二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.466 )
日時: 2014/02/28 00:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

>>464
>>465


 要するに、一他作品の主人公を一時的に、単発のオリキャラのように扱って短編を書く、ってことですね。

 三人で冒険ですか……流石に世界観が世界観なので、ちょっと厳しいように思われます。短編ですし。
 少なくとも、モノクロにはちょっとイメージができないです……まあ三人でなにかするのであれば、それはそれで面白そうなので、見てみたい気もしますが。

 あの三人(人ではないか)の掛け合い……確かに気になるところですが、夕陽とヒナタの接触は(汐が絡みそうなので)わりとナイーブなんですよね。下手したら時系列がしっちゃかめっちゃかになりそうで怖いです。
 少なくとも、モノクロの方ではドラポンやシンデレラは勿論、アポロンも出さない予定です。純粋な主人公の地力が試される短編になる……と思います。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.467 )
日時: 2014/02/28 01:03
名前: セロ ◆R4hLm3t7XM (ID: Lt03IZKe)


>>466

桜と夕陽に関してもややこしくなりそうですね
(こちらの作品には葵が登場するため)

ただ、ぶっちゃけた話、葵の登場時期を考えると

0メモ→御伽・神話(同一年度)
勝手に略してすいません(汗)
となっていくと思います。
パックの発売の都合もありますし

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.468 )
日時: 2014/02/28 03:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「汐ちゃん、大丈夫だったかなぁ……」
 【神格社界】のパーティーの翌日、十二月二十五日。
 夕陽たちは日常という縛りを受け、学校へと登校しなければならない。昨日の今日なので授業は上の空。結局、ほとんど机に座ったままの一日を過ごし、下校していた。
「さあな……」
「で、でも、御舟さんはしっかり者だし、大丈夫じゃないかな……?」
「だといいけど……」
 昨日の夜、夕陽が最後に見た汐の後姿。あれは、いつもの彼女ではなかった。
 夕陽の見間違え、勘違いかもしれないが、ずっとそのことが気にかかる。
「僕とこのみが御舟と出会ったのは、中学三年の春だ。なんだかんだ言って、僕らと御舟との付き合いはまだ二年にもならない。まだ、僕らの知らない御舟がいてもおかしくはないよ」
「汐ちゃん、自分のことはあんまり話さないもんね……澪にーさんからも汐ちゃんの話は聞かないし」
「謎が多いよな、あの兄妹……」
 汐は自ら自分のことを語る人間ではない。澪に至ってはなにを考えているのかすら分からない。
「ならさ、今日、行ってみる? 汐ちゃん家」
「……そうだな。少し、ちゃんと話した方がいいかもな」
 杞憂かもしれないが、むしろ杞憂であることを望むが、昨日の一件から汐になにかしらの変化が訪れただろうことは察するにあまりある。
 汐に聞いて答えが出るかどうかは分からないが、こんな問題、本人がいなければ解決しない。外野だけで騒いでいても、どうにもならない。
「じゃあ今すぐ行こう! この時間ならもう中学校は授業終わってるし、汐ちゃんも家にいるはず——」
 このみの言葉が止まった。
「……このみ?」
「このみちゃん? どうしたの?」
 唐突に言葉を失い、不審に思う夕陽と姫乃。このみは、ぽつりと声を漏らす。
「……汐ちゃん」
「え?」
 その漏れた声に反応し、二人はこのみの視線の向こうを見遣る。
 そこにいたのは、見慣れた少女。
 御舟汐、だった。
「…………」
 まるで夕陽たちを待ち構えているかのように、道の真ん中で立ち尽くしている。制服姿で、鞄も持っているので、こちらも学校帰りのようだ。
「……御舟、大丈夫——」
「先輩」
 夕陽の言葉を遮る。
 彼女のその声は、いつになる刺々しく感じられた。
「昨日のあれは、どういうつもりだったのですか」
「……? 昨日の、あれ……? なんのこと?」
 思い当たる節はないわけでもないが、しかしわざわざこうして出て来てまで聞くことなのだろうかと思う。
 だが、そんな夕陽のぬるい思考で導き出されるような答えは、汐は求めていない。汐は、自らその答えを示す。
「私を神話空間に引きずり込んで、戦ったことです。私の惨敗でしたが」
 彼女らしからぬ最大限の皮肉がこもった言葉だった。そんないつになく敵対的な態度に戸惑うが、それ以上に彼女の発言に驚きを禁じ得ない。
「神話空間……? え? なに、どういうこと……?」
「しらばっくれるつもりですか。しかし、証拠は私の身体にあるんですよ」
 言って汐は、セーラー服の裾を掴み、グイッと引き上げる。同時に、彼女の白い柔肌が露わになった。
 いや、それはもう、白くも柔肌でもなかったが。
「なっ……!」
「……!」
「う……っ」
 三者同様の反応。姫乃に至っては視線を逸らし、口元を押さえている。
「これが証拠ですよ」
 それは火傷だった。彼女の白くなめらかな肌は、水ぶくれができ、赤く焼けている。
 むごいと言うほど大きな火傷ではない。だが、それは紛れもない傷。彼女の負った、痛々しい傷なのだ。
「昨夜、先輩との戦いでとどめを刺された時にできた火傷のようです」
 淡々と語る汐。しかし淡々としているのはペースだけで、その声は、いつもの彼女ではない。
 夕陽たちも突然そのようなものを見て、軽くパニック状態になっていた。
「ゆ、ゆーくん!」
「いや、違う……僕は知らない! どういうことだよ、御舟!」
「それを私が聞いているのです」
 思わず叫ぶ夕陽。だが、一方汐は冷静に返す。
「はっきり言うとです、先輩。私は怒っているのですよ。しかし昨夜のあの行為になにか意味があったとするのであれば、私の怒りは収まるかもしれないです。私が納得するような理由でなくてもいいです、とりあえず説明してください。昨日の夜、あれはどういう目的があったのですか、先輩」
「いや、だから、僕は知らないよ……昨日の夜は、君と別れた後、そのまま帰って——」
「先輩のデッキ」
 また夕陽の言葉を遮る汐。
「《メンデルスゾーン》や《エコ・アイニー》は勿論、《レグルス・ギル・ドラゴン》《鬼カイザー「滅」》も入っているですよね」
「え……まあ、確かに入れてるけど……」
 ひまりの遺したカードを少しずつデッキに組み込み、いろいろと試行錯誤を繰り返している夕陽のデッキ。確かに今あるデッキの中に、汐が挙げたカードはすべて入っている。
「私は、今挙げたカードでやられたのです……先輩のデッキにそれらが入っているのも、証拠となりえるのではないでしょうか」
「だから知らないって! なんで僕が御舟と、神話空間で戦わなくちゃいけないんだよ!」
「だから言っているではないですか。私がそれを聞いているのです」
 まったく話が噛み合わない。汐の主張と夕陽の主張、どちらの主張にもなにかが欠けているようで、まったく相いれない。
 衝突しているようで、すれ違っている。そんな、相容れなさが、そこにはあった。
「……先輩なら、直接聞けばちゃんと話してくれると思ったのですが、私の思い違いでしたか。幻滅です」
「なんだよそれ……!」
 明らかな敵意と侮蔑のこもった眼で、夕陽を見つめる汐。
「……もしかしたらこのみ先輩や光ヶ丘さんに聞かれたくない理由でもあるのかもしれないですね。それならそれで構わないですよ。これは最大限の譲歩です」
 そんな風に前置きして、汐は夕陽に背を向けた。
「今日中に、私に連絡をください。そこで昨日の一件について、弁明することがあればいくらでも聞くですよ。今回は、それで全部チャラです」
 そして、そのまま去っていく。
「なっ……お、おい! 待て……御舟!」
 夕陽が呼びとめようとする。だが、聞こえていないわけではないだろう、汐はその言葉を無視して、歩を進める。
 やがて、彼女の姿が見えなくなった。
「……ゆーくん、どういうこと?」
「空城くん……」
 怪訝、というより心配そうに夕陽を見上げる二人。その言葉をそのまま返したいくらいだ。
「僕にだって分からない。御舟はなにを言ってるんだ?」
「御舟さんは、空城くんに襲われたって、言ってるんだと思うけど……」
「ゆーくんは、そんなことしないよねぇ……?」
 このみも姫乃も、それは分かっている。なにより夕陽自身が、自分はそんなことはしていないと証明できる。
「一体、どうなってるんだ……?」



 言い過ぎたとは思わない。むしろ控えめなくらいだった。
 汐は帰路につき、我が家に続く裏路地を進んでいく。
 幻滅したのは本当だ。まさかこうも言い逃れようとするとは思わなかった。
 いつも通りの暗く細く、誰もいない道をひたすら歩く。
 これからどうするか。恐らくあの調子では今日中に連絡なんて寄越さないだろう。
 目的地へと目指す、その途中、彼女の足が止まった。
「……なんなんですか、あなたは」
 振り返り、問いかけるように言葉を発する。それも、どこか苛立っているような声だ。
 そこにいたのは、一人の男。しかし、見るからに正常ではない異常者だった。
「ウ、ウ、ウゥ……」
 容姿自体はおかしくない。至って普通の出で立ちの青年だ。しかし、目は白目を向き、手はだらんと垂れ下がり、口もだらしなく開き、まるでゾンビだ。
 生きたゾンビ、とでも言うのか。
「……兄さん曰く、私は容姿がいいみたいですが、生まれてこの方ストーカーというものに付きまとわれたことは一度もないのです。なのでその手の経験がないのですが、ストーカーと言われるような方々は、すべからくしてそのような出で立ちをしているのですか」
 ふらふらとした足取りで近づいてくる男に対し、汐はさり気無く携帯電話を探りながら、じりじりと下がる。
 その時だ。

 二人の間の空気と空間が、一変する。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.469 )
日時: 2014/02/28 03:53
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 いきなり神話空間に連れて来られた汐は、目の前に浮かぶ五枚の手札を取りながら、男を睨むように見据える。
「……私は今、機嫌が悪いのです。手加減なしで完膚なきまでに叩きのめして墓地に埋めるですよ」
 そして始まった、汐と男のデュエル。
 互いにシールドは五枚あり、汐の場には《暗黒導師ブラックルシファー》が一体。男の場には《白骨の守護者ホネンビー》が一体。
 汐も男も、序盤から墓地を増やしており、墓地を利用する戦術であることは見え見えだ。だが汐は、爆発的なマナ加速に成功しており、既に11マナもある。
 だが、男のターン。
「ウ、ウ、ウゥ、墓地進化GV……《大邪眼B・ロマノフ》を、召喚……!」
 墓地の三体のクリーチャーを進化元にして、《B・ロマノフ》が召喚される。一足早く、大型クリーチャーを出されてしまった。
「ウ、ウア、アガァ……《B・ロマノフ》で、Tブレイク……!」
 さらに、メテオバーン発動。
 《B・ロマノフ》の下にあるカードを一枚墓地に置き、汐の残り一枚の手札は、山札の底へと沈められる。
 そして、Tブレイク。
 汐のシールドが三枚、吹き飛ばされた。
「……それだけですか」
 割られた三枚のシールドを手札に加えつつ、呟く汐。
「なら、このターンで終わりですね」
 さらにカードを引き、宣言する。
 それは、悪魔復活の宣言であった。
「私のターン。《「謎」の頂 Ζ—ファイル》を召喚です」
 召喚されたのは、昨日の記や彼とのデュエルでは出せなかった《Ζ—ファイル》。だが今は、その凶悪なる姿が顕現している。
「《Ζ—ファイル》の召喚時能力発動、私の《ブラックルシファー》を破壊です」
 そして墓地に溜まっている、大量の悪魔が呼び戻される。
「墓地の《ブラックルシファー》《ガル・ヴォルフ》《オルゼキア》《ハンゾウ》、《ヴァーズ・ロマノフ》《ドルバロム》、そして——《偽りの悪魔神王 デス・マリッジ》をバトルゾーンへ」


偽りの悪魔神王(コードコマンド) デス・マリッジ 光/闇文明 (10)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/デーモン・コマンド/アンノウン 15000
マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
進化—自分のデーモン・コマンドまたはエンジェル・コマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるデーモン・コマンドとエンジェル・コマンド以外のクリーチャーを全て破壊する。その後、各プレイヤーはマナゾーンにある呪文をすべて、持ち主の手札に戻す。
T・ブレイカー
相手は呪文を唱えることができない。


 《ハンゾウ》と《オルゼキア》からそれぞれ進化した《ドルバロム》と《デス・マリッジ》。
 闇単色の男のデッキに《ドルバロム》は効果がないが、《デス・マリッジ》はそんなことなど無関係に、破壊と束縛をもたらす。
「《デス・マリッジ》の能力で、お互いのデーモン・コマンド、エンジェル・コマンド以外のクリーチャーをすべて破壊」
 刹那、男の場にいた《B・ロマノフ》と《ホネンビー》ば消滅する。
「さらにお互いのマナゾーンの呪文をすべて手札に戻すですよ」
 突如、男のマナゾーンにある呪文がすべて持ち主の手札へと戻っていく。
 大量の悪魔、それも単体だけでも凶悪な力を持つデーモン・コマンドが復活し、男の場はボロボロ。《Ζ—ファイル》が出た時点で、汐の勝利は確定した。
「《ヴァーズ・ロマノフ》でWブレイク、《デス・マリッジ》でTブレイク」
 そして二体の進化デーモン・コマンドによる攻撃が放たれる。男はS・トリガーを引いたようだが《デス・マリッジ》の効果で呪文は唱えられない。
 為す術のない男に、最後の悪魔神が迫る。
「《ドルバロム》で、ダイレクトアタックです」



 神話空間が閉じ、汐は元の世界の地へ降り立つ。
「……お話にならないですね」
 そして、倒れた男の言い放った。
「なにが目的かは知らないですが、あなたの素性くらいは聞いておくですよ。何者です」
 しかし、返事はない。本当にただの屍のように、ピクリとも動かない。
「……まさか本当にゾンビなんてことはないですよね」
 完全に白目をむいており、流石に死んではいないだろうが、気を失っているだけのようだ。
「どうすればいいのでしょうか、この人……放っておくのも危険な気がするのですが、あまり関わりたくもないですし——」
 と、汐が男に近づこうとした、その時だ。

「あなた、やっぱりいいわね」

 どこからともなく、声が聞こえてくる。
「……誰です。どこですか」
「ここよ。今出るわ」
 次の瞬間、男の中から白い靄のようななにかが飛び出した。
 そのなにかは少しずつ実態を現していき、最後には確固とした形を持つ存在となる。
 それは、一言で言えば妖精、のように見える少女。二頭身程度の矮躯、真っ白な長い髪に、裸体を包むのも真っ白な一枚布。だがその布は、裾へと向かうにつれ滲むように黒くなっている。
「……誰です」
「あら、ピンとこないかしら。この姿、似たようなものを見たことがない、なんてことはないと思うのだけれど」
 彼女の言う通り、確かに見覚えはある。彼女そのものは初めて見たが、これとよく似た存在を。
「まあ、それについては今はどうでもいいわ。それよりあなた、ちょっといいかしら」
「なんですか。私は今、あなたのような意味不明な妖精さんに関わっている暇はないのです」
「知らないわ、あなたの事情なんて。でも、あなたにとって決してマイナスばかりのことでもないと思うわよ」
「……どういうことです」
「アタシの目的とあなたの目的と、接点がないわけでもない、と言っているの」
 無視しようかと思った汐だが、しかしこの存在に関しては、流石に無視を決め込むことはできない。
「……話だけは、聞いてもいいですよ」
「なら聞いてもらうわ。どの道、あなたにとっても悪いことではないと思う」
 その前に確認なんだけど、と今更のように彼女は尋ねた。
 だが、確認というものは、結果だけを言えば相手がそのことを知らない場合のみに意味をなす。この場合は無意味だ。
 なぜなら、彼女が確認を求めたものは、汐にとってはこの上なく既知のことだったからだ。

「——《アポロン》とその所有者について、知ってるかしら?」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.470 )
日時: 2014/02/28 04:01
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 十二月二十六日。
 夕陽は、『御舟屋』に向かっていた。
 その理由は単純明快。汐ともう一度話がしたかったからだ。
 昨日は困惑し、熱くなってしまったが、ちゃんと話し合えばなにかが変わるかもしれない。冷静になった頭で考えても、夕陽には汐の言っていることはよく分からなかったが、もう一度、面と向かって話を聞けば、分かるかもしれない。
 そんな根拠のない淡い希望を持っていた。
「本当なら、昨日のうちに会っておきたかったんだけどね……」
「仕方ねえよ。昨日は汐、いなかったんだろ?」
「いなかったというか、居留守を決め込まれた感じだけどね」
 実は昨日、一度帰宅してから、少し頭を冷やし、『御舟屋』を訪ねた。
 しかしその日、店内にいたのは澪だけで、澪は、

『なんかよく分からないが、お前らが来たらいないって言っといてくれ、って言われた。なんかあったのか?』

 と言ってた。
 つまり、昨日、汐が帰宅した時点で、彼女は夕陽たちに会う気がなかったことになる。
「でもよ、汐は連絡寄越せって言ってたんだろ? それなに会う気がないって、おかしくねえか?」
「気持ちは分からなくもないけどね。面と向かって話そうとすれば、また熱くなって、お互いの主張が噛み合わなくなるかもしれない。そうなったら昨日の焼き直しだ。御舟はそれを懸念したのかもしれない」
 そう考えると、後輩に気を遣わせてしまったような気になり、少々へこむが、今は気を沈めている場合ではない。
 今、夕陽と汐の間には明らかな亀裂ができている。先輩として、などと格好つける気もなくはないが、それでも自分からその亀裂を埋めようとするべきだ。
(ひまり先輩も、僕らが仲違いすることを望んではいないはず……僕の方から、御舟の誤解を解かないと)
 そのために必要なのは、元に戻るがやはり汐ともう一度話すことだ。
 また熱くなるかもしれないが、逆に言えばそれは、汐も本心をぶつけているということ。その本心を理解しなければ、この問題は解決しないだろう。
「汐、今日は会ってくれるといいな」
「そうだね。一日置いたけど、それでも昨日の今日だし、変な解釈されても困るからメールも入れてない。今日も会ってくれない可能性が——」
 そんなことを懸念する夕陽だったが、しかしそれは杞憂に終わる。
 なぜなら、夕陽の探し人は、向こうから来たからだ。
「——先輩」
「御舟……!」
 ちょうど人通りのない裏路地に入ったところ、狭い路地のど真ん中で、待ち構えるようにして汐は立っていた。場所こそ違えど、構図は昨日とほぼ同じ。
「待っていたですよ、先輩。兄さんから聞いたです、昨日、うちを訪ねたそうですね」
「ああ。もう一度君と話がしたい。昨日はなにしてたのか知らないけど会ってくれなかったからね。今日は落ち着いて話ができるみたいで、よかったよ」
「そうですか、よかったですね。私も先輩ともう一度お話ししたいと思っていたところです」
 ただし、と言って、汐はスッとなにかを取り出す。
「口ではなく、こちらで、ですが」
 それはデッキケースだ。その行為ひとつで、夕陽は彼女の言わんとしていることを理解する。そして、その会話には反対の意思を示す。
「御舟……違う、僕は戦いに来たわけじゃない。僕は、君と戦いたくない」
「どの口がそのようなことを言うのでしょう、先輩からけしかけてきたことではないですか」
 落ち着いて話がどうのこうのと言ったが、まったく落ち着けない。これは完全に、ヒートアップするパターンだ。
 歯車が噛み合わないような、坩堝に嵌ったような。とにかく、この軌道は修正しなければならない。
 そう、思った時だった。
「それに、今回は私だけの意向ではないのです」
「え……?」
 その言葉の意味を理解できない夕陽。それほど深い意味はないのではと一瞬思ったが、それが違うということも一瞬で理解した。
「そういうことよ、人間。あなたと戦うことに意義を見出すものは、他にもいるの」
 突如、声が聞こえてくる。前方の方から聞こえるが、その位置ははっきりしない。
「え、なに? どこから……?」
「お、おい、この声って、まさか……!」
 困惑する夕陽と、吃驚したようなアポロン。それぞれの反応を見つつ、汐は手にしたデッキケースから、一枚のカードを抜き取る。
「出て来てください、アルテミス」
「言われなくても」
 そして、そのカードから影が飛び出す。
 純白の髪をなびかせた、少女のような姿。白から黒へとグラデーションする布を纏った二頭身の体躯。
「っ、なんだ、お前……!」
「お前とはご挨拶ね、人間。あなたのすぐ横にいるじゃない、この姿と同じ存在が」
「横……?」
 夕陽の横にいるのは、ふわふわと浮いているアポロンだけだ。ということは、
「下等な人間、それもあなたのような愚鈍な輩に名乗るのも頂けないけれど、無知な能無しを見ているのも苛々するし、名前だけは教えてあげる」
 毒を吐きながら、少女はアポロンをちらりと見る。そして、自らの名を、素性を、夕陽に明かす。

「アタシは十二神話の一柱、アルテミス——あなたが束縛しているアポロン兄様の、妹よ」



「妹……アポロン、それって……」
「……ああ、そうだ」
 アポロンはいまだ驚きを隠しきれないまま、静かに、しかしどこか焦ったように、口を開く。
「あいつは、アルテミス。オイラの妹だ」
「覚えているのですね、お兄様」
 アポロンがそう言うや否や、アルテミスは先ほどとは打って変わって、非常に明るく嬉々とした声、丁寧な言葉遣いで、アポロンの言葉を受ける。
「お、おい、どうなってるんだよ……あいつがアポロンの妹、ってことは……」
「そうです、このアルテミスも『神話カード』ですよ」
 汐が言って、一度カードに戻るアルテミス。そしてすぐ、実体を取り戻した。
「『神話カード』……御舟、まさか、君……」
「安心してください、先輩」
 などとは言うものの、汐の口振りは冷たく、どこか突き放すようであった。
「私は決して、アルテミスの所有者となったわけではないですよ」
「そうね。アタシだって好き好んで自分から人間なんかの所有物になりたいだなんて思わないわ」
「今はただ、お互いの利害が繋がっているという理由だけで、一時的に手を組んでいるだけにすぎないのです」
 と言うには結構息が合っているように見えなくもないが、それはさておき。
「利害が繋がっている……? どういうこと」
「少しは自分で考えなさい、無能。その程度の理解力と推理力でお兄様の所有者だなんて、失笑もできないわ」
「…………」
 先ほどから、アルテミスの口調が、夕陽に対してだけかなり刺々しい。口振りから察するに、人間に対してあまりいい印象がないようだが、夕陽に対しては個人的な恨みでもあるかのような敵対っぷりだ。
「安心してください、お兄様。このアルテミス、今すぐにお兄様を縛り付けている愚鈍な人間の呪縛を解き放って差し上げます」
 そしてアポロンに対してはこの態度。しっかり夕陽に対して毒づいておくのも忘れない徹底振り。素なのかもしれないが。
「呪縛? なに言ってんだ、アルテミス。オイラはなにも縛られてねえぞ」
「なに仰りますか、お兄様……ああ、成程。これが刷り込みというものですね……人間、アタシのお兄様になにをしたのかしら? 返答すれば闇に葬り去るわ」
「なにもしてないよ……」
「話が一向に進まないのですが」
 やたら夕陽に噛みついてくるアルテミスを制しながら、汐は淡々と告げる。
「理由も動機も知らないですが、このアルテミスは、先輩がアポロンを束縛していると考えているようです。そしてその束縛から、アポロンを解放したい……即ち、先輩とアポロンを所有権諸共引き剥がすことが目的です」
「はぁ!? 冗談じゃない! オイラは夕陽の元を離れるつもりなんてないぜ!」
 アポロンは抗議するが、汐はそれを無視し、
「そして私は、先輩と話がしたい、それも口ではなく、こちらで、です」
 デッキケースを再び掲げる。
「目には目を、歯には歯を……悪名高きハンムラビ法典ではないですが、あの夜、先輩が行ったことをそのまま返してあげるですよ」
 そうすれば、なにか分かるかもしれないですからね、と。汐は本気なのか冗談なのか、分からない口振りで続ける。
「お兄様、申し訳ありません。ですがすべてはそこの愚かな人間が悪いのです。ご覚悟を」
「先輩も、早く覚悟を決めた方がよろしいですよ」
「お、おい夕陽! どうすんだよ、あいつらやる気満々だぞ!」
 焦ったように叫ぶアポロン。焦っているのは夕陽も同じだ。
 アルテミス、『神話カード』が絡んで来るとは流石に思っていなかったが、この流れは少しだけ予想していた。もしかしたら、こんなこともあるかもしれないと、淡くも思っていた。
 そうならないように、汐を刺激しないよう発言には気を遣ったつもりなのだが、ダメだったようだ。
 というより、汐は最初から夕陽と戦うつもりでいたように見える。
「やるしか、ないのか……?」
 夕陽もデッキケースに手を触れつつ、汐を見据える。
「……アポロン」
「いいのか夕陽!? 相手は汐だぞ!」
「こうなったら仕方ない。ただ、相手は御舟だ。怪我させないように、加減はする」
 我ながら甘いことを言っているとは思うが、今の夕陽には最善の手というものが分からない。
 だからこの選択は、逃げなのかもしれなかった。
「……アルテミス」
「なによ」
「やはり、このデッキを使うのはやめです。下がってください」
 そんな夕陽を見て、汐は手にしたデッキをケースに戻した。
「代わりに、こちらのデッキを使うですよ」
 そして、代わりに手にしたのは、いつかの古いデッキケース。
 無法の力が凝縮されているはずの、デッキだった。
「……まあ、あなたが勝てるっていうのなら、どんなデッキを使おうと勝手よ。アタシの目的はお兄様を解放することだけ。だから、あなたが勝てばそれでいいわ。でも大丈夫なの? 人間の方はともかく、お兄様は強い。アタシがいないで、絶対に勝てる保証はある?」
「デュエマに絶対など存在しないのですよ。ですが、大丈夫です。私はいまだかつて、負けるつもりで戦いに臨んだことなどないですから」
 そしてそれは同時に、彼女はこの戦いでも負けるつもりはない、絶対に勝つという宣言でもあった。
「ふぅん……ま、それなら期待しない程度に期待しておくわ。アタシの期待を裏切るのだけは、勘弁ね」
「了解です」
 そんなやり取りの後、汐は一歩、前へと出る。
「では先輩、覚悟は決まったでしょうか」
「……どうだろうね」
 しかし決まろうが決まるまいが、これから起こることに変わりはない。

 夕陽と汐は、神話空間の中へと、誘われる——


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