二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Mythology
- 日時: 2015/08/16 04:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。
本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。
投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。
目次
一章『神話戦争』
一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33
二章『慈愛なき崇拝』
一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78
三章『裏に生まれる世界』
一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101
四章『summer vacation 〜夏休〜』
一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148
五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』
一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207
六章『旧・太陽神話』
一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292
七章『続・太陽神話』
一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404
八章『十二神話・召還』
一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424
九章『聖夜の賢愚』
一話『祝祭の前夜』
>>425
二話『双子の門番』
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争』
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲』
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447
第十章『月の下の約束です』
一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508
第十一章『新年』
一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573
十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』
一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610
十三章『友愛「親友だから——」』
一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637
コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』
一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482
デッキ調査室
№1『空城夕陽1』 >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137
人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.90 )
- 日時: 2013/08/07 22:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
パーセンターさん
こちらも似たり寄ったりです。心情的には夏休み(泣)という感じですが。
そうですね。夕陽たちがすんなり突入できたのも、彼らが先に乗り込んでいたからだったりします。
よく考えたら、『神話カード』ってもう半数近く出てるんですね。二章でこれは多いのか少ないのか……
所長の属する組織が敵になるかは今後の展開をお楽しみに、です。少しだけ言えば、敵かどうかは微妙なところです。それはじき分かると思うのですが。
モノクロもこの手のキャラクターは一人くらい小説の中に組み込んでますね。しかも大体敵っぽい立ち位置です。男女のどちらになるかはさておきますが。
クリーチャーが実体化してデュエルするのは、現在放送中のアニメの流れを汲んでいます。クリーチャーが自分を中核に据えたデッキで戦う、というのがなかなか面白そうだったので採用してみました。
俺様を召喚……確かによく聞くとツッコミたくなる台詞ですね。
最近だとドルボランの呪文版があったりもするんですよね。でもドルボランはドラゴンだからコスト軽減とか踏み倒しとかしやすいですし、W・ブレイカーもあるから活躍してくれそうなスペックです。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.91 )
- 日時: 2013/08/07 23:25
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
「霊崎、大丈夫か……?」
「大丈夫」
「……って、うわ! 霊崎、いたの?」
すぐさま応答が返ってきたため、思わずたじろぐ夕陽。どうやらほぼ同時に終わったらしい。
「そうか、そっちも終わったのか……あんまり無事って感じじゃないけど……」
「それはお互い様」
見ればクロの身体には無数の切り傷、制服にも血が滲んでおり、もう学校に着て行くことはできないだろう。クロが言うように夕陽も同じような状態だが。
「……それより、これ」
クロが手にしているのは、《金属器の精獣 カーリ・ガネージャー》のカード。夕陽が鹵獲した《ドルボラン》と同じく、カードに戻ったのだろう。
「ああ、それ誰のかも分からないし、貰っちゃっても良いんじゃない?」
「じゃあそうする」
さりげなく自分を正当化するためにクロにも鹵獲を促したが、彼女はそれを思いのほか簡単に懐に仕舞った。元々はプロモーション・カードで、再録もあまりされていない珍しいカードなので、実は欲しかったりしたのだろうか。
それはさて置き、今の夕陽にはまだすべきことが残っている。というより、すべきことができてしまった。
(このこと、霊崎にどう説明するか……流石に他人に言いふらすような性格ではないだろうけど、全部話すべきか。つっても、僕もクリーチャーがデュエルの時以外に実体化するなんて初めてのことだし……)
結局、どうすればいいのか分からない。事情を説明するにしても、どこからどこまで説明すればいいのかが分からない。そもそも夕陽にも、今の状況はよく分かっていないのだ、どう説明しろというのか。
そんなことを思いながらふと顔を上げると、クロはジッとこちらを見ていた、夕陽の顔を見つめていた。
(……いや、違う)
見つめているのは夕陽の顔などではなく、その瞳はもっと奥。植え込みへと向けられている。
「霊崎……?」
「誰か見てた」
クロの静かな一言で、夕陽の身体に電流が走り抜けるような衝撃が伝わる。
「っ! 見てたって、いつから……?」
「分からない。でも、デュエル中はいたと思う」
「最初からずっと見られてたってことか……!」
焦燥感を覚える夕陽。“ゲーム”絡みのことは他言無用、情報の漏洩には気を遣っていた。ただの一般人に“ゲーム”のことを知られるわけにはいかなかったのだ。
だがそれを、知られてしまった可能性が高い。だが、結果としてそれは杞憂だった。
「——別にそう焦ることはない。お前たちが隠そうとしているものに関しては、俺達の方がよく知っている」
植え込みから、声が聞こえてくる。どこか聞き覚えのある声。高慢さが伺える挑発的な口調だが、どこか陰気な雰囲気のある、そんな声。
その声に続いて、人影が姿を現した。
「な……っ、え……?」
夕陽はその人物の姿を認識した。
だが同時に、茫然と、唖然と、驚愕する。目の前の事実を受け入れられず、というよりはただ単純に意味が分からず、理解できず、呆けたように口と目を開いている。
「な、なんで、どうして……え、え?」
「…………」
困惑のあまり、とうとう言葉が繋がらなくなった。隣にいるクロは表情こそ変えないが、驚いてはいるのだろう。いや、状況を理解していない分、その驚きは夕陽より小さいかもしれない。
だが、状況を理解していようとしていまいと、その人物が今のような声と口調で発生しているという事態が既に、驚愕という感情を生んでいる。
「驚きすぎだ。【神格社界】の誰かから聞いてはいないか? “ゲーム”の参加者は相当数存在する、ならばその参加者の一人二人が、お前たちの身近にいてもおかしくはないだろう」
その言葉は間違っていない。だがそんな理屈ではなく、そんな理論では夕陽たちの困惑は晴れない。
とはいえこのまま驚いてばかりもいられない。夕陽は思い切って、尋ねる。
「一つだけ、確認、させてください……あなたは、本当に……?」
最後まで言葉は続かなかったが、相手もその問いの意味は察したらしい。ふぅ、と気だるげに溜息を吐き、
「面倒だ、この際はっきりさせておこう。そうした方がお前たちの混乱も、ある程度はマシになるはずだ。こんなことで、時間をかけたくもないしな」
その人物は——彼は、長い前髪の隙間から鋭い瞳を覗かせる。
「【ミス・ラボラトリ】所属、黒村形人。お前たちの観察者だ」
彼は名乗りを上げる。高らかではなく、やはり陰気さのある彼は、夕陽たちの知る社会科の教師にして副担任の、黒村だった。
「黒村、先生……? なんで、先生が……」
「さっき言っただろう。たまたまお前のクラスを受け持っている現代社会の教師が、“ゲーム”の参加者だっただけだ。まあ、俺がこの学校に勤めていることに関しては、偶然ではないんだがな」
そんなことはどうでもいい、と吐き捨てるように言う黒村。その口調はやはり、いつもの自信なさ気でおどおどした彼とはまるで違う。正反対だ。
「《ドルボラン》と《ガネージャー》は回収されたか。まあいい、どうせ所に余ってたカードを適当に見繕ってきただけだしな。だが、霊崎クロ、お前の存在はイレギュラーだった」
「私?」
名指しで言われ、首を傾げるクロ。
「ああ。本来、俺は『昇天太陽』……空城一人を、二体のクリーチャーと戦わせるつもりだった。、データを取るためにな。だがお前が入り込んだお陰で、取れたのは別のデータだ。追加で報告するにはあってもいいが、ノルマを達成したとは言い難い」
やはりいつもと違い、流暢に話す黒村。彼に違和感を感じながらも、夕陽はその話を遮った。
「ちょっ、ちょっと待ってください! 黒村先生、あなたは一体、なんなんですか!?」
「さっきも言ったが、また言う羽目になったな。俺は“ゲーム”参加者の一人だ。個人的というか組織的には、参加者というと少々語弊があるのだがな」
「そうじゃない! そうじゃなくて、さっき【ミス・ラボラトリ】とか言ってましたけど、あなたはどういう組織の人間で、どういう目的でこんなことをけしかけてきたんですか!」
口振りから、クリーチャーを使って襲撃したのが黒村の手によるものなのは理解した。最初はかなり戸惑ったが、その辺りの順応性はそこそこ身についたようだ。
どういう仕組みでクリーチャーが実体化したのか、興味がないわけでもないが、今は別に聞きたいことがある。それが彼の所属だ。
夕陽も汐から聞き、その汐も『機略知将』こと青崎記に聞いたことで、つまりは又聞きなのだが、【ミス・ラボラトリ】は研究機関だと聞いた。“ゲーム”や『神話カード』について調べ尽く組織だと聞いた。だがそれだけだ、それ以上のことは知らない。
「と言われても、概ねそれで合っている。詳細まで説明するにはそれ相応の時間が必要だが、そこまで時間もかけていられない。だから端的に、要点だけを伝えるとしよう」
面倒だと言わんばかりに肩を竦め、黒村は口を開く。
「お前がさっき言ったように【ミス・ラボラトリ】は研究機関、“ゲーム”に関する物事や人物、そして『神話カード』についてひたすら探究するする組織だ、それ以上でもそれ以下でもない。そして俺はそこの研究員、今は観察者だ。その使命に則り、お前やお前の持つ『神話カード』を観察している」
「……今まで、ずっと見てきたってことか」
「そうなるな」
あっさり肯定する黒村。夕陽らが『神話カード』を手に入れたのはつい最近のことだが、一体いつから観察していたのかと、疑問と共に嫌悪を感じる。
なんにせよ、ここで“ゲーム”の関係者が現れたということは、その目的は一つだろう。
「あなたも、僕らの『神話カード』が目的ですか?」
「そうとも言えるが、違うとも言える」
曖昧に返す黒村。そんな言い方をせずとも、もう夕陽は構えていた。その様子に、黒村は肩を竦める。
「見て知ってはいたが、気性が荒いな。とはいえこちらも本題に移れる、その姿勢に問題はない」
静かに言って、黒村はポケットからデッキケースと思しき箱を取り出す。もしやとは思っていたが、学校の教師がデュエル・マスターズカードを持っているという光景は、妙におかしく見えた。
「いつかはこうなる可能性も考慮していた。そして実際にデータを取るのであれば、自ら出向く方が分かりやすい。主観が混じってしまうのは如何ともしがたいが、仕方ない」
次の瞬間、場の空気が変貌する。
「この感じ……やっぱり」
視線を動かせば、目の前にはシールド、その手前には手札、右には山札と、デュエルの準備は完全に整っていた。
「まさか黒村先生が“ゲーム”の関係者とは思わなかったけど、安々と《アポロン》を渡す気はありませんよ」
「……別に、お前からその“権利”を得られるとは思っていない」
嘆息するように息を吐き、そんなことを言う黒村。夕陽は少し首を傾げる。
「? なんですかそれ? 戦う前から負ける言いわけですか?」
「違う、負けるつもりは毛頭ない」
夕陽の挑発も軽く受け流す黒村。いつもの彼の性格とは正反対なので少々やりにくさがある。
が、それでも夕陽は、目の前の敵に立ち向かうのだった。
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.92 )
- 日時: 2013/08/21 01:21
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
黒村形人、雀宮高校の現代社会の教師にして、夕陽たち一年四組の副担任。
だがその姿は彼本来の姿ではなく、正体は“ゲーム”について研究する組織【ミス・ラボラトリ】の観察者。その使命により、今まで夕陽たちを観察していた。
その今までの観察というものは遠くから眺めるだけ、そんな感じだったのだろう。しかし今回に至っては直接的に手を出して来た。その一つ目が、デュエル中でもないのにクリーチャーが実体化し、しかもそのクリーチャーがデュエルをするという現象に巻き込ませること。
二つ目は保険、本当なら二体のクリーチャーと夕陽を戦わせ、二戦分のデータを収集するはずだったが、それをたまたま場に居合わせたクロに妨害され、やむなく黒村自身が夕陽と戦うこととなった。
そのような経緯があり、夕陽と黒村のデュエル。先に動いたのは、先攻3ターン目の黒村だ。
「《福腹人形コダマンマ》を召喚。シールドを一枚手札に加え、ターン終了だ」
動いたと言っても、実際はただクリーチャーを召喚しただけ。《コダマンマ》の能力で手札補充をしているが、代償としてシールドを失った。
だがこれだけで、夕陽は黒村のデッキタイプがどのようなものか予測できた。
「シールドを減らす手札補充、そしてデスパペット。闇文明を絡めたビートダウンか……?」
「概ねそんなところだ。そう考えると霊崎の相手がガネージャーで良かった。コントロールのドルボランとビートダウンのガネージャー、二つのデッキタイプに対してお前がどう動くかを見るのが目的だからな。もしお前の相手がガネージャーだったら、俺はドルボランの代わりにコントロールデッキを使う羽目になっていた。コントロール重視のデッキは俺の性に合わないからな」
黒村の話を適当に聞き流し、夕陽はマナチャージでターンを終える。
(しかし早いターンで攻撃されるときついな。このデッキは3マナ溜まってから動くのが基本だから厳しくなりそうだ)
まったく対応できないわけではないが、それでも中盤まで攻めきらせないようにしなければ厳しいのは明らか。序盤にどれだけ守れるかが夕陽の勝利に繋がって来るだろう。
「俺のターンだ。《青銅の鎧》を召喚してマナチャージ、《コダマンマ》でシールドブレイク」
早速一枚割られた。S・トリガーはない。
「っ、でもまだまだ。ここから巻き返す! 《コッコ・ルピア》召喚!」
ドラゴンの召喚コストを下げるファイアー・バード。夕陽のデッキはここから始まる。
「やはりそう来るか。だが関係はない、このデッキにそこまで柔軟性はないからな。《コダマンマ》召喚、効果でシールドを手札に」
二体目の《コダマンマ》が現れ、シールドが三枚になった黒村。だが手札はなかなか減らない。
手札に加えたシールドをを見て、黒村はふっと呟く。
「こいつか……マナもある、早めに出しておいて損はない。《コダマンマ》進化、《奇術王エンドレス・パペット》」
奇術王エンドレス・パペット 闇文明 (3)
進化クリーチャー:デスパペット 5000
進化—自分のデスパペット1体の上に置く。
相手が自分自身の手札を捨てた時、その捨てられたカードと同じ枚数のカードを引いてもよい。
現れたのは、無数の人形を操る道化師。そしてその道化師本人も、どこからか糸で吊られている。
「やば、面倒なのが出た……」
《エンドレス・パペット》は能力も厄介だが、攻撃手が増えたという理由でも厄介だ。進化して召喚酔いもなく、アタッカーが三体並んだ状況となっている。
「《エンドレス・パペット》でシールドをブレイク」
まずは一撃目、《エンドレス・パペット》の操る人形にシールドを割られたが、そのシールドは光の束となって夕陽の手元に戻ってくる。
「S・トリガー発動! 《スーパー炎獄スクラッパー》!」
夕陽が引いたのは、速攻相手に有効なS・トリガー《スーパー炎獄スクラッパー》だった。
(二枚目でこいつを引けたのは良いけど、どうするか。《エンドレス・パペット》は厄介だし早く除去したいけど、そうすると他の二体でシールドがやられる。またトリガーを引ける保証もないし、流石に二枚も割られるのは痛いか)
結論をつけ、スクラッパーが《コダマンマ》と《青銅の鎧》の真上に出現する。
「《コダマンマ》と《青銅の鎧》を破壊だ! そして僕のターン!」
出来ればここで《エンドレス・パペット》を除去できるクリーチャーを引きたかったが、そう上手くは行かない。
「《ボルシャック・NEX》を召喚! 《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに!」
二体目の《コッコ・ルピア》が場に出る。これで夕陽のドラゴン召喚コストは4下がる。
「随分と召喚コストを減らすな、そんなにドラゴンを召喚したいか」
黒村は次のカードをドローしつつ、夕陽の場を眺めている。
「大型ドラゴンのコストを4も軽減されるのは痛手に繋がるが、そもそも召喚するドラゴンがいなければ意味はない。《特攻人形ジェニー》を召喚」
「な……っ!」
「効果で《ジェニー》を自爆し、お前の手札を一枚捨てる」
召喚されたのはカッターのような刃物を持った少女の人形。その人形は場に出るなり夕陽の手札に向かって突っ込み、うち一枚に手中のカッターを突き刺して自爆した。
「っ、《バベルギヌス》……!」
「お前の手札が捨てられたことで、《エンドレス・パペット》の効果発動。一枚ドローだ」
《エンドレス・パペット》の糸が黒村のデッキからカードを吊り、それが手札に加わる。さらに、
「《青銅の鎧》を召喚、マナを溜め《特攻人形ジェニー》を召喚。自爆して手札を破壊だ。そして一枚ドロー」
「くっそ、今度は《バルキリー・ラゴン》が……」
殴り返しを警戒してか、このターンは攻撃してこなかった黒村。妙に慎重だが、その判断は間違っていない。
「僕の、ターン……」
《エンドレス・パペット》の効果で手札がまったく切れていない黒村、対照的に夕陽の手札は既に残り二枚。手札補充の手段がそこまで多くないこのデッキで、これはきつい。
「でも、裏を返せばまだ二枚あるんだ。マナチャージして、二体目の《ボルシャック・NEX》を召喚! 次は《ダーク・ルピア》をバトルゾーンに出す! そして《ボルシャック・NEX》でW・ブレイクだ!」
《ボルシャック・NEX》の炎が黒村のシールドを二枚吹き飛ばすが、その二枚は渦巻く光となって黒村の手中に舞い戻る。
「……S・トリガー発動《プライマル・スクリーム》、山札の上四枚を墓地に送り、墓地から《盗掘人形モールス》を回収。さらにもう一枚のS・トリガー《地獄門デス・ゲート》、《コッコ・ルピア》を破壊して《幻緑の双月》を復活、手札からマナチャージ」
「っ……! ターンエンドだ……」
黒村のシールドは残り一枚。一気に押し切れるかと思ったがそうも行かず、勢いは削がれ墓地も肥やされてしまった。
そして、黒村のターン。
「墓地にクリーチャーは六体、G・ゼロで《盗掘人形モールス》をコストを支払わずに召喚だ。効果で墓地の《死神術士デスマーチ》を回収」
ぞわり、と。
夕陽の背筋に悪寒が走る。
「呪文《ボーンおどり・チャージャー》及び《プライマル・スクリーム》。山札の上二枚を墓地へ送り、そのままマナへ。さらに山札の上四枚を墓地へ送り《デスマーチ》を回収」
流れるようなプレイング、次々と墓地へ送られていくカード。
「G・ゼロ《モールス》を召喚し《デスマーチ》を回収。そして——」
黒村の墓地から黒い煙のような影が立ち込める。その影は段々と、人型を形成し、
「——墓地進化、《死神術士デスマーチ》を三体召喚」
三体の操り人形となって場に現れた。
「っ、アタッカーが……!」
わずか1ターンで黒村の場にはクリーチャーが合計八体に。しかもすぐに動けるアタッカーは六体、夕陽のシールドはわずか三枚。
「三体の《デスマーチ》で攻撃、シールドブレイク」
「く、っぅ……!」
夕陽のシールドはこれでゼロ。しかもS・トリガーは来なかった。
「善戦はしていたが、予想以上に呆気なかったな。《エンドレス・パペット》で、ダイレクトアタック」
最後にそんな言葉を投げかけ、黒村は奇術王に命ずる。《エンドレス・パペット》は傀儡の如く忠実に、その命を果たすのだった。
- Re: デュエル・マスタ ( No.93 )
- 日時: 2013/08/08 05:45
- 名前: Dr.クロ (ID: /PtQL6mp)
ん、いいですよ!
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.94 )
- 日時: 2013/08/08 07:24
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
その場で膝から崩れ落ちる夕陽。ダイレクトアタックによるダメージもあるが、それ以上に彼の胸中には強い思いが溢れていた。それを押し留めることが出来なかった。
「く、そ……!」
悔やみ、悲しみ、怒り……そういった様々な感情がないまぜになった夕陽の思いは、目の前の黒村にも、そして自分にも矛先を向けていた。
スッと、夕陽は《アポロン》のカードを抜き取る。
(負けた、しかも“ゲーム”のデュエルで負けたん。てことは——)
《アポロン》を失う。
その一点が、夕陽の中を埋め尽くしていた。
まだ出会って半年も経っていないが、それでもこのカードに対する思い入れは大きい。今までのことだけではなく、これからの未来に対する希望のようなものも、《アポロン》があってこそだ。
もっと《アポロン》と共に戦い、使いこなせるようになるという密かな夕陽の目標はここで頓挫。黒村に奪われてしまうのだった——
「——あれ?」
と、思ったのだが。
夕陽の手元から、いつまで経っても《アポロン》が出て行かない。
“ゲーム”におけるデュエマで、『神話カード』を持つ者が負けた時、その『神話カード』は元の持ち主から離れ、勝者の元へと向かう。それは夕陽自身も体験しているし、姫乃の時も見ている。このみも汐もそうだと言っていた。
だが、夕陽の手元から《アポロン》は出て行かない。
「な、なんで……?」
「やはりな」
安心感を感じるよりも困惑する夕陽に対し、黒村は予想していた問題が出題された時のような反応を見せる。
「『昇天太陽』、空城夕陽。お前、そのカードはどうやって手に入れた?」
「え……?」
唐突な黒村の問いに、また困惑する夕陽。そしてその困惑を抱えたまま、答える。
「どうやってっていうか、家の郵便受けに入ってた」
「ということは、お前は誰かからそのカードを渡されたわけではないんだな?」
「そう、だけど。それがなに?」
ここで夕陽が《アポロン》を手に入れた経緯を知ることに何の意味があるのだろうか。そんなことを思う夕陽だったが、しかし彼が思う以上にそのことには重大な意味があった。
「お前たちはまだ“ゲーム”に巻き込まれて日が浅いから知らないだろうが、“ゲーム”という争奪戦の対象、即ち『神話カード』はただすべてを集めればいいというわけではない」
「……? 『神話カード』は集めるものじゃないのか? 僕らが戦った教祖は、『神話カード』をすべて集めることが目的だったよ」
「勿論、十二枚蒐集することが基本方針だ。だが集めるにもそこに様々な規定が生じる。「集める」というのは「奪う」という言葉に言い換えられる、そして奪うということは『神話カード』の「所有者」が存在する。この「所有者」の定義によって、俺はお前に勝利しても『神話カード』を奪えない」
所有者の定義、と話が難解になってきたが、夕陽らは“ゲーム”のルールについて知っておかなければならない。それは、自分たちを多少なりとも有利にするものだから。
「現時点ではすべての『神話カード』に所有者が存在する。たとえば、春永このみは《プロセルピナ》の所有者で、光ヶ丘姫乃は《ヴィーナス》の所有者だ。【神聖帝国師団】の師団長も二枚の『神話カード』を所持しているという。そして春永や光ヶ丘のように『神話カード』は、誰かから「奪う」ことでその所有権を得ることが出来る。お前も《マルス》を手に入れた時はそうだろう、だからお前は現時点で《マルス》の所有者ということになる」
「……じゃあ、《アポロン》はどうなるんだ?」
夕陽はずっと自分のことを《アポロン》の所有者だと思っていた、だからこそ『昇天太陽』などという異名がついたのだと思っていた。だが黒村の口振りからするに、それは違っていたようだ。
夕陽は、《アポロン》の所有者ではないのか。
「そうだな……まあ、これは《アポロン》というカードを観察していた俺達だからこそ分かったことではある。まだ“ゲーム”参加者の中では、お前が《アポロン》の所有者だと思っている者が大半だろう。話を戻すが、最初にはっきりさせておくと、『神話カード』の所有権を得る方法は二つある。一つはさっき述べたように、他の所有者からデュエルで『神話カード』を奪うこと。そしてもう一つは、他の所有者から譲渡されることだ」
「譲渡?」
譲渡、つまりは譲り渡すこと。
人によっては喉から手が出るほど欲しがっている『神話カード』を、自分たちでもない限りわざわざ他人に渡すものがいるのだろうか、と夕陽は疑問に思ったが、
「いるさ。確かにお前は俺達の世界では特異な存在だが、それは《アポロン》あってこそだ。そして“ゲーム”に首を突っ込むも、その殺伐とした世界が嫌になり、カードを捨て逃げ出す者もいる。とはいえ、俺は実際に誰かがカードを譲渡した例を見たことがないからな。記述として残っていることを言うが、その記述によると、譲渡された者は「カードが淡く発光し、温もりのような感覚が全身を通って自らの手に収まる」らしい」
黒村は努めて淡々と述べたが、その台詞は非常にくさい。とても研究員の台詞とは思えないが、そのような記述なら仕方ない。本人の感覚的なものというのも原因だろう。
ここで問題なのは、夕陽が“『神話カード』を譲渡された時の感覚を感じていないこと”である。当然だ、郵便受けに入っていたカードを自分のものにしているのだから、そんな感覚があろうはずもない。
それは、つまり、
「空城夕陽、お前は《アポロン》の本当の所有者じゃない。そして、その本当の所有者というのは、別に存在する」
「…………」
黒村の話を聞いていて分かったことだが、こうもはっきり言われると流石に堪える。今までずっと《アポロン》は自分のものだと、どこかそんな風に思っていた自分が恥ずかしい。
しかし、となるとここで疑問が一つ浮かんでくる。夕陽が《アポロン》の本当の所有者でないのなら——
——本当の所有者は誰なのだろうか。
「……俺は知っているがな。そもそも、俺は《アポロン》の前の持ち主、そして真の所有者を観察するためにここにいる」
黒村は、疑念が渦を巻いて非常に暗く難しい顔をしている夕陽に、あっさりと淡泊にそう言ってのけた。
「っ、誰、ですか……?」
まだ黒村に対しての口調が定まらない夕陽。敬語を使えばいいのか、それとも敵に接する態度がいいのか。敵意を向き出した敬語になってしまったが、それでも通じるだろう。
だが、
「それをお前に教える義理はない。さっきは“ゲーム”のルールを一部説明してやったが、それは単に、そうした方がお前たちをより観察しやすくなると思ったからだ。本当の所有者の存在を教えて俺達にメリットがあるならいくらでも教えてやるが、ボランティアで情報提供するつもりはない」
一蹴された。しかし黒村の言うことももっともで、夕陽と黒村は今しがた敵として戦ったばかりである。反論することはできない。
だがやはり、今の《アポロン》の所持者として、気にならないわけはなかった。今、夕陽が持つ『神話カード』の本当の所持者がどのような人物であるのか。
(それに……)
その人物は、間接的に夕陽たちを“ゲーム”に引き込んだ人物なのだ。今更そんなことを責めるつもりはないが、どんな人物くらいかは知っていおきたい、それが人の性というものだ。
そんなことを思いながら立ち上がると、どこからか電子音が聞こえてくる。設定も何もしていない、携帯電話の着信音のようだが。
「……僕じゃない」
夕陽はポケットから携帯を取り出して確認するが、着信はない。次に、後ろにずっといるクロに視線を向けるが、
「私じゃない」
こちらも違ったようだ。となると、残るは一人。
「……もしもし」
黒村だった。
「やっぱりあなたですか。一応、この時間は学校にいる可能性もあるから極力かけないようにと言ったはずですが……首尾ですか。まあまあです。結局、『昇天太陽』と戦う羽目になってしまいました。まあ、この程度ではなんの狂いもないですが……ん? なんですか?」
黒村は夕陽たちのことなど忘れたかのように、通話に集中している。その口調は教師である時の陰気なものとも、さっきまでの高慢な者とも違う、粗野だがどこか親しみがあって、とても人間味のある声だ。
「【師団】? そう言えば動き出すと言ってましたね。まさかもうですか、早いですね……は? それは、本当ですか? そういう情報はもっと早く伝えてくだいさいよ。……はいはい、分かりました、今すぐ向かいます」
通話を終えた黒村はすぐに携帯を仕舞い込む。その表情は、どこか慌てているかのようだった。
「少し手伝え、『昇天太陽』。俺に教えられることなら情報提供くらいしてやろう」
「手伝えって……なにがあったのさ。情報提供って言うなら、まずはそこから教えろ」
突然、傲慢とも言える態度で要求を突き付ける黒村。夕陽の言葉に、彼はできるだけ淡々と、しかし少しだけ焦りを生じさせ、答えた。
「【神聖帝国師団】がこの学校に乗り込んできた」
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