二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.160 )
日時: 2013/10/07 00:58
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 三体のドラゴンのうち一体、ボルベルグ・クロス・ドラゴンと夕陽のデュエル。
 夕陽の場には《ガイアール・アクセル》が一体のみ。シールドは三枚。
 対するボルベルグの場のクリーチャーも《バイオレンス・迅雷・ドラゴン》一体だが、《モビル・フォレスト》《炎水剣オンセン・サバキ》《竜装 シデン・レジェンド》といった強力なクロスギアが並んでいる。こちらもシールドは三枚。
「くっそ、やっぱ《迅雷》が厄介だな……クロスギアを出すたびにパワー4000以下が破壊されると、ファイアー・バードが展開できない……」


バイオレンス・迅雷・ドラゴン 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/サムライ 6000
侍流ジェネレート
W・ブレイカー
自分のクロスギアをバトルゾーンに出した時、相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体破壊する。


 クロスギアを出しながら小型クリーチャーを破壊する《バイオレンス・迅雷・ドラゴン》の能力にまいっていたが、ここから反撃に出る。
「まずは《コッコ・ルピア》を召喚! 続けて《ボルシャック・NEX》も召喚! 効果でデッキから《ルピア・ラピア》をバトルゾーンに!」
 1ターンに一気にクリーチャーを展開した夕陽。さらにそのまま攻めの姿勢に出る。
「《ボルシャック・NEX》で《バイオレンス・迅雷・ドラゴン》を攻撃! 《NEX》は墓地のファイアー・バードの数だけパワーが上がるから、一方的に破壊だ! 続けて《ガイアール・アクセル》でW・ブレイク!」
 これでボルベルグのシールドは残り一枚。しかし、ボルベルグもただではやられない。
『S・トリガーX発動! 《インフェルノ・シザース》をジェネレートだ!』


インフェルノ・シザース 火文明 (3)
S・トリガーX
クロスギア
これをクロスしたクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーをパワーの合計が3000以下になるように好きな数選び、破壊する。


「う、なんかまずい感じだな……ターンエンド」
『俺のターン!』
 ボルベルグは咆哮しながら自身のターンを迎える。
『俺は、俺自身である《ボルベルグ・クロス・ドラゴン》を召喚!』


ボルベルグ・クロス・ドラゴン 火文明 (8)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 7000
スピードアタッカー
バトルゾーンにある自分のクロスギアを、コストを支払わずにこのクリーチャーにクロスしてもよい。
W・ブレイカー


「やばっ、遂に出た……!」
『俺の能力で、場のクロスギアを全てタダでクロス!』
 次々と《ボルベルグ・クロス・ドラゴン》に装着されるクロスギア。召喚コストを軽減する《モビル・フォレスト》以外の、《炎水剣オンセン・サバキ》《竜装 シデン・レジェンド》《インフェルノ・シザース》が《ボルベルグ》にクロスされる。


炎水剣オンセン・サバキ 水/火文明 (4)
クロスギア
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
フリー・クロス
このクロスギアをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクロスギアを1枚選び、持ち主の墓地に置く。
このクロスギアをクロスしたクリーチャーが相手のシールドをブレイクした時、相手のパワー3000以下のクリーチャーを1体破壊する。その後、カードを1枚引いてもよい。


竜装 シデン・レジェンド 火文明 (3)
クロスギア:サムライ
これをクロスしたクリーチャーのパワーは、+3000される。
これをクロスしたクリーチャーが攻撃する時、そのクリーチャーは相手のシールドを1枚ブレイクする。
名前に《紫電・ドラゴン》とあるクリーチャーに、このカードをコストを支払わずにクロスしてもよい。


 これで《ボルベルグ》はパワー10000の、シールドをブレイクするたびにパワー3000以下のクリーチャーを破壊して一枚ドローし、パワー3000になるようにもクリーチャーを破壊、さらに攻撃すれば自動的にシールドも一枚ブレイクするというとんでもない性能のクリーチャーとなってしまった。
『行くぞ! 俺で《ガイアール・アクセル》に攻撃! その時《インフェルノ・シーザス》の能力で《コッコ・ルピア》を破壊だ! さらに《シデン・レジェンド》の能力でシールドブレイク! シールドをブレイクしたため、《オンセン・サバキ》の効果で《ルピア・ラピア》を破壊! 一枚ドロー!』
「ぐぅ……! 《ルピア・ラピア》は破壊されてもマナゾーンに行く!」
 一度の攻撃でクリーチャーを三体、シールドも一枚吹き飛ばされる夕陽。場に残ったのは《ボルシャック・NEX》一体だ。
「これはきつい……でも、これで逆転だ!」
 夕陽は一枚のカードをかざす。同時に今しがた引いたカードと、前のターンにブレイクされたカードを抜き取った。
「まずは《コッコ・ルピア》と《コッコ・ギルピア》を召喚!」
 続けて二体のファイアー・バードを召喚する夕陽。これでドラゴン召喚のコストは3下がる。さらに場の《NEX》と合わせてその三体を重ね、
「出て来い、《アポロン》!」
 太陽のような灼熱の光と炎を噴き上げながら、切り札《太陽神話 サンライズ・アポロン》を呼び出す。
 《コッコ・ギルピア》は自然文明のクリーチャーだが、ファイアー・バードなので《アポロン》の進化元にできる。ただ火文明でないためコンセンテス・ディー能力に適応されないが。
「これで決めるよ。《アポロン》でアタック! さらに山札の一番上を捲って——」
 それがファイアー・バードかドラゴン、火文明のクリーチャーなら、そのままスピードアタッカーがついて場に出て来る。
「——よし来た! 捲れたのは《爆竜 GENJI・XX》だ! 《アポロン》で残りのシールドをブレイク! 《GENJI・XX》でダイレクトアタックだ!」
『なんだと……ぐ、あぁぁぁぁぁ!』
 《GENJI・XX》の斬撃に切り裂かれ、《ボルベルグ・クロス・ドラゴン》は断末魔の叫びを上げながら消滅していった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.161 )
日時: 2013/10/07 07:51
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

タクさん


 今回も学校が舞台です。一度こういうシチュエーションをやってみたかったんですよ。敵がすべてドラゴンなのはちゃんとした意味がありますが、それはすぐに明らかになります。ですが、実はドラゴンだけではありません。
 伏せても意味がないような気はしますが、今はまだ明かさないことにします。ですが、《アテナ》の正体も今章の早い段階で判明する予定です。
 今回は生徒のオリキャラを総動員させる予定なので、それなりに大がかりです。正に戦場ですね。
 コメントに気付いたのが朝なので、夜に暇だったら見に行きますね。それでは。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.162 )
日時: 2013/10/09 02:45
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「とりあえず倒せたな」
「そだね。やっぱ重いドラゴンなだけあって強かったー」
 ひとまず出現した三体のドラゴンはカードに戻したものの、それですべて解決というわけではない。
「……所長」
「分かってるって。このドラゴンたちはサドンリィに現れた。カードをばら撒いているパーソンが私たちをファインドしてこのドラゴンたちをけしかけたのなら、すぐ近くにいるはずだよ」
「じゃあ、そいつを捕まえればこれ以上の騒動はなくなるってことに——」
「捕まえられればな」
 夕陽の言葉を遮り、否定するかのような言葉を放つ黒村。
「言っただろう、カードをばら撒いた本人はもう学校から去っている可能性が高いと。所長の言い分は、俺たちを監視していて、その上でけしかけてきた場合だ」
「だったら、今襲って来たクリーチャーは一体……?」
「そんなのイージーだよ。実体化したクリーチャーは元々そのクリーチャーが有する能力をユーズできる。つまり、他のクリーチャーをコールするようなクリーチャーがいれば、そいつらを数体ばら撒くだけでミッションコンプリート! ってわけ」
 実体化したクリーチャーは、元々の能力が使える。成程、確かにそれなら、他のクリーチャーを呼び出すようなクリーチャーに後のことを任せて、自分は安全に撤退できる。
「さしあたっては、そのクリーチャーがなんなのか、ということだな。他のクリーチャーを踏み倒すにしろ、その踏み倒しを行うクリーチャーは元々の能力の制限や、自身の種族に縛られる。さっき俺たちが戦ったのが《ジオメテウス・無限・ドラゴン》《黒神龍ヘヴィ・ケルベロス》《ボルベルグ・クロス・ドラゴン》だ」
「三体ともドラゴン、それも7〜8の重量級ですね」
「プラスして言うなら、《ジオメテウス》と《ボルベルグ》はアーマード・ドラゴン、《ヘヴィ・ケルベロス》はドラゴン・ゾンビだね」
 全体的に見て、ドラゴンを踏み倒すクリーチャーということだろうか。だがドラゴンを踏み倒すクリーチャーは《紅神龍バルガゲイザー》を筆頭にいくらでもいる。夕陽の持つ《アポロン》だってそうだ。
 と、四人で考え込んでいると、また影が差す。
「っ、《黒神龍グールジェネレイド》……! コスト7のドラゴン・ゾンビ!」
「これでほぼ確定だな。近くにドラゴンを踏み倒すクリーチャーがいる。しかし、早く見つけなければ一般人にも被害が出るな……」
「あ……」
 言われて気付く。クリーチャーが実体化すると独自の神話空間を作り出し、“ゲーム”参加者以外は基本的に入れなくなる。しかし稀に、無関係の者もその中に迷い込んでしまうことがあり、文化祭というこの日この場所での人の多さを考えると、その被害は少なくないだろう。
 それに、クリーチャーを呼び出すクリーチャーがこの近辺にいるだろうクリーチャーだけとは限らない。普通に考えれば、他の場所にも分散して配置するだろう。
 また無関係な人を巻き込んでしまううのか、そう思っていると、ラトリが不思議なほど軽い調子で、
「あ、その辺はノープロブレムだよ? たぶんそろそろデリバリーしてくれるし」
「……?」
 ラトリの意味不明な発言に首をかしげていると、屋上の扉がやや控えめに開く。
「所長さーん……あ、いました——って、なんですかこれ!? クリーチャー!? 実体化してます!?」
 現れたのは一人の女——というにはあまりに若い。見た感じでは夕陽たちと同じくらいに見える。よくて亜実と同じくらいの年齢だろうか。身長はラトリより少し高いくらいの平均的な背丈だが、顔はやや幼い。 外国人なのか、肌は日本人らしからぬ白さ。髪の色素もラトリ以上に薄い。服装も水兵のような白いセーラー服で、全体的に白を基調とした出で立ちだ。
 女はグールに怯えながら、小走りでラトリの下へと駆け寄る。
「ヘイ、ミーシャちゃん。リクエストした“あれ”、持ってきてくれた?」
「あ、はい、もちろんです! というか、なぜ新人の私がこんな重役を……?」
「特にディープなミーンはナッシングだよ。ただ君なら文化祭の中に溶け込めるかなーって。新人だったらアナザーの組織に知られてないし。それより早く、例のブツを頂戴」
「ブツって……えっと、これです」
 ミーシャと呼ばれた女が手渡したのは、デッキケース。ラトリは素早くそれを開け、中から一枚のカードを取り出す。
「さーて、それじゃあレッツ、スタート。いらない被害は未然にブロックしなきゃね。頼んだよ!」
 そのカードを空高く掲げて、叫ぶ。

「オールディフェンス——《守護神話 エンパイアス・アテナ》!」

 その瞬間、その場の空気が一変した。
「え……これって、神話空間?」
「イエス、ザッツライト。これが私の『神話カード』《アテナ》の能力」
 それは、《守護神話》の名に相応しい力だった。
「《アテナ》は一定範囲内に神話空間を展開するんだ。しかも中に入れる人をチョイスできるから、これなら一般ピープルが入り込む余地はナッシング。心置きなくデュエっていいよ」
 その言葉を聞いて安堵の溜息を漏らす夕陽。それならもう心配はない、と思ったが、
「でも、タイムリミットがあるから気をつけて。リミットは……うーんと、この範囲で私が使用したから、長くて三時間、ってところかな?」
「三時間? 長いような短いような……でも、何体呼び出すクリーチャーがいるかもわからない状況でその時間はちょっと厳しいか……?」
「それに、そいつらが呼び出したクリーチャーも殲滅しなくてはならんからな。もたもたしている暇はない。さしあたって、こいつから排除するか」
 こちらを待っていたわけではないだろう、唸り声を上げるグールに目を向ける一同。
「よし、じゃあ僕が——」
「いやいや、ここは私に任せて。さっきサボった分、きっちり返済するからさ」
 勇んで前に出ようとする夕陽を、ラトリが制する。そして、屋上に備え付けられている給水塔を指差し、
「君はこのクリーチャーたちをコールしてる元凶をデストロイしといて」
「え!? このクリーチャーの発生源見つけてたの!?」
「うん、さっきね。たぶん当たってると思うよ」
「所長……そういうことは早く言って下さいよ」
 と言っているうちに、また新しいドラゴンが出て来る。言われてみれば、確かに給水塔の方から現れている。
「また来たよ!」
「ちっ……空城、お前はこいつらの発生源を潰せ。ミーシャ、お前も手伝え」
「は、はいっ! 私でお役にたてれば……」
 ラトリはグールの前に立ち、このみ、黒村、ミーシャはそれぞれ新たに飛び出すドラゴンと戦う。そして夕陽は、給水塔の陰になっている場所へと向かって、駆け出して行った。



 ラトリの言うように、給水塔の陰にクリーチャーがいた。しかも、今までのドラゴンとは明らかに違う空気を醸し出している。
「……見つかったか」
「お前は……」
 見覚えのあるクリーチャー。白く、辛うじて人型をした龍。左手には水晶のはまった杖を携えている。そのクリーチャーの名前を思い出そうとしているうちに、向こうから名乗りを上げた。
「俺の名は、ガーリック。お前が『昇天太陽サンセット』か」
「そうだけど……ガーリックって確か、コスト8以下のアーマード・ドラゴンかドラゴン・ゾンビを山札から呼び出す、光臨持ちのクリーチャー……」
 その能力でドラゴンたちを呼び出していたようだ。思い返してみれば、どのドラゴンもアーマード・ドラゴンかドラゴン・ゾンビで、すべてコスト8以下だった。
「本来ならこのままドラゴンを量産し続けるつもりだったが、見つかってしまっては致し方ない。相手をしよう」
「へぇ、逃げないのか。逃亡されたら厄介だと思ってたところだから、ちょうどいいよ」
「逃げろ、という命令は受けていないのでな」
 そして次の瞬間、夕陽とガーリックの前に五枚のシールドが展開される。
「行くぞ!」
「ああ、デュエマ・スタートだ!」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.163 )
日時: 2013/10/09 03:02
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ラトリとグールのデュエル。
 ラトリの場には《エメラル》《蔵禄の守護者カメンビー》《飛散する斧 プロメテウス》の三体。シールドはまだ五枚ある。
 対するグールのシールドも五枚あり、場には《コッコ・ルピア》と《黒神龍バラス・ランス》。
『グゥ、グルルルグルゥ……』
 唸りながらグールは、《ボーンおどり・チャージャー》に続き、《プライマル・スクリーム》を使用。墓地を増やしつつ、墓地から《魔龍バベルギヌス》を回収する。
「よーし、私のターン! ドロー!」
 グールの不気味な唸りにも顔色一つ変えず、ラトリは明るい調子で場を進める。
「まずは《ライフプラン・チャージャー》発動! チャージャーでマナを溜めつつ、デッキから《時空の守護者ジル・ワーカ》をゲット! そのまま召喚! ターンエンド!」
『グルルルルゥ、グガァ……』
 唸りながら、グールのターン。
 グールは再び《ボーンおどり・チャージャー》で墓地を肥やしつつ、前のターンに回収した《魔龍バベルギヌス》を召喚して、効果を発動させる。
『グルルル……グガアァァァ!』


魔龍バベルギヌス 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/グランド・デビル 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、プレイヤーをひとり選ぶ。そのプレイヤーのクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、そのプレイヤーの墓地から、《魔龍バベルギヌス》以外の進化ではないクリーチャーを1体選び、バトルゾーンに出す。


「ワォ、遂にご登場か」
 グールは《バベルギヌス》の能力で《バベルギヌス》自身を破壊し、墓地から《黒神龍バラス・ランス》を復活。効果で山札からカードを墓地に落とし、そして最後に大量の死龍が蘇る。


黒神龍グールジェネレイド 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 6000
自分の《黒神龍グールジェネレイド》以外のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーをバトルゾーンに戻してもよい。
W・ブレイカー


 これで《グール》の場には《コッコ・ルピア》と、《バラス・ランス》が二体、《グールジェネレイド》が四体という、凄まじい状態となってしまった。
 このターンは攻撃せず、そのまま終了する《グール》。次のターンには六体ものドラゴン・ゾンビが総攻撃を仕掛けてくるだろう。
「ピンチピンチ、ちょっとまずいかもねー」
 などと口では言いながらも、余裕綽々なラトリ。
 その理由は、彼女の切り札にあった。
「そっちは1ターンでフィニッシュするつもりらしいけど、こっちも1ターンでフィニッシュする予定だから。ちなみに、その準備はもう完了するよ。《カメンビー》召喚!」
 小型ブロッカーを召喚し、そしてラトリは、手札から最後の一枚のカードを抜き取る。
「《カメンビー》二体と《ジル・ワーカ》で、合計は7かぁ……オールプレイには全然足りないけど、ま、いいか」
 ラトリは場の《カメンビー》二体と《ジルワーカ》を重ね、最後の一枚を解き放つ。

「守護の力を解き放て! 主を護る盾こそが、すべてを貫く矛となる! 神々よ、調和せよ! 進化MV——《守護神話 エンパイアス・アテナ》!」

 閃光より現れたのは、人型——それも女性型のクリーチャー。《プロセルピナ》ほどではないが小柄で、羽の装飾品など全体的に民族的な意匠をしている。
 ただ、両腕には妙に近代的な広範囲を防護するアーマーが、背中にも翼型の防護壁があり、ちぐはぐ感が否めない。
「そんじゃあまず、《アテナ》のコンセンテス・ディー能力を発動しようか。と言っても、発動するのはCD4オンリーだけど」
 ラトリがそう告げた次の瞬間、彼女のシールドがすべて半回転し、表向きになった。
「《守護神話 エンパイアス・アテナ》のCD4……自分のシールドをフルオープンする。そして相手がシールドをブレイクする時、そのブレイクするシールドはこちらが決められる」
 後者の能力はともかく、前者のシールドを表向きにする能力はデメリットに思われるだろう。いくらブレイクするシールドを誘導できてもそれを踏まえて攻撃されれば効果は薄いし、そもそもS・トリガーなどがなければ意味がない。
 しかしラトリにとっては、シールドが“表向き”になることが重要だったのだ。そして彼女は序盤、《エメラル》でシールドを入れ替えている。
 ラトリの表向きになったシールドは、《時空の庭園》《アクア・スーパーエメラル》《守護すぎる守護 鋼鉄》《光牙忍ハヤブサマル》《驚愕の存在 カニス》の五枚。
「お、《カニス》だけじゃなくて《鋼鉄》もいる。まーでも、今は意味ナッシングか。とりあえず、《驚愕の存在 カニス》の能力発動!」


驚愕の存在(ワンダフル・ワン) カニス 自然文明 (5)
クリーチャー:アウトレイジ 5000
このクリーチャーは、このクリーチャーよりパワーが小さいクリーチャーにブロックされない。
シールド・ゴー
このクリーチャーが自分のシールドに表向きであれば、バトルゾーンにある自分のクリーチャーはすべて「パワーアタッカー+5000」を得、シールドをさらに1枚ブレイクする。


 本来シールド・ゴーの能力を持つクリーチャーは、一度バトルゾーンに出し、なんらかの方法で破壊されることによって表向きのシールドとなる。
 しかし《アテナ》のようにシールドに埋まっているシールド・ゴー能力を持つクリーチャーを表向きにする事でも発動でき、場合によってはこちらの方が早期に発動させることが出来る。
 《カニス》の効果は自分のクリーチャーにパワーアタッカー+5000を与え、シールドを一枚追加ブレイクできるようになるというもの。つまりこれだけで並みのクリーチャーもWブレイカーとなり、《アテナ》にいたってはTブレイカー+1で、Qブレイカーだ。
「これでフィニッシュ! 《アテナ》でQブレイク! 《プロメテウス》でブレイク!」
 《アテナ》の光弾で、《グール》のシールドが四枚同時に吹き飛ぶ。続けて《プロメテウス》の斧が最後のシールドも粉砕。
 もはや、《グール》を守る盾は存在しない。
「《エメラル》で、ダイレクトアタック!」
『グ、グ、グギャァァァァァァ!』
 死龍はおぞましい悲鳴を上げながら地面へと倒れ、そして消滅した。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.164 )
日時: 2013/10/09 19:23
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 夕陽とガーリックのデュエル。現在は、若干だが夕陽が優勢に見える。
 夕陽の場には《コッコ・ルピア》と《セルリアン・ダガー・ドラゴン》。シールドは五枚。
 対するガーリックの場には《コッコ・ルピア》と《黒神龍ジャグラヴィーン》。シールドは三枚。
「俺のターン。《神龍のイザナイ ガーリック》を召喚!」


神龍のイザナイ ガーリック 闇/火文明 (7)
クリーチャー:オラクル/ドラゴン・ゾンビ/アーマード・ドラゴン 4000+
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
パワーアタッカー+4000
W・ブレイカー
光臨—自分のターンの終わりに、このクリーチャーがタップされていれば、自分の山札を見る。その中からコスト8以下のドラゴン・ゾンビまたはアーマード・ドラゴンを1体、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。


 山札から特定のクリーチャーを呼び出す能力、光臨。多色の光臨持ちクリーチャーは自身のコストの割に踏み倒せるコストが単色に比べて低いのだが、その分踏み倒せる範囲が広い。《ガーリック》の場合はアーマード・ドラゴンとドラゴン・ゾンビの二種類だ。
「ターン終了だ」
「くっ……光臨は確かに厄介だけど、発動までにタイムラグがある。その間に決める! 僕のターン!」
 ドラゴンを展開される前に早期決着を目指す夕陽。しかしいまいち手札が良くない。
「《ルピア・ラピア》召喚! 続けて《極武者カイザー「斬鬼」》も召喚!」


極武者カイザー「斬鬼」 火文明 (5)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/ハンター/エイリアン 4000
パワーアタッカー+2000
このクリーチャーが攻撃する時、自分のシールドをひとつ手札に加えてもよい。ただし、その「S・トリガー」は使えない。このようにしてシールドを手札に加えた場合、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー


(シールドは減るけど、次のターンから《斬鬼》で《ガーリック》を破壊できる。一回は光臨を許すけど、そっちはなんとかするしかない)
 大まかな算段を立て、夕陽はさらに攻めの姿勢を見せる。
「《セルリアン・ダガー・ドラゴン》でWブレイク!」
「《ジャグラヴィーン》でブロック、相打ちだ」
 《セルリアン・ダガー》の斬撃は防御されるが、同時に《ジャグラヴィーン》が爆散する。だが骨でできた身体の破片が飛び散り、《セルリアン・ダガー》を切り裂いた。
「俺のターンだ。出でよ、神聖にして新星なる破滅の龍神《真滅右神ブラー》!」


真滅右神ブラ— 無色 (7)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/ドラゴン・ゾンビ 7000+
このクリーチャーがバトルに勝った時、相手は自身の手札を1枚選んで捨てる。自分はカードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー
右G・リンク


「ゴッド・ノヴァ!? ってことは、まさか……」
「貴様の想像通りだ。さらに《ガーリック》でWブレイク!」
 《ガーリック》の杖から放たれる青白い炎が、夕陽のシールドを二枚吹き飛ばす。
「ターン終了……する時に俺の光臨が発動! 降臨せよ、神聖にして新星なる機装の龍神《龍機左神オアシス》!」


龍機左神オアシス 無色 (7)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/アーマード・ドラゴン 7000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、このクリーチャーとバトルさせてもよい。
W・ブレイカー
左G・リンク
このクリーチャーがリンクしていれば、シールドをさらに1枚ブレイクする。


 右G・リンクと、左G・リンクが揃う。夕陽にとっては、揃ってしまった、と言うべきか。

「《オアシス》を《ブラー》とG・リンク!」

 これで、《オアシス&ブラー》はパワー14000のT・ブレイカー。しかもそれだけではない。
「《オアシス》の効果発動! 召喚時に相手クリーチャー一体とバトルさせる。《斬鬼》とバトルだ!」
「くそっ、《斬鬼》が……」
 アタッカーを減らされる夕陽。しかも、それだけではない。
「《ブラー》のリンク時能力も発動! バトルに勝つたびに、相手の手札を捨て、俺は一枚ドローする」
「ぐぅ……仕方ない《バルキリー・ラゴン》を捨てる」
 さっきブレイクされたシールドから手に入れた《バルキリー・ラゴン》を手放す。ドラゴンをサーチできるのは良いのだが、比較的重いドラゴンなので展開力が重要な今は不要なカードだ。
 夕陽のターン。手札を破壊され、出来ることが少ない夕陽は、場を確認する。
 夕陽の場には《コッコ・ルピア》と《ルピア・ラピア》の二体。ドラゴンの召喚コストは3下がっているため、大抵のドラゴンなら場に出せるが、生憎手札にこれといったドラゴンはいない。
「とりあえず、アタッカーを潰さないと……《無双竜鬼ミツルギブースト》を二体召喚!」


無双竜鬼ミツルギブースト 火/自然文明 (5)
クリーチャー:アース・ドラゴン/アーマード・ドラゴン/ハンター 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、このクリーチャーをマナゾーンに置いてもよい。そうした場合、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊する。


「二体の《ミツルギブースト》をマナに送って、《ガーリック》と《コッコ・ルピア》を破壊!」
 マナを加速しつつ、相手クリーチャーを破壊する夕陽。しかし肝心の攻撃手は《コッコ・ルピア》と《ルピア・ラピア》だ。基本的にシステムクリーチャーなのでシールドを削るには不向きなクリーチャーだが、
「《ルピア・ラピア》でシールドブレイク! ターン終了だ」
 《ルピア・ラピア》ではシールドを割っておく。これでガーリックのシールドは残り二枚。殴り返されても《ルピア・ラピア》はマナに行き、マナのドラゴンを回収できる。
 相手がバトルに勝った時の効果を発動させるために《ルピア・ラピア》を攻撃すれば、シールドも守れて一石二鳥だ、と考えていたが、流石にそれは甘かった。
「俺のターン。《コッコ》が破壊されたせいで、このターンには決められないが……しかし、次のターンには確実にとどめを刺す。喰らえ、呪文《仁義無き戦い》!」


仁義無き戦い(パブリック・エネミー) 火文明 (3)
呪文
バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体選ぶ。その後、相手はバトルゾーンにある自身のクリーチャーを1体選ぶ。この2体にバトルさせる。


「俺が選ぶのは無論《オアシス&ブラー》だ。貴様はどうする」
「なら僕は、《ルピア・ラピア》を選ぶ」
 直後、《ルピア・ラピア》は強大な龍神に特攻をかけるが、当然ながら呆気なく破壊される。そして《オアシス&ブラー》の効果が発動する。
「貴様は手札を捨て、俺は1ドローだ」
「《トルネードシヴァ》が……でも、《ルピア・ラピア》の能力でこいつをマナに送り、マナからドラゴンを回収する」
 なんとか手札を増やそうとする夕陽。しかし、ガーリックは夕陽への妨害を止めない。
 今しがた引いたカードを見て微笑むガーリックは残るマナを使い切り、そのカードを晒す。
「再び《仁義無き戦い》だ。俺は《オアシス&ブラー》そして貴様は《コッコ・ルピア》を選ぶしかないな」
 互いの場にクリーチャーは一体しかいないが、その力の差は歴然としている。《コッコ・ルピア》も神に突っ込んでいくが、瞬殺される。《ルピア・ラピア》のように破壊された時の効果もないので、無駄死にだ。
「……!」
「さあ、手札を捨てろ」
 ガーリックが威圧感を込めて言い放つ。夕陽の残る手札が捨てられれば、もう彼にはなにも残らない。マナこそ豊富だが、手札がなければ意味がない。
 ——夕陽は俯きながら、小刻みに震えていた。しかしそれは、恐怖でも焦燥でもない。言ってしまえば、笑いを堪えているかのような震えだった。
「くっ、ふっ、ははは! お前、意外と馬鹿なんだな」
「なんだと?」
 そして遂に堪えきれなくなり、噴き出してしまう。しかもかなり追い詰められている状況で、笑いながらの罵倒。ガーリックも顔をしかめている。
「お前さぁ、もっと相手のプレイングを見ろよ。僕がさっき《ルピア・ラピア》の効果で戻したカードを見てないのか?」
「さっき戻したカード……?」
 正直に言うと、見ていない。いや、見はしたが覚えていない。どうせすぐにとどめを刺せるだろうという慢心で、見逃していた。
 夕陽は捨てられる一枚のカードをゆっくりと表向きにする。そしてその姿を露わにした瞬間、ガーリックは目を見開いた。
「っ、それは……!?」
「そう、《永遠のリュウセイカイザー》だ」


永遠(とわ)のリュウセイ・カイザー 火文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 8000
バトルゾーンにある自分のクリーチャーはすべて「スピードアタッカー」を得る。
W・ブレイカー
相手のクリーチャーは、バトルゾーンに出す時タップして置く。
相手の呪文の効果または相手のクリーチャーの能力によって、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりに自分のバトルゾーンに置いてもよい。


 《永遠のリュウセイ・カイザー》。基本的なスペックが非常に高いドラゴン。この場においては、《オアシス&ブラー》の効果で捨てられることにより、コストを踏み倒して現れる。
「こいつがいれば、僕のクリーチャーはすべてスピードアタッカーだ。さあ、どうする?」
「ぐぅ……」
 歯噛みするガーリック。どうせ夕陽の手札はゼロ、次のターンに確実にクリーチャーが引ける保証はない。《リュウセイ・カイザー》は確かに強いが、パワーなら《オアシス&ブラー》の方が上だ。なのでこのまま攻めたいところだが、
「このターンでは決められない、下手にシールドをブレイクすれば、クリーチャーを手札に入れられてしまう……!」
 ガーリックのシールドは残り二枚。とにかく召喚できるクリーチャーさえ引ければ夕陽の勝ちだ。
 だったら1ターン待ってクリーチャーを溜めてから、という考えも出て来るが、《リュウセイ・カイザー》はそれを許さない。たとえクリーチャーを召喚しても、《リュウセイ・カイザー》の効果でタップされて出るため、生半可なクリーチャーであればそのまま殴り返される。ガーリックの場にはコストを軽減するクリーチャーもおらず、マナもそこまで多くない。一度にクリーチャーを展開する余裕はないだろう。かといってクリーチャーを並べるまでもたもたしていたら、今度は夕陽がクリーチャーを引き当ててとどめを刺しに来る。
 どうしようもないジレンマに陥ったガーリック。彼は自棄になったように、神に向かって叫ぶ。
「《オアシス&ブラー》! シールドをTブレイクだ!」
 神の赤黒い火炎を喰らい、シールドを三枚割られる夕陽。これでシールドはゼロだが、もう彼は勝利を確信していた。
「S・トリガーに賭けたか……自棄になったわりには、正しい判断だね。でも、これで終わりだ!」
 夕陽のターン。今引いて来たカードと、今の手札。ダメ押しな感じはするが、念には念を入れて、だ。
「《コッコ・ルピア》召喚! コストを2下げて《ボルシャック・NEX》召喚! 能力で山札から《コッコ・ルピア》をリクルート! さらに二体の《コッコ・ルピア》でコストを4下げて、こいつを召喚!」
 二体の《コッコ・ルピア》に《ボルシャック・NEX》が重ねられ、夕陽の持つ“神話”の龍が降臨する。
「出て来い、《太陽神話 サンライズ・アポロン》!」
 これで夕陽の場には《リュウセイ・カイザー》と《アポロン》の二体。本来なら自分が従えるはずの龍が、ガーリックに牙を剥く。
「《アポロン》で残るシールドをブレイク! さらに山札を捲って、《不敗のダイハード・リュウセイ》も召喚!」
 《アポロン》の灼熱の炎を受け、がーっりくのシールドはすべてブレイクされる。そしてそのブレイクされたシールドのうち一枚が、光を纏う。
「S・トリガー発動! 《デーモン・ハンド》! 《永遠のリュウセイ・カイザー》を破壊!」
 土壇場で引いたS・トリガーで《リュウセイ・カイザー》を破壊するガーリック。しかし、それでは意味がない。
「《アポロン》のCD9で、僕のファイアー・バードとドラゴン、火文明のクリーチャーはすべてスピードアタッカーだ! 《リュウセイ・カイザー》を破壊しても、《ダイハード・リュウセイ》は止まらないよ!」
 念には念を入れた甲斐があった。もはやガーリックに、夕陽のドラゴンを止める術はない。

「《不敗のダイハード・リュウセイ》で、ダイレクトアタック!」

「ぐあぁ……だが、俺を倒しただけでは何も変わらないぞ!」
 《ダイハード・リュウセイ》の炎を纏った斬撃を喰らい、ガーリックの体が炎上する。だがそれも厭わず叫ぶ。
「まだ他に、五人のイザナイがいる……さらには、奴が現れるのも——」
 段々と声は掠れ、最後まで聞き取れない。
 炎の勢いは増すばかりで、完全に炎に飲み込まれると、ガーリックは消滅した。


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