二次創作小説(紙ほか)

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 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.441 )
日時: 2014/02/23 18:03
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 空城夕陽と愉快な仲間たちvsルカ=ネロ。
 結果、愉快な仲間たちが全敗した。
 分かってはいたことだが、ルカ=ネロという男は強い。しかもジークフリートのような異常さが感じられる強さではなく、もっと単純で純粋な強さだ。現実的な強さと言い換えることもできるかもしれない。
 そんなわけで見事無残に散った夕陽たちは、賞金は貰えず、ルカを楽しませただけという特にもならない結果だけを残した。
「まあしかし、よく頑張った方じゃないか? 界長も全力だったみたいだしな。あの人に全力を出させるだけでも評価できることだ。あんまり弱い奴だと、全力を出す前にやられるからな」
 慰めているつもりはないだろうが、夕陽にそんな言葉をかける亜実。
「なんか消極的な評価だな……まあ、褒められたと思っとくよ」
 負けた後は、普通にパーティーを楽しむ夕陽たち。いや、夕陽はこのパーティーが楽しいとは思っていないが。ルカとのデュエルのせいで楽しいという感覚は半ば消え去っている。
「しっかし、あいつは楽しそうだなぁ……」
「『萌芽繚乱ブラッサム』か、確かにな。【神格社界】には戦闘狂と呼べるような輩はごまんといるが、その中でも界長はずば抜けたバトルマニアだからな。並大抵の狂人でも辟易するほどだ。それをああも連続して……」
 現在、このみはルカとデュエルしている。このパーティーではルカと自由対戦できるらしいので、その相手としてこのみが挑んでいるのだが、
「《ジャッキー》でダイレクトアタックだ!」
「うぁー! また負けたぁ……もう一回! もう一回だよ!」
「望むところだ。俺はいかなる挑戦者の挑戦でも受ける」
「あの子、凄いな……もうかれこれ五十戦くらいしてないか?」
「毎回速攻でやられてるけど……ここまで何度もやられていながら、めけずに界長に挑むとは……」
「なんてメンタルだ……」
 このような周りの評価から分かる通り、挑んでいる、というよりは挑み続けている。何度やられても起き上がり、また対戦。それを延々と繰り返しており、飽きないのかと横槍を入れる気にもならない。
「あのメンタルは尋常じゃないな……まさか、現在の“ゲーム”の世界で界長の連戦に付き合える奴がいるとは。驚きだ」
「僕も驚きだよ。ったく、あの根性をもう少し勉強に向けられないのかな。このままだとマジで留年するぞ」
 などと言っても、このみがそんなことを聞くはずもない。
「にしても、このパーティーって一体いつまでやって……ん?」
「どうした?」
「いや……」
 少々口ごもり、曖昧に濁す夕陽。しかしそこまで重要なことというわけではなく、濁したのはわざわざ口に出して言うほどのことではないからだ。本当にどうでもいいことである。
 どうでもいいことだが、どうでもいいがゆえに軽い気持ちで聞いてみる。
「あ、ちょっといい」
「は、はいっ……なんでしょう……?」
 ちょうど各テーブルに料理を追加したり、飲み物を配っているうさみに声をかける。うさみは少々怯えたような声を上げるが、性格の問題だろう。
「さっき御舟となにか話してたけど、なんだったの?」
「え? あ、ああ、御舟汐さん、ですか……」
 どうでもいいことというのがそれだ。
 ふと、汐とうさみがなにか話しているのが見えたので聞いてみたが、その内容はありふれていて、あたりまえのことで、本当にどうでもいいことだった。
「いえ、その、化粧室の場所を、お尋ねされたので……」
「あぁ」
 理解した。聞いた後にも思ったが、本当にどうでもよかった。聞かなければよかった、とすら思わない。
 しかし夕陽は、自分から切っ掛けを作っておきながら、その後なにも行動しなかった。いや、ここで夕陽を責めるのも酷な話なのだが。この状況で、汐に対して慮れというのは、些か無理があるだろう。御舟汐という少女の性格、性質から考えても、ここで夕陽が動くことはほぼありえない。
 だからこそ、ここで夕陽を責めることはできないのだ。

 たとえ汐に、賢愚の魔手が伸びていたとしても。



 汐はうさみに教えてもらった場所へと向かうと、すべきことを終え、手を洗いながらふと考えた。
(あの人の力、なんだか少し懐かしい気がしたです……)
 あの人とは、先ほど戦ったばかりの相手、ルカのことだ。
 直に対戦して、なんとなく思ったのだ。彼の力、もっと言うと彼の使用するデッキ、アウトレイジの力。敵としてではあるが、その力に触れて、汐はなにかを懐古するような感覚を覚えた。
 それがなにを意味するのか、自分の記憶のなにに訴えかけるのかを理解するには、その感覚は曖昧すぎる。だが、それでも、この感じたものは自分の中になるなにかと繋がっているはずだ。
(昔のことは覚えていないですが……もしかしたら、あの人と戦っていれば、思い出すかもしれないですね)
 などと頭の中では言ってみたが、そんなことはないと思う。根拠も裏付けもない、ただの直感だが。
(人間を血液型で分類するなんてナンセンスですし、アウトレイジとオラクルの二つに分けるなんてもっと無意味です。無法と神託以外にも、狩人と異星、武士と騎士……対立していた種族など、いくらでもあるのです)
 だから、誰がアウトレイジ、誰がオラクル、などと分類することはできない。そもそも自分は人間だ。
 そう、思うのだが。
(……もし仮に、無意味であっても、血液型占いをやってみよう程度の認識で分類するとしたら、やはり、アウトレイジなのでしょうか)
 汐は手を拭きつつ、先ほどのデュエルで使用したデッキから、一枚のカードを抜き取る。
「《ブータン》……」
 そのカードは《豚魔槍 ブータン》。ある意味、汐の切り札的カードの一枚ともいえるアウトレイジ、そしてエグザイルだ。
(私はいつこのカードを手に入れたのでしょう)
 それは記憶にない。彼女の記憶から、すっぽりと抜け落ちてしまっていることだった。
(いつもいつも思っていることですが、今日は特に考えさせられるです。私はいつ《ブータン》を手に入れたのか……《ブータン》だけではなく、《ブリティッシュ》や、今のこのデッキのベースとなったデッキ。それはいつ組み上げたのか……)
 目を閉じて、呼吸を整え、静まる。瞑想するように気持ちを落ち着け、ふっと息を吐く。
「……思い出せるはずがないですよね。分かっていたことです」
 なんだか急に馬鹿馬鹿しくなってきた。
 汐は《ブータン》をデッキに仕舞い、その場を出ようとした。
 した、が、
「やぁ、奇遇だね」
「……男性と女子トレイで鉢合わせすることを、果たして奇遇と言ってよいのかどうか。私にはレベルが高すぎてなんと言ったらよいかよく分からないのですが、それでもあえて言うのであれば、ここは女子トイレです」
「分かってるよ? まあ、僕は性差別はしない主義だから」
「主義以前に、衛生空間くらいは男女で隔離しなければならないでしょう」
「それもそうだね。一理ある」
 一理どころか倫理なのだが、しかし彼はどこ吹く風といった様子。
「それで……なんの用ですか、青崎記さん」
 無感動な声と瞳ではあるが、あからさまな敵意と警戒の気配を見せる汐。だが性別で隔離されている公衆トイレの性別を無視するような男が、気配だけの敵意と警戒で屈するはずもない。
 男——青崎記は、軽薄な笑みを浮かべる。
「ははっ、用、要件ね……そんなこと聞くけどさ、薄々感づいてるんじゃないの?」
 記はそう問いかけるようにその発言を促すが、汐はだんまりを決め込んでいる。不必要なことは喋りたくない、とでも言いたげだ。言いたくないのだろうが。
「……ま、今日は時間も無限にあるわけじゃないし、単刀直入に言うよ」
 と言って。
 彼にしては珍しく、本当に、単刀直入に、言い放った。

「《ヘルメス》、返してよ」

 一瞬だけ、怒気のようなものを感じた。
 だがそれも一瞬のこと。すぐに記は軽薄な笑みを浮かべ、
「今も持ってるんだろう? 君は招待状を持っていないから、“ゲーム”参加者である証明が必要だ。《海洋神話》は『大渦流水モスケスラウメン』が持ってるし、なら君が保有するのは《賢愚神話》だけ。違うかい?」
 そう問いかける記だが、汐は素直にそんな問いに答えたりはしなかった。
「……招待状を送ったのは、あなたですか」
「おぉ? 質問を無視されたよ。でもま、正解かな。そうだよ、『昇天太陽サンセット』『萌芽繚乱ブラッサム』『大慈光姫メルシー』『大渦流水モスケスラウメン』……この四人に、本来送られるはずのない招待状を送ったのは僕さ」
 その手の職人に頼んでね、と付け足す。
「なぜ、そんなこと——」
「君を誘い出すため」
 汐の言葉を最後まで待たずして、記ははっきりと告げる。
「正確には、《ヘルメス》を、かな。一度手に入ったし、もう『神話カード』なんていらないと思ってたけど、また欲しくなっちゃった。だから返してよ」
「……あれは、私が実力で勝ち取ったものです。返す、などと言うのはお門違いだと思わないですか」
「それもそうか。じゃあ撤回するよ」
 意外とあっさり、自身の発言を撤回する記。彼も執着心が欠けているのかもしれなかった。
 そして、彼はその発言を言い直す。
「君の『神話カード』、奪わせてもらうよ」
「それができると思うのですか」
 記の威勢を挫くつもり、ではないだろうが、間髪入れずにそんなことを言い返す汐。
「私のデッキに『神話カード』は組み込まれていないのですよ。あなたがいくら私と戦ったところで、それを手に入れることはできないのです」
 『神話カード』を奪い取る条件は、“神話空間内で『神話カード』を組み込んだデッキに勝利する”ことだ。なので記がいくら神話空間を展開したとしても、汐がデッキに『神話カード』を入れていなければ意味がない。
「だったら、君が差し出すまで嬲るよ。女の子を虐めるのは割と趣味だし?」
「……悪趣味、極まりないですね」
 事もなげに言い放った記に、汐はややドン引きしながらも、デッキケースに手を伸ばした。
 闇に染められた無法のデッキ——ではなく、いつもの悪魔がはびこるデッキだ。
「ですが、一度私に負けたあなたが、勝てると思っているのですか」
「僕だって今までなにもしてなかったわけじゃない……と言っても、確かに僕は弱いよ。アミさんとか和登さんとかと比べたら、雑魚みたいなものさ」
 でも、と記は続け、
「相手を一人に絞れば、ある程度強くても勝てないわけじゃあない。まあ詳しくは戦ってからの、お楽しみってことで!」
 刹那。

 神話の空間が、二人を飲み込んだ。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.442 )
日時: 2014/02/26 19:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

火野 亜実(ひの あみ) 女 19歳



容姿:長身で目つきが鋭く、服装も男っぽい。全体的に凛々しい、もしくは厳めしいのどちらかの印象を受ける。

性格:誰に対しても厳格で、きつい物言いと態度で接する。平常時と“ゲーム”の時とでスイッチが切り替わるらしく、普段は粗雑で荒っぽい、がさつな印象だが、“ゲーム”でのデュエルになると軍人のように冷徹となる。強さを求めて『神格社界ソサエティ』に所属し、『神話カード』も強くなるための手段の一つと考えているため『神話カード』に対する執着心は“ゲーム”参加者の中では比較的薄い。夕陽たちに協力的な姿勢を見せているのも、夕陽たちに接近する強者と戦い、自身を磨くという目的があるためだが、根っこは面倒見がいい姉御肌なので、危うさのある夕陽たちを放っておけないというのもある。父親が陸上自衛隊らしく、その影響か戦争や軍隊でものを喩えることがある。ちなみに名前で呼ばれると嫌がる。

所属:【神格社界】、鶴田大学社会学部

備考:学部は違うが、記とは同じ大学の同級生。

戦術:メインカラーは火。そこに水か闇、またはその両方を加えたカラーになることが多い。ヒューマノイドなどの小型のアタッカーを多用するが、単純な速攻、ビートダウンはせず、進化や除去、ハンデス、リアニメイト、ブロッカーをも絡めた変則的な攻めを見せる。相手によって速攻で攻めるか、コントロールで攻めるかを見極めて攻めのスピードを変えるなど、観察眼に優れる。栗須曰く、その変幻自在な攻め方が強み。
切り札は
《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》
《魔水晶スタートダッシュ・リバイバー》
《魔水晶スーパー・ディス・リバイバー》
《金属器の精獣カーリ・ガネージャー》
《永遠のジャック・ヴァルディ》
など。

概要:《マルス》の所有者で『炎上孤軍アーミーズ』の異名を取る。一章では夕陽に敗北し《マルス》を失った。だが八章で夕陽の自作デッキと共に《マルス》を返還され、また所有者となる。



各章デッキ解説

『一章』
 火と水のヒューマノイドをメインとしたデッキ。一見すれば進化を絡めたビートダウンだが、《アクア・スーパーエメラル》や《スペース・クロウラー》などで守り、《マルス》さえ出てしまえば逆転の芽をほとんど摘み取ってしまうので、それまではあまり攻めない。切り札は《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》
『四章』
 火、闇、水の三色構成のデッキ。小型クリーチャーが多いが、相手や状況によってビートダウンの動きとコントロールの動きを使い分ける。素直なアタッカーより、スレイヤーやブロッカーを併せ持つものが多い。ビートダウンで攻めるなら、《電磁翔天ピピッピ》などの序盤から展開する小型クリーチャーでとにかく攻めるだけだが、《斬隠テンサイ・ジャニット》など邪魔なブロッカーを除去する手段は十分あり、《セブ・コアクマン》などで手札補充もできる。コントロールなら《ボーンおどり・チャージャー》などで準備を整え、《ゴースト・タッチ》《地獄門デス・ゲート》などでハンデスや除去を行い、相手が隙を見せた時に一気に攻め込む。どちらにも共通する戦術としては、《鬼人形ボーグ》《襲撃者ディス・ドライブ》《腐敗電脳ディス・メルニア》などのスレイヤーで大型クリーチャーを相打ちにし、《リバース・チャージャー》や《爆裂マーズ・ギル・ヒドラ》などで回収、または《インフェルノ・サイン》《スタートダッシュ・リバイバー》などでリアニメイトするというのがある。一枚積みのカードも多く、かなり上手く立ち回らないと中途半端になってしまうことから、このデッキを使いこなせる者は限られているらしい。切り札は《魔水晶スタートダッシュ・リバイバー》《魔水晶スーパー・ディス・リバイバー》
『七章』
 四章と変わらず火、闇、水の三色構成のデッキを使用。この時は少数ながらもアウトレイジも組み込んでおり《一撃奪取 トップギア》から《金属器の精獣カーリ・ガネージャー》を高速で呼び出すことで、手札を切らさず速攻をかけることができる。また《演奏と真剣のLIVE》で小型クリーチャーを一掃しながら手札補充をするなど、数で押されている状況にも対応できるようになっている。切り札は《金属器の精獣カーリ・ガネージャー》《永遠のジャック・ヴァルディ》
『八章』
 夕陽の作った火、闇の速攻寄りビートダウンデッキ。夕陽曰く、亜実のデッキに似せて作ったらしいが、亜実からすれば除去カードや手札補充が乏しく使いにくいデッキ。序盤から《地獄のケンカボーグ》などで殴っていく典型的なビートダウンで、そこに《鬼神!ヴァルボーグなう》などの進化クリーチャーも絡んでくる。ヒューマノイド中心だがハンターも多いので《友情の炎獄ゲット》の能力も生きる。切り札の《マルス》のコストがビートダウンにしては重いため《鬼斗マッスグ》で素早く出したいところ。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.443 )
日時: 2014/02/24 05:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 記の陰謀で始まった、汐と記のデュエル。
 汐の場にはなにもないが、シールドは五枚。《霞み妖精ジャスミン》でマナを加速させている。
 対する記の場には《封魔ゴーゴンシャック》、シールドは五枚。
「私のターンです」
 とりあえずドローしてマナチャージする汐だが、そこから手が止まる。
(《ゴーゴンシャック》……厄介ですね。これでは《プライマル・スクリーム》が撃てないです)


封魔ゴーゴンシャック 水文明 (3)
クリーチャー:グランド・デビル 2000
呪文を唱えるコストは2多くなる。


 汐のデッキは、いつかのルシエル戦で使用した、マナを加速しまくって《ドルバロム》や《Ζ—ファイル》などの重量級クリーチャーにつなげるデッキだ。
 だがマナ加速は勿論、墓地肥やしもある程度呪文に頼っているところがあるので、このような呪文の詠唱を妨害するカードが出て来ると困ってしまう。
「とりあえず、4マナで《フェアリー・ライフ》。マナを追加してターン終了です」
「あはは! たかだか《フェアリー・ライフ》で4マナも使うなんてね。早く重いカードを使うためのマナ加速なのに、それ自体が重いなんて、滑稽だね」
 その滑稽な状況を作り出しているのは他ならぬ記本人なのだが、彼も分かって言っているのだろう。
「じゃ、僕のターンかな。《救急機装レスキュー・スペース》召喚!」


救急(けっぱれ)機装レスキュー・スペース 水文明 (4)
クリーチャー:グレートメカオー/アンノイズ 2000
自分のグレートメカオーの召喚コストを最大2少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。


「メカオー……グレートメカオーのデッキ、ですか」
 これだけで記のデッキの内容が、大まかに理解できてしまう。《ゴーゴンシャック》が気になるものの、恐らくデッキのほとんどをグレートメカオーで固めているのだろう。
「これで6マナ……《プライマル・スクリーム》を使用です」
 《ゴーゴンシャック》のせいで呪文が唱えづらいが、なんとか墓地を増やすことに成功した汐。山札の上から四枚を墓地へと落としていく。
「墓地から回収するのは《ガル・ヴォルフ》です。ターン終了」
 記のデッキが種族デッキと読んでの《ガル・ヴォルフ》だ。手札を落としつつ、シールドも破壊できる。
「《ガル・ヴォルフ》は怖いなぁ……」
 などと言いながら、記は自身の手札を眺める。
「この手札なら……これかな。《レスキュー・スペース》でコストが2下がってるから、2マナで《騒音機装DJアフロ・スピーカー》を召喚。続けて残った3マナで二体目の《ゴーゴンシャック》を召喚だ」
 《DJアフロ・スピーカー》はともかく、《ゴーゴンシャック》二体はきつい。これで呪文を唱えるコストは4も大きくなってしまう。
「……ですが、とりあえずこのクリーチャーを召喚です。《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》」
 汐はすかさず、前のターンに回収した《ガル・ヴォルフ》を召喚。《ガル・ヴォルフ》が出た時、種族を一つ選択肢、相手の手札を見て、選んだ種族を持つカードがあれば叩き落とし、しかもシールドまで墓地に送れる。
 種族がバラバラのデッキに対しては当たりづらいが、記のこのデッキのように、種族を固めているデッキならヒット率も格段に上がる。
「選択するのは勿論グレートメカオーです。さあ、手札を見せてください」
 記のたった一枚の手札が公開される。
 《ゴーゴンシャック》を複数枚積んでいることから、記のデッキはあまり呪文が入っていないはず。なので手札に呪文がある可能性も低い。はいえ次のターンにほぼピーピングハンデスが確定している状況で、グレートメカオーではない《ゴーゴンシャック》を出していることから、その可能性も否めない。
 だがこの時、汐が見たのは彼女の予想の斜め上を行くものであった。


機械提督サウンドシューター 水文明 (7)
クリーチャー:グレートメカオー/キカイヒーロー 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中にあるすべてのグレートメカオーとキカイヒーローを自分の手札に加え、残りを好きな順序で山札の一番下に戻す。
相手のターン中にこのクリーチャーが手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。


「っ、《サウンドシューター》……」
 相手ターン中に手札から捨てられると場に出て、最大で三枚の手札を補充する提督サイクル、通称マッドネス。記はそれを握っていた。
「《ガル・ヴォルフ》能力は強制じゃないから、捨てなくてもいいけどね。捨てさせるならシールドを破壊できるけど、代わりに《サウンドシューター》が出て、手札も補充できるよ。どうする?」
 苦渋の選択だ。
 ここで記のシールドを潰しておきたい気もするが、しかし展開スピードでは圧倒的に汐が出遅れている。グレートメカオーは展開力に優れた種族で、《レスキュー・スペース》もいる。
「……手札は、捨てさせないです」
 ならばここは、下手にクリーチャーを並べさせない方がいい。手札は捨てさせず、汐はターンを終えた。
「懸命だね。じゃあ、とりあえずハンデス牽制の《サウンドシューター》はチャージして、《特警機装パトロール・ファンクション》を召喚。登場時能力で自分のメカオーの数だけカードを引けるよ」
 記の場にいるグレートメカオーは《パトロール・ファンクション》を含め、《レスキュー・スペース》《DJアフロ・スピーカー》の計三体。
「よって三枚ドロー! 続けて二体目の《レスキュー・スペース》、さらに《氷結カッチ・コチーン》を召喚!」
 《レスキュー・スペース》によるコスト軽減と《パトロール・ファンクション》による手札補充から、次々とグレートメカオーが並んでいく。
「《カッチ・コチーン》の能力で、《ガル・ヴォルフ》をタップ! 次のターン、アンタップもできないよ」
 攻撃も封じ、記のターンは終了。
「……私のターン」
 このターン《ガル・ヴォルフ》はアンタップできず、攻撃できない。マナを加速させることができないので、場に出たデーモン・コマンドでとにかく殴ろうかと考えていたが、それも未然に防がれてしまった。
「なら……墓地です。《暗黒導師ブラックルシファー》を召喚」
 加速はできないが、向こうだってまだ攻めるわけではない様子だ。《ブラックルシファー》を召喚し、効果で墓地を増やす。墓地に落ちたのは、《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》《フェアリー・ライフ》《ボーンおどり・チャージャー》《死神の邪険デスライオス》《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》。
 かなりいい感じに墓地が肥える。これなら上手く《Ζ—ファイル》を引ければ、一気に巻き返せるかもしれない。
「……ターン終了です」
「大人しいねぇ……そういう娘は嫌いじゃないけど、でも、大人しいと大抵は痛い目見るんだよねぇ」
 カードを引き、マナを溜めつつ、そんなことを言う記。挑発目的なのかもしれないが、汐は無視した。
 無視したところで、彼のプレイングが変わるわけではないが。
「《パトロール・ファンクション》を召喚。僕の場にメカオーは六体だから、六枚ドロー。さらに引いてきた《賀正電士メデタイン》《DJアフロ・スピーカー》《ゴーゴンシャック》、さらに《王機の神兵 ヴォルビック》を召喚。《ヴォルビック》で《ブラックルシファー》をバウンス」
 大幅なコスト軽減と大量ドローから、凄まじい勢いでグレートメカオーが並んでいく。きっちりバウンスで妨害も忘れず《ブラックルシファー》が手札に戻された。
 そして、極めつけが、
「さらにさらに、こいつも召喚だ。《害悪のカルマ スタバック》!」


害悪のカルマ スタバック 水文明 (7)
クリーチャー:オラクル/グレートメカオー 7000
誰も自身のマナゾーンにある呪文をアンタップできない。
W・ブレイカー


「《スタバック》……」
 また厄介なクリーチャーが現れてしまった。
 《ゴーゴンシャック》三体で、呪文によるマナ加速が妨害され、《スタバック》で手札にあっても邪魔な呪文をマナにしても、一度使えばアンタップできなくなってしまう。
 幸か不幸か、汐のマナゾーンには呪文がない。つまりそれは、墓地に落としたいクリーチャーもマナにいるということなのだが。
「ですが、このターンで使えるマナがあるなら、それにこしたことはないです。私のターン」
 この圧倒的戦力差に戦々恐々としながらも、汐はカードを引く。そして、
(《Ζ—ファイル》……)
 引いたカードは、《「謎」の頂 Ζ—ファイル》だった。
 墓地にあるカードでは、この《Ζ—ファイル》を出しても逆転はできない。しかし、墓地に落ちるカード次第では、逆転も不可能ではない。
(私のマナは8マナ、このターンにチャージすれば9マナ、次のターンには10マナ。そして手札には《ブラックルシファー》……)
 しばし逡巡し、決めた。
 ここは、賭けに出る。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.444 )
日時: 2014/02/24 17:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「……《暗黒導師ブラックルシファー》を召喚です」
 大量のグレートメカオーと《封魔ゴーゴンシャック》に囲まれ、呪文は唱えられない、マナはアンタップできないと、クリーチャーはフリーズされたり手札に戻されたりと、動きを妨害される汐。
 だが手札には《「謎」の頂 Ζ—ファイル》と《暗黒導師ブラックルシファー》、マナも9マナあり、墓地に落ちるカード次第では《Ζ—ファイル》で逆転することもできるはずだ。
 汐は呪文をタップしないよう気を付け、《ブラックルシファー》を召喚する。
「《ブラックルシファー》の能力発動。山札の上五枚を墓地へ」
 いつもなら《ブラックルシファー》を二回も出せば、マナ加速と合わせて山札が一気に削られるが、今回はあまりマナ加速ができていない。なので、大きく削られることに違いはないが、まだ山札の残量にも余裕がある。
 墓地へと落ちたのは、《フェアリー・ライフ》《魔刻の斬将オルゼキア》《再誕の社》《死神明王ガブリエル・XENOM》《悪魔神ドルバロム》の五枚。
(来たですよ、《ドルバロム》です)
 最も欲しているカードが墓地に落ちてくれた。これで次のターン、《Ζ—ファイル》で《ドルバロム》が出せれば、水単色の記の場とマナは全滅。以前戦った時と同じ光景を見せてやることができる。
「ターン終了です」
「ふーん、それで終わりかぁ……じゃあ僕のターン、行っちゃうよ?」
 どこか含みあり気に自分のターンを迎える記。だが彼が含みある発言をするのもいつものこと。それより汐は、《Ζ—ファイル》の生贄となる《ガル・ヴォルフ》がやられたり、大量展開したグレートメカオー軍団で一斉攻撃されたらどうしようかを考えていた。
 正直に言って、記はその手も取れた。《ヴォルビック》で《ガル・ヴォルフ》をバウンスすることも、グレートメカオーたちで一斉攻撃することも、可能だった。
 しかし彼はそうはしない。そんな簡単に、希望を潰したりはしない。
 そんな安っぽい潰し方ではなく、もっと彼女に絶望を与えるように、
彼は希望を潰すのだ。
「《サウンドシューター》を直接召喚。山札の上から三枚を捲って、グレートメカオーとキカイヒーローを手札に入れるよ」
 こうして捲られた三枚は《賀正電士メデタイン》《氷結カッチ・コチーン》《埋没のカルマ オリーブオイル》。
「全部メカオーだから、手札に加えるよ。さらに《メデタイン》《カッチ・コチーン》を召喚、《ガル・ヴォルフ》をフリーズ」
 そして、

「《埋没のカルマ オリーブオイル》を召喚!」


埋没のカルマ オリーブオイル 水文明 (5)
クリーチャー:オラクル/グレートメカオー 2000
S・トリガー
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、プレイヤーを一人選ぶ。そのプレイヤーは、自身の墓地のカードをすべて山札に加え、シャッフルする。


「《オリーブオイル》、ですか……」
「そうだよ」
 《スタバック》と同じオラクルの新階級カルマに属する《オリーブオイル》が封じるものは、墓地。
 自分に使えば墓地に落とされたカードを間接的に回収できるが、このカードの真価は相手に使用してこそだろう。
「選択するプレイヤーは勿論、君だよ。さあ、墓地のカードをすべて山札に戻して」
「う、くっ……」
 小さく呻く汐。
 次の瞬間、《オリーブオイル》の謎の法術により、汐の墓地はすべて山札へと戻されてしまう。
「どうせ手札に《Ζ—ファイル》でも持ってたんでしょ。まあ、出したいなら好きにすれば? なにも戻ってこないけどね!」
 実際には、生贄として破壊する《ガル・ヴォルフ》が戻ってくるのだが、そんなことはどうでもいい。
 呪文も、マナも、クリーチャーも、墓地すらも封じられてしまい、汐はもう、身動きができない。
(なんでしょう、この不自由な感じ……最初からなんとなく感じてはいたのですが、それが、私に纏わりついているような……)
 本格的に汐を束縛し始めた謎の感覚。そしてそれは、記自身からも滲み出ている。
 以前戦った時の記すとは、少し違う感じだ。以前は、まだ“ゲーム”の世界での戦闘経験がなかったということもあるだろうが、それを差し引いても、《賢愚神話》からはともかく、記からなにかを感じることはなかった。精々、軽薄だと思った程度だ。
 だが今はなんだ。記から感じられる異様な気配。それも、汐に対して強烈に突き刺さる、この感覚。
「教えてあげようか?」
 突如、記は汐に問う。
 汐の疑問に答えるか、否か。
 だが元から言うつもりだったのか、汐の返答を待たずして、記は続けた。
「君は結構敏感なんだねぇ……“ゲーム”の世界のデュエルっていうのは、ある種の精神感応が発生する場でもあるんだよね。俗に言う、空気で感じる、とか、強者の気配、とか、そういうの。強い人だとS・トリガーの有無も感覚で分かっちゃうくらいだし、もはやエスパー染みてるよね」
 その説明を聞き、そのことについては納得する汐。今まで彼の言う感覚は、体感で、なんとなくだが分かっていた。ただの気のせいという風にも思っていたが、そうではない気もしていた。
「他にもバリエーションはあるんだけど、全部それと同じことさ。対戦する時、自分の天敵に対しては、身体が反応しちゃう。自分のデッキに対する思い入れ、シンクロ率が高ければ高いほど、ね」
 とはいえ、それらの感覚には、さしたる強さははない。『神話カード』のような、強大な力が内包されたカードが絡むのならともかく、普通のカードを用いたデッキによる対戦では、よほど感受性が高くない限り、はっきりと感じることはできない。
「だけど君は感じている。もしかしたら君、“ゲーム”に参加する前に一度こういう体験をしたことあるんじゃない? 僕は知らないけど、こんな愉快なことが起こるんだ、それが今だけじゃなく、過去に、そして別の“世界”であったとしてもおかしくはない」
 この場合の世界は、“ゲーム”の世界と同様、裏社会的な意味合いだろう。
「それはともかくとして。いろいろぐだぐだ言ったけど、つまりだ。君が今感じている気持ちの悪さ、不自由さ? なんでもいいけど、そういうのはすべて今言ったものと同じさ。君は今、そのデッキの気持ちになっている。そしてそのデッキは、自分の嫌いな相手、苦手な相手、天敵を前にして、怯え恐怖しまっている。さらに直接干渉までされて、竦み上がって委縮してしまっている」
 要するに、
「僕のデッキは君への対策デッキ、というわけさ」
 言われて、やっと理解した。
 記のデッキは、一見すればグレートメカオーの種族デッキだ。しかしその実、汐に対して非常に効果的なカードが揃っている。
 まず最初に見せた《封魔ゴーゴンシャック》。これで汐は、呪文によるマナ加速や墓地肥やしが行いづらくなる。次に《害悪のカルマ スタバック》。《ゴーゴンシャック》と合わせて呪文を腐らせ、マナの使用を遅らせる。極めつけは《埋没のカルマ オリーブオイル》。《Ζ—ファイル》によるデーモン・コマンド大量展開を考えていた汐の戦術を、一発で無為にする。
 他にも、手札破壊対策の《機械提督サウンドシューター》、パワーと打点を生かして殴ってくる方針に転換した場合の《氷結カッチ・コチーン》など、汐のデッキをピンポイントで狙ったかのような対策カードが盛り込まれている。
「……私だけを倒すためのデッキ、ということですか」
「その通り。言ったろう? 僕は弱いって。だからこうして対策して、確実に勝てるようにデッキを組むんだよ」
 なにか言いたげな汐だが、口をつぐむ。ピンポイントで個人を狙うのはどうかと思うが、しかし特定のデッキ、戦術に対する対策カードを入れること自体は、咎められることではない。そんな対策カードが数多く入っている記のデッキは、その延長でしかないのだ。
「……ま、それだけじゃないけどね。これは僕なりのリベンジだから。とりあえずターン終了」
 クリーチャーを展開し、汐の墓地をまとめて消し去り、それでもまだ動かない記。
「……《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚、《ガル・ヴォルフ》を破壊です」
「ならこっちは《DJアフロ・スピーカー》二体を破壊、する代わりに手札を捨てるよ」


騒音(じゃかあし)機装DJ(ディージェイ)アフロ・スピーカー 水文明 (4)
クリーチャー:グレートメカオー/アンノイズ 4000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーが破壊される時、グレートメカオーを1枚、自分の手札から捨ててもよい。そうした場合、このクリーチャーは墓地に置かれるかわりにバトルゾーンにとどまる。


 《DJアフロ・スピーカー》は破壊される代わりに手札を捨てれば、破壊されない。そしてこの時捨てられるのが、
「一枚は《特警機装パトロール・ファンクション》、もう一枚は《機械提督サウンドシューター》だ」
 《サウンドシューター》は相手ターン中、手札から捨てられる代わりにバトルゾーンへと出る。そして、三体のグレートメカオーを補充するのだ。
「さて、なにが出るかな」
 捲られたのは、《害悪のカルマ スタバック》《埋没のカルマ オリーブオイル》《機械提督サウンドシューター》。
「すべてメカオーだから、手札に入れるよ。ターン終了かな?」
「…………」
 汐は答えなかったが、これ以上なにもできないことは明白だ。それは記にも分かっている。
 そして記のターン。
「……じゃ、行きますか。僕の逆襲、第一段階だ」
 静かに言ってから、記は手札のカードを抜き取る。
「まずは《オリーブオイル》を召喚、君の墓地にいる《ガル・ヴォルフ》を山札へ戻すよ。そして二体の《メデタイン》と《オリーブオイル》を進化」
 三体のグレートメカオーが、水流に飲み込まれる。同時のその水流は膨張し、増大し、巨大化していく。
 水流は巨大化を続け、神の星を超えるほどの巨躯に達したところで、その姿を表す。

「最終魔導破壊兵器、発射許可、承認。世界を滅ぼす権利は君の手に——《超神星ペテルギウス・ファイナルキャノン》」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.445 )
日時: 2014/02/24 20:42
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

超神星ペテルギウス・ファイナルキャノン 水文明 (6)
進化クリーチャー:フェニックス 15000
進化GV—自分のグレートメカオー、グランド・デビル、ポセイディア・ドラゴンのいずれか3体を重ねた上に置く。
自分の他のクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりにこのクリーチャーの下に置いてもよい。
メガメテオバーン6:このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを6枚、墓地に置いてもよい。そうした場合、相手はバトルゾーンにある自分自身のクリーチャーすべてとマナゾーンにあるカードすべてを手札に戻す。
T・ブレイカー


 三体のグレートメカオーを吸収し、現れたのは、蘇りし不死鳥《超神星ペテルギウス・ファイナルキャノン》だった。
 世界を滅ぼしかねない最終兵器の発射指令を下すのは彼女。彼女の意志一つで、すべては無へと還る。
「……まあでも、あと1ターンだけ待ってあげるよ。ターン終了」
 圧倒的リードとがんじがらめに施した対策による自信の表れか、それとも別の理由か、このターンは攻撃せずに終了した。
「……随分と舐められたものです」
 とはいえ、この状況で汐にできることなどたかが知れている。《ペテルギウス・ファイナルキャノン》は早く除去したいが、肝心の除去カードも、呪文なら《ゴーゴンシャック》三体のせいでコストが6も上昇している。まともに唱えられたものじゃない。
(しかし引いたのは、《デスライオス》ですか……)
 汐のデッキは呪文だけでなく、除去ならクリーチャーでも行える。しかしその多くは《デスライオス》や《オルゼキア》などの、相手が選んで破壊する効果だ。なので数多くクリーチャーが並んでいる時や、《DJアフロ・スピーカー》のような除去耐性を持つクリーチャーがいるだけで、効果が存分には発揮されない。狙ったクリーチャーを破壊するには、やはり呪文の力が必要だ。
 《ペテルギウス・ファイナルキャノン》を破壊したいのに、上手い具合にそれができないようになっている。これも、記の汐対策の一つだろう。
「……《死神の邪険デスライオス》を召喚です。こちらは《デスライオス》を破壊」
「じゃあ僕は《DJアフロ・スピーカー》を破壊、する代わりに手札のメカオーを捨てるね。捨てるのは《害悪のカルマ スタバック》だ」
 手札に《サウンドシューター》がいるにもかかわらず、記が捨てたのは《スタバック》。《DJアフロ・スピーカー》は破壊されないが、クリーチャーや手札を増やそうとしない。
「もしかしたらこの期に及んで僕の山札切れでも狙ってるのかもしれないけど、そうはいかないよ。確かに僕のデッキはドローカードが多いから、調子に乗ってドローしてるとすぐに山札がなくなっちゃうよ? でも、墓地利用対策により軽い《埋め立てロボコンクリオン》ではなく《オリーブオイル》を入れているのは、ライブラリアウトを防ぐためでもあるし、もう手札も場も十分だから、これ以上増やす必要もない」
 確かにその通りだ。そもそも《ペテルギウス・ファイナルキャノン》すらもこの状況ではオーバーキルの存在。この上にいくら増やしたところで、記の優勢は変わらない。
「というわけで僕のターン。《氷結カッチ・コチーン》を召喚して、《オルゼキア》をフリーズ」
 《オルゼキア》に《カッチ・コチーン》の氷結弾が撃ち込まれ、がタップされる。さらに次のターン、アンタップもできない。
 だが、やはりそんなことはどうでもいい、些末な問題だ。
 次に現れる神を超える星の前では、塵以下のことである。
「《氷結カッチ・コチーン》と《騒音機装DJアフロ・スピーカー》二体を進化」
 このターン召喚されたばかりの《カッチ・コチーン》と、二体の《DJアフロ・スピーカー》が氷結する。水晶のように透明で透き通った氷は、成長するように肥大し、三体を飲み込んだまま、神をも超える星となる。

「退魔呪文凍結魔導、術式詠唱、解禁。凍てつく世界は君のもの——《超神星マーキュリー・ギガブリザード》」


超神星マーキュリー・ギガブリザード 水文明 (5)
進化クリーチャー:フェニックス 15000
進化GV—自分のグレートメカオー、グランド・デビル、リキッド・ピープルのいずれか3体を重ねた上に置く。
メテオバーン—呪文の効果が実行される時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚選び墓地に置いてもよい。そうした場合、その呪文は効果を失い、持ち主の墓地に置かれる。
T・ブレイカー


 現れたのは、またしても不死鳥。全てを凍結させる、退魔の不死鳥、《マーキュリー・ギガブリザード》。
 恐らく、《賢愚神話》に最も近いとされる、不死鳥だ。
「《ペテルギウス・ファイナルキャノン》に続き、《マーキュリー・ギガブリザード》まで……」
 巨大なクリーチャー二体に囲まれ、本格的に汐の勝ち目がなくなってきた。場もマナも吹き飛ばす《ペテルギウス・ファイナルキャノン》だけではなく、呪文を無力化する《マーキュリー・ギガブリザード》まで出るとなると、もうどうしようもない。
「まだだよ、僕の逆襲はまだ準備段階だ。まずは《パトロール・ファンクション》と二体の《サウンドシューター》で、フリーズした《オルゼキア》に攻撃」
 《オルゼキア》のパワーは6000、しかし《パトロール・ファンクション》はパワー2000、《サウンドシューター》は5000。攻撃しても破壊されるだけだ。
 だが、その破壊は無意味ではない。
「《ペテルギウス・ファイナルキャノン》が……」
 自分の他のクリーチャーが破壊される時、《ペテルギウス・ファイナルキャノン》はそのクリーチャーを自身の下に置く。
 破壊されたグレートメカオーは、すべて《ペテルギウス・ファイナルキャノン》に吸収され、そして最終兵器発射の糧となるのだ。
「これで《ペテルギウス・ファイナルキャノン》の下にはカードが六枚。彼女の最終兵器発射のエネルギーには十分だ。じゃあ、ここからが本番、行くよ。《ペテルギウス・ファイナルキャノン》で攻撃——メガメテオバーン6発動!」
 《ペテルギウス・ファイナルキャノン》の下に送り込まれた六体のグレートメカオーが墓地へと落ちる。同時に、最終兵器が解き放たれた。
「《オルゼキア》、マナも……」
 一瞬で吹き飛ばされてしまった。
 ここまでされれば、逆転はほぼ不可能。だが、それにしたってここまでのことをするために、わざわざとどめを刺すのを先延ばしにする必要があったのか、疑問は残る。
 しかしその疑問は、すぐに氷解した。
「あははははははははっ! どうだい? 君が前に僕にやったことと同じことを返される気分は。まあでも僕は優しいからね。墓地じゃなくて手札に戻してあげるよ!」
 以前、汐は《ドルバロム》で記の場、マナをすべて破壊して勝利を収めた。つまりこれは、記なりの意趣返しのようだ。
 汐もその時の記同様、場もマナも、なにも残っていない。
「そして、次はTブレイクだ!」
 勿論、《ペテルギウス・ファイナルキャノン》の攻撃は、メガメテオバーン6を発動させるだけではない。
 ありあまるエネルギーをもって放たれたその一撃は、汐のシールドも容赦なく吹き飛ばす。
「っ、S・トリガー発動です……《地獄門デス・ゲート》」
 割られた一枚目のシールドから、汐は呪文のS・トリガーを発動させる。呪文だが、S・トリガーならコストを支払う必要がないので、《ゴーゴンシャック》の影響は受けない。
 そう、《ゴーゴンシャック》の、影響は。
「残念だけど、発動は無理だ。《マーキュリー・ギガブリザード》のメテオバーン、発動」
 刹那、汐が発動しようとした《地獄門デス・ゲート》は、凍りつき、墓地へと落ちる。
 当然、発動はしない。
「《マーキュリー・ギガブリザード》がいる限り、君が呪文を発動しようとも、彼女はそれを無力化する。安易な逆転なんてさせないよ。二枚目をブレイク!」
 回数制限こそあるものの、《マーキュリー・ギガブリザード》でS・トリガー呪文は封じられてしまう。続けて二枚目のシールドが、ブレイクされる。
「S・トリガー……《フェアリー・ライフ》、です」
「それはスルーだ。一枚くらいいいよ、ほら、マナ増やせば?」
 山札から1マナ加速させる汐。しかしたった1マナでは、この状況はどうにもならない。
 これも、前回の反省を踏まえてのことだろう。あの時、記は《賢愚神話》で無力化するカードの選択を間違えたせいで敗北した。流石の汐も《フェアリー・ライフ》に対してメテオバーンを撃たれるとは思っていないが、それでも前回より慎重になっているように思える。
「ほら、三枚目だよ」
「……《デビル・ハンド》です」
「メテオバーンで無効」
 三枚目もS・トリガーだが、これも無効化されてしまった。
(まずいです……)
 このままだと殴り切られる。残った二枚のシールドに賭けるしかないが、それも呪文なら、一回は《マーキュリー・ギガブリザード》で無力にされる。
「さあ次だ《マーキュリー・ギガブリザード》で残りのシールドをブレイク!」
 《マーキュリー・ギガブリザード》の放つ絶対零度の冷気が、汐のシールドを粉砕する。
「S・トリガー発動《プライマル・スクリーム》です」
「……それもスルーかな。《ハンゾウ》が手札に入っても、マナは足りないし」
 記の言う通り、汐はこれで墓地に落ちた《威牙の幻ハンゾウ》を回収したが、マナゾーンのカードは一枚。ニンジャ・ストライクすら発動できない。
「じゃあ、最後のシールド、ブレイクだよ」
 そして、汐の最後のシールドが、ブレイクされる。
「……S・トリガー発動です」
 割られたシールドは、光の束となって収束する。汐はその光を掴み取り、そのカードを掲げた。

「……《デーモン・ハンド》、発動——」

「無理」

 だが。
 無数に伸びる悪魔の手は。
 絶対零度の冷気で氷結してしまった。
「全部S・トリガーなんて、運がいいね……それを踏まえてのこの二体でもあったんだけど」
 なんにせよ、汐にはもう、なにも残っていない。手札はあるがマナはない、ブロッカーどころかクリーチャーすらいない、彼女を守るシールドも、墓地も、なにも残っていなかった。
「何度も言うけど、僕は優しいからね。フェニックスでとどめを刺すような鬼畜な真似はしないさ」
 そう言って、彼の命を受けた機装の機械が、発進する。

「《害悪のカルマ スタバック》でダイレクトアタック」

 そして、無抵抗な少女に——とどめを刺す。


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