二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.391 )
日時: 2014/02/23 22:23
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

黒村 形人(くろむら なりと) 男 24歳



容姿:前髪が長い黒髪で目元が隠れがちになっており、目つきも少々鋭いが、顔立ちは凛々しく、このみ曰く結構イケメン。

性格:俯きがちなうえにぼそぼそと喋り、はっきり言って陰気。その声のせいで黒村の授業には催眠効果が追加される。しかしこれは雀宮高校の教師としての顔であり、その素顔は【ミス・ラボラトリ】の観察者。客観的にものを見る癖があり、意識せずに言葉が辛辣になることも多々ある。夕陽たちへの認識はあくまで観察対象だが、ラトリの指示もあり、“ゲーム”に関わる物事に疎い夕陽たちをサポートすることも多い。ラトリとは上司と部下の関係だが、彼女の奔放な行動と言動には呆れている。しかしその一方で所長として尊敬している面もある。九頭龍のことは、実力こそ認めてはいるが、彼の行動を問題視し、快くは思っていない。

所属:【ミス・ラボラトリ】、雀宮高校社会科教師、一年四組副担任

備考:社会科の教師だが、実は理系。

戦術:異名にもあるデスパペットをメインとした、ハンデスや墓地を利用する戦術が多い。サイドカラーはその都度変わるが、メインカラーは基本的に闇文明。自然のマナ加速と組み合わせてビートダウンしたり、火と組み合わせて打撃力を高めたりする。
切り札は
《奇術王エンドレス・パペット》
《世界の果て ターミネーター》
《不死帝 ブルース》
《百万超邪 クロスファイア》
《暴走龍 5000GT》
《勝利皇帝 Guy—R》
など。

概要:【ミス・ラボラトリ】のナンバー2であり、『傀儡劇団ティアリカル』の異名を取る。第七章では一時的にラトリから《守護神話》の権利を委譲され、彼女に代わり町全体に神話空間を展開していた。だがその負荷を耐え切ることはできなかった。



各章デッキ解説

『三章』
 闇と自然のビートダウンデッキ。軽量デスパペットとビーストフォークを並べてビートダウンしていくのが基本で、攻めながらマナと墓地を増やしていく。速攻デッキの宿命として手札が枯渇しやすいが《福腹人形コダマンマ》《盗掘人形モールス》でそれを補っている。墓地進化で《死神術士デスマーチ》を呼び出し奇襲をかけたり、《奇術王エンドレス・パペット》でハンデスと同時に手札補充をするなどの搦め手もある。切り札は《奇術王エンドレス・パペット》
『四章』
 三章とほぼ同じ闇、自然のビートダウンデッキを使用。《人形の裏技ペット・パペット》を使い、タダでハンデスを行うなど、コントロール色がやや強くなっている。
『六章』
 闇、火のデスパペットとアウトレイジを組み合わせたデッキ。墓地利用がメインとなり、《白骨の守護者ホネンビー》などで墓地を増やしつつクリーチャーを回収し、《解体人形ジェニー》などによるハンデスで相手を妨害する。切り札となるクリーチャーが重いため《ボーンおどり・チャージャー》や《リバース・チャージャー》によるマナ加速も忘れてはいけない。十分な墓地とマナが増えたら、《不死帝 ブルース》の能力で墓地のデスパペットとアウトレイジを並べ、一気に押し切る。《世界の果て ターミネーター》が出れば一気に墓地が増え、特に《ブルース》とは絶大な相性を誇る。《ターミネーター》が出れば山札にいる《ブルース》は高確率で墓地へと落ち、次のターンには墓地から《ブルース》が召喚できる。この時点で山札は残り一枚になっており、マナゾーンにないクリーチャーはほぼすべて召喚でき、《ターミネーター》の能力で山札切れで負けることもなくなる。一気に増えた墓地からはG・ゼロで出せる《百万超邪 クロスファイア》や、ほぼコスト1で出せるようになる《暴走龍 5000GT》を呼び出し、奇襲をかけるのが基本パターン。こうして呼び出したクリーチャーは軒並みコストが重いため∞ソウルシフトでコストが軽くなる《勝利皇帝 Guy—R》を召喚するのもいい。切り札は《世界の果て ターミネーター》《不死帝 ブルース》《百万超邪 クロスファイア》《暴走龍 5000GT》《勝利皇帝 Guy—R》
『七章』
 ラトリから一時的に《守護神話 エンパイアス・アテナ》を手渡されたため、この時のみ《アテナ》を主軸とした光、水、自然にタッチで闇を加えたコントロールデッキを使用した。《エメラル》などを用いたシールドへの仕込み、ガーディアンをメインにした防御など、ラトリのデッキをほぼそのまま流用している。だがそのラトリのデッキに黒村が少しだけ手を加え、S・トリガーが増量し、守りがより固くなっている。本来なら守りながらシールドにカードを仕込みつつ、《アテナ》へと繋げるのだが、本編ではドローソースが少ないために投入した一枚挿しの《アクア・ベララー》が妙に活躍を見せていた。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.392 )
日時: 2014/02/23 22:23
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

ラトリ・ホワイトロック 女 24歳



容姿:若々しいというより、幼さを感じさせる風貌。顔つきは日本人とも外国人とも取れ、肌は透き通るように白く、邪魔にならないように束ねられた髪の色素の薄い。学校の制服のようなクリーム色のブレザーに、青いチェックのプリーツスカート。さらにその上から裾の長い白衣を着ている。

性格:楽観的で能天気、このみに似て馴れ馴れしいほどフレンドリー。似非外国人と言われるような、言葉のいたるところが英語の口調で話す。ただ、この口調はキャラ作りのようなものらしく、思うところがあったり体調が崩れた時などは普通の口調になる。【ミス・ラボラトリ】の所長というだけあって博識で観察眼も鋭いが、デュエルの腕は決して強いわけではない。たまに雰囲気が変貌する。

所属:【ミス・ラボラトリ】

備考:国籍不明。姉がいるらしい。

戦術:メインカラーは光。《アテナ》を組み込んだデッキとそれ以外のデッキの二つを持っている。どちらもシールド・ゴーの能力を持つクリーチャーを投入しており、《アテナ》入りならガーディアンで守りつつ《エメラル》などでシールドにカードを仕込み、《アテナ》の召喚を目指す。もう片方は《驚異的陣形 アレキサンドライト》を核としたシールド・ゴーデッキ。
切り札は
《守護神話 エンパイアス・アテナ》
《驚異的陣形 アレキサンドライト》
など。

概要:《アテナ》の所有者だが、デッキに組み込まないほうが強い。また、【神聖帝国師団】の師団長や【神格社界】の界長とは浅からぬ縁がある。



各章デッキ解説

『五章』
 光、水、自然のコントロールデッキ。序盤はマナ加速と《エメラル》などによるシールドへの仕込み、そして小型ブロッカーによる防御で凌ぐ。《アテナ》を召喚してからは、能力でシールドが表向きになるため、序盤に仕込んだシールド・ゴー能力を持つクリーチャーの能力が発動する。デッキに投入されているガーディアンと光クリーチャーの平均コストが低いため、《アテナ》のCD能力をすべて発動させるには《時空の庭園》を絡めないと難しい。切り札は《守護神話 エンパイアス・アテナ》。
『七章』
 シールド・ゴー能力を持つアウトレイジをメインにした五色のデッキ。序盤はマナ加速でマナの数と色を揃えていく。《飛散する斧 プロメテウス》は手札補充と、マナゾーンの色の調整もできるため優秀。このデッキは《驚異的陣形 アレキサンドライト》が出てからが本番で、シールドにシールド・ゴー能力を持つクリーチャーをセットし、様々な能力で場を支配していく。《凄惨なる牙 パラノーマル》なら相手の弱小クリーチャーが根絶やしになり、《全力艦長 イカリ》なら攻撃するたびに手札が増えていく。シールド・ゴー関連のカードが非常に多く、S・トリガーはほとんど投入されていないが、シールド・ゴーでシールドが増えるうえ《アレキサンドライト》の能力で自軍はブロッカーとなるため、防御力は高い。だが単色カードの多いデッキなので、色事故がよく起こるのが難点。また、他にも様々なコンボが組み込まれている。切り札は《驚異的陣形 アレキサンドライト》

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.393 )
日時: 2014/02/13 20:19
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 世界が暗い。
 今まで、挫折という挫折を経験したことはなかったが、そんなことなどうでもよくなるほどに、今の世界は暗く、冷たいものだった。
 彼女と出会ったのは、ほんの一月ほど前。たったそれだけの付き合い——などと言うのは、薄情が過ぎるだろう。
 しかしたった一ヶ月でも、彼女の影響力は大きかった。特に、彼女の力を受け継いでいた、自分にとっては。
 胸の内どころか、からだのあらゆるところに空洞ができたようだった。それも、ただ穴が空くのではなく、その空洞という空間すらも削り取られて、虚無しかない、虚無すらもないような感覚。
 無も存在できないほどに、自分の中身は劣化していく。絶望に苛まれ、喪失に蝕まれた心は、無の侵食が進んでいく。
 頭の中に蓄積された記憶や知識も、霞んで消えてしまう。友人との思い出も、共に戦った戦果も、すべてが虚無へと還っていく。
 そんな中で、たった一つ残っているものと言えば、存在しないはずの太陽だけだ。

「先輩——」



 日曜日の次は月曜日、というのが、世界の理だ。そして月曜日と日曜日に差異が存在するのも、また然り。汐は、この日が月曜日であることをここまで疎んだ日はないだろうと思う。
 昨日の今日ではあるが、世界のルールを曲げる力は、残念ながら汐にはない。兄に言い訳することもできず、曇天の寒空の下、制服を着て学校へと向かっていた。
(こんな時に登校できる自分の神経が理解しがたいです……)
 昨日の出来事は、当然ながら汐にとってもショッキングだった。しかしそれ以上に衝撃を受けた先輩がいる。
 本当なら、どうにかしたい。しかしどうすればいいのか分からない。下手に干渉してもいい結果を生めるとは思えないし、自分がいい結果を出せるとも思えない。
 だからといってのうのうと学校なんかに行っている場合か。そんなジレンマが彼女を苛む。
 その時だ。
「シオせんぱーい!」
 後方から、声が聞こえてくる。振り返ると、そこには見知った顔が。
 自分の後輩で、自分の先輩の妹な少女が、軽い足取りで駆けて来る。
「おはようございます、シオ先輩!」
「……おはようです」
 自分の先輩の妹というだけあり、彼女とも、汐は交流があった。学年こそ違うが、むしろ共にいる頻度だけなら、このみや姫乃よりも多いかもしれない。
 汐は挨拶を返してから、かける言葉に悩む。自分の気になることを言及するべきか。間接的とはいえ、やはり干渉すべきではないのか。その二つを天秤にかけ、しばらく口をつぐんでいた。
 だが汐の天秤など関係なく、彼女の方から切り出した。
「先輩。実は今日、お兄ちゃんが変なんですよ。あ、いや、昨日から変なんですけど。なんか、どっかから帰って来たと思ったら、すぐに部屋に引きこもっちゃって。ご飯も食べずに……気になってちょっと部屋を覗いてみたら、ベッドの中で蹲ってて」
 概ね、汐の予想通りだった。あれだけのことがあったのだ、悲嘆にくれる時間は必要だろう。
「先輩は、学校には……?」
「私が先に出たんで、そこまでは分かりませんけど、たぶん行ってないと思います……なんだかお兄ちゃん、泣いてましたから」
「…………」
「朝、このみさんからも電話が来たんですよ。ゆーくんのことはしばらくそっとしておいてあげて、って……シオ先輩は、なにか知りませんか?」
 知っている、嫌というほどに。
 彼の気持ち、そしてその後の行動はよく分かる。できることなら自分も、学校など放っておきたい気分だ。
「……知っていたとしても、それをあなたに教えることはできないです」
 汐は彼女の問いに、そう答えた。
「先輩があなたになにも言わないのであれば、それは先輩の意向です。私が口をはさむ余地はないですよ。私は先輩に従うです。先輩にその気がないというのなら、私はあなたになにも言わないです。それは、先輩の意思に背くことですから」
「むー……このみさんと同じこと言われちゃいました」
 聞くとこのみも、「ゆーくんが言ってないなら、あたしからはなにも言えないよ。ごめんね」と返事していたらしい。
「シオ先輩もこのみさんも言わないなら、これ以上は聞きません。でも、お兄ちゃんの様子は、ちょっと酷いというか、やばいというか……」
「……確かに、このまま放っておくのは、危険かもしれないですね」
 時間が彼を落ち着かせるのなら、それでいい。しかし時流が彼を破滅に追い込んでしまうのなら、それは絶対に避けなければならない。
 そう思っていると、見慣れた校舎が見えてきた。あと三ヶ月ほどで立ち去る、学び舎が。
「……先輩」
 校門を潜ると同時に、汐は虚空を見つめながら、ふっと呟いた。



 気が付けば、時計の針はほとんど四の字を指していた。しかし今の夕陽には、それが意味することが分からない。
 喉が焼け付く。灼熱の砂漠のようだが、この感覚をなくすためにどうすればいいのかも分からない。
 体を起こす。枕やシーツが濡れていた。なぜ濡れていたのかも、分からない。
 なにもかも空っぽになってしまった夕陽。今の彼には無すらも存在しないほど、虚無だった。
「先輩……」
 うわ言のように呟く。何度その言葉を口にしたか分からない。分かったところで、意味もない。
「…………」
 それは人としての、本能的な動きだったのかもしれない。ベッドから這い出て、床に足を着け、立ち上がる。
 だが、崩れてしまった。
「う……ぁ」
 力ない呻き声が、弱々しく響く。
 同時に、手の内からなにかが零れ落ちた。
「ぁ……デッキ……」
 それはひまりから渡されたデッキだった。床に落ちた衝撃で蓋が開き、中身がばら撒かれる。
「いけない……先輩の、カードが……」
 自分を責めるという気すらも欠落している夕陽は、カードを掻き集める。
 その時、ふとデッキケースの中身が目に飛び込んでくる。
「あれ……このケース、二重底になってる……?」
 二重底といっても、単純に薄い底板を二重にしていただけで、なにかを入れるような隙間はない。
 しかし、薄い紙一枚程度なら、その限りではない。スッと、ケースから小さな紙切れが落ちた。
「なんだ、これ……」
 小さく折り畳まれた紙切れだ。広げても大した大きさにはならず、小さな文字で、短い一文だけが書かれていた。

 ——君の見えるあの場所で

 一見すると、意味不明なその一文。夕陽もその意味を理解しかねていたが、このデッキケースを渡されたあの時、消え逝く彼女の言葉を思い出す。

 ——私から、君へのメッセージだよ……先代の《太陽神話》からの、ね……

「……!」
 その言葉と、復活した彼女との記憶が結びつく。
 その瞬間、夕陽は獲物を見つけた獣のように部屋を飛び出していった。転げ落ちるように、というより実際に転げ落ちて階段を通過し、廊下を駆ける。
「ただいまー——ってお兄ちゃん!? もう大丈夫なのっていうかさっきの音なにっていうかそんなに慌ててどうしたのっていうかどこ行くのっていうか!?」
「ちょっと出かける!」
 妹を押しのけて玄関を飛び出した。門も閉めず、そのまま駆け抜ける。
「コートも着ないで大丈夫かな……?」
 おかしな兄ではあったが、妹としては、少し安心できた。



 目的地は隣町。電車で向かうのが最も効率が良く、駅へと向かっていたが、しかし途中で財布を持っていないことに気づく。
 今から引き返す時間も惜しい。徒歩でも行けない距離ではないので、そのまま走って行くことにした。
 今の夕陽は、息切れや疲労などという概念とは無縁であるかのように、減速せずに走り続けている。陸上部からスカウトが来ても不思議はない。
 しかし夕陽は陸上など眼中にない。どれくらい走ったのか、しばらく走り続けているうちに、目的地に着いた。
 目的地とは山だ。大きな山ではないが、長距離走の直後に登山とは、アスリートでもない限り勘弁したいところだろう。
 しかしアスリートではないが、夕陽は迷わずその山に足を踏み入れる。草木を掻き分け、どんどん先へと進んでいく。
 この山は、かつて【慈愛光神教】なる宗教団体の根城があった。
 しかし夕陽にとってはそんなことはどうでもいい。それ以上に、この場所には意味があった。
 しばらく進むと、崖のようになった、開けた場所に出た。
「着いた……!」
 この場所は、いつか彼女に連れてこられた場所だ。この場所で、夕陽は彼女の本心を知った。
 そして彼女は、ここから見る夕日がお気に入りだと、言っていた。
 君の見える場所。あのメッセージが夕陽にあてたものであれば、即ち夕日が見える場所。
 彼女にとってその太陽が意味を持つ場所は、ここ以外に考えられない。
 最初に来た時は雑草が生え放題のこの場所だったが、今はある一ヶ所だけ、不自然に雑草が抜かれている。そこの土を触ってみると、誰かが掘り返したように柔らかかった。
 最初は手で掘り返そうとしたが、流石に思い留まる。軍手もなしに素手で穴を掘りは無理だ。
 一旦引き返して、道を逸れ、もはや廃墟と化している【慈愛光神教】の倉庫へとやって来る。かなり劣化しており、簡単に蹴破れた。
 中になにかないかと探ると、スコップを見つけた。多少錆びているが、問題なく使えるはずだ。
 また例の場所へと戻り、土を掘り返す。先に掘り返されて柔らかくなっていたので、簡単に掘ることができた。
 そうして土を掘り返していると、カツン、となにか硬いものにスコップの先端が当たる。
「これ……」
 金属製の箱だ。金属といっても、恐らくアルミ製。かなり簡素で、中に菓子でも入っていそうなほどありふれたものだ。
 まるで子供がタイムカプセルでも埋めたようなチープさだったが、夕陽は真剣に、その箱の蓋を開ける。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.394 )
日時: 2014/02/13 22:20
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

どうも、次のスターターが500円と聞いてテンションが上がっているタクです。といっても、内容にもよりそうですがね。買うかどうかは。次はドラゴンメインらしいですね。
そしてオメガ∞マックスに新種族がいくつか登場しているという情報が出ました。
”ヒューマノイド爆””リキッド・ピープル閃””ジャスティス・ウイング”
の3種です。
……と、つい小説に関係の無いことを口走ってしまいましたが、本編の感想に入ろうと思います。

死亡フラグがデュエル中に立ったひまりはジークフリートによって死去してしまったわけですが、《ユピテル》と《ユノ》の強さが半端ないですね。
13枚バウンスに13枚のタダ召喚。【師団】の統括者に相応しいメソロギィですね。豪快すぎる……。
はっきり言って、《アポロン》を初めとした他のメソロギィを持ってしても勝てるかどうか分からないカードですよこいつら。
そして、夕陽が向かった場所にあったアルミケース。
師団長ジークフリートへの仇討ちはなるか?
残りの『神話カード』は何処に?
というように、今後の展開が楽しみです。

ところで、『神話カード』を全て集めたら何が起こるのかが謎ですね。そこからシェン○ンが出てきて何でも1つ願い事を……絶対違いますね。

それでは、また。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.395 )
日時: 2014/02/14 21:06
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 次のデッキもそうですが、その次のエキスパンションやシリーズもドラゴンがメインっぽくて、モノクロは嬉しいです(本作品的に夕陽のプレイングのバリエーションが増えるので)。
 ただデッキの価格は500円ですか……再録程度ならともかく、新規カードはあまり期待できませんね。
 新種族については少し調べましたが、ヒューマノイド爆やリキッド・ピープル閃はどうなのかなと思います。爆は速攻、閃は山札操作を得意としているようですが、よりはっきりと特徴づけただけで、別に今までのままでもよかったように感じます。まあ、爆や閃専用のサポートなどもあるのかもしれませんけど。
 ジャスティス・ウイングは……あまり期待はしていませんが、かつてのデューンゲッコーやバルーン・マッシュルームのように消滅しないことを願うばかりです。

 ひまりはご臨終です。たぶん、描写している中では本作における最初で最初の死者になるんじゃないですかね。
 とにかく強い能力を注ぎ込んでいるのが《ユピテル》と《ユノ》ですからね。ただ十三枚デッキバウンスとコスト十三以下の割り振り踏み倒しは、この二体でリンクしないと発動しないので、準備は相当大変でしょうが。
 先に《アポロン》を出せさえすれば勝てそうな気はします。先に出せれば、ですが。
 アルミケースについては次回明らかになります。
 ジークフリートへの仇討は……ノーコメントで。
 他の『神話カード』はこれから少しずつ明かしていきます。

 『神話カード』をすべて集めることについても、そのうち明かします。まあ、かなり先になるとは思いますけど。シェンなロンはたぶん出て来ません。シェンのトンならともかく。願いは叶えてくれなさそうですが。


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