてたから、戦い損ねただろ」
「それで、仕事残ってるのに飽きずにここに来たってわけ。本当、迷惑甚だしいわ」
「ま、まあ、ささちゃん、それがかいちょーさんですから……」
純粋にデュエルすることが好きだという点で波長が合うのか、、ルカはこのみのことをいたく気に入っている。以前にもまたデュエルするためにこの店を訪れたが、その時は夕陽と汐の関係に軋轢が生じていた時だったため、結局対戦はできなかった。
なので今度こそ、このみとデュエルしようと気合が入っているようなのだが、
「——邪魔が入ったみたいだ」
「え? 邪魔?」
このみたちが首を傾げている間に、ルカは閉めた店の扉を再び開け放つ。外の冷たい空気が店内に入って来ると同時に——ルカの姿が消えた——
「え……っ?」
「ルカにーさん!?」
「呼んだか?」
——と思ったら、次の瞬間には元に戻っていた。
一体なにが起こったのかと一同が困惑する中、ルカはさっきまでは持っていなかった、一枚のカードをテーブルに置く。
「《節食類怪集目 アラクネザウラ》……?」
「俺が今さっき速攻で倒してきた」
「倒してきたって……」
デュエルしてきたということだ。そして、それはつまり、
「——クリーチャーが実体化しているみたいだ」
ルカの一言に、場の空気が一変する。
「クリーチャーが実体化してるって……な、なんで……?」
「それはあたしたちにも分からないわ
「で、ですが、なんらかの原因で、実体化したクリーチャーが、街中に出現しています……このまま放っておくわけには……」
「いかないよね」
ささみによると、出現したクリーチャーの数は決して多くないが、誰が実体化させているのかは不明とのことだ。
「俺はこういう面倒なことはしたくないんだが……前にラトリが、身元不明のクリーチャーが出たら気を付けろって言ってたしなぁ……流石に放っておけないか」
「当たり前でしょ。仕事ほったらかした罰が当たったのよ」
「で、では、わたしたちは、先に出ますので……」
そう言って、ルカとうさみ、ささみの三人は店内から出て行く。
「……わたしたちも、早く行った方がいいよね。実体化したクリーチャーを早くカードに戻さないと……」
「……それなら、手伝う」
「そうですね。そういうことなら、人手は多いに越したことはありませんし」
「え、でも……」
「遠慮はいらない。もう、こういうのには慣れたから」
クロ、葵、仄の三人は、それぞれデッキを掲げながら言う。
葵の言う通り、街中のクリーチャーを速やかに倒さなければいけないのなら、人手は多い方がいい。ここは、ありがたく手伝ってもらうべきだろう。
「よし……じゃあみんなで、町のクリーチャーを倒し——」
と、その時。
「このみ、ちょっといい?」
「っ……お、お姉ちゃん? どうしたの……?」
居住スペースとなっている店の上階から、このみの姉、木葉が降りて来る。
神話空間が開いて一般人はいないと思ったが、ここはギリギリ範囲外だったのだろうか。
「急ぎの用があるんだけども、来てくれるかしら?」
「え、今から? 今は……」
「できれば、姫乃ちゃんもいて欲しいんだけど」
「わ、わたしもですか……?」
酷いタイミングだ。さあ今からクリーチャーを倒しに行こう、というところで呼び止められてしまった。
人手は多い方がいいということで三人にも手伝って貰うというのに、このみと姫乃がいなくては本末転倒だ。しかし、強引に木葉を振り切るのも難しいし、下手をすれば巻き込んでしまうかもしれない。
このような状況に弱いこのみと姫乃は、機転を利かせることも出来ず、視線を彷徨わせながら困っていると——
「じゃあ、私たちは行ってきますね」
「え?」
「あおいん……?」
唐突に、葵はそんなことを言いだした。
さらに続けて仄とクロも、
「足りないのはメモにあったものだけだよね?」
「すぐに買ってくる……」
まるで状況が読めない発言だったが、やがて理解する。
三人は目で言っている。自分たちだけで行く、と。
ここで無理やり木葉を振り切るのは危険だと判断し、もっともらしい理由をつけて外に出て、クリーチャーを倒して来ようというのだ。
その考えを汲み取った二人は、申し訳なさも感じたが、それ以上に、
「……うん、ありがとう!」
「お、お願いするね」
感謝した。
ここは彼女たちに任せようと、そう思ったのだった。
「最近、『神話カード』以外のビッグなパワーが各地でディスカバリーされているんだよ」
『和登栗須探偵事務所』にて、ラトリは一同にそう告げた。
「原因はアンノウン。ただフォウンドしいることは、そのパワーが確認されると、クリーチャーが大量発生するとか、ストレインジな現象がハップンするんだ」
「つまり、今回のクリーチャー大量発生も、その大きな力とやらが関わっている、ということですか」
「私はそうじゃないかとビリーブしてるよ」
他にも、その力が確認されると、様々な異常現象が起きるらしい。
データは少ないながらも、最も発現率が高いのがクリーチャーの大量発生。それに伴う神話空間の展開。他には、クリーチャーの変質や、離れた地域にも小規模の同じ現象が起こるなど、発生する現象に法則性はなく、一定していない。
「で、ラトリさんや黒村先生たちは、その異変を突き突き止めるためにここに……?」
「そういうことだ」
「この事務所を見つけたのは偶然だけどね。なにが起こるか分からないし、かの『深謀探偵』さんに力を借りようかと思って」
九頭龍(希道)の、どこか小馬鹿にしたような物言いに、栗須は少しばかり目を細めるが、
「……勝手に決めないでほしいものだが、確かにその現象には興味がある」
「あたしもだ。最近ずっと思っていたことだが、ここに来て明確に“ゲーム”に変化が訪れたわけだしな」
「……そういえば」
ふと、夕陽は思い出す。今日この街に来る前の、電車の中。青崎記に言われたことを。
(最近、大きな力が確認されることがあるって……あいつはこのことを言っていたのか)
ラトリと言っていることがほぼ同じなので、その情報は正しかったようだ。
「話をリバースするよ。とにかく私たちはその現象の原因を探っててね。たまたまディスカバリーしたこの事務所をホームベースにして、このタウンのハプニングがなんなのか、サーチしてたんだ」
「人の事務所を勝手に拠点にするな」
「でも、根本的な原因はいまだアンノウン。バット、アテナのお陰でこのタウンで確認されたビッグなパワーポイントは、いくつか割り出せたよ」
そう言ってラトリはしゃがみ、足元のパソコンを操作する。
その時、夕陽の携帯に着信があった。
「今、君たちのテルフォンに、割り出したパワーポイントの座標マップを送ったよ」
「どうやって人のアドレスを……」
唸る夕陽。個人情報にまで介入してくるラトリの情報収集力が、少し怖くなった。
「確認されているパワーポイントはシックス。ここにいる人はエイトだから、数が半端になっちゃうけど……確認されているポイントにはばらつきがあるから、ツーマンセルで行こうか」
「なら空城、お前は月夜野汐とだ」
「そうね。見知った仲間と一緒の方が、こういう時はいいわね」
真っ先に決められた夕陽と汐のペア。
「速攻で決まったな……」
不満はないが、なんとなく釈然としない。
「仲間同士っていうなら、所属が同じ人同士の方がいいよね。『深謀探偵』さんは、『炎上孤軍』さんとかな」
「なに……?」
「こいつと、だと……?」
こちらは思い切り不満気だった。二人は犬猿の仲で、因縁もある。当然と言えば当然だ。
「待て、僕はこのような野蛮な女と行動するつもりは——」
「あたしもこんな胡散臭い探偵もどきと一緒になんて——」
「じゃあネクストペア、九頭龍君と希野ちゃんでいいかな」
栗須と亜実の苦言はスルーされ、ラトリが次のペアを決めてしまうが、
「え……ちょっと、所長。流石にそれは冗談きついですよ……」
「? ジョークじゃないよ、マジだよ、マジ」
「……嘘、でしょ……」
ガックリと項垂れる希野。しかしラトリには逆らえないのか、それ以上反発はしなかった。
「僕と一緒がそんなに嫌なの?」
「嫌に決まってるでしょ」
「おおぅ、ストレート……」
「じゃあ、俺は所長とですか」
結果、夕陽&汐、亜実&栗須、九頭龍(希道)&希野、ラトリ&黒村というペアで決定したのであった。
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