二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.321 )
日時: 2014/01/04 03:12
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

『《ダイダラ》の光臨発動ッ! 山札から《爆竜フレームシヴァXX》をバトルゾーンにッ!』
 呼び出されたのは、攻撃するたびに山札から超次元呪文を持って来れる《爆竜フレームシヴァXX》だ。
「……私のターン」
 正直、状況はかなり厳しい。
 シールドこそまだ四枚残っているが、ブロッカーは《ホネンビー》が一体だけ。だが《ダイダラ》の場には《信心深きコットン》《爆翔イーグル・アイニー》《爆裂のイザナイ ダイダラ》《爆竜ハリケーントプス XX》《爆竜フレームシヴァXX》《時空の精圧ドラヴィタ》の、六体のクリーチャーが並んでいる。
「二体目の《ホネンビー》を召喚。墓地から《ユッパール》を回収して、《カメンビー》と《ユッパール》を召喚。《ドラヴィタ》をフリーズ」


束縛の守護者ユッパール 光文明 (3)
クリーチャー:ガーディアン/アンノイズ 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。そのクリーチャーは、次の相手のターンのはじめにアンタップされない。


 次のターンに《ドラヴィタ》は覚醒してしまうが、覚醒して名前が変わっても同じクリーチャーとして扱われるので、フリーズは通用する。
 今はまだ逆転することはできないが、とりあえず守りを固め、隙を窺うしかない。
『俺のターンだッ! 俺のバトルゾーンにはフレイムコマンドが三体! この時《時空の精圧ドラヴィタ》の覚醒条件を達成ッ!』
 《ドラヴィタ》は場のフレイム・コマンドから、その爆裂の炎を受け、覚醒する。

『覚醒ッ! 《龍圧の覚醒者ヴァーミリオン・ドラヴィタ》!』


龍圧の覚醒者ヴァーミリオン・ドラヴィタ 光/火文明 (14)
サイキック・クリーチャー:エンジェル・コマンド/アーマード・ドラゴン 12000
相手は呪文を唱えることができない。
このクリーチャーはタップされていないクリーチャーを攻撃できる。
T・ブレイカー
解除(このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、バトルゾーンを離れるかわりに、コストの小さいほうに裏返す)


 覚醒して現れたのは、フレイム・コマンドの力を得た超次元の精霊《龍圧の覚醒者ヴァーミリオン・ドラヴィタ》。
 アンタップクリーチャーを攻撃でき、よほど大量展開をするデッキでもない限り、場を制圧していける。なおかつ呪文を封じるため、除去もされにくい。
 アンタップキラーはともかく、呪文封印は呪文を比較的多く使用するクロにとっては辛い。だからこそ、《ユッパール》でフリーズさせ、一時停止にしたのだが。
 しかし《ヴァーミリオン・ドラヴィタ》を止めても、《ダイダラ》のクリーチャーがいなくなるわけではない。
『まだまだこれからだッ! オーロラの苦しみは、こんなものではないッ! 《爆裂霊騎ドイネーション》を召喚ッ!』
 続けてクリーチャーを繰り出す《ダイダラ》。しかしクロは、《ダイダラ》の口走った言葉に反応を示す。
「オーロラ……?」
『そうだッ! 貴様にやられたオーロラの痛み、苦しみ、この俺が報復するッ!』
 確かに以前、雀宮高校に現れた【師団】の刺客、ミウ・ノアリクによって呼び出された《妖精のイザナイ オーロラ》は倒したが、
「……誰?」
 残念ながら、倒したのはクロではなくこのみだ。その場には居合わせていたが、実際に倒されているところを見たわけでもない。
 《ダイダラ》は勘違いしたままに、叫び続ける。
『喰らえッ! 《ダイダラ》でシールドブレイク! 《フレームシヴァXX》でシールドブレイク!』
 次々と割られていくシールド。しかも《フレームシヴァ》の能力で超次元呪文まで手に入れられてしまった。
『《ドイネーション》でシールドをブレイク!』
「ニンジャ・ストライク《光牙忍ハヤブサマル》でブロック」
 シールドブレイクで手札に入った《ハヤブサマル》を召喚し、《ドイネーション》を止めるが、まだ《ダイダラ》の攻撃は止まらない。
『《ハリケーントプスXX》でWブレイク!』
「《カメンビー》でブロック。《カメンビー》が破壊されたから、一枚ドロー」
 《ダイダラ》の猛攻を凌ぎながら、反撃の体勢を整えていくクロ。しかし、反撃にはまだ手が足りない。
『ターン終了ッ! そして《ダイダラ》の光臨発動ッ! 山札から二体目の《フレームシヴァXX》をバトルゾーンにッ!』
 これで《ダイダラ》の場にはクリーチャーが八体。対するクロはたったの二体。次のターン、凌げるかどうかかなり微妙だ。
「……三体目の《ホネンビー》を召喚。墓地から《ハヤブサマル》を回収。さらに墓地のガーディアンの数だけコストを減らして、1マナで《連隊の守護者ドクロンビー》を召喚」
 さらに残ったマナで、《ユッパール》にカードを重ねる。
「《ユッパール》進化《守護聖天タテブエ・ヤッホー》」


守護聖天タテブエ・ヤッホー 光文明 (5)
進化クリーチャー:ガーディアン 6000
超無限進化—自分のクリーチャー1体以上の上に置く。
ブロッカー
メテオバーン—このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに裏向きにして加えてもよい。そうした場合、そのターンの終わりにこのクリーチャーをアンタップする。
W・ブレイカー


 とにかく今は守り切るしかないので、ブロッカーでない《ユッパール》のみを進化元に《タテブエ・ヤッホー》が現れる。
「《タテブエ・ヤッホー》で《ダイダラ》に攻撃。メテオバーンで《タテブエ・ヤッホー》の下の《ユッパール》をシールドへ」
 なんとかシールドを回復させ、これで三枚になる。ついでにアタッカーも破壊しようとするが、
『《コットン》でブロック!』
 流石にそこまでは許してくれない。今まで空気同然だった《コットン》が、ここに来てチャンプブロックとして役に立った。
「……ターン終了時、《タテブエ・ヤッホー》はアンタップする」
 これでクロのブロッカーは五体。さらに手札には《ハヤブサマル》もいるため、なんとか次のターンは凌げそうだ。
 と、思ったが、
『その程度で俺の攻撃を防げると思ったかッ!? 俺のターンッ! 《超次元ボルシャック・ホール》で、《ホネンビー》を破壊ッ! そして超次元ゾーンより《時空の剣士GENJI・XX》をバトルゾーンにッ!』


時空の剣士GENJI(ゲンジ)・XX(ダブルクロス) 火文明 (7)
サイキック・クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド/サムライ 7000
W・ブレイカー
覚醒—自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のクリーチャーがすべてタップされている場合、このクリーチャーをコストの大きいほうに裏返す。


 ブロッカーが破壊された上に、サイキック・クリーチャーまで呼び出されてしまった。しかもフレイム・コマンドなので《イーグル・アイニー》でスピードアタッカーとなる。
 しかも、まだ《ダイダラ》の破壊は終わらない。
『さらにッ! 《超次元キル・ホール》! 《ホネンビー》を破壊し、《時空の喧嘩屋キル》をバトルゾーンにッ!』
 またしても《ホネンビー》が破壊される。《キル》はスピードアタッカーではないが、ブロッカーを破壊されたのは痛い。
『行くぞッ! まずは《ヴァーミリオン・ドラヴィタ》でTブレイク!』
「…………」
 クロは《ヴァーミリオン・ドラヴィタ》が襲ってくる数秒の間に、自身のマナと墓地を見遣る。
 マナには二枚、墓地には一枚《大行進・スパーク》が落ちており、山札の枚数からそのカードがシールドに入っている確率を計算すると、
「……《ホネンビー》でブロック」
 この結果を導き出す。
 《ヴァーミリオン・ドラヴィタ》のパワーは12000、《ドクロンビー》も12000なので、相打ちにできるのだが、ここで《ヴァーミロン・ドラヴィタ》を討ち取っても、解除で《ドラヴィタ》に戻り、次のターンに除去できなければ大量に並んだフレイム・コマンドの力を得てまた覚醒してしまう。
 《ヴァーミリオン・ドラヴィタ》がいると呪文を唱えられないが、《ドラヴィタ》がいると呪文を唱えるたびにこちらのブロッカーが機能しなくなってしまう。残っているS・トリガーは呪文ではなさ気なので、ここはまだ《ドクロンビー》を残しておく。
『ならばッ! 《ハリケーントプス》でWブレイクだ!』
「《ドクロンビー》でブロック」
 これは迷わず《ドクロンビー》で防ぎ、《ハリケーントプス》を破壊。
『まだまだッ! 《ドイネーション》でシールドブレイク!』
 次に放たれた攻撃は、とりあえずスルー。これでクロのシールドは残り二枚になったわけだが、
「……!」
 手札に入ったのは、《大行進・スパーク》だった。
 もし《ヴァーミリオン・ドラヴィタ》を《ドクロンビー》と相打ちにして覚醒を解除させれば、このターンは確実に凌げていた。
『《GENJI》でWブレイク!』
「ニンジャ・ストライク《ハヤブサマル》でブロック」
『《ダイダラ》でブレイク!』
「《タテブエ・ヤッホー》でブロック」
 次々と突っ込んで来るダイダラのクリーチャーをブロックするが、これでクロのシールドはゼロ。しかしダイダラの場にはアタッカーが三体。
『万策尽きたかッ! なら終わりにしてやるッ! 《フレームシヴァXX》でブレイク! 山札から《超次元シャイニー・ホール》を手札に!』
 ブレイクされたのは《ユッパール》のシールドだ。さっきは《大行進・スパーク》のシールドブレイクされたが、どうやらダイダラは適当にシールドを割っているらしい。
『二体目の《フレームシヴァXX》で最後のシールドをブレイク! 《超次元ボルシャック・ホール》を手札にッ!』
 そして遂に、クロの最後のシールドが砕け散った。
 しかし、そのシールドが光の束となって収束する。
「……S・トリガー発動。《神託の守護者 胡椒》を召喚」


神託の守護者 胡椒 光/闇文明 (5)
クリーチャー:オラクル/ガーディアン 2000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
S・トリガー
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
このクリーチャーが破壊された時、他のクリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻してもよい。


 S・トリガーで現れたのは、オラクル教団に仕える《暗躍のサトリ 山椒》の兄《胡椒》だ。
 特別強いわけではないのだが、この場合だととりあえずダイダラのとどめの一撃を防ぐことができる。
『ふん、S・トリガーに救われたな。だが攻撃は緩めんぞッ! 《イーグル・アイニー》で攻撃!』
「《胡椒》でブロック。破壊されたから墓地の《ハヤブサマル》を回収」
 とりあえず首の皮一枚で生き残ったクロ。とはいえここから逆転するのは至難の業だが、ここまで粘った甲斐あって、逆転のカードを引いた。
「……墓地の《ミスト・リエス》《ドルル・フィン》《ユッパール》《ハラッカダン》《カメンビー》《ホネンビー》《エビンビー》《ドクロンビー》《胡椒》を進化元に、超無限進化・Ω」
 墓地に落ちた数多のガーディアンが寄り集まり、守護の力が暴走した天頂の存在となる。

「《「無情」の極 シャングリラ》」

 愛憎併せ持つゼニス、《シャングリラ》。タップしていればそれだけで相手クリーチャーは攻撃できなくなり、無情の封殺を受けることとなる。
 だが今回は、攻撃させないなどと悠長なことはしない。
「《ドクロンビー》でTブレイク、《タテブエ・ヤッホー》でWブレイク」
『なっ……ぐおぉぉぉッ!』
 場にはアタックできるブロッカーが残っている。なのでクロは攻めに出た。《ドクロンビー》で三枚《タテブエ・ヤッホー》で二枚、それぞれシールドを粉砕し、これでダイダラのシールドはゼロ。

「《「無情」の極 シャングリラ》で、ダイレクトアタック」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.322 )
日時: 2014/01/04 14:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「もうすぐ例の公園か……!」
 目的地に向かって走る流。もうすぐ指定された公園へと辿り着くのだが、その時、携帯の着信音が鳴った。
「……? 誰だ、こんな時に」
 と言っても、神話空間が展開しているこの状況なら、相手は絞られる。
 着信はメールだった。急いで携帯を開き、その文面を読む。
「……なに? 朝比奈ひまりを探せ、だと……?」
 文章が拙いため、いまいち要領を得ないが、要はそういうことらしい。
 少し思案する流。推測するに、夕陽たちもひまりと連絡がつかないのかもしれない。
「……もしや、朝比奈ひまりがこの戦争における【師団】のターゲットなのか……?」

「だーいせーいかーい」

 突如、上空から声が聞こえる。いや、上空と言うと言いすぎだが、少なくとも流の頭より高い位置からの声だ。
 具体的には、塀に上っていた。
「……誰だ」
「わぉ、反応うっす。ただでさえ今日はノリのいい人がいないのに、相手さんまでドライなの? 酷いなぁ」
 流の反応が不服らしいが、あまり気にした風もなく、その人物は塀から飛び降りる。
 変声期を迎えているかいないかくらいの声で、まだあどけなさの残る少年だ。年齢は恐らく汐と同じくらいだろう。鮮やかな金髪に白いシャツ、ベージュのハーフパンツと、そこまで奇抜が外見ではない。だが少し丈の長い黄色いコートが目立っている。
「誰だ、と聞いている」
「冷たいなぁ……ちょっとくらいお喋りしてもいいでしょうに。ま、いっか。どうせ名乗るつもりだったし、それが先か後かになるだけだよね」
 軽薄そうな笑みを浮かべながら、少年は口を開く。
「ぼくは“帝国四天王”が一人『黄衣之天ハスター』。よろしく、ね」
「四天王……【師団】の者か」
 それがなにを意味する語なのか、流には分からない。しかし少年——ハスターの雰囲気から察するに、【師団】の中でも相当上位の存在だろう。
 そんなことを考えている流とは逆に、少年はペラペラと口を閉じることなく言葉を発し続ける。
「ぼくはこれでも【師団】のトップ4だからね……ああいや、師団長と姫を除けば、トップ6か。だから、結構君らの情報ってのも持ってるんだよ。君、あれでしょ? 水瀬流でしょ? 『大渦流水モスケスラウメン』」
 ほとんど呼ばれたことがないが、確かに流にはそのような異名が付けられている。
「意外と地味だけど、君って有名どころでは有名なんだよ? なにせフリーで『神話カード』を持ってたくらいだからね。どこの組織にも属さずに『神話カード』を持ち続けられるなんて稀だよ、超レアだよ? 最近だと、君くらいなもんじゃないかな?」
 “ゲーム”の世界では、様々な組織が渦巻いている。“ゲーム”に関わったものは、遠からず大抵はどこかしらの組織に属する定めになっているのだ。
 しかし流は、夕陽たちと出会うまで《海洋神話 オーシャンズ・ネプトゥーヌス》を保有していた。その間、どこの組織にも属していないどころか、他の組織との接触はほとんどなかった。
「だから無名なのに、有名なとこでは有名なんだよねー。ま、異名が付けられるってことは【ラボ】にはお見通しみたいだけど。それに——」
「おい」
 話を続けようとするハスターを、流は遮った。
「なんの用だ。俺は今、暇ではない。餓鬼に付き合っている暇はない」
「ガキなんて酷い、確かに君と比べればぼくなんて子供だけどさ」
 少年は飄々とした態度で、流の言葉を受け流す。流も罵ったつもりではないが。
「ま、暇がないのはお互い様さ。ぼくも君の言う朝比奈ひまり——『太陽一閃サンシャイン』を探さなくちゃいけない。面倒だよねまったく、どこに雲隠れしてるのやら……」
 やれやれと言うように、大仰に手を振るハスター。
 そういえば、と流は先のハスターの言葉を思い出していた。ハスターは、流の【師団】の狙いはひまりだということを肯定した。と、いうことは、
「……前言撤回だ。俺は、お前に用ができたみたいだ」
「へ?」
 意外、と言うように目を丸くするハスター。その挙動もわざとらしい。
「なにそれ? ぼくと君は初対面だよね? 用なんてないと思うけどなぁ……敵同士とはいえ、せっかくお互い忙しい身で、争う理由もないわけだし、ここは穏便に済ませようよ。ぼく、面倒なのはやだよ」
「お前に理由がなくとも、俺には理由があるんだ」
 【師団】がひまりを狙っているのなら、流にも戦う理由ができる。夕陽たちはひまりを探しているようだが、それは【師団】も同じだろう。なら、ここで【師団】の人間を足止めするだけでも、夕陽たちの助けになる。結果的には、ひまりを助けることにも繋がるのだ。
 そんな戦う姿勢を見せる流とは裏腹に、ハスターはやる気なさ気だった。
「えぇー……『神話カード』を持たない君に、興味なんてないんだけどなぁ……」
 しかし、
「でーもー……ま、いいか。師団長から貰ったデッキを使わないままにしとくのももったいないし。ちょっと休憩がてら、遊んどこ」
 刹那。

 二人を包む空間が、大きく歪んだ。



 雀宮高校、屋上。その給水塔の上にて、ラトリ・ホワイトロックは——
「ダメ、死ぬ、ダイ……きつすぎ……」
 瀕死寸前だった。
 これは誰かに襲われたとか、そういうことではなく、単純に体にかかる負荷が大きいために体調不良を起こしているだけだ。
 だけだ、と言っても、当人からすれば相当辛い状態だろうが。
「こんなラージな範囲に能力使ったことなかったけど……無理無理。すっげー吐きそう、リバース……こうなったら」
 息も絶え絶えになりながらごそごそと白衣のポケットを漁り、携帯電話を取り出す。
 が、その時、ふとなにかを感じた。
「ん……あれ? 一人多い……」
 《アテナ》が展開した神話空間の中にいる人間は、すべて把握している。【師団】の戦闘員と夕陽たち、加えて外部からやって来た者。それらすべてをカウントしていたはずだが、人数が一人合わない。
「一般人が紛れ込んだ……なんてことはありえないし、ちょっと展開が遅かったのかな。神話空間が開く前に、クリーチャーに接触したとか……? そうすると——おっと」
 慌てて口を塞ぐラトリ。こればかりは、吐きそうだからというわけではない。
「危ない危ない、誰もヒアしてないとはいえ、口調がブロークン、もといバックしちゃったよ。やっぱ辛いなー、これ」
 《アテナ》が展開できる神話空間は、無関係な一般人を完全にシャットアウトできる。どの範囲まで展開するかも自由に設定できるため、極端な話地球全体を覆うことすらもできるのだ。
 しかし範囲が広ければ広いほど、使用者にかかる負担が大きくなる。加えて継続時間も短くなり、無理に時間を伸ばそうとすれば、それだけ負担もさらにのしかかってくる。
 とはいえ、普段から“ゲーム”の殺伐とした世界に身を投じているのなら、ある程度の負担には耐えられるだろう。しかしラトリはあくまで研究者。“ゲーム”の中でもトップクラスの重鎮ではあるが、特別強いわけでもない。ゆえに、体にかかる負荷は耐え難いものだった。
「気持ち悪い……発作起きそう……」
 右手で携帯のボタンをプッシュしながら、左手で白衣のポケットを再びまさぐり、白い錠剤の入った小瓶を取り出す。それを器用に片手で開けると、これまた器用に中から数粒だけ取り出し、口の中へと放り込んだ。
「このままだと本格的に私死ぬな……こんな時には頼れる部下を頼るしかないよね……あ、コネクション。もしもーし、黒村君?」
 電話が繋がった瞬間、先ほどまでの青い顔が嘘のような声を発するラトリ。彼女はそのまま、電話の相手に用件を伝え、ちらりと目下の校庭の端を見遣る。
 そこには、複数の影が校門をを乗り越えている光景があった。



「……ふむ」
 人のいない町を歩く男が一人。古そうな茶色いコートを着たその男の名は、和登栗須といった。“ゲーム”の世界では『深謀探偵シャーロキアン』という名の方が有名だ。
「推理すると、やはりこの異常な状況は『神話カード』が関わっていると見るべきだな。この神話空間自体は一般人を巻き込まないため。だとすると《守護神話》か」
 栗須も『神話カード』を求める者だ。しかも【師団】のように軍勢を率いる者ではなく、単騎で行動する【神格社界】の人間。『神話カード』の匂いがすれば、自ら乗り込んでいく。
「近々【師団】が日本に渡ってくるという情報を『機略知将ノウレッジ』から聞いたが、【師団】の目的は《守護神話》か……? 否、そうではないだろうな」
 この町に住む者のことなら、栗須も知っている。最近になってぐんぐん知名度を上げている『昇天太陽サンセット』という少年と、その仲間たち。この町に置いては、彼ら以上の有力な組織はない。
「組織と言うには些か漠然としすぎているが……そういえば、《太陽神話》の所有権は『太陽一閃サンシャイン』に戻ったのだったか」
 そこから栗須は思考を巡らせる。多くの材料をかき混ぜて推理し、一つの結論を導きだした。
「……ならば【師団】の狙いは『太陽一閃サンシャイン』か」
 それだけなら不思議はない。あの組織は『神話カード』を集めることに最も尽力している組織なのだから。
 しかし栗須は、どこか不穏な空気を感じていた。
「荒れそうだな、今回の戦争は……」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.323 )
日時: 2014/01/04 15:20
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「あ、黒村さん。戻りましたか」
「……ああ」
 雀宮高校三階、社会科準備室にて、九頭龍は黒村の帰りを迎える。迎える、という態度でもないが。
「なんか気分悪そうですね? どうしました? どっかでクリーチャーの奇襲でも受けました?」
「……いや、なんでもない」
「そうですか……ならいいんですけどね、どうでも」
 気にはなるようだが、どうでもいいというのも嘘ではないだろう。それ以上追及はしなかった。
「それはいいんですけど、所長の要件ってなんだったんですか? というか、所長も学校にいたんですね」
「ああ、いつの間にかいたな。《守護神話》で神話空間を展開していた」
「なるほど……で、要件は?」
「……一般人が紛れ込んだらしい」
「は?」
 意味が分からない、と言うように開いた口が塞がらない九頭龍。勿論比喩で、すぐに閉じたが。
 しかし驚いているのは確かだろう。九頭龍もラトリの持つ『神話カード』の力は知っている。その力の絶対性もだ。あのカードの力が発動しておいて、無関係な人間が入り込むなどということはありえない。
「考えられる可能性があるとすれば、神話空間が展開する前にクリーチャーの襲撃を受けたケースですね。で、どうするんですか? その一般人というのは」
「とりあえず保護するように言われた。お前も来い」
 サラッと命令する黒村。あまりに自然な流れだ。
「え? 僕もですか?」
「そうだ。なにか問題でもあるか?」
「……ありませんよ」
 しかし、すぐに言い伏せられてしまう。
 なぜ九頭龍がこうも唯々諾々と黒村に従っているかというと、それは先日、九頭龍が黒村に負けたことにある。
 あの時のデュエルは黒村の私闘ということになっていたはずなのだが、どういうわけなのかいつの間にか【ラボ】全体にその話が広まっており、体面上九頭龍は黒村に従わなければならない空気がになってしまったのだ。
「黒村さん、本当にあの時のこと、誰にも言ってないんですか?」
「俺がそんなことをする奴に見えるか?」
「見えませんけど……はぁ、面倒なことになったなぁ」
 しかも黒村がその雰囲気を利用しているものだからタチが悪い。当然だが、黒村は九頭龍をかなり恨んでいるようだった。
「っていうか、それだけですか? 今日は【師団】が攻めて来る日、でしたよね? 《守護神話》の神話空間が開いた時からそれは分かってましたが……僕らはそこに干渉しなくてもいいんですか?」
 【師団】は大規模な組織ゆえに、情報はありふれている。しかしそれらの情報は、【師団】側が流しているガセ情報も存在し、本当に機密な事項はよっぽどのことでもなければ知ることはできない。
 だが、今回のように向こうから攻めてきた場合はその限りではない。これは【師団】の情報を得ることのできる絶好の機会だ。
 無論、そんなことは黒村も分かっていた。だから、それについても考えてある、というよりは必然的に干渉することになるはずだ。
「言うまでもないな」
 これもラトリから聞いたことだ。黒村は、ちらりと窓の外に視線を向ける。

「どうやら、日曜日に学校に来る常識知らずがいるみたいだ」



 一応説明しておくと、日曜日だからといって学校が開放されていないわけではない。
 日曜でも練習する部活はあるし、図書室も利用できる。そもそも黒村も表向きでは教師として学校に来ているのだ。
 それはともかくとして。
 つまり、日曜日と言えど学校の施設を利用する者はいるのである。そして学校という場所である以上、その施設を利用しているのは生徒である場合が多い。
「…………」
 歪んだ空間の中から、一人の小柄な少女が現れた。雀宮高校指定の黒いブレザーを着ていることから、学校の生徒であることがわかる。
 少女は足元に落ちた一枚のカードを拾い上げる。
「《絆のイザナイ デカブル》……やっぱり、デュエマのカード……」
 とりあえずカードをポケットに入れ、次は窓の外を見遣る。練習をしていたはずの運動部の姿はない。さらに首を伸ばして、学校の外にも目を向けるが、通行人らしき人影が一つも見えない。
 さらに今度は廊下に出た。きょろきょろと辺りを見回し、軽く歩いて確認するが、誰もいない。
「…やっぱり、さっきの変な感覚の後から、人が消えてる……どういうことでしょう……」
 酷く静かな学校と町。そして奇妙なデュエマのカード。
「……いや、まさか。これはもう、ただの市販されているようなカードになってますし」
 頭に浮かんだ可能性を振り払う少女。
 とりあえず今は、この不可思議な現象について考えるが、考えたところで解明する材料がないので、分かるはずもなかった。
 その時だ。
「ここですか? 第三図書室って書いてありますが」
「ああ、この辺りにいるはずだ。とりあえずその人物の身の保全を最優先だ」
「はいはい、分かってますよ。にしても、僕らはいつの間に救助隊になったんですかね……お」
 廊下から男の声がして、ガラガラと図書室の扉が開かれた。
「っ、黒村先生……と、誰……?」
 入って来たのは、二人の男。一人は少女も知っているこの学校の教師、黒村形人。もう一人は、少女の知らない九頭龍希道だ。
「向田……やはり生徒か」
「黒村さんの受け持ちの生徒ですか?」
「そんなところだ」
 少女の反応はほぼ無視する二人。しかし、その存在までは無視しない。
「話は後でする、ここは危険だ。向田、とりあえず来い」
「え? えっと……」
「いやいや、黒村さん。そんな言い方じゃ誰もついてきませんよ……無愛想すぎます」
 確かに無愛想だが、少女が戸惑っているのは黒村がいつもの黒村でないからだ。少女の知っている黒村はもっとおどおどしており、声も聞き取りにくい気弱な男だったはずだ。
「ならお前が連れて行け、九頭龍」
「え、僕がですか? 黒村さんの生徒なんですから、黒村さんと一緒の方がいいんじゃないんですか?」
「上に所長がいるから、俺はここを離れられない。いいから行け」
「……はぁ。分かりましたよ」
 不承不承といった風に頷く九頭龍は、少女へと近づいていき、
「そういうわけだから、悪いけど少しつきあってね。大丈夫、所長の命令だし、少なくとも君の身は保証するよ」
「いや、あの……」
 まだ戸惑っている少女。状況への理解が追いついていないのだろう。
「……来るな」
「はい?」
 ふと黒村が呟いた、その瞬間。

 図書室の窓から何者かが飛び出した。

 一応説明すると、雀宮高校にはいくつか図書室があり、ここは三階にある。そして窓から飛び出したということは、校舎の外からやってきた、ということになる。
 確かに窓の外には排水溝を兼ねた縁があり、空調機も外に設置されているのでそれを足場にはできるが、重力に逆らって外から校舎の三階まで上るには相当な力と柔軟性が必要だろう。
「【師団】……」
 このタイミングで、しかもそんな登場方法で現れれば、その可能性しかありえないだろう。九頭龍は反射的に少女の前に立つ。
 図書室に降り立ったのは、少女だった。後ろの少女やこのみほどではないが、わりと小柄。茶色の髪を二つに結び、結んだ部分にはコテが巻かれている。
 体格は、肉付きという面ではよいが、筋肉質というわけでもない。服装こそ動きやすそうなものだが、校舎の外を上って来たのはやはり驚きだ。
「九頭龍、行け」
「了解です」
 黒村の指示を受け、九頭龍は少女の腕をつかんで走り出した。
「っ……!」
「ごめんね、後で説明するから!」
 九頭龍は少女に脇目を振らせる前に図書室から出て行ってしまう。そしてこの場に残ったのは、黒村と目の前の少女だけだ。
 少女は怪訝そう、というか、驚いたような、ありえないものを見たような目を、開かれた図書室へと向けていた。
「……ねえ、さっきの女の子って」
「俺の生徒だ。それ以上でもそれ以下でもないし、それ以上は言うつもりもない」
 なにか探りを入れようとしていると思った黒村は、話を広げない。
「で……お前は【師団】だな。見たことない奴だが、誰だ」
「……まあいっか。私は【神聖帝国師団】第七小隊長、村崎陽花だよ」
 少女——陽花はなにかを諦めたように息を吐いてから、そう名乗った。
「あなたはあれでしょ? 【ラボ】の所長の右腕。『傀儡劇団ティアリカル』、黒村形人でしょ? 流石に私も知ってるよ、有名人だし」
 なにを自慢したいのかは知らないが、自慢げに言う陽花。とりあえず黒村はそれを無視し、
「運が悪かったな」
 と告げた。
「【ミス・ラボラトリ】は研究機関、未知の存在があるなら探究しないわけにはいかない……とりあえず、お前は今から俺の研究対象だ」
 そして、
「このデッキの被検体になってもらう」

 刹那、二人の間の空間が歪み始める。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.324 )
日時: 2014/01/04 17:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 雀宮高校、屋上の給水塔の上——からは降りて、ラトリは寝転んでいた。
「あーだいぶ楽になった。やっぱ持つべきものは便利な部下だよねー。黒村君にはソーリーだけど」
 などと言っていると、ふと屋上の扉が開くのが見えた。
 入って来たのは、金髪碧眼の男だ。白を基調とした軍服と軍用帽子、右目には切り傷が見え、閉じているが、普通の眼鏡をかけている。全体的に古い将兵のような意匠だ。
「……ラトリ・ホワイトロックですね」
 男は寝転がっているラトリに歩み寄ると、ゆっくりと口を開いた。
「私は【神聖帝国師団】第一小隊長、ドグマ・アルヒャイと申す者です。早速で悪いですが、あなたの『神話カード』……《守護神話》を渡してもらいましょうか」
 どこか棘のある男の言葉を聞きながら、ラトリは体を起こし、グッと体を伸ばす。
「ふわーぁ、せっかくのんびり伸び伸びしてたのに、ブレイクタイムが台無しだよ」
 ぱんぱんと白衣を払って、今度は立ち上がる。
「で、誰だっけ? ドグマ君? どっかのテロリストだった君が、私になんの用?」
「……こちらの情報は知っているようですね。って、なんの用じゃねーですよ。《守護神話》を渡せと言ってるでしょうが」
「あー、あれね。今持ってないよ」
 中途半端に乱暴な口調が混ざっているドグマの言葉などどうでもいいと言うように、ラトリはサラッとのたまう。
「持ってない……? どういうことですか。まさか既に【師団】に敗北して——」
「ノンノン、それは違うよ。ちょっと頼れる部下に預かってもらってるだけ。あのままだとリバースしそうだったんでね。私もガールだし、流石に吐いてるシェイドをお見せすることはできないよ」
「いや、ガールと言える年齢じゃねーでしょう、あなた。というか、吐いてるとか言ってる時点で説得力も皆無ですし……」
 ラトリのペースに飲み込まれつつあるドグマだった。
 どういうわけかは分からないが、とにかく今のラトリは『神話カード』を持っていないようだ。察するに、一時的に誰かに権利を委譲しているのだろう。
 その行為自体は、分からなくもない。まだ未知数なところもあるが、ラトリは決してデュエルが強いわけではないはず。この戦争で不運にも【師団】に遭遇してしまった時、負けてしまってもデメリットが小さくなる。
「……しかし、ここで【ラボ】のトップを仕留めておけば、後々の戦争が有利に働くかもしれません。師団長もあなたのことは嫌っているようですし、ここで戦わない理由もねーですね」
 そう言いながら、ドグマはデッキケースを取り出す。対するラトリは、
「うーん、なんか面倒だなぁ……ぶっちゃけ、こんなストレインジな口調の人とはバトりたくない……」
「あなたに言われたくねーですよ」
 変な口調と言われて言い返すドグマ。冷静さは保っているが、ここまででほぼ完全にラトリのペースだ。
「まぁ、いいかなぁ? ちょっと暇を持て余してたし。いいよ、相手したげる」
「やっとやる気になりましたか。しかし、こちらから仕掛けておいてなんですが、私と戦うとなれば、命の保証はしませんよ」
「いいよ」
 ドグマの言葉に対し、ラトリは即答だった。
「私は君らとは違う。命を賭す覚悟なんてとうにできてるよ」
「っ……」
 ラトリのさっきまでとは別人のように違う空気に気圧されかけた、次の瞬間。

 二人は歪んだ空間に飲み込まれた。



「あ、あの、ちょっと……離してくださいっ」
「おっと、やっと抵抗されちゃったか」
 廊下を走るうちに、九頭龍は少女に手を振り払われてしまった。
「あ、そういえばまだ名前聞いてなかったね。僕は九頭龍希道っていうんだ。君は?」
「向田葵です……ではなく!」
 九頭龍のペースに乗せられることなく、喰いかかってくる葵。
「これはどういうことなんですか? クリーチャーが実体化したり、人がいなくなったり……」
「へぇ、君もデュエマするんだ。ってことはやっぱり、クリーチャーに襲撃されたクチかな……説明ならするけど、あんまりのんびりもしてられないし、後じゃダメかな?」
「大まかにでも説明されなければ納得できませんよ」
「って言ってもなぁ……」
 と言いながら、九頭龍は視線を左右に向ける。
「本当に時間ないみたいだし」
「え?」
 と、その時。
 柱の陰からそれぞれ人影が現れる。
「おーおー、さっすが勘がいいなぁ、【ラボ】の犬は」
「そもそもこうして囲まれている時点で、その勘の精度には疑問が残りますけれど」
 容姿は、かなり両極端な二人だ。
 一人は男。染めているのだろう紫色の短髪に、額の闇文明の紋章、頬の火文明の紋章。長袖だが、この時期にはやや寒そうなTシャツとジーンズ。Tシャツは大量の絵の具をぶちまけたような、派手と言えば聞こえはいいが、どこか狂ったようなファッション。
 もう一人は女。流麗な長い金髪を水色のリボンで束ねており、リボンと同色のドレス、さらにはガラスの靴とピアスという、どこか高貴で気品ある佇まい。
「僕はこういう人物については疎いんだけど……えーっと、誰だっけ?」
 どうせ大した連中ではないのだろうなどと思いながら言うが、九頭龍が思うほどこの二人は小物ではない。
「お前は敵だし、覚える必要なんざないが教えといてやるよ。俺は【神聖帝国師団】第三小隊長、葛葉龍泉だ」
「同じく【神聖帝国師団】第四小隊長、ジュリア=チェッカーズですわ。以後、お見知り置きを」
「隊長クラスか……」
 知らない名前だったが、思った以上に大物ではあった。
 九頭龍は背後の葵と、龍泉とジュリア、そして階段へと続く廊下を順番に見遣る。
「うーん、二人かぁ……黒村さんはあの子と交戦中だし、所長は僕が呼んでも来てくれないだろうし、逃げられるかなぁ……」
「逃がすわけねえだろ」
 九頭龍の言葉を、龍泉は切って捨てる。
「私たちの目的は確かに『神話カード』ですが、副次的な目的も存在するんですのよ」
「具体的に言えば、今だ謎の多い【ラボ】の所長の情報とかだな。この場で言えばお前も含まれるんだぜ、九頭龍希道」
 名指しされる九頭龍は、さらに弱ったように頭を掻く。
「なんか最近ついてないなぁ、僕。ていうか、自分で言うのもなんだけど、僕って【ラボ】の中じゃあ結構有名な部類だと思うよ。情報なんて、かなり広まってるんじゃない?」
「そうじゃねえよ。ここでお前を再起不能にすれば、【ラボ】の戦力も落ちるだろってこった」
「ああ、なるほど」
 身の危険は感じるが、脅威とは思っていない様子の九頭龍。しかし、面倒なことになったのは確かだ。
 九頭龍の目的は、葵の身の安全だ。しかしこの二人の登場によって、それも阻害されてしまう。一人だったら叩きのめせばいいだけだが、二人なのでそういうわけにもいかない。
 九頭龍にとって葵はなんでもないただの少女なので、見捨てるという選択肢もなくはないが、そうすると自分の【ラボ】での立場がなくなってしまう。
 いくらなんでも葵に戦わせるわけにはいかないだろう、と思っていたが、
「……あなたは、黒村先生のお知り合いなんですか?」
「うん? まあ、知り合いというか同僚というか。立場的には僕の方が下だけど、大体そんな感じだね」
 あまりに唐突だが、内心では焦っていた九頭龍は、思わず素で答えてしまった。余裕ある受け答えをしているが、焦りを悟られないようにしているだけなのだ。
「なら……私も戦います」
「は……いやいや。流石にそれはさせらんないって」
 ただのクリーチャーならともかく、相手は隊長クラス。ただの一般人が勝てるとは思えない。
 しかし、葵は食い下がる。
「私なら大丈夫です、こう見えてもデュエマには自信があるつもりです。それに、少し気になることもありますし……」
 そう言って一歩前に出る葵。
「うーん……本人がそう言うなら仕方ないかな。黒村さんでも話せば……分かってくれるかなぁ? まあいいか。じゃあ、死なない程度に頼むよ」
 あまり手段を選んでいられる状況でもないので、九頭龍は葵に賭けることにした。我ながら情けないと思う。
「なんだぁ? 紛れ込んだ一般人頼みかよ。情けねぇなぁ!」
「それだけ彼も追い詰められている、ということですわ。悪いことではないでしょう」
「そーかぁ? 俺は餓鬼の相手なんざごめんだぜ」
「ならば九頭龍希道の相手をしてくださいませ。彼女は私がお相手いたしますので」
 そして【師団】側でも話が進んでいた。
「はぁ……じゃあ、始めるかな」
 本日何度目になるのか、軽く溜息を吐く九頭龍。

 刹那、歪んだ空間が四人を包み込む。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.325 )
日時: 2014/01/04 21:16
名前: ツギハギさん (ID: j9SZVVec)

どうも、ついさっきまでPCとインターネットの中継地点(ルーター・・・だっけ?)がぶっこわれていたツギハギです(その後ソレごと交換しました 海戦…じゃない回線が軽いです、どこぞの第二小隊長に影響されたわけではありません)

見れない間に随分更新されていましたが…なんとか更新分をすべて読み終えました
自分は要約癖があるので長文はできませんが、ちびちび感想でも

仄、クロ、リュウ、零のデュエルですか(え?ナガレだって?細かいことは(ry
クロ、リュウ、零のデュエルも読み甲斐のある熱いものでしたが…まさか《ネプチューン》に《ネプチューン》をぶつけるとは…
イメージより仄が少々丸くなっているのはおそらく夕陽たちの影響でしょうか?
そして次に…これは些細なことですが、無口でクールなクロが「ヤッホー」なる言葉を、クリーチャー名とはいえ使っているところを想像すると少々シュールですね
これで《どんどん掘るナウ》やなんて使った日には…噴き出す自身があります。色的に使いそうなのがまた

ついでに、《マルス》さんすみませんニャルさんに言われるまで忘れていました。《アポロン》には劣るものの、十分な制圧力をもっているのに…ついでに全身重火器というツギハギにとってはドストライクの外見をもっているのに

ハス太、あ、いえハスターさんですか…なんだか次にでてくるものが予想できるような気がします
そりゃ大富豪には自信がありますし8切からのK三枚なんてザラですけどジョーカー連発は…おっと

第7、第3、第4、第1の小隊長がでてきましたね
第2がでてくるのも近いんでしょうか…

さて、そろそろ700文字をこえてしまいそうなのでこのへんで。ネタたっぷりでお送りいたしました

追記
現役デュエマーとして我が切り札《デス・マリッジ》がでてきた日には歓喜します。
追記で700文字いってしまいましたがそれはご愛嬌


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