二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.386 )
- 日時: 2014/02/09 21:01
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「————」
神話空間が閉じ、二人の人間が姿を現す。一人は憤怒の形相を浮かべた男。もう一人は、なんの変哲もない、普通の少女。
ただし、全身に惨憺たる傷を負っていなければ、の話だが。
ドサッ、と。少女は重力に逆らえず、仰向けに倒れる。
「——ひまり先輩!」
真っ先に駆けたのは、夕陽だった。
「先輩! しっかりしてください! 先輩!」
まだ息はしている。死んではいないはずだ。
外傷も確かに酷いが、即死するようなものではない。多く出血しているわけでもないので、失血死もない。ひまりは助かる。
しかし、夕陽の直感は、違う答えを出していた。
その答えを否定するように、夕陽は呼びかける。
「先輩! ひまり先輩!」
「……ん……あぁ、夕陽君か……」
ゆっくりと目を開けたひまり。それだけで安堵の溜息を漏らすが、そうしてばかりもいられない。
「ごめんね……負けちゃった……」
「そんなことはどうでもいいんです! それより、早く病院に——」
慌てて携帯を取り出す夕陽。119番が何番だったか忘れるほど混乱していたが、考えるより先に三桁の番号を押す。
だが、三桁目の番号を押そうとした時、その手は止められた。
「いいよ、病院なんて……私、もうダメみたいだし……」
「そんなこと……!」
ない、とは言えなかった。
夕陽も直感的に分かっていたのだ。漠然と、曖昧だが、分かってしまっていた。
しかし漠然としていて、曖昧だからこそ、否定していた。していたが、本人の言葉を聞いてしまい、その否定も、霞んでしまう。
「はは……情けないなぁ、私。ボス戦くらいは任せてとか言って、負けちゃってるよ……やっぱり強いなぁ、師団長は……」
こんな状態でも、ひまりは笑っていた。陽だまりのような微笑みを、見せていた。
「……正直、あんまり勝てるとは思ってなかったよ……こうなるかもって、思ってた。いや、きっとこうなるって、分かってた。夕陽君たちを巻き込んだ、罰だよね……もしくは、償い、かな……?」
「なに言ってるんですか! 罰とか、償いとか、そんなこと……!」
最初の頃ならいざ知らず、少なくとも今現在、夕陽たちはひまりを好意的に見ている。自分たちを巻き込んだとか、スケープゴートにされたとか、そんなことはもう、関係ない。
しかしひまりはずっと気にしていたのかもしれない。だがそれでも、そんなことで自分の命を投げ出そうとするなんて馬鹿げている。少なくとも、夕陽はそう思う。
本当に償いたいのであれば、もっと一緒にいて欲しい。共に笑い、戦いたい。
「まあ……罰とか贖罪とか、そんなことは私の都合だけどさ……私はもう、退場すべき、なんだよね……時が来たんだよ。生き物がいずれ寿命で死んじゃうみたいに、私にも、その時が来たんだよ……」
「なんですかそれ、わけわかんないですよ!」
「じきに分かるよ……それよりも、夕陽君。君には、これを渡しておくよ」
今にも消え入りそうで、どんどんか細くなっていく声と共に差し出されたのは、デッキケース。先ほどひまりが使用していたデッキが入っていた。
「これって……なんで、これを僕に……」
「私から、君へのメッセージだよ……先代の《太陽神話》からの、ね……」
ひまりは混濁していく瞳で夕陽を見つめる。
「ごめんね夕陽君、本当に……巻き込んじゃって……このみちゃん、姫乃ちゃん、汐ちゃん、流君、みんな……」
「先輩……」
もはや譫言のように、力なく呟くひまり。夕陽へと向いていた視線も、虚空を彷徨っていた。
「……やっぱり、やだなぁ、死ぬのは……もっとみんなと遊びたかったよ……でも、仕方ないよね。それが私の定めなんだし……これが、代償だからね……」
ひまりから感じる力が、ほとんど感じられない。覇気も生命力も、朝比奈ひまりという存在そのものが、小さく消えていく。
「《アポロン》、私は代価を払ったよ。だから、お願い……夕陽君を、みんなを、助けてあげて——」
「先輩——!」
刹那。
ひまりの身体は、淡い陽炎となり、消滅した。
太陽が終わりを告げるように、最後の輝きが、消え去った。
「先輩……せん、ぱい……」
夕陽は地面に手を着く。そこには、今さっきまで、ひまりがいたはずだ。
しかし、そこにはなにもない。影も形も、残響さえも残らない。
彼女と彼女が存在していた影響が、完全に消失した。
「そんな……先輩……嘘、だろ……」
朝比奈ひまりは消滅した。それが現実であった。
このみは沈痛な面持ちで視線を逸らし、姫乃は悲嘆の表情で口元を押さえ、汐は顔が見えないほど俯いている。
そして夕陽は、なにが起きたのか理解できないとでも言うように、なにもない空間を見つめていた。
「なんで、違う、こんなことあるわけ、そんな、先輩が、嘘——」
「嘘なわけねえだろ」
呆然と錯乱する夕陽に、打ち砕くような言葉が振り下ろされる。
見上げた先にいるのは、いまだに怒りの収まるジークフリート。
朝比奈ひまりを消し去った、張本人。
「いつまでもガタガタ抜かしてんじゃねえぞ、ガキ。お前は《太陽神話》の在処、知ってんじゃねえのか」
知らない。夕陽にもそれは分からない。
しかし今の夕陽は、そんなことに答えられるような精神状態ではないし、ジークフリートの怒りもそんな答えで引き下がるほど静かではない。
「…………」
「黙ってねえでなんとか言ったらどうだよ、おい。いつまでもめそめそしてんじぇねぇ」
どちらも、言葉の上では静かだった。しかし夕陽は心中は奈落の如く深く沈み込んでおり、ジークフリードの心中は大地にも鳴動が伝わりそうなほど荒ぶっている。
絶望的なほど無力な夕陽と、破壊的な暴力を振りかざすジークフリート。
圧倒的に残虐なこの差を埋めることは、今の夕陽には不可能。後ろにいるこのみや姫乃、汐にも同様だった。
しかし、
「そこまでだよ」
夕陽とジークフリートの間に割って入るように、女の声が響き渡る。
「あんまり怒りに任せてると、部下に嫌われるよ。ジークフリート・フォン・パステルヴィッツ……なんて。こんな呼び方、私の柄じゃないね、ジー君」
「ラトリ……!」
そこにいたのは、ラトリ・ホワイトロック。【ミス・ラボラトリ】の所長。
「【神聖帝国師団】っていう組織の特性を考えれば分からなくもないけどさ。無抵抗の高校生を虐めるの、そんなに楽しい?」
「なんの用だ、てめぇ……!」
怒りをあらわにしていたジークフリートの形相が、さらに歪む。しかしただの怒りではない、どこか鬱屈とした、苦虫を噛み殺したような表情だ。
「なんの用、ね……友達に会うのに、理由が必要?」
「もうお前らなんかとはつるまねぇよ。今の俺たちは敵同士だ。失せろ」
底知れぬラトリと、敵意剥き出しで切り捨てるジークフリート。こちらも、対照的な二人であったが、どこか通じ合っているようにも見えた。
「……そうだね。もうあの頃のようには行かないよね。分かってるよ。それに、用事自体は、ちゃんとあるよ。君を止めるっていう、用事がね」
「……はっ」
ラトリの言葉を、ジークフリートは笑い飛ばした。激昂してから初めて見せる笑いだが、しかしそれは嘲笑であり、すぐさま憤りを見せる。
「お前が俺を止める? とんだ戯言だな、寝言は死んでから言いやがれ。お前如き、俺の相手になんかならねえよ」
「そうだね。私たちの中じゃあ、私は一番弱かったし、今も弱いよ。君には絶対と言ってもいいくらい勝てない……でも、別に私が君の相手をするわけじゃないよ?」
その瞬間だ。
掛け値なし、文字通り、空から人が降ってきた。
「っ!?」
流石のジークフリートも吃驚する。いや、人が降って来たという事実ではなく、振ってきた人物に対して、驚きを見せる。
「てめぇ、なんでここに……いや、ラトリ、お前の差し金か!」
「まあね」
ラトリが短く答えると、その人物とジークフリートの間に、神話空間が展開されようとする。
「ちっ、くそがっ……今はてめぇなんかの相手してる暇はねぇんだよ!」
だがその空間は、ジークフリートの放った一枚のカードで打ち消された。その隙に、シャルロッテを抱え上げ、踵を返してジークフリートは走り出す。
「……!」
しかしその後を追い、またも神話空間が広がった。ジークフリートはカードを飛ばして相殺する。その連続だ。
「ああくそっ! 鬱陶しい! てめぇなんざお呼びじゃねぇ! すっこんでろ!」
「そんなこと言って引き下がる彼じゃないのは、君もよく知ってるでしょ」
しかしラトリの言葉は、もう彼らには届かない。執拗にジークフリートを神話空間に引きずり込もうとするも、ジークフリートはそれを拒み、逃走。それの繰り返しだ。
「……さて」
ジークフリートが見えなくなったところで、ラトリはゆっくりと視線を動かす。その先にいるのは、いまだ地に両手を着き、世界の終わりでも見ているかのように愕然としている夕陽。
ラトリは夕陽の元へと、緩やかな歩調で歩み寄る。
そして、淡々と、しかしはっきりと、宣告するように、口を開いた。
「——これが“ゲーム”だよ、空城夕陽君」
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.387 )
- 日時: 2014/02/09 23:10
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「——これが“ゲーム”だよ、空城夕陽君」
ラトリの声は、いつもよりも低いトーンだった。だがそれ以上に、彼女の言葉の裏には重みが感じられた。
「はっきり言うよ。今までの君たちは、甘すぎた」
本当に、はっきりと言い放つ。その言葉が夕陽に届いているかは定かではない。しかし、もし届いているならば、その言葉の本当の意味が、理解できるだろう。
「君たちは今まで、多くの組織と戦ってきた。【神格社界】【慈愛光神教】【ミス・ラボラトリ】そして【神聖帝国師団】……どれもこれも大物組織、私たちでもこれらの組織と戦うなら、それなりの被害を覚悟しなければならない」
でも、とラトリは続けた。
「君は、君たちは、奇跡的にも、今までほとんど被害を受けずにそれらの組織を退けてきた。勿論、相手の戦力が分散した状態だったり、私たちがサポートした影響もあるだろうけど……君たちが今まで生き残ってこられた最大の要因はたった一つ。運が良かったんだ」
実力じゃない、と。やはりラトリは、淡々と告げる。
その感情のこもらない声は、どれほど夕陽に響いているのだろうか。
「運が良かった……うん、それが一番の理由だよ。君たちの実力を否定するわけじゃないけど、それでもこれまで、君たちの被害がその程度だったのは運が良かっただけ。君は今まで戦ってきて、どんな傷を負った? シールドの破片に切り刻まれたよね、クリーチャーの炎で火傷はしたかな? 電撃を掠めたこともあると思う。有毒な瘴気で吐き気を催したことは? 冷気を浴びせられたり、爪で引き裂かれたりしたこともあるはず。でも所詮、その程度だよ」
今この場で起こった最大の被害と比べれば、取るに足らない傷だ。
「もう一度言うよ。君たちは甘すぎる。“ゲーム”の有力組織と戦って、ちょっとした傷を負うだけで、頑張れば勝てる気でいる。負けたとしても怪我するだけ。そんな低い意識で、私たちの土俵に上がってるんだよ」
辛辣だが、ラトリの声に非難の色は見えない。むしろそれは、警告しているようだった。
「そんな甘ったれた意識で、“ゲーム”に関わらない方がいいよ。君が最初に出会った“ゲーム”参加者は『炎上孤軍』だよね。だったら彼女から聞いてないかな。“ゲーム”は、戦争だって」
聞いた。最初に、本当に最初に、その表現は聞いた。
様々な組織が入り乱れて、多くの敵と戦っていくその様子は、確かに戦争だ。しかし夕陽たちが見て来たのは、その戦争の一側面でしかなかったのだ。
「しつこく言うけど、君たちは甘いんだよ。自分たちは負けない……とまではいかなくても、死なないと思ってるんじゃないかな? だったらアフリカの紛争地域に銃でも持って行ってみるといいよ。命っていうものがどれだけ簡単に散ってしまうか、そして誰だって死ぬ時が来るってことを、思い知らされるからさ」
流石にこれは本気ではないだろう。だがそれでも、ラトリの言っていることは、今の夕陽なら、少しは分かる。
分かりたくはないが、分かってしまう。目の前に、いるはずの人間がいないことを考えれば。
「死なない人間はいない。“ゲーム”でも、負けないデュエリストはいない……『太陽一閃』は“ゲーム”で無敗だったけど、君たちとの対戦では負けたこともあるんじゃないかな。ジー君——ジークフリート・フォン・パステルヴィッツだって、無敗と言いながらも負けたことがないわけでもない。つまり、そういうことなんだよ。誰だって負ける時は負けるし——」
——死ぬ時は死ぬんだ。
「君は、自分や自分の仲間は死なないと思い込んでいるかもしれない。いや、死んで欲しくない、消えて欲しくない、いなくなって欲しくないという思い込みが、そんな幻想に変わっているんだ。でも、それは幻想で、まやかしだよ。人は死ぬし、自分も仲間も、消えてしまう。私も今まで、大事な部下が消えていく様を、何度も見た」
君も見たでしょ、とまでは言わなかったが、ラトリは無言でそう告げる。
「戦争っていうのは、無慈悲で残虐なもの。次に消えるのは君かもしれないし、君の後ろにいる、君のお友達かもしれない。もし君がその残酷さを受け入れられないのであれば、もうなにも失いたくないのであれば今すぐ“ゲーム”から降りて日常生活に戻るべきだよ」
ここからが本題だとでも言うように、ラトリは一呼吸おいてから、再び言葉を紡ぎだす。
「もし“ゲーム”から降りたいなら、君たちの『神話カード』をすべて私に渡して。そうすれば、私たち【ミス・ラボラトリ】が総力を挙げて君たちを守るよ。残念ながら、君たちはもう“ゲーム”に深く関わっちゃってるから、その名前が消えることはない。でも、普通は『神話カード』を持たない君たちを付け狙う理由はないし、もしそんな人がいても、私たちが全力で阻止する」
これは、取引だった。それも、夕陽たちに、非常に有利な。
ラトリの言うように、これ以上なにも失いたくないのであれば、なによりも安全な日常に戻るべきだ。しかしそのためには『神話カード』が障害となる。それらを有する限り、彼らが日常に戻ることはできないだろう。
だがラトリは、組織としてそれを引き取る。その代わりとして、私怨などの理由で夕陽たちを狙う者がいても、その魔の手から夕陽たちを保護する。つまり、夕陽たちの日常を守るのだ。
「……ま、今すぐにその答えを出せ、なんて言わないよ。決まった時に、黒村君でも言いつけといて……でも、これだけは分かっておいてね。私からはどっちがいいかなんて言えない。だから決断するのは君なんだ——『昇天太陽』、空城夕陽君」
なにも失わない、なにもない道を選ぶか。戦い続ける、茨の道を選ぶか。
「——私が伝えたいのは、それだけだよ。じゃあね」
十二月一日。
この日は、“ゲーム”の世界で、そして夕陽たちにとって忘れられない人なる。
一つの太陽が消えた——【太陽一閃】朝比奈ひまりという存在が、この世から消えた日。
彼女の輝きは、一閃の太陽の如きだった——
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.388 )
- 日時: 2014/02/10 15:39
- 名前: アンゲル ◆Ub.tayqwkM (ID: bIAXyXLC)
- プロフ: http://一応、ハイジネタ
まりりんが、まりりんが、死んだ〜
夕陽のバカ!意気地なし!もう知らない!
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.389 )
- 日時: 2014/02/10 21:20
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ああ、そういえばそんな台詞があった気がしますね……
ひまりはここで、本当に“ゲーム”から退場することとなりました。ちゃんと描写している中では、初の死亡者です(第五小隊長も故人ですが、ここではいないものとします)。
短い活躍でしたね……
次回以降のことはネタバレになるので言いませんが、何気の最後の三文が今後の展開をそれなりに言い表していて少々驚いています。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.390 )
- 日時: 2014/02/23 22:23
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
朝比奈 ひまり(あさひな ひまり) 女 17歳
容姿:一言で言えば普通、または無個性。低すぎず高すぎずの身長で、体つきも一般的。やや長めのセミショートヘアで、若干茶味がかった黒髪と、個々の部位を見てもこれといった特徴は見受けられない。総合的に見て印象に残りにくい容姿であり、夕陽の抱く“普通の女子高生のイメージ”と限りなく酷似している。
性格:一言で言えば普通、または一般的。少しだけ社交的でフレンドリーなところはあるものの、初対面の男子に対しては若干人見知りになったり、基本的には一般的な女子高生のそれである。単独になったところをクリーチャーに襲われそうになった夕陽たちに密かに近づき、代わりに戦うなど、仲間思い。だがその一方で、“ゲーム”の過酷さについて行けず、結果的に《アポロン》を捨てるなどの弱さもある。かなり人間らしい性格をしており、保身のために言わなければならないことを黙っていたり、逆に夕陽に《アポロン》を押し付けたことを負い目に感じていたりと、倫理的にはどっちつかず。しかし基本は善人。
所属:雀宮高校二年一組
備考:十二月一日に死去。
戦術:メインカラーは火。基本戦術は夕陽と同じで、《コッコ・ルピア》などのファイアー・バードでドラゴンの召喚をサポートしながらビートダウンしていく連ドラ。色は火と自然のステロイドをベースに、タッチで闇のS・トリガードラゴンである《黒神龍オドル・ニードル》を加えている。ただしジークフリート戦に限り五色のドラゴンデッキを使用した。全体的にドラゴンをメインとしている。
切り札は
《太陽神話 サンライズ・アポロン》
概要:《アポロン》の元所有者で『閃光一閃』の異名を取る。強さは普通と言われているが、《アポロン》を使用したデッキで、結果だけなら“ゲーム”の世界では無敗(《アポロン》抜きだとジークフリートに敗北している)。それゆえにかなり多くの組織から目を付けられており、その重圧に耐えかね、《太陽神話》を(偶然だが)夕陽に押し付け、一時期“ゲーム”から降りている。しかし後に、夕陽たちの戦う姿を見て、再び“ゲーム”の世界へ舞い戻る決意を固めた。
各章デッキ解説
『六章』
デッキの内容は五章の夕陽とほとんど同じ。《コッコ・ルピア》《エコ・アイニー》などでコストを軽減したり、マナを加速させながらドラゴンに繋いでいく。《ボルシャック・NEX》で追加の《ルピア》を呼び出すパターンも同じだが、それ以外の戦略は多彩。
夕陽戦では《ボルシャック・NEX》で《マッハ・ルピア》を呼び出し、《ボルシャック・NEX》の能力を再利用しながらスピードで押し切る。
ヴァーズ・ロマノフ戦では《魂の呼び声》と《紅神龍バルガゲイザー》のコンボで《アポロン》を踏み倒す。
アトランティス戦では《インフィニティ・ドラゴン》でバウンスから味方ドラゴンを守る。
インカ戦では《アブドーラ・フレイム・ドラゴン》で《コッコ・ルピア》を手札に逃がして相手の小型クリーチャーを殲滅し、《ボルシャック・クロス・NEX》で再展開もストップさせる。
ヴェルベット戦ではデッキにドラゴンが多いため平均コストが重いことを生かして《鬼無双カイザー 「勝」》のガチンコ・ジャッジで連勝し、相手ブロッカーを殲滅しつつブレイク数を稼ぐ
ゴスペル戦では《無双竜機ボルグレス・バーズ》でマナに落ちた《アポロン》を回収しながらS・トリガーで出た《ジャジャーン・カイザー》と共に進化元にする。
以上のように、攻め方にも様々なパターンが存在する。切り札は《太陽神話 サンライズ・アポロン》
『七章』
ゼロ文明含む五文明のドラゴンやドラゴンサポートカードを詰め込んだデッキを使用。ドラゴンの質が良い火や自然、闇が多いものの、踏み倒し手段も豊富なので数が少ない水や光のドラゴンもわりと簡単に出せる。デッキカラーが全色なうえにコストの高いドラゴンが多いデッキなので、かなり扱いづらい。現時点の“ゲーム”の世界でこのデッキを扱えるのはひまりだけだと言われている。ひまりはあえてこのデッキに《アポロン》を組み込んでいない。
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