二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Mythology
日時: 2015/08/16 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 初めましての人は初めまして、モノクロという者です。ここでは二次板と雑談板が拠点です。

 本作では基本的に既存のカードを使用するつもりではありますが、オリジナルのカードも多数登場します。ご了承ください。

 投稿したオリキャラのデッキにキーカードや切り札を追加したり、既存の切り札級のカードや、追加した切り札に召喚時の台詞を追加しても構いません。追加したい時はその旨をお伝えください。

目次


一章『神話戦争』

一話『焦土神話』
>>1 >>2 >>6 >>9 >>12 >>13 >>14
二話『萌芽神話』
>>17 >>18 >>21 >>22
三話『賢愚神話』
>>25 >>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>33


二章『慈愛なき崇拝』

一話『精力なき級友』
>>41 >>45 >>49 >>52 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61
二話『加護なき信仰』
>>63 >>64 >>66 >>70 >>71
三話『慈悲なき女神』
>>72 >>73 >>74 >>75 >>76
四話『表裏ある未来』
>>77 >>78


三章『裏に生まれる世界』

一話『裏の素顔』
>>79 >>80 >>81 >>82 >>85 >>86 >>91 >>92 >>94
二話『裏へと踏み入る者』
>>96 >>97 >>98 >>99 >>100 >>101


四章『summer vacation 〜夏休〜』

一話『summer wars 〜夏戦〜』
>>103 >>106 >>107 >>110 >>111
二話『summer festival 〜夏祭〜』
>>112 >>113 >>114 >>117
三話『summer ocean 〜夏海〜』
>>118 >>121 >>127 >>128 >>129 >>132 >>141 >>148


五章『雀宮高等学校文化祭店舗名簿』

一話『ガーリックトーストレストラン』
>>152 >>153 >>156 >>157 >>158 >>160 >>162 >>163 >>164 >>167
二話『ロイヤルミルクティーカフェテリア』
>>168 >>169 >>170 >>173
三話『ゾロアスター教目録』
>>174 >>175
四話『天の羽衣伝説調査』
>>185 >>186
五話『日蓮宗体験記録』
>>187 >>190
六話『天草四朗時貞絵巻』
>>191 >>192
七話『後夜祭・神々の生誕劇場』
>>193 >>202 >>206 >>207


六章『旧・太陽神話』

一話『序・太陽神話』
>>208 >>212 >>213
二話『破・太陽神話』
>>214 >>217 >>218 >>219 >>221 >>222 >>223 >>224 >>231 >>235 >>236 >>243 >>244
三話『急・太陽神話』
>>266 >>267 >>268 >>269 >>270 >>271 >>272 >>279 >>282 >>285 >>292


七章『続・太陽神話』

一話『再・太陽神話』
>>293 >>299 >>300 >>303 >>304 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>322 >>323 >>324 >>329 >>330 >>331 >>332 >>333 >>334 >>335 >>336 >>337 >>338 >>341 >>342 >>343 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>356 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>365
二話『終・太陽神話』
>>366 >>371 >>372 >>373 >>374 >>375 >>376 >>377 >>380 >>381 >>382 >>383 >>384 >>385 >>386 >>387
三話『新・太陽神話』
>>393 >>395 >>396 >>397 >>398 >>399 >>402 >>403 >>404


八章『十二神話・召還』

一話『焦土神話・帰還』
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409
二話『海洋神話・還流』
>>410 >>411 >>412 >>413 >>415
三話『萌芽神話・還却』
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>423 >>424


九章『聖夜の賢愚クリスマス・ヘルメス

一話『祝祭の前夜ビフォア・イヴ
>>425
二話『双子の門番ツインズ・ゲートキーパー
>>426 >>429 >>430 >>431
三話『祝宴の闘争パーティー・バトル
>>432 >>433 >>434 >>435 >>436 >>437 >>438 >>439 >>440
四話『知将の逆襲ノウレッジ・リベンジ
>>441 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447


第十章『月の下の約束です』

一話『月影の同盟です』
>>468 >>469 >>470 >>471 >>472 >>473
二話『月夜野汐です』
>>486 >>487 >>489 >>490 >>491 >>492
三話『私の先輩です』
>>493 >>496 >>497 >>498 >>499 >>500 >>503 >>506 >>507 >>508


第十一章『新年』

一話『初詣』
>>512 >>513 >>514 >>515 >>516 >>519 >>520 >>521 >>522 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>530 >>531 >>532 >>533 >>534 >>535 >>536 >>537 >>538 >>539 >>540 >>541 >>542 >>543 >>544 >>545 >>546 >>547 >>548 >>549 >>550 >>553 >>554 >>557 >>558 >>559 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>566 >>567 >>568 >>571 >>572 >>573


十二章『空城夕陽の義理/光ヶ丘姫乃の本命』

一話『誕生日/バレンタインデー』
>>577 >>578 >>579 >>580 >>583 >>584
二話『軍人と探偵と科学者と/友人と双子と浮浪者と』
>>585 >>586 >>587 >>590 >>591 >>592 >>593 >>594 >>595 >>596 >>597 >>598 >>599 >>600 >>601 >>602 >>603 >>604 >>605 >>606
三話『告白——/——警告』
>>609 >>610


十三章『友愛「親友だから——」』

一話『恋愛「思いを惹きずって」』
>>616 >>617
二話『敬愛「意志を継ぎたい」』
>>618 >>619
三話『家族愛「ゆずれないものがある」』
>>620 >>621 >>622 >>627 >>628 >>629 >>630 >>631 >>632 >>633 >>634 >>635 >>636
四話『親愛「——あなたのことが大好きです」』
>>637



コラボ短編
【1——0・メモリー(タクさんコラボ)】
外伝『Junior to connect』

一話『Recollection』
>>474
二話『His outrage』
>>475 >>476 >>477 >>478 >>480
三話『My junior and his friend』
>>482



デッキ調査室
№1『空城夕陽1』  >>95
№2『春永このみ1』 >>102
№3『御舟汐1』 >>136 >>137

人物
>>34
組織
>>35
フレーバーテキスト
>>574

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.215 )
日時: 2013/11/17 12:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

どうも、タクです。スーパーデッキが超豪華仕様で、迫る誕生日に手に入れようと思いきや、その日が、土曜の癖に丁度テストに被ってしまってるのが残念です。

ヘラクレスと夕陽のデュエマですが、やはり《アポロン》のヒーロー性はとんでもないですね。神話カードと呼ばれるに相応しいフィニッシャーです。はい。そして、《ボルバルザーク・エクス》。こちらの小説でも登場しましたか。ヒナタにも使わせていましたが、やっぱり殿堂の力恐るべし。ですね。

そして、《アポロン》の正式な所有者が現れましたね。どこか、謎な点はまだありますけど。これで、夕陽が所有しているのは《マルス》のみになりましたが、夕陽ってヒューマノイドを使わないので、持っていても仕方がないと思っているのは、自分だけでしょうか?

というわけで、続きを楽しみにしています。それでは、また。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.216 )
日時: 2013/11/17 13:21
名前: モノクロ ◆KI8qrx8iDI (ID: m.emTaEX)  

タクさん


携帯から返信です。コメントありがとうございます。
そうですね、《アポロン》の突破力と破壊力、奇襲性は『神話カード』随一です。連ドラなら進化元の確保も難しくないですし、進化元のコストが高いからCDも発動させやすいです。
《ボルバルザーク・エクス》はやっぱり強いです。本家と違ってリスクを負わずにマナを復活できるので重いドラゴンでも大量展開がしやすく、展開負けしやすい進化MVとの相性もいいですし。

確かに派手ですけど、カード枚数は普通の構築済みデッキと変わりませんし、個人的にはパッケージばかりが大きくてもなぁ、って感じです。
まあ、ホイル仕様で殿堂カードやゴールデンリストに登録されていたカード、新規カードも多いのはいいと思いますが。

ここで遂に《アポロン》の元の所有者、ひまりの登場です。彼女にはまだ謎が多いですが、それも少しずつ明かしていくつもりです、お楽しみに。
そうですね、この《マルス》がどうなるのかも追々描いていくつもりです。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.217 )
日時: 2013/11/20 22:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「これですか……よっと」
 汐は店の外、裏口を出てすぐのところに積んであった段ボール箱のうち一つを抱える。
 『御舟屋』は狭いので、一部の物資は店の外においてるのだが、どうしてもセキュリティの問題があるように思える。それは澪も重々承知しており、こんな入り組んだ裏道のさらに奥にある通路なんかには滅多に人が来ないので大丈夫だろうと高を括っている。
「もう少し繁盛すれば、店も改築できるんですけどね……こればかりは、仕方ないですか」
 などと呟きながら、汐は店内に戻ろうとする。だがその時、背後になにか気配を感じた。
「……っ」
 思わず段ボール箱を取り落す。そしてすぐさま周囲を見渡し、今自分が置かれている状況を理解した。
(これは、神話空間……いつの間に……)
 目の前には、実体化間近と思われるクリーチャーの残像。この段階ではまだ、どんなクリーチャーなのかは分からない。しかしわりと大型ではあるようだ。
「……少々驚いたですが、文化祭の件もあるわけですし、そこまで驚くことでもないですね。兄さんや先輩たちに心配はかけさせないです、ここで私が——」
 とそこまで言ったところで、汐の言葉と、腰に向かっていた手の動きが止まる。汐の細く小さな手は、虚空しか掴まない。
「デッキが……」
 いつもならすぐに取り出せるよう、腰にセットしているか、もしくはポケットに入れておくなど、肌身離さず身に着けている。しかし、今は違った。
(そういえば、さっきデュエルした後、店の中に置いたままでした……)
 我が家という気の緩みかなんなのか、彼女らしからぬ不注意だ。
 そうこうしているうちに、クリーチャーの実体化が完了する。
「《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》……」
 それは巨大な悪魔だ。巨大すぎるほど巨大な大剣を構え、空洞な瞳は虚空を見据えている。ロマノフ一族の中でも悪魔の力を取り込み、さらに騎士と魔銃の力を持たない異形のロマノフ、それがヴァーズ・ロマノフだ。
 ヴァーズ・ロマノフは視線を汐に向けると、少しだけ体を傾ける。まるで、汐を標的として定めるように。
「う……まずい、です……」
 今の汐はデッキを持っていない。かといって今からデッキを取りに戻ったら、店内の者——夕陽や澪たち——に被害が及ぶ可能性が高い。夕陽たちならともかく、澪には“ゲーム”のことを知られるわけにはいかないので、なおさらだ。
「しかし、このままなにもせず放っておくのも危険です……どうすれば……」
 一歩後ずさる汐。それに合わせ、一歩前進するヴァーズ・ロマノフ。激しい焦燥感に駆られ、思考も鈍ってしまう。どうすればいいのか、今の最善の行動はなにか、考えられない。どうしようもない、危機的状況。
 その時だ。
「やっぱり……汐ちゃん!」
「っ……朝比奈、さん……」
 誰も通らない裏通りに、最近覚えた声が通る。
「だからひまりでいいよ。それより、ここの道って随分入り組んでるね、ちょっと迷いかけたよ」
「……なんで、ここに……」
 本来なら礼を言うべきなのだろうが、まだひまりとなじみ切っていない汐は、自分で思いながら少し刺々しく言う。しかしひまりはそんなことは意に介さない。
「なんでって言われると答えにくいんだけど……あえて言うなら私の勘、かな。なにか出るような気がしたんだよね。それに汐ちゃんは友達なんだし、助けに来るのは当たり前だよ。自分で言ってて、ちょっとくさいとは思うけど」
 本音とも建前とも、そして照れ隠しとも取れることを言って、ひまりはデッキを取り出した。
 刹那、ひまりとヴァーズ・ロマノフは神話空間内のさらに独立した戦いの空間へと導かれる。



 ひまりとヴァーズ・ロマノフのデュエル。
 現在、両者シールドは五枚。バトルゾーンを見ると、ひまりの場には《コッコ・ルピア》《エコ・アイニー》《インフィニティ・ドラゴン》の三体。
 対するヴァーズ・ロマノフの場には、デーモン・コマンドとエンジェル・コマンドのコストを2下げる《聖黒獣アシュライガー》と、破壊される代わりに墓地の進化デーモン・コマンドを回収できる《暗黒導師ブラックルシファー》の二体だ。
「私のターン。呪文《メンデルスゾーン》で、山札の上二枚を見る。その中のドラゴンをタップしてマナゾーンへ。さらに《紅神龍バルガゲイザー》を召喚!」
 マナを増やして次のターンに備えつつ、ドラゴンを並べていくひまり。そして、攻め始める。
「《インフィニティ・ドラゴン》でシールドをWブレイク!」
 除去に対して耐性を持つ《インフィニティ・ドラゴン》ならS・トリガーや殴り返しも怖くない。安全にシールドを割ったところで、ひまりはターンを終える。
『私のターンだ。《アシュライガー》の効果でコストを2減らし、《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚。《オルゼキア》の能力で、《ブラックルシファー》を破壊し、貴様も自身のクリーチャーを二体破壊しろ』
「う……なら、《バルガゲイザー》と《インフィニティ・ドラゴン》を選んで破壊するよ。でも《インフィニティ・ドラゴン》がいる時、山札の一番上を墓地に置いて、それがドラゴンかファイアー・バードなら私のドラゴンは場に残る!」
 ひまりはデッキのほとんどをドラゴンとファイアー・バードで構成しているので、かなり高い確率で《インフィニティ・ドラゴン》は生き残ることができる。実際、最初に捲ったカードは《コッコ・ルピア》。これで《バルガゲイザー》は生き残ったが、
「っ、《メンデルス・ゾーン》……!? こんな時に限って……!」
 運悪く次に捲れたのは呪文。《イニフィニティ・ドラゴン》は破壊されてしまった。しかも、
『《オルゼキア》の能力で《ブラックルシファー》が破壊されるとき、《ブラックルシファー》の能力発動。《ブラックルシファー》は破壊される代わりに、墓地の進化デーモン・コマンドを回収できる。墓地から《ヴァーズ・ロマノフ》を手札に』
 ヴァーズ・ロマノフの場数は減らず、手札まで増えてしまった。一気にひまりは苦しくなる。
『さらに、《ブラックルシファー》と《アシュライガー》で、それぞれ貴様を攻撃、シールドブレイク!』
「く、うぅ……!」
 《ブラックルシファー》のWブレイクと《アシュライガー》のシールドブレイクで、シールドも残り二枚。シールドの枚数でも不利になってしまった。



「……大丈夫、でしょうか……」
 外野から戦いを傍観している汐は、思わず呟く。
 しかし彼女には、ひまりの口元に浮かんだ笑みが見えなかった。

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.218 )
日時: 2013/11/22 22:25
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ひまりとヴァーズ・ロマノフのデュエル、状況はひまりが不利だ。
 ひまりのシールドは残り二枚、場には《コッコ・ルピア》と《エコ・アイニー》そして《紅神龍バルガゲイザー》の三体。
 対するヴァーズ・ロマノフはシールドが三枚、場には《聖黒獣アシュライガー》に、《暗黒導師ブラックルシファー》《魔刻の斬将オルゼキア》がおり、手札には《ヴァーズ・ロマノフ》を握っている。
「私のターン。とりあえず、二体目の《バルガゲイザー》を召喚。さらに《偽りの名 バルキリー・ラゴン》も召喚」
 とりあえずひまりは場数を増やし、ヴァーズ・ロマノフにプレッシャーをかけていく。
「そして、《バルキリー・ラゴン》の効果で山札を見て、好きなドラゴンを手札に加えるよ。この状況じゃ《アポロン》の召喚はきつそうだし……《竜星バルガライザー》を手札に」
 スピードアタッカーに加え、ドラゴンを場に出す可能性のある《バルガライザー》を握っておき、次のターンに備える。
 さて、ここでひまりの一番の悩みどころは、攻撃対象だ。
 ひまりの場のクリーチャーを見れば、シールドを攻撃してもとどめまではいけないが、《バルガゲイザー》の能力でスピードアタッカーが捲れればその限りではない。
 だがそれは賭けだ。確かにひまりのデッキはスピードアタッカーを持つクリーチャーが比較的多いが、ややリスキーと言えるだろう。
 ならば、
「《バルガゲイザー》で《アシュライガー》を攻撃!」
 ひまりは攻撃対象をクリーチャーにする。これでヴァーズ・ロマノフの場数を減らし、次のターンまで生き残り、確実にとどめを刺す戦略だ。
 とはいえこの戦術にも穴はある。そもそもヴァーズ・ロマノフの場にはクリーチャーが三体、うち二体がWブレイカーで、手札には墓地進化で飛び出てくる《ヴァーズ・ロマノフ》もいる。このターンで次のターンまで生き延びられるほどのクリーチャーは破壊できない。
 だがひまりは先ほど、《バルキリー・ラゴン》の能力で山札を見ており、それはつまり、シールドに埋まっているS・トリガーを確認しているということだ。それもあって、次のターンまで生き残る算段が立っている。
「攻撃時、《バルガゲイザー》の能力発動! 山札の一番上を捲って、ドラゴンなら場に出すよ」
 《バルガゲイザー》の咆哮が響き、山札から次なる龍が飛び出る。
「よしっ、来たよ。《王龍ショパン》! 出た時の効果で《オルゼキア》とバトル!」
 《ショパン》も《オルゼキア》もパワーは6000。相打ちとなり、共に破壊される。
「そして、《バルガゲイザー》の攻撃で《アシュライガー》も破壊! 《エコ・アイニー》でシールドブレイク!」
 やっとシールドの数でもヴァーズ・ロマノフに追いついたひまりは、これでターンを終える。
『随分と張り切っているようだが、貴様の努力はすべて無に帰すのだ。私のターン、《腐敗聖者ベガ》を召喚。シールドを追加し、貴様の手札を一枚墓地へ』
「えっ……!?」
 追いついたと思ったら、ヴァーズ・ロマノフはシールドを増やし、ひまりは手札を削られてしまう。しかも捨てられたのは《バルガライザー》だ。
『さらに、《アシュライガー》から墓地進化! 《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》!』


暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ 闇文明 (7)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド/ダークロード 7000
墓地進化—闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の進化ではないクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー


 墓地から現れたのは、大剣を携えた悪魔。騎士のようでいて騎士でない魔神だ。
『私の効果で《バルキリー・ラゴン》を破壊! さらに《バルガゲイザー》を攻撃!』
「っ、シールドじゃないの……?」
 どうやら、前のターンのプレイングからひまりのシールドにS・トリガーがあることは見抜かれているようだ。皮肉にもひまりは披露した戦術を敵に取られた形となる。
『《ブラックルシファー》で《エコ・アイニー》を破壊! そしてターンエンド。さあ、次のターンでとどめを刺してやろう』
「…………」
 《ヴァーズ・ロマノフ》の威圧的な視線を受け、俯くひまり。その姿は敗北を目前にし、絶望しているように見えるだろう。
 だが、実際はそうではない。
「……良かったよ」
『なに?』
「だからさ、シールドを割られなくって良かったよ。クリーチャーでも心理戦とか効くんだね」
『どういうことだ?』
 訝しむ《ヴァーズ・ロマノフ》に対し、ひまりは、
「実は私のシールドにはS・トリガーはないんだ。前のターンのはただのブラフ。あの状況からじゃとどめまでは行けそうになかったから、試にやってみたんだけど、上手くかかってくれたね」
『この私を謀ったというのか……!』
 怒気を含む声で唸る《ヴァーズ・ロマノフ》。つまりひまりは、わざと自分のシールドにS・トリガーがあるように見せかけるプレイングで《ヴァーズ・ロマノフ》の動きを誘導し、生き延びたのだ。
「そして、このターンで決めるよ。私があるカードを“引かなければ”あなたの負け」
 と言って、ひまりはカードを引く。その表情からは、なにを引いたのかは読み取れない。
「よし、いい感じ。まずは《コッコ・ギルピア》を二体召喚、続けて《エコ・アイニー》を召喚! さらに《バルガザルムス》も召喚!」
 ひまりはクリーチャーを並べていくが、スピードアタッカーではないのでこれではとどめまで行くことは不可能だ。
『その程度か。だからどうした』
「まあまあ、最後まで見ててよ。次はこれ、呪文《魂の呼び声》!」


魂の呼び声 自然文明 (3)
呪文
種族をひとつ選び、自分の山札を見る。その中から選んだ種族を持ち名前が異なるクリーチャーを3体選んで相手に見せる。山札をシャッフルしてからその3体を好きな順序で山札の一番上に戻す。


 要するに、選んだ種族の好きなクリーチャーを三体、山札の上に積み込める呪文だ。コンボ向きのカードで、ひまりのデッキでも《バルガゲイザー》などと相性が良い。
「選ぶ種族はアーマード・ドラゴンだよ」
『スピードアタッカーを積み込み、《バルガゲイザー》で呼び出すつもりか?』
「そういうわけじゃないけどね。積み込むのはこの三枚。上から《アポロン》《NEX》《トルネードシヴァ》だよ」
 《ヴァーズ・ロマノフ》と、外にいる汐もその選択に疑問を覚える。確かに《バルガゲイザー》の能力で《アポロン》は呼び出せるが、《バルガゲイザー》は攻撃する必要があるのでどうしたってタップ状態で出てしまう。
「じゃあ行くよ。《コッコ・ルピア》でシールドブレイク! そして、《バルガゲイザー》でシールドブレイク! 能力発動!」
 《バルガゲイザー》の咆哮で、山札から太陽の如き輝きが溢れだす。そして、
「《コッコ・ギルピア》《コッコ・ルピア》《バルガゲイザー》を進化MV! 出て来て、《アポロン》!」
 《アポロン》が現れる。だがタップ状態で、攻撃時の能力も発動しない。
「でも攻撃は通るよ。行って《アポロン》!」
 そうだ。攻撃途中で進化したとはいえ、《バルガゲイザー》がそのまま《アポロン》にすり替わっただけで、攻撃自体は止まっていない。《アポロン》の熱線が《ヴァーズ・ロマノフ》に放たれる。しかし、
『甘い! ニンジャ・ストライク《光牙忍ハヤブサマル》を召喚! そしてブロック!』
 その攻撃も、防がれてしまった。
『残念だったな。これで貴様の攻撃は終わりだ』
 最後の攻撃を止められてしまい、これでひまりは本当に打つ手がなくなった、かに見えたが、
「なに言ってんの? 私の攻撃は終わってないよ?」
 ひまりは平然とそう言ってのける。
「どうせ手札にシノビでも握ってると思ったよ。だからスピードアタッカーを呼ばなかったんだ。どうせ止められるなら、数で勝負すべきだってね」
『……貴様こそなにを言っている? 貴様の場に、もう攻撃できるクリーチャーなどいないぞ』
 怪訝な眼を向ける《ヴァーズ・ロマノフ》。対するひまりは得意そうに言い返す。
「いるんだなーそれが。《アポロン》のCD5——私の場のファイアー・バード、ドラゴン、火文明のクリーチャーは、すべてスピードアタッカーになる」
『なんだと……!?』
 直後、《ヴァーズ・ロマノフ》に小さき鳥たちが特攻する。
「《ギルピア》と《エコ・アイニー》でシールドブレイク!」
 そして最後には、大地の力をつかさどる龍が、雄叫びを上げる。

「《緑神龍バルガザルムス》で、ダイレクトアタック!」



「……大丈夫、ですか」
 ヴァーズ・ロマノフとのデュエルを終えたひまりに、汐は駆け寄る。ひまりは「大丈夫だよ」と平気の平左で返した。
「あの……ありがとう、でした。あさひな——」
「ひまり」
 汐の言葉を遮って、ひまりは言う。
「せっかくなんだし、名前で呼び合おうよ。これから長い付き合いになるかもしれないんだし。ね?」
「……はい。ひまり……先輩」
「お? 先輩までつけてくれるなんて、さっすが汐ちゃん! 可愛いね」
「そんな……えっと、ありがとう、でした。助けていただいて」
 普段からクールな汐もひまりを前にするとペースを崩される。だからかあわてるように話題を変えた。
「いいんだよそんなの。それよりさ、これ。汐ちゃんにあげる」
 ひまりが汐に手渡したのは一枚のカード。それも、さっき倒したばかりの《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》だった。
「でも、これはひまり先輩が勝ち取ったものではないですか……受け取れないですよ」
「いいよー別にそんなこと気にしなくても。私のデッキには合わないし、汐ちゃんのデッキってデーモン・コマンドがメインでしょ? 墓地だって上手く使ってるし、私よりずっと使いこなせると思う。だから、さ」
 にっこりと笑うひまり。その笑顔でそこまで言われては汐も引き下がらざるを得ない。
「……分かりました。ありがたく、頂くです」
「うん。じゃあお店に戻ろうか。みんな待ってるだろうし」
「はいです」

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.219 )
日時: 2013/12/21 09:49
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ここは雀宮高校二年校舎にある教室の一つ。扉の前のプレートには、『2—2』の書かれている。
 時間帯的にはもうほとんどの生徒は帰宅しているが、しかし教室の中には二人だけ生徒が残っていた。
 二人とも男子生徒だ。そして二人は、二つほど机をくっつけ、向かい合っている。そして——
「行くぜ俺のターン! 《サイバー・A・アイアンズ》を召喚! 効果で五枚ドロー!」

 ——デュエマをしていた。


サイバー・A・アイアンズ 水文明 (9)
クリーチャー:サイバー・コマンド 12000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを5枚まで引いてもよい。
自分の他の水のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのターン、このクリーチャーはブロックされない。
T・ブレイカー


 しかも戦っているのは零佑と流。誰もいない教室で何をやっているんだと言いたいだろうが、この二人はわりと日常的に、こうして二人でデュエルしている。いわば日課のようなものだ。
「さらに《パラダイス・アロマ》と《クゥリャン》でシールドブレイク!」
「くっ……! 残るシールドは二枚か……」
 呻く流。零佑の場には三体のクリーチャーが並んでいるのに対し、流れの場には《宿命のディスティニー・リュウセイ》が一体のみ。シールドも三枚の差がついている。
「俺のターン……これでやっと10マナか。呪文《戦慄のプレリュード》で、コストを5軽くし、《超絶奇跡 鬼羅丸》を召喚。ガチンコ・ジャッジ三連戦だ」
「いいぜ、受けて立つ! ガチンコ・ジャッジ!」
 一戦目、流が捲ったのはコスト7《真実の名 リアーナ・グローリー》、零佑はコスト4《ブレイン・チャージャー》。
「一戦目は俺の勝ちだ。《リアーナ・グローリー》をバトルゾーンへ。そして二戦目だ」
 二戦目、流はコスト2《霞み妖精ジャスミン》、零佑はコスト5《コーライル》。
「二戦目は俺の勝ちだ。残念だったな」
「……たまたまコストの低いカードが捲れただけだ。三戦目」
 三戦目、流はコスト8《偽りの名 イージス》、そして零佑が捲ったのは、コスト9《サイバー・A・アイアンズ》だった。
「っ」
「またまた残念だったな。三戦中、俺がガチンコ・ジャッジ二連勝だ」
「……だが、このターンでダイレクトアタックを決めればいいだけだ。《鬼羅丸》でTブレイク!」
 《鬼羅丸》の効果で《リアーナ・グローリー》はスピードアタッカーなので、《ディスティニー・リュウセイ》と合わせて一気にダイレクトアタックまで行けるが、
「来たぜ、お前の残念三回目だ! S・トリガー発動《スパイラル・ゲート》! 《鬼羅丸》を手札に!」
「なに……っ?」
「これで《リアーナ》のスピードアタッカーもなくなる。とどめまではいけないぜ?」
「……だったら、《ディスティニー・リュウセイ》で《クゥリャン》を攻撃! これで次のターンは凌げる……」
 首の皮一枚といったところだが生き残ることができる道を選んだ流。しかし、デュエルはそう都合よくいくものではない。
「甘いぜ。俺のターン、《サイバー・G・ホーガン》召喚!」


サイバー・G・ホーガン 水文明 (8)
クリーチャー:サイバー・コマンド 8000
M・ソウル
W・ブレイカー
激流連鎖(このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から2枚を見る。その中から、このクリーチャーよりコストが小さいクリーチャーを好きな数、バトルゾーンに出してもよい。残りを好きな順序で自分の山札の一番上に戻す)


「激流連鎖で山札の上から二枚を捲る。捲られたのは……《パクリオ》と《コーライル》だ。《パクリオ》の効果で、お前の手札を一枚シールドへ。《コーライル》の効果で《ディスティニー・リュウセイ》を山札へ!」
 流の手札を見て一枚をシールドに埋める、クリーチャーも除去する零佑。《コーライル》はともかくこの時の《パクリオ》の効果はあまり意味がない。それは後々分かる。
「さらにソウルシフトでコストを下げ、1マナで《サイバー・G・ホーガン》進化! 《超電磁マクスウェルZ》!」
 大型クリーチャーを進化元とすることで、限界までコストを下げて呼び出された零佑の切り札《マクスウェルZ》。進化クリーチャーで即攻撃に参加できる上、呪文の使用も制限され、流は一気に苦しくなってしまう。
「さあ行くぜ! 《サイバー・A・アイアンズ》でTブレイク! このターン水のクリーチャーを場に出してるから、ブロックはされないぜ」
「ぐっ……S・トリガーはなしか……」
 《パクリオ》でシールドが増えたといっても、それはS・トリガーではないし、どうせ《アイアンズ》で三枚一気に割られるのだから、一枚増えたところで意味はなかった。
「《パラダイス・アロマ》でダイレクトアタックだ!」
「《リアーナ・グローリー》でブロック!」
 《パラダイス・アロマ》の攻撃は防ぐが、しかしここまでだ。

「もうブロッカーはいねぇな。だったら《マクスウェルZ》で、ダイレクトアタックだ!」



 デュエルを終えると、二人は荷物をまとめて帰路に着いた。
「それにしても……零佑、今回は随分と大胆にデッキを変えたな」
「ああ。軽量サイバー・ロードを抜いて、大型サイバー・コマンドを投入してみたんだ」
「いつもの速攻はどうした?」
「んー、なんつーのか、お前と毎日こうしてデュエルしているうちに、大型クリーチャーもいいなーって思い始めたっていうのが一番の動機かな。まあそれ以外にも、お前に対抗するためでもあるけどな」
「俺に対抗するため?」
 対抗というのなら、速攻デッキが流にとっては一番辛い相手だ。勿論その対策もしているので、一方的にやられてばかりではないが。
「いや、ただの速攻だと《ローズ・キャッスル》とかでクリーチャーが薙ぎ払われることもあるし。それにお前のデッキのもう一つの弱点も見つけたしな」
「弱点? なんだ?」
「お前のデッキは《ガチンコ・ルーレット》ありきだってところだよ」
 零佑が言うには、流のデッキは《ガチンコ・ルーレット》を中心に回っている。《ガチンコ・ルーレット》でマナを増やし、ガチンコ・ジャッジで勝つことで何度も使いまわす。そうして増えたマナで、大型クリーチャーを呼び出す。
 なのでデッキの大半が高コストのカードとなっており、ガチンコ・ジャッジの勝率を高める構築にしている。
「でもそれは、自分がガチンコ・ジャッジで勝つことを前提としているところもある。相手が中〜軽量のクリーチャーばかりのデッキならまず勝てるだろうが、大型クリーチャーをある程度搭載したデッキなら、負けることもしばしばある。そしてお前のデッキはガチンコ・ジャッジに負けると、その力の半分も引き出せなくなる」
「……つまり、お前は自分のデッキに大型クリーチャーを入れて、俺のガチンコ・ジャッジ勝率を下げてきた、ということか?」
「そういうこった」
 成程、と流は頷く。自分のデッキのマナ加速を《ガチンコ・ルーレット》に依存していることは流も承知していたが、7マナ以上の大型クリーチャーを多く搭載して相手のガチンコ・ジャッジ勝率を下げるという方法で対策をしてくるとは、盲点だった。
「……俺のデッキも、もっと改良が必要だな」
 流がそう呟くと、前方の一人の女子生徒が目に入る。普段なら記憶に残さないような人物で、事実流の記憶にない生徒だったが、向こうからこちらに声をかけてきたので足を止めざるを得なかった。
「あ……えーっと、水瀬君と、潮原君、だよね?」
「……誰だ」
 頷きもせず、無愛想に質問で返す流。本当に知らない生徒だった。記憶に残らないくらい平凡な出で立ちで、出会った覚えがない。
 しかし、零佑は違ったようだ。
「お? 朝比奈じゃん。どうしたんだよ、こんなところで」
「……誰だ?」
 どうやら零佑はこの生徒を知っているようで、流は質問先を変える。
「誰って、前にうちの教室に来てただろ。ほら、空城について聞いてきた」
「そうだったか」
 記憶にない。そもそも、その対応は恐らく零佑がしていたと思われる。見ず知らずの女子生徒と雄弁に語れるほど、流は社交的ではない。
「じゃあ、改めて自己紹介しておこうかな。多分これから先、長いし……私は二年一組の朝比奈ひまり、潮原君とは去年のクラスメイトで——」
 と、そこで少し間を置き、
「——『太陽一閃サンシャイン』って言ったら、分かる?」
「っ!」
 聞いたことがある。流が知る《アポロン》の所有者。しかしその前の所有者が、呼ばれていた異名だ。
「詳しい話は割愛するけど、なんていえばいいのかな……今は、夕陽君たちの友達、かな?」
「……そう言えば、『昇天太陽サンセット』の《アポロン》がどうこうと、春永このみが言っていたな……まさかお前」
 ひまりに鋭い視線を浴びせる流。するとひまりは焦ったように、
「ち、違うよ!? 友達って言ったじゃん。別に《アポロン》は奪ったとかじゃなくて、正式に譲り受けたものだよっ。なんなら、夕陽君たちに確認してみる?」
 わざわざ携帯を取り出してそんなことを言うひまり。その挙動を見て、流は馬鹿らしくなってこれ以上の発言をやめた。《アポロン》の所在に関しては、後日本人から直接聞けばいい。
 しばらく無言で歩いていると、ふと零佑と足を止める。
「んじゃ、ここまでだな。じゃあな!」
「ああ」
 互いに言葉だけ交わし、別れる流と零佑。ここから二人の家は方向が変わるのだ。
 流は零佑と別れると、思考を切り替える。さしあたっては、自分のデッキをどう改造するかだ。過剰なマナブーストから大型クリーチャーを召喚する構築は流好みだが、しかしリスクを負う面もある。ならばコスト踏み倒し系のカードも投入するべきかもしれない。
「…………」
「どうしたの、難しい顔して?」
「っ」
 突然、すぐ横から声をかけられた。ひまりだ。
「お前……いたのか」
「いたよ、ずっといたよ。気付かなかったの?」
 気付かなかった。
 流は基本的にドライな性格なので、自分の興味が向かないものにはとことん目を向けない。ゆえに、ひまりに対してもどこか冷たい態度となってしまう。
「えっと、水瀬君……いや、名前で呼ぼう。えーっと、リュウ君、だっけ?」
「ナガレだ」
 強い語調で訂正する。何度言われたか分からないし、何度言ったかもわからない台詞。どんなに言っても聞かないことは分かっているが、しかし言わずにはいられない。
「あ、う、うん。ごめんね、ナガレ君」
「!?」
 何気ないひまりの謝罪に、流はこれでもかというくらい目を見開く。驚愕、などというレベルでは収まらないほどの驚愕だ。
「な、なに? どうしたの、流君……」
「……お前が、初めてだ」
「へ?」
「お前が……お前が、俺の名前をナガレと訂正した、初めての奴だ」
 流の目には、無感動ながらも歓喜の色が見て取れた。
「お前は、いい奴だな」
「……流君って、意外と天然?」
 同級生の意外な一面を知ったひまりであった。
 その時。

 流の周りの空気が、豹変した。


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